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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅   ★劇場鑑賞した映画はインスタにアップしています@ruby_red66

1分間の人生~『欲望の翼』

欲望の翼



 

 阿飛正傅

 
 DAYS OF BEING WILD



 1960年、香港。サッカー競技場の売り子スー(張曼玉マギー・チャン)は、コーラを買いに来たヨディ(張國榮レスリー・チャン)に声を掛けられる。「名前は?」

 「1960年4月16日、3時1分前。君は僕といた。この1分間を忘れない」

 2018年7月の終わり、20時40分スタートのレイトショー。平成最後の夏、火星大接近の夜に、この作品をやっとやっと、スクリーンで観ることができた。初めてDVDで観たのは一体何年前だろう? 世紀の大天才・王家衛ウォン・カーウァイの長編第二作。レスリーが亡くなり、マギーが引退状態である以外は、キャストは梁朝偉トニー・レオンはじめ劉嘉玲カリーナ・ラウ、劉徳華アンディ・ラウ、「歌神」張學友ジャッキー・チュンと、今も第一線で活躍する面々。彼らの若き姿に、胸がいっぱいになる。

 キャストだけみると超豪華な青春群像劇なのだが、初めて観たときからそういう印象はない。レスリーの存在感が強烈過ぎるため、「脚のない鳥=ヨディの物語」 として記憶に刷り込まれてしまうのだ。ラテン・ミュージックをかけ、白いランニングとトランクスで踊るヨディ=レスリー。30年近く語り継がれているこの場面、芸術の神に愛された自らのナルシシズムを隠そうともせず、ただ音楽に身を任せる彼に、至高とは何か、天賦の才とは何かを感じずにはいられない。

 今回、この物語はヨディの回想なのだな、と初めて気がついた。冒頭、フィリピンの熱帯雨林が車窓に流れる。ラスト近く、今際の際のヨディにタイドは問いかける。 「1960年4月16日、3時1分前を憶えているか?」 「あの女といた」。あの風景は、あの日からの記憶を 「走馬灯のように」 辿っているヨディの目に映る最後の記憶なのだ。

 そして、同じ男を愛した二人の女、スーとミミ。これまで、結婚に憧れを抱く生真面目なスーに圧倒的に感情移入し、ギャーギャーと喚き散らす自己主張の塊のようなミミには嫌悪感があった。しかし、今回はつくづく、カリーナって美しいと思った。均整のとれたスタイルと、アイラインで強調させた目力、それだけじゃない。強く、逞しい女は美しい。惚れた男をどこまでも追い、国境を超える彼女は、どんな場所でも生き抜いてみせるであろう生命力に溢れていてまぶしい。

 つい先日、トニー・レオンがジェット・トーン(ウォン・カーウァイが設立した映画製作会社)との契約を満了し、関係を解消したというニュースに衝撃を受けたばかり。ラストシーンは少し感傷的な気分で観てしまった。超ロマンチストなウォン・カーウァイは、役者に背中で語らせる。影帝トニーと、この涙の大天才とのコラボレーションをまだまだ観てみたかった。

 字幕翻訳が、今年6月に亡くなった寺尾次郎氏だったことも記録しておきたい。合掌。

欲望の翼2

( 『欲望の翼』 監督・脚本:王家衛/1990・香港/
               主演:張國榮、張曼玉、劉嘉玲、劉徳華、張學友、梁朝偉)

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2018-08-03 : 映画 : コメント : 4 : トラックバック : 1
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#WeAreGroot

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テーマ : 映画監督
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2018-07-31 : 映画雑談 : コメント : 0 :
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寡黙な人々~『ゴッズ・オウン・カントリー』#3

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 (過去記事) God's Own Country
          ゴッズ・オウン・カントリー
         ゴッズ・オウン・カントリー』#2

 ついこの間まで北イタリアの沼にいたのですが、気がつくとヨークシャーの丘にいました。ここは(人が少なくて)寂しい場所ですが、とても美しいところですよ。皆さん早く来てください。

 この映画、「セリフが少ないから英語字幕でも無問題」 と何処かで読んで海外版BDの購入を決めたのだけれど、実際に観ると 「セリフが少ない」 と言うよりは 「セリフのないシーンが多い」 という印象。英語(ヨークシャー語?)は全く聴き取れず、字幕はあっても単語がわからない(爆)。“ta” や “lad” は割とすぐにわかったのだけれど、“summat” がわからなかった・・・。最後の最後に 「・・・はっ! これは “some” では??」 と気付いたのだけど、“something” ですね多分。ゲオルゲのしゃべる言葉だけは聴き取れたよ~、ありがとうゲオ。

 そしてセリフだけでなく、登場人物もとても少ない(余計なお世話だが、予算もスタッフもとても少なかったのだろうと思う)。ジョニーとゲオルゲ、ジョニーの父と祖母(あと牛と羊)。父はとても厳しく、一人息子のジョニーに 「どうしてそこまで?」 と思うほどの冷たい視線を向ける。祖母も、確か一度も笑顔を見せない。その代わり、彼女が涙する場面はとても印象的で、胸を打つ。

 あの涙は 「息子に先立たれるかもしれない」 という恐怖や不安が流させたのだろうけれど、それだけじゃない。もう少し、いくつかの成分が含まれていたと思う。田舎での生活、農夫の妻として生きてきた自分の人生、去って行った息子の妻、母のいない孫息子。そして彼が見つけた恋。彼女は毎日毎日アイロンをかけながら、何を思っていたのだろう? 長い間蓋をしてきた様々な思いがあのとき溢れて、感極まったのだろうと思う。

 父も祖母も、ジョニーに対し決して愛情がないわけではない。ジョニーが山から戻ったとき、父は窓辺に置いた椅子に腰かけ居眠りをしていた。息子のことを案じ、ずっと外を見ながらバイクのエンジン音が聴こえるのを待っていたんだな、と思った。片やニコリともせずに、ジョニーに大切な大切なメモの切れ端を渡すおばあちゃん。きっとふたりとも人間関係に不器用で、口下手なんだろうな。そしてその性格は見事に、ジョニーにも受け継がれている。

 ジョニー、いつもはほとんどしゃべらないのに、ゲオルゲに思いを伝えようと、本当に頑張ったね。あれほど必死に、切実に言葉を探して。迷子の子どもみたいで、胸が締め付けられる。ゲオルゲも、きっと君を待っていたんだと思うよ。そうだよね、ゲオ?

