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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅   ★劇場鑑賞した映画はインスタにアップしています@ruby_red66

終わりの楽園~『ブラッド・ブラザーズ -天堂口-』

天堂口ポスター1 天堂口ポスター2

 中国の貧しい田舎町で、病弱な母と妹と暮らすフォン(呉彦祖ダニエル・ウー)
は、幼馴染の兄弟、カン(劉リウ・イエ)フー(楊祐寧トニー・ヤン)とともに上海
へ出稼ぎに行く。そこは、ナイトクラブが華やかな光を放つフランス租界。。

 純朴な田舎の青年が血なまぐさい黒社会に巻き込まれ、大切なものを失ってゆ
く。1930年代の上海を舞台にしたノワール。垂涎の豪華キャストに、公開時にどう
しても観に行けなくて地団駄踏んだ作品。そういえば、りうくんはこれにも出ていた
のね、と思い観てみましたら、、、アレレレレ?

天堂口2

 監督、張震くんに惚れているのでは? と思ってしまうくらい、彼が別格にカッ
コイイ!
(ファン目線ではありますが) 苦悩する眉間の皺、細い顎、ソフト帽の
下の「でこっぱち」さえ素敵。。闇の殺し屋、マークにはまってる!
 しかし、、「また張震と舒淇スー・チーか?」と思ってしまったのは私だけ? 
に女優はおらんのか
(男優は張震でいいのよ)。

 お目当てのりうくんは、ケンカっ早くて度胸があって、やたらめったら腕っ節の
強い役どころ
。う~ん、この役のりうくんは、あまり好きじゃあないなぁぁ。なんだ
か見ていて痛々しい

 1930年代の上海、という舞台設定なのに、なんだか全てが「セット」みたいで
現実味がない。照明も陰影が感じられないし、ペラペラの張りぼてみたいに見
える、全てが。そもそも、フォンとスーチェン(李小璐リー・シャオルー)が延々
とダンスを踊ってるシーンでもう、「これ、どうしよう?」って感じだった。

 モンゴルでも強烈な印象を残した孫紅雷スン・ホンレイは、マフィアのボス
として迫力十分、存在感を示していたと思う。しかし、その演技が一人だけ浮い
てしまっていたかも?しれない。いくらマフィアとはいえ、あなたたち殺し過ぎ
しょうが。。

天堂口3

 ( 『ブラッド・ブラザーズ -天堂口-』 監督・共同脚本:アレクシ・タン
      主演:呉彦祖ダニエル・ウー、張震チャン・チェン/2007・香港、台湾)

テーマ : 香港映画
ジャンル : 映画

2010-11-12 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 2
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天国に一番近い場所~『天上の恋人』

           天上の恋人

 山間の小さな村に赤いアドバルーンが降りてきた日、一人の口が利けない
少女
が、兄を探して村にやってくる。彼女の名は玉珍ユイチェン(董潔ドン・ジ
エ)
。よそ者を威嚇する男たちから彼女を救ったのは、耳が聞こえない青年
家寛チャークァン(劉リウ・イエ)
。同じ日、彼の父親は銃の暴発のため、視
力を失ってしまう。口の利けない少女は、耳の聴こえない青年と目の見えない
父親の家で、同居を始める。

 藍宇DVDに収録されているインタビューで、劉は「2002年の東京国際
映画祭以来、日本に行っていません」と語っていた。その時にプロモーション
したのは、この作品だったのですね。切り立った山々を望む絶景が印象的な、
ちょっと不思議な味わいの映画でした。

 観終わっての率直な印象は、これは赤い風船へのオマージュだな、とい
うこと(本当はアドバルーンだけど)。ラストで、家寛が想いを寄せる朱霊チュ
ーリン(陶紅タオ・ホン)
が飛んでいくところ、風船が、いつも彼らを見守ってい
るところ。監督が、あの映画をお好きなのではないかな(間違っていたらごめ
んなさい)。

 こんな山奥に、一体どうやって暮らしているの? と思うくらい、人里離れた
のある村。しかし、そこに住む人々の表情は明るく、小さな子どももアディ
ダスのシャツを着ていたりして、貧困に喘ぐような雰囲気ではない。

 舞台は、中国広西省チワン族自治区という地域らしい。地図で確認すると、
ベトナムとの国境にある亜熱帯気候で、二期作、三期作も可能という。なるほ
ど、村人たちは豊かに暮らしているわけだ。

 清楚で儚げで、それでいて芯の強さも感じさせる、董潔が絶品。若い頃の
宮沢りえちゃんに似ているかな。お目当てのりうくんは、子どものままの心で
成長したような、天真爛漫な青年の役。どうして玉珍の想いに気付かないか
な~、と気を揉んだけれど、あの奇妙なラストシーンの後、きっと彼らの第二
が始まるのでしょう。

 ( 『天上の恋人』 監督・脚本:蒋欽民ジャン・チンミン
           主演:劉リウ・イエ、董潔ドン・ジエ/2002・中国)

テーマ : 俳優・男優
ジャンル : 映画

2010-11-11 : DVD/WOWOW : コメント : 2 : トラックバック : 1
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前向き、前向き。~『イエスマン “YES”は人生のパスワード』

イエスマン



 YES MAN

 銀行の融資係として働くカール(ジム・キャリー)は、離婚の痛手からひたすら
後ろ向きな生活を送っていた。そんな彼が、何にでも「YES」と答えるセミナー
参加することになり・・・。

 コメディ・キング、ジム・キャリーの爆笑コメディ。いや~、笑った。ジム・キャ
リー大好き
なんです。彼を観ていると、いつも「捨て身」って言葉が浮かんでくる。
今回はバンジー・ジャンプまでやってくれてます。しかもヒロインが「サマー」こと
真紅的ハリウッド最旬ミューズ、ゾーイー・デシャネル! ジムったら、鼻の下伸
ばし過ぎなんですから(笑)。2010年現在、超売れっ子のブラッドリー・クーパー
も、カールの親友の弁護士役で御出演。先見の明があるキャスティングですね。
セミナーの主催者役のテレンス・スタンプも、いい味出してます。