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2018-07-29 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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自由と解放~『ゴッズ・オウン・カントリー』#2

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 (過去記事) God's Own Country
         ゴッズ・オウン・カントリー

 この映画を何日か観ないと落ち着かず、もう何度観ただろう。そして毎回、終盤は 「ジョニー、頑張って!!」 という気持ちになり、涙、涙で観終わる。エンディングに使われたパトリック・ウルフの 「The Days」 が頭を離れない。スローでメロウな曲調と、まるでこの映画のために書き下ろしたような歌詞。本当に素晴らしい作品だと思う。

 日本でも一般公開してほしい。しかしただそう願って、手をこまねいているだけではダメだと思った。一般人でも、SNSで自由に意見表明することができるこの時代。インターネットという窓は、全世界に開かれているのだ! 何か行動しなければ・・・。そこでいくつかの配給会社のHPに 「ご要望」 を送ることにした。

 この映画の凄いところ、全く新しいこの時代の映画だと感心させられるのは、物語のどこにも同性愛に対するフォビアがないこと。主人公のふたり、ジョニーとゲオルゲに同性愛者であることに対する屈託は全くないし、父も祖母も、ジョニーの恋心を極当たり前の感情として受け止めている(アレを発見して、黙ってトイレに流すおばあちゃん・・・さすがに詰まるよ! と思ったが)。私も、この映画をLoveStoryとして、何の違和感も持たずに観ている。主人公ふたりの会話の中には 「結婚」 という言葉も出てきて、同性婚が法的に認められた英国の、2010年代の映画であることを実感する。同時に 「よそ者」 に対する差別はあからさまに描かれ、現代の排他的な世相を表してもいる。

 反抗期の中学生並みに尖りまくっていたジョニー。おばあちゃんが(山へ行くのに)用意してくれた上着と手袋を放り投げる様は、気になる子の前でイキがる小学生のよう。そんな彼が恋をして、その幼さを残したまま柔和な顔つきに変わってゆく過程は、何度観ても感動しかない。頑なにキスを拒んでいたのに、おばあちゃんを追い出してゲオルゲの首に自ら抱きつき、キスをするジョニーはかわい過ぎて愛おしくて泣きたくなる。役者って、本当にすごい! 役の感情を生きて、それを過不足なく表現して、観る者を感動させるのだから。

 返事を下さった配給会社の方々、ありがとうございました。公開されるかどうかはまだわからないけれど、改めてお願いしたい。ゲオルゲがジョニーに見せてあげた、あの丘の上の風景を大きなスクリーンで観たいのです。彼らが聴いた風の歌を、私も聴いてみたいのです。自分が住む母が捨てた土地を、ジョニーはどうしても肯定的に捉える事ができなかったのだと思う。しかしあの朝、そこは美しく祝福された場所であると理解し、彼は自らを解放した。そして改めて、あの土地で生きることを選択したのだと思う。これもひとつの 「自由と解放」 の物語なのだ。

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2018-07-28 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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ガンちゃん。。。(物言えば唇寒し)

 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』 (以下GOTG)シリーズの監督・脚本を手掛けていたジェームズ・ガンが、ディズニーから電撃的に解雇された。

 ネットを駆け巡ったこのニュースに、私も呆然。そしてその原因が、彼が10年以上前にTwitterに投稿した 「不適切な」 ツイートと知り、なんとも言えない気分になった。

 正直、私はジェームズ・ガンと 「気が合う」 とすら思っていた。GOTGの一作目、ファーストシーンで流れるのは10ccの 「I’m not in love」。もうそれだけで十分過ぎる。フットルースネタに大笑いし、文句なしに楽しい “awesome” なあの映画が大好きだった。そしてVol.2では、ELOの 「Mr.BlueSky」 に乗ってベイビー・グルートが踊りまくるファーストシークエンスに 「最高! サイコーーー!!」 と叫び出さんばかりだった。Vol.3も脚本は完成したと聞いていたのに・・・。スターロード!! 

 ジェームズ・ガンが監督しないガーディアンズが、今は想像できない。しかし、きっと何事もなかったようにそれは別の監督で撮られ、何事もなかったように公開され、そして結局、何事もなかったように私も観るのだろう。またそれが悲しくもある。

 彼がしたことは許されることではないのだろうし、許すべきではないのかもしれない。彼は自らの過ちを認め、謝罪し、罰(解雇)を受け入れると表明した。潔く、この日が来ることを予期していたかのように。ファンが解雇撤回を求めて署名活動を始めたようだけれど、今は署名する気にはなれない。今はただただ、残念で堪らない。

 結局、良かれ悪しかれ、自分のしたことは必ず自分に返って来る、ということなのだろうか。因果応報。クリプラやゾーイ・サルダナのツイートを読んで、ちょっとだけ泣いてしまった。

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テーマ : 映画監督
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2018-07-24 : 映画雑談 : コメント : 2 :
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みみこさんと、SNSのことなど。

 ブログ ちょっとお話 のみみこさんとお会いした。

 みみこさんが大阪に来られたので、「お茶でもどうですか?」 とお誘いしたのだった。心斎橋大丸で待ち合わせて、暑いし時間は無いしでそのまま大丸内のカフェへ。私が仕事&家族の都合であまり長い時間は取れなかったのだが、とても楽しいひとときだった。

 みみこさんは私より長くブログをされていて、「憧れのお嬢様」 という印象だったのだが、会ってみると 「おっとり」 した感じはしなかった。(当たり前だが)とてもしっかりとした大人の女性でありました。

 子の学校の話やもちろん映画の話をし、話題は自然とブログやSNSのことに。そうそう、みみこさん、長年ブログをされているけれども所謂オフで会うのは私が初めてなんだそう。光栄だわ~。

 「オフで会うきっかけというか、見極めってどうしているの?」 と尋ねられた。

 時間が無くてあまり深い話はできなかったのだけれど、結局ネットも人間関係だと私は思っています、と話した。文章やブログの作法に、結局はその人というものが現れるのではないかと思っている、と。だから、私は10年以上お付き合いが続いているブロガーさんに会うことに躊躇はあまりない。今回みみこさんと会うことにも、全く不安はなかったです、と。

 ブログを休止したり、閉鎖したりする人も多いよね、という話も。ただ単に飽きたり、他のSNSに移行した人も多いとは思う。でも、ブログ内の人間関係に疲れて、一新したいと思って何も告げずに他のブログを開設した人も少なからずいるのではないか、と私は思っている。長くやってると、いろいろありますよね。。。

 実際、偶然そういう人のブログを 「発見」 したことも何回かある。お久しぶりでうれしくなって思わずコメントしたら、その後その方がなんとコメント欄を閉じてしまったこともある(空気が読めなくてすみません)。
それ以来、そういうブログを見つけても 「そっ閉じ」 する私なのである。反省。

 日常がストレスフルで、ブログやSNSに逃避しているところもあるのに、そこでまた交流し過ぎて気を遣うのは疲れますよね、という話もした。12年以上も続けているのに、なかなか 「ブログ道」 を極められない私(たち)。でも、そこがまた楽しく、続けられている所以のような気もする。

 みみこさん、先日はありがとうございました。次は是非映画ご一緒しましょうね!

みみこさんと

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2018-07-23 : 徒然 : コメント : 2 :
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Fから始まる~『ゴッズ・オウン・カントリー』

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 GOD’S OWN COUNTRY


 英国・ヨークシャー。家族経営の小さな農場を営むジョニー(ジョシュ・オコナー)は、病身の父(イアン・ハート)と祖母(ジェマ・ジョーンズ)との三人暮らし。行き場のない空虚な毎日を半ば自暴自棄に過ごす彼の元に、ルーマニア移民の季節労働者・ゲオルゲ(アレック・セカレアヌ)がやってくる。

 本作は2017年に各国で公開され、絶賛を浴びたインディペンデント映画。2018年7月13日に、第27回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で日本初上映されたけれど、公開は未だ決まっていない。「英国版ブロークバック・マウンテン」 なんて評判を聞いたら、観ないでいられようか? US版BD、英語字幕にて鑑賞。初めて円盤を未見購入してしまった。少し前に 『君の名前で僕を呼んで』 のUS版BDを購入していたので、海外版の円盤を買うことに抵抗はなかった。

 「人は変わることができる」。どんな人間でも、やさしさで包み、傷を癒してくれる誰かに出逢うことによって変わることができる。そんな希望を強く強く感じさせてくれる作品だった。監督と主演の二人によると本作は 「Brexitに関する物語」 らしいのだけれど、それは傑作と呼ばれる映画が図らずとも時代性を帯びるということであり、歴史の文脈の中で後付けに定義されたレトリックに過ぎないだろう。

 「ウィンストン・チャーチル没後50年」 とテレビで語られる場面があるので、時代設定は2015年頃。空っぽの目をして、人生に向き合うことを恐れていたジョニー。前後不覚になるまで痛飲し、吐き気とともに目覚め、行きずりの f*ck(それはセックスですらない)で欲望を紛らわせていた彼の変化を、ジョシュ・オコナーが大胆かつ繊細な表情演技で見せてくれる。(彼は本当に凄いことを成し遂げていると思う。これ一作で大ファンになりました)

 どうしようもなく鬱屈したジョニーだけれど、彼は本質的には悪い人間ではない(そもそも、本質的に悪い人間、生まれつき悪い人間などいるのだろうか?)。それは、ジョニーが酪農仕事をする最初のシーン、妊娠した牛の背を撫でる彼の手の動きを見ればわかる。そして彼の孤独は、家を出た母に起因していることも。ゲオルゲに母を語るジョニーは、(世の男性のほとんどがそうであるように)母を責めない。「母さんはあんまり幸せじゃなかった、よく憶えてないけど」 と。

 そんなジョニーの孤独を感じ取り、傷を癒し、心を溶かしてゆくゲオルゲ。彼がまとう素朴なのにどこか謎めいた雰囲気、言葉少なな代わりに雄弁に語る瞳、弱きものたちに触れるその手の、やさしく繊細な動き。ジョニー同様、それらに私も痺れまくった。テーブルに花を飾り、パスタの味を調える彼の仕草の一つひとつが尊過ぎる! あまりにも完璧に素敵な人なので、「ルーマニアに残してきた妻子がいる設定だったらどうしよう」 と心配になるほどだった。

 彼らが最初に身体を交わす場面は暴力的なまでに強烈で、まさに 「f*ck」 ではあるが、それは絶対に必要な描写であったのだと、この映画を最後まで観れば納得する。身体を貪ることしか知らないジョニーに、ゲオルゲは互いを慈しむこと、触れ合うことの意味を教える。言葉ではなく眼差しと指の動きで導くその行為はまさしく 「makeLoveメイクラブ」 であり、欲望のままに相手を組み伏せる行為とは対極にある、崇高で美しいシーンとして記憶に残るのだ。