イエスマン2

 思うに、カールはすっごく真面目な故に、融通の利かない性格なんでしょうね。
セミナー主催者との「誓約」を守って、とことん「YES」と答えまくる姿が笑える。
カールの上司で、コスプレマニアのノーム(リス・ダービー)も面白かった。いい
人なんだけどね~、あの趣味は、、笑。

 しかし、アリソン(ゾーイー・デシャネル)のかわいいこと・・・! 彼女が着てい
た、紺に赤ラインのコート、欲しいな~。私はゾーイー・デシャネルの過去の出
演作、結構観ているのですが、サマー以前は全く印象に無いんです。こんな
にかわいいコに気付かないなんて、私の目は節穴だったんだろうか。。ショック
歌手活動もしているらしいゾーイー、唄うシーンもよかった。ハリウッド・ボウル
でのジムと二人の掛け合い、最高でした♪ Can't buy me love~♪

イエスマン3

 結局、人生何事にも好奇心を持って、前向きな態度で臨めばも開けてくる、と
いうことなんですね。「魔法の言葉」って一時期(今も?)流行ったけど、口にする
言葉で運命が決まる
、ってなんとなく私も信じてるかも。言霊ね。

 ( 『イエスマン “YES”は人生のパスワード』 監督:ペイトン・リード
           主演:ジム・キャリー、ゾーイー・デシャネル/2008・米、豪)

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2010-10-22 : DVD/WOWOW : コメント : 0 : トラックバック : 22
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それは、永遠のはじめ~『ハルフウェイ』

ハルフウェイ

 秋の北海道、小樽高校三年生ヒロ(北乃きい)は、片思いしていた同級生の
シュウ(岡田将生)告白され、付き合うようになる。有頂天のヒロだったが、彼が
早稲田大学を受験すると知り、ショックを受ける。

 「東京行くのに、どうして告ったの?」

 この作品の劇場予告は何度も観ていて、その度にが出そうになるほど胸が
キュンキュンした。劇場鑑賞するチャンスはもちろんあったのだけれど、なんだか
怖気づいてしまって観に行けず。そして正直、人気脚本家・北川悦吏子氏の第一
回監督作品
、というキャッチにも、引っかかるところはあった。DVDになってもず
っと、借りる勇気もなかった。

ハルフウェイ2

 ヒロの立ち振る舞いを観ていて、「今どきの女子高校生ってこんなに幼い?」と
かなり違和感。シュウに対して「早稲田止めてよ」なんて言えることが信じられな
かった。カップルになる前はあんなにシュウのことが好きだったのに、両想い
なった途端、彼女の中では独占欲ばかりが肥大してしまったのかな。めちゃめち
ゃ可愛い女の子
なんだ、っていうのは理解できるけれど、彼女のキャラクターが、
どうしても好きにはなれなかった。

 そんなヒロに振り回されながらも、「やっぱりお前のこと好きだ」なんてサラリ
と言えてしまうシュウ。ヒロが好きなんだけど、上京するっていう夢もやっぱり
捨て難く彼の中にあり。。ああ、高校三年生。イチャツイテナイデベンキョウシロ

 怪しい書道教師(大沢たかお)の言う、「後先考えて行動する男なんて、男じゃ
ないよ」
っていうセリフ、好きだなぁ。成宮先生は、ちょっとミスキャストじゃない
ですかね(汗)。そして最後の音楽準備室でのシーン、あれは蛇足だと個人的
には思う。ホームでの別れ、暗転、salyuのエンディングテーマ。これだけで
十分、だったんじゃないだろうか。

ハルフウェイ3

 憧れの北の大地、北海道の雄大な景色が素晴らしい。このロケーションだけで
も、この映画を観る価値はあると思えるほど。やっぱり、映画館で観ればよかっ
たな。しかし、何度も繰り返し観たい映画じゃない。岡田くんは素敵だったけど。

 ( 『ハルフウェイ』 監督・脚本:北川悦吏子/主演:北乃きい、岡田将生/2009・日本)

テーマ : 気になる映画
ジャンル : 映画

2010-09-22 : DVD/WOWOW : コメント : 0 : トラックバック : 9
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人生はやり直せない~『セブンティーン・アゲイン』

セブンティーン・アゲイン

 17 AGAIN


 バスケ部の花形選手である17歳のマイク(ザック・エフロン)は、恋人スカーレ
ット
妊娠していることを知り、バスケを諦めて結婚する。20年後、出世にも家族
にも見放された37歳のマイク(マシュー・ペリー)は、ある日容姿だけが17歳当時
に戻ってしまう。

 ご存じ、ザッくんことザック・エフロン主演の青春ファンタジー若き日の決断を
悔やむさえない中年男
が、青春を生き直そうとする中で、自分にとって一番大切
なもの
を再発見する。素晴らしき哉、人生!『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
を足したような映画。あの名作のエッセンスと、今を時めくザックが主演で、面白
くない映画なわけがない! もう、これ最高に楽しかったです。冒頭はHSMのノリ
で、テンション上がるわ~♪

セブンティーン・アゲイン2

 ザックは、切ない表情や恋してる時の感情表現が本当に巧い。若者らしい溌剌
としたエネルギー
に溢れていて、アイドルの範疇にあるのだろうけれど実は地力の
ある役者さん
なんじゃないかと思う。もちろんファン目線ですが、これからもずっと
注目していきたいな。ただ、いっつも髪型がイマイチなんだよね(笑)。