 ジョニーが変わることで、そのやさしさは頑なだった父や祖母にも伝染する。主演ふたりはもちろんだが、父イアン・ハートと祖母ジェマ・ジョーンズの演技がまた素晴らしい! そして子羊が、子羊が・・・。あり得ないほどの可愛さと名演技で、私を腑抜けにする。

 風の音。二人きりの山で羊の世話をする青年。荒涼とした寂しく美しい風景。じゃれあう二人を遠くから眺める人物。焚き火。水浴びと水遊び。そしてシャツ、ではなくてセーター。まさに 『ブロークバック・マウンテン』 感満載であり、『ブエノスアイレス』 の残像も感じられる。二人が最後に交わすセリフはFワードでありながら伏線を回収し、更に感動を呼ぶという離れ業であり、2018年の№1キラーセンテンスと思われたcall me by your name. にも匹敵する。初監督・初脚本のフランシス・リー、恐るべし、なのだ(ちなみにあのセリフが日本語字幕でどう訳されていたのか、とても興味がある)。

 作り手が描きたいビジョンを明確に持ち、優れた俳優と優れた脚本でぶれない映画作りをすれば、たとえ低予算でも傑作になり得るのだと思う。この映画にはフランス文学もギリシア哲学も、ピアノもアプリコットもまばゆい夏の陽光もない。そこにあるのはただ切実な生活の厳しさと、美しいが過酷な労働が待つ大地だけ。しかしだからこそ、雲間から差すただ一筋の光が、ふたりの貧しき羊飼いへの祝福のように輝くのだ。『GOD’S OWN COUNTRY』 = 「神の恵みの土地」。この恋愛映画の極北と呼ぶべき作品が、日本で劇場公開されないことが何とももどかしく、歯がゆい気持ちでいっぱいになる。

 『ブロークバック・マウンテン』 日本公開から12年。大きなスクリーンで、日本語字幕で、サラウンドな音響で、ヨークシャーの光と風を感じてみたい。

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 (過去記事) God's Own Country
 
( 『ゴッズ・オウン・カントリー』 監督・脚本:フランシス・リー/
                         主演:ジョシュ・オコナー、アレック・セカレアヌ/2017・UK)

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2018-07-17 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 : トラックバック : 0
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2018(上半期) 真紅のthinkingdays Best 10 of the movie

 早くも今年の前半が終わってしまいました。平成最後の夏ですよみなさん!
というわけで今年上半期に観た映画のベストを。

 ①君の名前で僕を呼んで
 ②女は二度決断する
 ③スリー・ビルボード
 ④ファントム・スレッド
 ⑤レディ・バード
 ⑥勝手にふるえてろ
 ⑦リメンバー・ミー
 ⑧シェイプ・オブ・ウォーター
 ⑨彼の見つめる先に
 ⑩30年後の同窓会


 次点 犬ヶ島(ウェスごめん)
 ※2018年上半期劇場鑑賞71本より

 しかし、①は6回観ているので、実際は…

 ①君の名前で僕を呼んで
 ②君の名前で僕を呼んで
 ③君の名前で僕を呼んで
 ④君の名前で僕を呼んで
 ⑤君の名前で僕を呼んで
 ⑥君の名前で僕を呼んで

 ⑦女は二度決断する
 ⑧スリー・ビルボード
 ⑨ファントム・スレッド
 ⑩レディ・バード


 次点 勝手にふるえてろ(ヨシカごめん)
 ※2018年上半期劇場鑑賞66本より

 という感じでしょうか(笑)。

 今年の一本目は 『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』、上半期最後に観たのが 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ ストーリー』 でした。SWに始まりSWで終わる、フォースとともにあった半年間でした。
あ、ハン・ソロ面白いですよ~。まぁ画面が暗いというのは間違いないですが、ロン・ハワードが手堅くまとめてると思います。キャストもいいし。みなさん観てください!

 というわけで、下半期もたくさん映画観ましょう!

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2018-07-01 : 年間ベスト : コメント : 3 :
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YOU GUYS ARE KILLING ME. ~張震 Timmy&Armie

張震1

 こちらCartierアンバサダーに就任した張震くん。インスタにはカッコイイ彼のお写真がいっぱい♪ 動画で共演しているのは 『ALONE/アローン』 でアーミーの相手役だった女優さん=アナベル・ウォーリスではないの!

BBポスター

 ティミーの新作 『Beautiful Boy』 のポスター。これがインスタにアップされたらXドランがソッコーで “already obsessed.” ってコメントしてて笑った。 エイミー・ライアンにも期待。アメリカでは10月公開、日本でも来年公開が決定してるみたいですよ♪

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 そしてアーミーの新作 『Sorry to Bother You』 こちらはアメリカで来月公開。アーミーは主演ではないけど、これ日本に来るかな? 観た~い!

テーマ : 好きな俳優
ジャンル : 映画

2018-06-27 : YOU GUYS ARE KILLING ME : コメント : 0 :
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And this is given once only.~『君の名前で僕を呼んで』#10

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 この画像を見つけたとき、原作の最後の一行に魅入られた人がこの世界のどこかにいるんだ、私以外に--。とわかってとてもうれしかった。もちろん映画化されるほどの小説だから、全世界的にポピュラーであることは重々、わかっているのだけれど・・・。映画を観たり、小説を読むことは、私にとって極個人的な体験だから。

 君の名前で僕を呼んで の原作は、本当にキラーセンテンス、キラーワードのオンパレードで、私を殺しに来る。特にラストの一文は、尋常でないレベルで胸に迫る。読み終わって号泣した後、必ずまた最初から読み返したくなる。そして繰り返し読むと、エリオよりも先にオリヴァーが想いの謎かけをしていたのだとわかってさらに感動する。何一つ忘れないふたり。また涙が溢れる。永遠にこの沼から出られない!