 マイクの親友、ネッド(トーマス・レノン)には、もう最高に笑わせていただきまし
た。もう、どんだけ~、なオタクと大金持ちぶり。エルフ語でしゃべるわ、独特の
ファッションセンスと強引過ぎる口説き、面白過ぎ! マイクと二人で「I LOVE
YOU」
って言い合うところもよかったな~、さり気なく二人の固い友情を感じさせ
てくれて。

セブンティーン・アゲイン3

 マイクは20年間、ず~っと後悔し続けていたんだね。あの時試合を放棄していな
ければ、大学に進学していれば、自分にはもっと素晴らしい人生が待っていたに違
いないと。過去に囚われていてもいいことなんか一つもないんだけど、人間は過去
の積み重ねで今があるわけだから、過去に囚われるのはある程度自然なことだと
も思う。でも、どんなに悔やんでも、たとえ守護天使のはからいで身体だけ若くなれ
ても、人生ってやり直すことはできないんだ。時間を戻すことだけは、誰にもできな
いからね。でも、人生を見つめ直すことは誰にでもできる。気の持ちよう、心のあり
よう、って言うけど、自分や周囲を別の角度から見直すことって、人生に時々必要
なんだね。

 ( 『セブンティーン・アゲイン』 監督:バー・スティアーズ
      主演:ザック・エフロン、マシュー・ペリー、トーマス・レノン/2009・USA)

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2010-09-08 : DVD/WOWOW : コメント : 8 : トラックバック : 24
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ああ青春~『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』

チャーリー・バートレット






 CHARLIE BARTLETT


 チャーリー・バートレット(アントン・イェルチン)大邸宅に住み、専属の
リムジン運転手や精神科医
を持つ高校生。彼は私立校で問題を起こして
退学となり、地元の公立校に編入することになる。

 人気者になりたいと願うセレブな高校生が、荒れた公立高校で自らの人生
を模索する青春コメディ。公開時、タイトルから観に行く気も起こらずスルー
していたのだが、アントン・イェルチンくんが大好きなので鑑賞。しかし、この
映画単館とはいえよく劇場公開されたなぁ。。アントンくんは日本ではさほど
知名度があるわけでなし、監督も無名だし、オスカーに絡んだわけでもなし。
と思っていたら、ロバート・ダウニー・Jrがご出演とは。そして配給は、なん
と今は無きワイズポリシー!! そうだったのね~、しくしく。。

 ロバダウの役どころは、チャーリーが通う公立校の校長先生。妻に逃げら
れて酒浸り、今や一人娘のスーザン(カット・デニングス)だけが生き甲斐。
なのに娘は問題児チャーリーと付き合っている! 監視カメラを導入してみ
たものの、学内の治安は一向に好転することもなく、教育委員会からの突き
上げは厳しく、悩んではアルコールに逃避し、、という中間管理職の悲哀
滲むキャラ設定。実生活で麻薬中毒からの大復活を遂げた彼が、「人生や
り直せる、何者にだってなれる」
というメッセージを若い人々に伝えるために、
この(恐らく)低予算コメディ出たんだろうな、としんみり観てしまった。

 しかし、スーザン役のカット・デニングスは唇が赤過ぎ、体つきもボリュー
ムがあり過ぎ
てとてもティーンには見えない。チャーリーをリードする姿は、
ほとんど熟女(爆)、なのだった。その彼女に、喰われてしまうチャーリーよ。。
強く生きていくんだゾ。

チャーリー・バートレット2

 ( 『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』 2007/USA/
     監督:ジョン・ポール/主演:アントン・イェルチン、ロバート・ダウニー・Jr

テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

2010-08-30 : DVD/WOWOW : コメント : 0 : トラックバック : 4
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悪徳と知恵~『ワンダーラスト』

ワンダーラスト




 FILTH AND WISDOM


 ご存じクィーン・オブ・ポップ、マドンナの初監督作。めちゃめちゃトンガった
パンクな映画なんじゃないだろーか、という予想は外れ、意外にオーソドック
スな青春映画
でした。

 ロンドンルームシェアしている、AK(アンドレ)、ホリー、ジュリエットの三人
が主人公。ミュージシャンを目指すアンドレは盲目の作家のヘルパーをしなが
ら、SMの調教師として糊口をしのいでいます。バレリーナを目指すホリーは喰
いつめてポールダンサーとなり、アフリカの貧しい子どもたちを助けようという
を持つジュリエットは、インド系英国人が営む薬局で働いています。

 夢を抱いて進路を模索するこの若者三人が、マドンナの分身であることは自明。
ホリーとジュリエットの間には同性愛的感情もほのめかされ、アンドレの口から
は、自ら脚本も担当したマドンナらしい人生哲学も語られます。処女作にはその
作家の全てが現れ
ると言われますが、50代になったマドンナが人生を振り返り、
若い世代にエールを送っているような印象も受けました。

 意外だったのは邦題。てっきり原題まんまのカタカナ邦題かと思ったら、劇中
に登場する小説(アンドレの愛読書、盲目の作家の著作)のタイトルから採って
いるんですね。映像も綺麗で、なかなか好感できる映画でした。AKを演じた
ージン・ハッツ
が、時々オダギリジョーに見えたのはご愛嬌(笑)。

ワンダーラスト2

 ( 『ワンダーラスト』 監督・製作総指揮・脚本:マドンナ/2008・UK/
      主演:ユージン・ハッツ、ホリー・ウェストン、ヴィッキー・マクルア

テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

2010-08-24 : DVD/WOWOW : コメント : 0 : トラックバック : 2
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裸一貫!~『フル・モンティ』

フル・モンティ






 THE FULL MONTY


 英国北中部、シェフィールド。かつて鉄鋼業で栄えたこの街は、すっかり寂れ
失業者ばかり。最愛の息子の養育費も払えないガズ(ロバート・カーライル)
は、男性ストリップで稼ごうと画策するのだったが・・・。

 英国産コメディ映画の代表と言っても過言でないこの名作を、今日まで観ず
に生きてきました(懺悔)。公開当時、劇場鑑賞した友人からオススメもされて
いたし、BS放映なりビデオなりDVDなりでいくらでも観る機会はあったはず、
なのに・・・。
 そしてやっとやっと、観ることのできた本作は、本当に素晴らしく面白い作品
でした! いや~、もう、最高。英国アカデミー賞やヨーロッパ映画賞受賞も
納得。これは映画史クラスの名作と言ってもいいでしょう。

フル・モンティ2

 ロバート・カーライル、いいですね。相変わらず神経質な立ち姿と、やさぐれ
がなんとも言えません。一人息子ネイサン(男前♪)に、親心を切々と訴える
シーン
をはじめ、名場面がテンコ盛り。このムショ帰りのダメ男をここまで突き
動かしている全てが、息子への愛っていうのがまた、いいんですよ~。

 不況に伴う失業、離婚、破産、老親の介護などなど、現代日本の諸問題を先
取りして描いているかのようで、13年前の映画ですが古臭さは感じません。英国
映画ではお約束(?)のゲイ愛シーンもあり、想定内ではありますがまさに「これ
しかない!」
であろう、一発勝負のラストシーンには大喝采です。

 ロック・ユー!チーム・ウィリアムの一人だったマーク・アディと、トム・ウィ
ルキンソン
も出ていたんですね。実は今回、最近のヒュー・グラントの演技がトム
・ウィルキンソンのそれに似ている
ことに気付きました(爆)。ヒューも英国を代表
する名優への道をまっしぐら、だといいんですけれど。。

 英国映画っていいな~、と改めて思いました。派手なロケーションもVFXも
ない、狭くて小さな世界を描いているのですが、そこには普遍的な人生の真実
や、がいっぱい詰まっているのですよ。。いい作品は、時代を越えて残るの
ですね。繰り返し観たい傑作だと思います。

フル・モンティ3

 ( 『フル・モンティ』 監督:ピーター・カッタネオ/1997・UK/
          主演:ロバート・カーライル、トム・ウィルキンソン、マーク・アディ

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2010-08-23 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 3
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14歳の地図~『リリィ・シュシュのすべて』

リリィ・シュシュのすべて

 中学に入学した蓮見雄一(市原隼人)は、同じ剣道部に入部した優等生・星野修介
(忍成修吾)
と出会い、「リリィ・シュシュ」の音楽を知る。

 今をときめく「イッチー」こと市原隼人のデビュー作にして、岩井俊二監督の代表作。
タイトルこそ知ってはいても観る機会がないまま、公開から10年近くが経った今、ほ
とんど予備知識もなく初めての鑑賞。

 思春期特有の無邪気な残酷さに満ちた物語に戦慄しながらも、音楽と映像の美し
いコラボレーションに抗えない。そんな、罪作りな傑作。繰り返して二度、観てしまっ
た。もしこの映画を先に観ていたら、川上未映子ヘヴンを読んで、あんなにも
衝撃と感銘を受けることはなかったかもしれない。

 「雄一くんって、白くてちっちゃくてかわいいわね」。修介の母(稲森いずみ)
言葉を借りるまでもなく、今は明るくやんちゃなイメージの市原隼人が、こんな
にも繊細で弱々しい少年を演じていたなんて・・・。彼のほかにも、勝地涼蒼井
らの、幼いエネルギーに満ちた姿を観ることができる。

 悪魔よりも残酷な神に支配された、世紀末の教室。そこで俯き、沈黙する雄一。
学校にも家庭にも居場所をなくした彼は、ネットの世界で「フィリア」として生き、
「エーテルの歌姫」リリィ・シュシュについて語り合う掲示板の主となる。そこで
彼が出会ったのが「青猫」だった。雄一は「青猫」に、自分と似た匂いを感じ取る。

 星野に嵌められ、自由を奪われた津田詩織(蒼井優)は空に憧れ、折れた翼と
知りながらも墜ちてゆく。「あんたがあたしを守ってよ」 秘かに想いを寄せる久野
(伊藤歩)
さえも星野に差し出し、何も守れなかった雄一。泣いても、泣いても、、
無力な自分。どうしようもない現実。逃げ込むように、彼はネットで心情を吐露す
る。

 CDプレイヤーがipodに取って代わり、ケータイメールが飛び交う10年後の
今でも、この映画の中で描かれた思春期は「リアル」なんだろうか。いじめる側と
いじめられる側が、あっけないほど簡単に反転する世界。何もわかっていない、
わかろうとしていない大人たち。子どもたち以上に幼い教師、何も見えていない
親、金で中学生を買うリーマンオヤジ。心の聖域を奪われた雄一は、「青林檎」
にナイフを突き立て、世界をリセットする。しかしその新世界の輪郭も、それまで
とさほど代わり映えしない、ぼんやりとした光に縁取られているのだった。

 北関東の田舎の風景、夕暮れ時の「マジック・アワー」を映し取った映像が、唯
一無二の美しさ。撮影監督が誰なのか、思わず調べてしまったほど。世界はこん
なにも美しい、しかしその「セカイ」の渦中にいる者たちにとって、そこでの日常は
悪夢でしかない。行き場のない絶望の中で、音楽だけが彼らを生かす。リリィ・シ
ュシュの音楽だけが「エーテル」なのだ。光が落ち、時が流れても、音楽は鳴り続
ける。

リリィ・シュシュのすべて2

 ( 『リリィ・シュシュのすべて』 監督・原作・脚本:岩井俊二
         主演:市原隼人、忍成修吾、蒼井優、伊藤歩/2001・日本)

テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

2010-06-23 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 1
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境界線を越える~『シリアの花嫁』