 今日は映画のエリオについて。初見、彼の印象は美しさよりもまず 「小動物感」 だった。くるくる動いて、すばしっこくて甘え上手で。オリヴァーでなくとも、愛でずにはいられない感じ? よしよし、って。湖の探索について行ったエリオのウキウキ顔が、私は一番好きかもしれない。前夜、ダンスフロア中の視線を一身に集めていたオリヴァーを、今は自分だけが見つめている。ティモシー・シャラメの初々しい表情は、初めての(そして生涯一度の)恋に落ちた少年の多幸感が溢れ出していて本当に素晴らしい。まだ何も始まっていない、まだ誰も知らないが故の無邪気な高揚。そしてその想いが自らの内から外側へと向けられた瞬間から、彼の表情は憂いを帯び始める。しかしエリオよ、オリヴァーを見送り、一人では帰れないほど憔悴して迎えの車の中でも大泣きしているにも関わらず、「ママは知ってる?」 はないだろう(笑)。マルシアとの会話の間も、彼の長過ぎる睫毛は涙に濡れていたのに。寛容で慈愛に満ちた両親のもと、これ以上ないほど文化的な家庭で何不自由なく育ったエリオ。そしてオリヴァーと出逢い、彼らは星を見つけた。世界一幸運な少年--オリヴァーはやっぱり、何でもわかっている。

 P.S. 実は私自身が一人息子の母なので、エリオに対する観方に甘いところがあるのは否めないと思う。うちのエリオ、行儀が悪くてすみません。アネラに代わってお詫びします・・・。

 続く

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2018-06-17 : CALL ME BY YOUR NAME : コメント : 4 :
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『フリー・ファイヤー』

フリー・ファイヤー

 ※ネタバレ

 アーミー・ハマー出演作と知り、WOWOWにて録画鑑賞。大阪ではステシネでしか上映していなかったと思う。わざわざ行くのもね~、と見送ったのだった。オープニングから豪華キャスト (キリアン・マーフィ、サム・ライリー、ジャック・レイナー、シャールト・コプリー、ノア・テイラー!) が出るわ出るわ。劇場鑑賞すればよかったな~、と思いながら観ていると銃撃戦が始まり、それが長過ぎてさすがに飽きる。そしてそのまま終わる(笑)。アーミーはナルシストのギャングにハマっていて、曲者揃いのキャストの中でも存在感があった。「ジョン・デンバーの面白い話」 聞きたかった・・・。しかしキリアンの声っていいわぁ~。いつも惚れ惚れ。

 監督は 『ハイ・ライズ』 の人。あの映画も私的には今ひとつだったな・・・。

 ( 『フリー・ファイヤー』 監督・共同脚本:ベン・ウィートリー/2016・UK/
      主演:キリアン・マーフィ、アーミー・ハマー、ブリー・ラーソン)

テーマ : WOWOW/スカパーで観た映画の感想
ジャンル : 映画

2018-06-14 : DVD/WOWOW : コメント : 2 : トラックバック : 1
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Love is blind (或いはデクノボーと呼ばれて)

 しばらく休眠していたブログを書き始めると、改めて 「ブログっていいな~」 と思う。好きなことを好きなように、いくらでも書ける。特に今は昔と比べて人が少ないので、変な(ヘイトな)コメントやTBが来ることもなく、気楽でよい。

 そしてこれは前々からなのだけど、ネットで記事を探していると(所謂ネットサーフィンというやつ。死語?)、時々 「凄い...」 と思うブログとエンカすることがある。知識の量、文章の巧みさ、目の付けどころ、貼り付けてある画像、全てが 「何者?」 レベル。私は 「センスがいい」 という言葉を使うことに常々慎重でありたいと思ってはいるのだが、まさに 「センスの塊」 みたいなブログ。そして今日また、そんなブログを見つけてしまった。

 そこには当然(偶然?)、君の名前で僕を呼んで の感想もそれは見事な文章で綴られており、「御意!」 なのだけれどただ一点、アーミー・ハマーがデクノボーでこの映画の質を落としている、と書かれてあった(涙)。ティモシー・シャラメの素晴らしい表現力と比べて、アーミーは感性も演技力もない、と。ガーーーーン。

 そうなのかもしれない。確かに、オリヴァーがパールマン邸に到着した直後、あくびをしながら階段を上がる姿は大根役者のそれであった(と私でさえ思う)。北イタリアの風景と空気に、アーミーは最後まで馴染まない異端の 「アメリカーノ」 であったとも思う。しかし、しかし。。私はそんな彼が愛おしい。ルカ・グァダニーノのラブコールに応え、迷いながらもオファーを受けてくれたアーミーにありがとうと言いたい。ティミーと仲良くなって、SNSでいちゃこらしているアーミーが大好きだ。誰が何と言おうと、オリヴァーはアーミー・ハマーが演じてよかったのだ。恋は盲目、なのである。

テーマ : 好きな俳優
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2018-06-13 : CALL ME BY YOUR NAME : コメント : 0 :
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アンドリュー・ガーフィールドおめでとう!~Tony Awards 2018