シリアの花嫁



 THE SYRIAN BRIDE


 1967年第三次中東戦争以来、イスラエルに占領されているゴラン高原。そ
の小さな村で、境界を隔てたシリアへ嫁ごうとする娘がいた。結婚式当日、花嫁
のモナ(クララ・フーリ)
も、その姉アマル(ヒアム・アッバス)も浮かない表情。
彼らにとってシリアへの入国は、今生の別れを意味していたのだった。

 劇場公開を観逃した本作は、どうしても観たかった作品。大好きな女優、ヒア
ム・アッバス
が主演だから。気品と憂い、哀感が滲み出る瞳の表情が素晴らしい
女優さん。高圧的で男尊女卑的思想の夫と「もはや会話もない」アマル。しかし
彼女は、秘かに自立への道を模索していた・・・。

 ゴラン高原に住む人々は、シリアへの帰属意識が高いためにイスラエル国籍
の取得を拒否
していて、無国籍状態なのだという。境界線をはさんで、親族と
声器(!)
を使って会話しているのを観て、心底驚いてしまった。こんなの悲し過
ぎる、酷過ぎるよ・・・。

シリアの花嫁2

 国際情勢政治のことは、個々人にはどうしようもないし、様々な国の様々
な思惑があるのだろう。アマルたちの父・ハメッドのように、何年も投獄されて
家族を犠牲にしても、信条を曲げない人もいる。しかしほとんどの市井の人々
は、妥協を重ねて生きているのだろう。自らの家族と、生活を守るために。

 国家と男社会二重に抑圧されながら、子どもたちのために忍従生活を余儀
なくされていたアマル。幸せを掴めない姉を気遣うモナ。女が生きていくために
は、家族と身を裂かれるような別れをしてまで、「結婚」という道を選ぶしかない
のかと、暗澹たる気持ちになる。モナの不安を思うと、泣けて、泣けて・・・。

シリアの花嫁3

 しかし、落ち込みがちな私の心を揺さぶったのはやはり、ラストシーンのヒア
ム・アッバス
なのだった。全てが徒労に終わるかに見えた夕暮れ、たった一人、
花嫁姿で境界線を越えてゆく妹。その姿にしながらも、夕陽を背に境界線を
去る姉、アマル
。茫然と、悲しみに打ちひしがれた表情は、やがて柔らかい微笑
みに変わる。たとえ女でも、一人でも歩いてゆけるんだ。自らの幸せを掴み取る
ために。ヒアム・アッバスの、凛とした美しさ、希望を湛えた口元。私も、勇気
もらったような気がした。

 ( 『シリアの花嫁』 監督・製作・脚本:エラン・リクリス
        主演:ヒアム・アッバス、クララ・フーリ/2004・仏、独、イスラエル)

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2010-04-12 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 8
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女性映画の最高峰~『ジュリア』

ジュリア


 JULIA


 第二次大戦前夜上流階級に生まれながら、反ファシズム・ナチ抵抗運動
身を投じた、美しく聡明なジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)幼なじみの劇作
家リリアン(ジェーン・フォンダ)
の視点から描かれる、気高き闘士の壮絶な生涯

 映画好きなら誰でも、「忘れられない映画」というものを心に持っているだろう。
大人になる少し前、テレビの画面や小さなホールで出会い、鮮烈な印象を残し
ていった作品たち。私にとっては、フレッド・ジンネマン監督による、1977年製作
のこの傑作もその一つ。長らくDVD化されていなかった本作を、数十年ぶりに
再見した。感動は全く褪せることなく、心の深い場所から涙が溢れる。マスター
ピース


 アメリカを代表する劇作家、リリアン・ヘルマン回想録を映画化した本作は、
アカデミー脚色賞、助演男女優賞を獲得している。初見からしばらく経ってその
ことを知った私は、「ヴァネッサ・レッドグレーヴは、あんな短い出演時間でオス
カーを獲ったんだ!」
と驚いたものだ。幼かった私は、ベルリンの食堂での、ジュ
リアとリリアンの再会場面しか記憶になかったのだ。しかし、それだけあのシー
ンのインパクトは強烈だった。映画史クラスの名場面だとも言えるだろう。食堂
の奥の席にジュリアを見つけたその瞬間から、もう涙が止まらない

 打算や損得とは、無縁の友情。敬愛以上の、迷いなき信頼。テーブルマナ
ーから詩心まで。リリーにとってジュリアは、無二の親友である前に「人生の師」
でもあった。 「子どもがいるの」 「女の子ね? 名前は?」 「リリー」。この
い会話
だけで、リリアンは自分の人生が全肯定されたと感じただろう。幼い日々
を共に過ごしながら、遠く、手の届かない場所に行ってしまったジュリア。彼女
にとっても、自分はかけがえのない、大切な存在だったのだと。

ジュリア2

 そして、もう一つ重要なシーンがある。ジュリアとリリアンの親密な関係を揶揄
する男友達に対して、リリアンが平手打ちを喰らわすシーン。リリアンは回想す
る。ジュリアに対する自分の感情は、本当に「ただの」友情だったのだろうか?
この感情は、パートナーのダッシュ(ジェイソン・ロバーズ)に対する「愛情」と、
何が違うのか。答えは出ない。しかし、リリアンにはわかっている。自分が心底
愛したもの、自分を形作ったもの、生涯忘れ得ぬもの
が、誰であるのかを

 タイトルロール「ジュリア」を演じたヴァネッサ・レッドグレーヴの、神々しい
までの輝き
は言うまでもない。しかし実質的な主役であるジェーン・フォンダ
もまた、言いようもなく素晴らしい。ヘヴィスモーカーで、激情型の劇作家
瞳に星が瞬くような、アップの多用にも耐えうる美しさ。彼女にとって、これ以
上のはまり役があるだろうか? 

 女同士の友情なんて・・・、と、食わず嫌いされる方もいるかもしれない。し
かし、私にとって生涯忘れ難い印象を残すこの映画は、性別や時代を越えて、
人として成すべきこと、守るべき正義と勇気について語っている。ヨローッパの
暗い時代、命を賭して権力に立ち向かった人々がいたことを。そしてもちろん、
サスペンスとしても一級品。未見の方は是非、是非

ジュリア3

 ( 『ジュリア』 監督:フレッド・ジンネマン/1977・USA/
            主演:ジェーン・フォンダ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ

テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

2010-04-08 : DVD/WOWOW : コメント : 2 : トラックバック : 4
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ダニー・ボイルが好きだ!~『ミリオンズ』

ミリオンズ



 MILLIONS


 イギリスがユーロを導入し、ポンドと別れを告げようとしていた頃。少年ダミ
アン(アレックス・エテル)
は、空から落ちてきたカバンを見つける。そこには、
大量のポンド紙幣が詰まっていた・・・。

 母を亡くした幼い兄弟が、ある日突然大金を手にする。お金はどこからやっ
てきたのか? 一体どうやって使えばいいのか。経済観念に賢い兄アンソニ
と、信心深い弟ダミアンの、対照的な兄弟を描くファンタジー。(恐らく)低予
算ながら、心温まる素敵な佳作。監督はダニー・ボイル

 スラムドック$ミリオネアオスカーを獲得したこの英国人監督が、私は
今までさほど好きではなかった。何故なら、十数年前に観た『トレインスポッ
ティング』
があまりにも強烈過ぎたから。ポップで、エッジーで、クールでスタ
イリッシュな新感覚ムービーだと絶賛されていたあの映画、私にはなんと、
ほぼ「トラウマ映画」だったのだ。

トレインスポッティング

 多くを語りたくはないが、あの「スコットランドで最悪のトイレ」の汚さと言った
ら・・・。吐き気がした。『ミリオンズ』に続いて、久しぶりに再見してみたのだが、
やはりあのトイレは見るに耐えなかった。疾走感映像の面白さなど、ダニー
・ボイルの原点
とも言うべき作品であることは間違いないと思う。しかし他にも
散々際どいシーンがあるにも関わらず、自分があのトイレしか記憶になかった
ことに、余程衝撃的だったのだと改めて驚く。ピーター・ミュランも出ているし、
ロバート・カーライルなんて凶暴過ぎる破滅型キャラで切れまくっているのに、
全く覚えていなかったのだから・・・。(実は『スラムドック』でもトイレネタがあっ
て、ちょっと引いてしまったのを思い出した)

 しかし、この『ミリオンズ』素晴らしいですよ。なんと言っても、聖人オタク
のダミアンがかわい過ぎる!! 演じるアレックス・エテルくん、これが本当に
演技?と思わせるほどイタイケなのだ。聖人がたくさん出てきて、宗教色も濃
いのだけれど、美しい色使いの映像と変わらぬ疾走感で、説教臭さはない。
引っ越しのとかテレビのとか、守護聖人っていろいろいるんだな、っていうのも
面白かったし。英国映画は父と子、っていう関係がよく似合うな、とほのぼの
するし。ダミアンが聖モーリーンと出会うシーンでは、もう、涙、涙・・・(ダミアン
もママも泣いていないのに)。ダニー・ボイルをすっかり見直してしまった。オス
スメ


ミリオンズ2

 ( 『ミリオンズ』 監督:ダニー・ボイル/主演:アレックス・エテル/2004・UK)

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2010-03-26 : DVD/WOWOW : コメント : 8 : トラックバック : 6
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マクリーンの川~『リバー・ランズ・スルー・イット』

リバー・ランズ・スルー・イット



 A RIVER RUNS THROUGH IT


 20世紀初頭モンタナ州の田舎町で、敬虔で厳格な牧師の家庭に育った二人
の兄弟、ノーマン(クレイグ・シェイファー)ポール(ブラッド・ピット)。父から伝授
されたフライ・フィッシングが、対照的な性格の彼らを結びつける。

 1992年製作、ロバート・レッドフォード監督のマスターピースにして、アカデ
ミー撮影賞受賞作
。比類なき映像美、川のように静かに、厳かに語られるスト
ーリー
。そして何より、若き日のブラッド・ピットの、まばゆいばかりの美しさ!! 
120分間に凝縮された、長い長い「マクリーンの人生」。釣り糸に疑似餌をつけ
る老人の手にカメラが再びフォーカスしたとき、私は嗚咽していた。

 長い間未見で、気になっていたこの作品を改めて観てみたいと思ったきっかけ
は、(500)日のサマー。主人公を演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットに魅せ
られ、彼のデビュー作が本作であると知った。面影どころかほとんどそのまんま
な幼い彼の演技を微笑ましく見つめながら、私はこの物語のになった。

 劣等感と優越感、疎外感と一体感。兄弟の確執と絆を、モンタナの雄大な自然
が包み込む。詩を愛し、物静かで控えめな兄と、やんちゃで無鉄砲な美しい弟
この水と油のような兄弟を分かち難く結びつけるのは、故郷の川フライ・フィッ
シング
。弟の言動に危うさを感じながらも、なすすべもなく見守る兄。美しく社交
で、どんな場所でも一瞬にして人の心を掴んでしまう弟を愛する両親。結局の
ところ、兄は弟を「アンタッチャブル」だと理解し、その生と死を静かに受け止める。

 兄の視点で語られる田舎町の家族の物語は、平凡で退屈でもある。20年近く
前、公開当時にこの映画を観ていたら、私はきっと「面白くない映画」だと感じて
いただろう。はしかのような「ブラピ熱」は出していたとしても・・・。
 今リビングで一人、テレビ画面を見つめながら、この神々しいまでに美しい映画
を、大きな大きなスクリーンで観たかった、と思う。切なくなるほど、そう思う。
しかし同時に、本当に素晴らしい映画に画面の大きさなんか関係ないんだ、と感
じる自分もいた。