アンドリュー・ガーフィールド

 本日行われた第72回トニー賞授賞式で、アンドリュー・ガーフィールドが演劇主演男優賞を受賞したそう! アンドリュー、おめでとう~\(^o^)/

 受賞作は 『エンジェルス・イン・アメリカ』。この作品を演じるに当り、発言が炎上して猛バッシングを受けたんですよね。アンドリュー、ここへ辿り着くまで、並大抵の苦労ではなかったと思います。彼のことはデビュー作 大いなる陰謀 から観ていますが、毎回真面目で純粋な人、という印象を受ける。スパイダーマンの降板やエマ・ストーンとの 「別れても好きな人」 状態とか、決して順風満帆なキャリアではないかもしれない。でも、今回の受賞で彼の才能が名実ともに認められたと思う。本当におめでとう、これからもひっそりと応援しているからね。

 ちなみに レディ・バード のお母さん、ローリー・メトカーフも演劇助演女優賞を受賞したそうです。彼女のことはレディバードで初めて知ったのだけど、本当に巧い女優さんですよね。オスカーは残念だったけど、よかったよかった^^

テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

2018-06-11 : 舞台・ライブ : コメント : 0 :
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『レディ・バード』

レディ・バード






 LADY BIRD


 2002年、カリフォルニア州サクラメント。カトリック系の私立高校に通う17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)は、「文化のない」 この田舎町と、平凡な自分の名前が大嫌い。自らを 「レディ・バード」 と名乗り、東部への大学進学を夢見ていた。

 楽しみで待ち遠しくて待ち切れなくて、初日に鑑賞。音楽がジョン・ブライオンってすごく久しぶりな気がする。オールタイムマイベスト作のひとつ エターナル・サンシャイン のスコアが大好きなので、スタッフロールに彼の名前を見つけてうれしかった。この原題のレディバードって、てんとう虫の事ではないのですね。シアーシャ・ローナン、赤毛も似合うけど緑色が本当に似合う。大傑作 『ブルックリン』 以来、私の御贔屓女優さん。

 正直、この映画を観て一番強く思ったのは、、、「お金がない、って本当に嫌だな」 でした(夢がなくってすみません)。子どもに対して年がら年中 「うちにはお金がないの」 って言うのって、気が滅入る。しかしクリスティンの母(ローリー・メトカーフ)って医療専門職(ナース? ドクター? セラピスト?)なのに、そんなにお給料安いのだろうか。それでも、お金が無い? それが何? 奨学金とアルバイトでなんとかする、アタシは都会へ行くの!! と絶対にぶれないクリスティンのど根性が凄い。天晴れ。

 オープニング、礼拝に臨む大勢の生徒たちの中でもひときわ光り輝くティモシー・シャラメにときめくも、彼が扮するカイルはヤな奴だった。美し過ぎるティミーが、またそれにドハマリしていた(笑)。そして今作ばかりはルーカス・ヘッジズくんに一票だった。クリスティンと抱き合って泣くシーン、彼の最後の舞台のシーンで涙腺がゆるんで、それからの展開はもう、涙滂沱ですよ・・・。親友との諍いと和解、母との冷戦。父が架けてくれた橋。ニューヨーク。ブルース!!

 これは遂にメジャー・ヒッターとなったグレタ・ガーウィグの、故郷へのラブレターですね。故郷ってもちろんサクラメントのことだけど、両親、特に母親のことでもある。愛情があり過ぎて、反発し合う似た者母娘。ありがとうが言えない、素直になれないふたり。それを見守る父親がまた、、、深過ぎる。

 しかしこういう小品と呼ぶべき映画が評価されて、オスカー候補にもなるってなかなか、アカデミー協会も捨てたもんじゃないですね。刺さる人には刺さる、そうでない人、例えば、ずーっと地元にいて実家住みの人とかには、普通の映画かもしれない。私? 刺さり過ぎて瀕死でした。

レディ・バード2

↑ ↑ ↑ 悪いほうのティミー、カイルくん  ↑ ↑ ↑ 

 (おまけ) クリスティンの初体験のシーン。彼女がブラジャー外してないのが興醒めだったのですが、あれはレイティングの関係なのかも、と思いました。相手に言われたことは全てそのまま信じるクリスティンが、自分とダブって痛かったです(泣)。

 ( 『レディ・バード』 監督・脚本:グレタ・ガーウィグ/
         主演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ/2017・USA)

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2018-06-10 : 映画 : コメント : 2 : トラックバック : 1
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God's Own Country

           gods own country


  公式サイト

 2017年に各国で公開された、ヨークシャーが舞台の英国映画です。著名な俳優は出ていない低予算のインディペンデント映画のようですが、Rottentomatoes ではなんと 99%Fresh の高評価。サンダンスなど映画祭でもいくつか受賞しています。
 これもう、私、絶対、好きだと思う! とずっと気になり、観たいなぁと思っていたのですが・・・。北イタリアの沼にハマってすっかり忘れていました。 が。

 なんと、第27回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 にて上映が決定したそうです。来月ですね♪ 観に行ける方は私の代わりに是非観て、盛り上げて来てください! その勢いで日本公開も決まるといいなぁ~。てか絶対全国公開してくれ!