 エンドロールでは改めて「introducing Joseph Gordon-Levitt」とクレジッ
トされる。ブラッド・ピットの名声と、レッドフォードの手腕を確たるものにしたこの
作品。永遠に語り継がれるであろう名作でデビューしたJGLの、これからが楽し
みだ。

リバー・ランズ・スルー・イット2

 (『リバー・ランズ・スルー・イット』 1992・USA/
       監督・製作・ナレーション:ロバート・レッドフォード
               主演:クレイグ・シェイファー、ブラッド・ピット

テーマ : 色あせない名作
ジャンル : 映画

2010-03-03 : DVD/WOWOW : コメント : 6 : トラックバック : 1
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人類の遺産~『ライヴ・イン・ブカレスト』

ライブ・イン・ブカレスト





 Live in Bucharest: The Dangerous Tour


 マイケルの死後、多くの人が様々な立場から、様々な場所でコメントしている。
そんな中で、私が一番共感したのは「クィーン・オブ・ポップ」、マドンナの追悼
の言葉だった。彼女の9歳と4歳の子どもたちは今、マイケルに夢中だと。私の
10歳の息子もそうだから。

 THIS IS IT を観た直後、息子に尋ねた。 「どうやった?」
「うん、、、すごかった。マイケル死んでかわいそうやな。怒ってないよ、愛なん
、って言うてた」 「・・・うん、そうやね。マイケルってやさしいよな、ホンマに」
 
 以来、学校から帰ると必ず「マイケルの曲聴こう」と言って、『KING OF POP』
をかける息子。DVD『ライブ・イン・ブカレスト』のほかに、『ビデオ・グレイテスト
・ヒッツ ヒストリー 』
『ヒストリー・オン・フィルム VOLUMEⅡ』を買った。
それらを繰り返し観て、滅茶苦茶な英語で『マン・イン・ザ・ミラー』を歌い、
『スムーズ・クリミナル』『ビート・イット』を踊る。ムーンウォークしながら
廊下を移動する。そんな息子の姿を見て大笑いしながら、なんとも言えない
気分
になる。

 マイケルはもうこの世にいない。それは悲しいことだけれど、彼の残した素晴
らしいパフォーマンスは確かに受け継がれている。世代を越え、偏見や悪意あ
る噂を打ち砕き、純粋な「芸術」だけが再発見
されてゆく。

 今は歌やダンスをコピーするだけかもしれない。しかし、いつか子どもたちは、
マイケルがその歌に込めたメッセージに気付くだろう。そして、よりよい明日と
美しい地球
に思いを馳せるだろう。アメリカのポップの女王の子どもたちも、
極東の島国の片隅に住む子どもたちも。。マイケルの遺志が、きっと彼らに届
くと信じたい。

 これ、親バカ記事になってしまったかな。でも、誰よりも世界中の子どもたち
を大切に思っていたマイケル
だから、許してくれるよね?

テーマ : マイケル・ジャクソン
ジャンル : 音楽

2009-12-24 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 0
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子どもの時間~『天然コケッコー』

天然コケッコー

 海に面した、島根県の小さな山間の村。小・中合わせて生徒が6人しかいない
学校に、東京から転校生がやってくる。

 「あ・・・イケメンさんじゃぁ~」

 で、『天コケ』である。待望の。焦がれた。

 くらもちふさこの原作漫画を渡辺あやが脚本化し、山下敦弘が撮った瑞々しい
佳作。公開されるや絶賛され、各映画賞に輝いたのは記憶に新しい。

 山下監督は田舎を舞台に、ゆるい作風ながら人間関係の深淵を伺うような作品
を撮る若手、というイメージ。私の中では西川美和監督とタイプが被る。
 本作は、作品にファンタジックな要素を盛り込むのが巧い渡辺あやの脚本に、
監督が自分の作家性を抑え、忠実に応えている印象だった。う~ん、これは映画
で観たかった。テレビサイズで体験するには惜しい、おおらかにやさしく、健や
かに流れる子どもたちの時間。青春にもまだ早い、思春期のフワフワした恋心。
淡く切なく消えゆく、至福のときよ・・・。

天然コケッコー2

 正直に言いますが、岡田将生くんが観たかったんです。そよ(夏帆)があんぐり
と口を開けて見つめる気持ちが120%わかるほど、この大沢くんはカッコイイ!

 飾り気のない率直さ、察しの良さ、強引ではないのに吸い寄せられてしまうよ
うな佇まい。今年になって岡田くんの主演作が5作も公開されていることも納得
の、銀幕に愛されるべき美しさ。一見して都会的な少年であっても、意外なほど
純朴な岡田くん自身に、大沢広海がダブって見える。

 しかしこの映画の主人公は、まぎれもなく夏帆なのだった。おさげ髪の健康的
美少女、そよ
。岡田くんが見たかった私なのに、気づくとそよを追っていた。この
映画から2年後の今年、二人が再共演したドラマでも変わらず瑞々しく、可憐
な夏帆は素晴らしい! 思春期太りで見るも無残な若手女優もいるのに、夏帆
ちゃんはエライ
、のだった。

天然コケッコー3

 「行って帰ります」 「何はぶてとるん?」 「おおきに」 「また来るけぇ」
 中国地方の方言が混じり合ったような田舎言葉は懐かしい響きだけれど、
少女が自らを「わし」と呼ぶことには軽い衝撃を覚えた。集落すべてが一つの
大きな家族のような環境なのに、この映画には過疎地特有の閉塞感や、
苦しさ
が微塵もない。恋につきものの嫉妬駆け引きも、疼きもない。そもそ
も、そよと大沢くんの間にたゆたう感情は、と呼ぶにはあまりにも、淡過ぎ
・・・。