 まぁ、私はどんな手を使ってでも観るつもりですが(決意)。

テーマ : 気になる映画
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2018-06-07 : GOD’S OWN COUNTRY : コメント : 0 :
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最高かよ! 真紅的第90回アカデミー賞

2017アカデミー賞

 『レディ・バード』 をもって今年のアカデミー作品賞ノミネート作コンプリート。せっかくなので個人的ベストを。
まぁ、お遊びなのであまり深く考えずに、自分の 「好き」 を基準に。

真紅的第90回アカデミー賞 作品賞ノミニー好きな順

 ①君の名前で僕を呼んで
 ②スリー・ビルボード
 ③ファントム・スレッド
 ④レディ・バード
 ⑤ダンケルク
 ⑥シェイプ・オブ・ウォーター
 ⑦ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
 ⑧ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
 ⑨ゲット・アウト


 主演男優賞: ティモシー・シャラメ 
 文句なし。

 主演女優賞: サリー・ホーキンス 
 フランシス姐さんも凄かったけど、サリー・ホーキンスが一世一代のハマり役と思ったので。

 助演男優賞: ウィレム・デフォー 
 ボビーーー!! この部門が一番納得いかないなぁ。リチャード・ジェンキンスがノミニーだけど、そこはアーミー・ハマーでしょう。

 助演女優賞: ローリー・メトカーフ 
 ここが一番の激戦区! アリソン・ジャネイ、怖過ぎた。授賞式でまさかのメリル様とドレス被りも受賞! おめでとう!! しかしミリ単位の表情演技でメゾン・ウッドコックを仕切るレスリー・マンヴィルにも痺れた。それでも、レディ・バードのお母さんに!

 監督賞: クリストファー・ノーラン 
 ギレルモさんの受賞は本当にめでたいと思うけれど、ノーランでしょ。

 外国語映画賞: 今年は受賞作の 『ナチュラル・ウーマン』 しか観れてません。残念!


◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ 

 ↑画像は授賞式後のトムハのインスタ。ゲイリー・オールドマンの授賞スピーチ素晴らしかったですよね。 ”she is 99 years young!” って力強く。ケトルオンってところがもう、エゲレス人や~~って萌えまくり(笑)。トムハもゲイリーも、最高かよ!!

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2018-06-05 : 映画雑談 : コメント : 2 :
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because he's more myself than I am. ~『君の名前で僕を呼んで』#9

君の名前で僕を呼んで3

 先のエントリで、映画のいいところは時を経て観返すことができること、と書いた。けれど、好きな映画は時を経なくても繰り返し映画館に観に行くことができる(どこかで上映してくれている限りは)。何度も何度でも観たい、それを登場人物たちに 「会いに行く」 と表現することもある。

 『君の名前で僕を呼んで』 が大阪ミナミに帰って来た。アメリカ村(シネマート心斎橋)まで、エリオとオリヴァーに会いに行く。5回目。実は前日に レディ・バード を観たばかり。髪型のせいもあって、ティミーがすごく幼く見える。カイル(レディ・バードの役名)とエリオは年齢設定が同じなのに、全くの別人。ただし、美し過ぎることだけは同じ。長過ぎる睫毛にクラクラする。

 オリヴァーは3度振り返る。一度目はエリオの 「秘密の場所」 へ向かう時。二度目は二人で滝へ向かう前に。最後は、ミラノへ向かう列車の汽笛を聞いた時。そして三度目だけ、振り返る方向が違う。

 アメリカではストレートの男性として生きているオリヴァーは、北イタリアのどこかでほんの数週間、「本当の自分」 として生きた。更にエリオと二人だけで過ごしたベルガモでの数日間が、最も自分らしくいられた時間だっただろう。彼は自分の属する世界を振り返り、その世界に戻っていく。駅に一人取り残されたエリオの表情を、私たちは見ることができない。それはオリヴァーだけが知っている。オリヴァーだけが知るべきだから。

 “Call me by your name(and I'll call you by mine.)” 「君の名前で僕を呼んで(僕の名前で君を呼ぶ)」。これは原作でエリオが思い浮かべる “because he's more myself than I am.” 「彼は私以上に私そのものだから」--エミリー・ブロンテ 『嵐が丘』 より--という意味なのだと思う。互いの中に自分を見い出すこと。そこには本来、苦悩や呪縛などなく、自由と解放があるはず。オリヴァーは24歳で、それなりに経験もあっただろう。しかし、彼はエリオの中に初めて自分を見たのではないか? それは多分、生涯でたった一度。

 最後の電話を切った後、暖炉の前でエリオが涙を流したように、オリヴァーも泣いていたのではないか? そう私は思うのです。葛藤は、彼の中に確実にある。声高に語られないだけで。

 続く

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2018-06-03 : CALL ME BY YOUR NAME : コメント : 0 :
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『海よりもまだ深く』

海よりもまだ深く2

 15年前に文学賞を受賞したきり、鳴かず飛ばずの小説家・篠田良多(阿部寛)は、妻・響子(真木よう子)にも愛想を尽かされ離婚。興信所で探偵をしながら糊口をしのいでいるものの、ギャンブル依存のために月一回の一人息子との面会日にも金策に苦心する有様。団地で独り暮らす老いた母(樹木希林)のもとへ、金の無心に赴くのだった。

 歩いても歩いても の姉妹編のような、是枝裕和監督の新作。樹木希林と阿部寛が演じる、親子の会話は絶品。いつまでたっても息子がかわいい母と、その母に甘えて自立できない男の哀しさ、情けなさが際立つ。「なりたかったものになれた?」 ほとんどの大人にとって、それは残酷な問いかけだろう。あの頃の未来に、僕らは立っているのかな・・・。

 しかし、泣く気満々だったにも関わらず、私は泣けなかった。樹木希林が放つ名言の数々に心揺さぶられ、阿部寛ってこんなに演技巧者だったのかと驚きつつも、是枝監督の目線の 「偏り」 が気に障って仕方なかった。

 正直、私はこの作品に感動し切れなかった。あまりにも身勝手で大人になり切れない良多に対して、女たち(特に母、元妻)がやさし過ぎる。虎の子の給料を競輪でスって、養育費を滞納して姉(小林聡美)の職場まで押し掛けて借金を頼む。最低。シングルマザーの響子にとって、経済は死活問題のはず。なのに新しい恋人(年収1500万!)に元夫の小説をdisられ、伏し目がちになるなんて、、、いやそれ良多の願望でしょう。

 元夫の実家に泊って 「お母さん」 を連発する響子、、、あり得ませんから。それにお母さん、いくら息子が心配だからって、元嫁をハメちゃいけません。自分の息子や夫や弟がこんなだったら、めっちゃ嫌な気分になると思う、私だったら。そんなやさしくなれませんって。ていうかね、シングルで子ども育てていたら、毎日がもう、必死なんじゃない? 今日明日の生活が大事で、「自分はなりたいものになれたのか?」 なんて、自問自答している暇はないですよ。いっそ良多が息子を引き取って、育てればいいのに。
  
 良多=監督の、母や妻や姉にはこうあって欲しい、いつまでも夢を追いかける自分をやさしく見守って欲しい、っていう甘えが根底にあって、ちょっと勘弁、だったなぁ。結局、この映画ってファンタジーなんだな、と思いました。ただ・・・。

 「寝たきりと、ポックリ逝って生きたまま夢に出て来る、どっちがいい?」
 「・・・寝たきり」

 この会話だけは、ほんとグッときたなぁ。どんな姿でも、生きていて欲しい。母に対するその感情には、私も共感します。

 ( 『海よりもまだ深く』 監督・原案・脚本・編集:是枝裕和/
        主演:阿部寛、真木よう子、池松壮亮、樹木希林/2016・日本)

テーマ : 映画館で観た映画
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2018-06-02 : 映画 : コメント : 2 : トラックバック : 1
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『スモーク』

スモーク




 SMOKE


 映画(DVD)のいいところは、時間を経て観返すことができること。新しい発見や解釈が出来て、より深く作品を知ることができる。そういう時、歳をとるのも悪くないと思える。

 原作は 『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』。原作者であるポール・オースターが脚本も書いているとは知らなかった。彼が投影されているのであろうスランプ中の作家はウィリアム・ハート。オーギーはもちろんハーヴェイ・カイテル。ウェイン・ワンによるこの名作、一体何年ぶりの再見だろう? デジタルリマスター版がリバイバル公開され、WOWOWで放映してくれたのだ。ミラマックス、ワインスタインの名前に、ちょっとギョッとする。Time goes by.

 これは自分の身体の一部(文字通りの意味でも、精神的な意味でも)を無くしてしまった人々の物語だった。何かが欠けている、それでも生きている人々の。そう、私たちみんなの物語。正直、クリスマスストーリーの部分しか記憶には残っていなかったから、アフリカ系の少年のエピソードなどすっかり忘れていた。自分の記憶って本当に当てにならない。

 しかし、ハーヴェイ・カイテルよ・・・。オーギーと盲目の老女とのふたりきりのクリスマスは、映像として記憶に残っていた。まさかそれが、彼の語りによってもたらされていたとは・・・! 14年前の出来事を語るハーヴェイ・カイテルの演技は、演技を超えて私を物語へと引き込んでいく。小汚いカフェのテーブルに座って、身振りを交えながら掠れた声で語るオーギーから、目が離せない。これは演技なのか? そうだとしたら神! 神演技と言うしかない。くわえ煙草のウィリアム・ハートも素敵だけれど、ハーヴェイ・カイテルの凄さを改めて感じたひと時だった。

スモーク2

スモーク3

スモーク4

スモーク5

 ( 『スモーク』 監督:ウェイン・ワン
         /主演:ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート/1995・独、日本、米)

テーマ : WOWOW/スカパーで観た映画の感想
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2018-05-29 : DVD/WOWOW : コメント : 0 : トラックバック : 0
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『マイ・マザー』

マイ・マザー




 J'AI TUE MA MERE

 I KILLED MY MOTHER



 16歳の高校生ユベール(グザヴィエ・ドラン)は、母(アンヌ・ドルヴァル)と二人暮らし。多感な彼は母の挙動のいちいちに苛立ちを覚え反発し、勝気な母もまたユベールにキツく当たるのだった。

  「母親は息子の友だちにはなれない」。 ジャン・コクトー

 X・ドランのドキュメンタリー 『グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル』 と、カンヌでグランプリを受賞した 『たかが世界の終わり』 をWOWOWで観た。そういえば、彼のデビュー作をまだ観ていなかったことに気づく。会員証の期限が2013年のままのTSUTAYAへ。旧作レンタルって今、100円なんですね。思わずWOWOWを解約してしまった(笑)。

 この映画、原題は 「僕は母を殺した」。自分、よく今まで観なかったなぁ、観てなくてよかった、今観てよかったと心底思った。子育て現在進行形の自分が観るには、辛過ぎる作品だった。

 『タイタニック』 への愛はドキュメンタリーでX・ドラン自らが語っているし、ほぼ彼自身が投影された作品なのだろう。十代でこれほどの作品を作り上げたX・ドラン。正に 「規格外の天才」。後の Mommy/マミー といい、家族、特に母親との関係は彼にとって切実かつ最重要なテーマなのだろう。セクシャリティを含め自分自身をさらけ出し、決して逃げない彼を尊敬する。

 「僕は息子に向いてない」 「母親に向いてない母親もいるわ」。ユベールの母が 「15年間、毎日5時半に起きて必死で働いてきたわ!」 と絶叫する場面がある。そのことを 「当たり前」 だと感じるか、犠牲を払ったと感じるかの違いなのだと思う。「僕が今日、死んだらどうする?」 「私も明日死ぬわ」。それは疑いようもない本心なのだけれど、どうして母と息子の愛はいつも、互い違いにボタンを掛け違えるのだろう?

マイ・マザー2

 ( 『マイ・マザー』 監督・製作・脚本・主演:グザヴィエ・ドラン/2009・カナダ)

テーマ : DVDで見た映画
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2018-05-28 : DVD/WOWOW : コメント : 2 : トラックバック : 0
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