 大沢くんの進学にまつわる展開は意外だった。ラストシーン、あのワンカット
のために坊主にした岡田くん、君もエライ! いつまでも、変わらないでいて
ね。

 (『天然コケッコー』 監督:山下敦弘/原作:くらもちふさこ
        主演:夏帆、岡田将生、夏川結衣、佐藤浩市/2007・日本)

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2009-11-19 : DVD/WOWOW : コメント : 6 : トラックバック : 8
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波間の彼方に~『幻の光』

幻の光

 生後三ヶ月の幼い息子と自分を遺し、自殺した夫。生まれ育った尼崎から、
能登
の海辺の町に後妻として嫁いだゆみ子(江角マキコ)は、永遠に答えの出な
い思いに囚われる。 「あの人は、何故死んでしまったのだろう・・・?」

 宮本輝の原作小説を映像化した、是枝裕和監督の長編デビュー作第52回
ヴェネツィア国際映画祭
において金のオゼッラ賞を受賞、1995年キネマ旬報ベ
ストテン第4位
と、国内外で評価の高かった作品。浅野忠信が出演していること
もあり、長い間、ずっと「観たい」と思い続けた映画だった。予想以上の映像美
心をざわつかせる印象的な音楽素晴らしい作品です。長編第一作にしてこの
完成度とは、、是枝監督、凄いです。

 原作は、主人公ゆみ子の告白体の一人称小説。映画を観てから改めて原作
を読み返してみると、映画が原作を最大限に尊重していると感じた。阪神尼崎
の踏切、奥能登の海鳴り。若い夫婦のつましいアパート暮らし、海辺の古い家。
深緑がかった陰影の濃い映像、固定カメラ、数少ないセリフ。ラスト近くにゆみ子
が感情を爆発させるまで、彼女の心の揺れや残してきた想い、どうしようもない
悔いが、静かに、ゆっくりと浮かび上がる。

 原作がそうであるように、この映画は何らかの「解」を提示するために撮られ
たのではないと思う。人は何故死に、生きるのか。生きることと、「暮らす」こと
とは違うのか。人はどうして誰かを「想う」のか。その想いが、断ち切れないの
は何故なのか・・・。
どこにも、答えなんかない。ただ、波の彼方に幻の光が見
えるだけ。永遠に。

幻の光2

 本作で、一躍人気女優となった江角マキコ。明るいイメージでモデル出身の
彼女はこの静謐な物語にはミスキャストのようにも思えるけれど、虚空を見つ
める表情が思いのほか、いい。期待の浅野忠信は、表情のアップもなく一度も
振り返ることもなく、ただ去って行くミステリアスな存在。しかし、声だけはいつ
もの浅野くん。彼の離婚のニュースはショックだった。。あんなにCharaのこと大好きだった
浅野くんなのに(涙)。。


 映画に引き込まれるうちに、奇妙な既視感に捉われた。「この映画は・・・、
侯孝賢ホウ・シャオシェンの映画じゃないのか?」 線路と電車、光差す緑の
風景。印象的な音楽は、『恋恋風塵』と同じ陳明章チェン・ミンジャンによるも
の。是枝監督って、ホウ・シャオシェンが好きなんですね。

 人間にとって「死」とは、抗い難い誘惑になり得るのかもしれない。それで
も、冬が過ぎ春が来て「いい日和」になると、全ては解き放たれてゆく。季節
は巡り、人は生き、幼子は成長する。変わらない風景の中に、いつしか
甦る。

幻の光3

 (『幻の光』 監督:是枝裕和/原作:宮本輝/1995・日本/
          主演:江角マキコ、内藤剛志、浅野忠信、柄本明

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2009-07-28 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 2
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風に吹かれて~『アヒルと鴨のコインロッカー』

アヒルと鴨のコインロッカー

 大学入学のため、仙台に越してきた椎名(濱田岳)は、河崎と名乗る不思議な
雰囲気の隣人(瑛太)に声を掛けられる。「ディラン?」

 How many roads must a man walk down ・・・

 伊坂幸太郎の同名小説の映画化。重力ピエロがとってもよかったので、録画
したままになっていた本作を観る。う~ん、面白かった!謎めいた展開の前半は
少し吸引力が弱めだけれど、松田龍平が登場する中盤以降は目が離せない。
「そうだったのか・・・」と、オープニングの場面を思い出して納得。しかもチョイ役
(椎名の同級生)で岡田将生くんも出てるじゃない!! まだ磨かれない原石と
いう感じだけれど、すっごく得した気分♪ 観てよかった~。。

 私は東京以北は北海道にしか行ったことがないので、東北のイメージってほぼ
ゼロ。でも仙台が大都市なことくらいは知っている。『重力ピエロ』では出演者が
みな標準語をしゃべっていたので、仙台って訛り、ないのかな?と思っていたの
だけれど。「日本さ来たら、日本語しゃべんねぇど~」バスの運転手さんのセリフ
で腑に落ちた。

アヒルと鴨のコインロッカー2

 濱田岳って初めて見た。プロフィールを知ってビックリ、88年生まれって・・・、
ええぇぇ~~~!! なんかもう「10年選手」って雰囲気。若いのか老けてるのか
わからん。。そういえば『鴨川ホルモー』の予告で、チョンマゲ姿だったのが彼な
のか。

 松田龍平も、演技しているところは初めて見たような。彼ってなかなかいい
じゃない? 松田優作の長男で、翔太の兄貴、っていう認識しかなかったけど。。
これは『蟹工船』が楽しみだ♪

 そして、一番の驚きが瑛太くん。彼ってカッコよかったんですね(爆)。耳の大
きい小松帯刀
という印象しかなかったのに、背が高くてスタイルもいいんだな~。
小栗旬くんと、ちょっとキャラがかぶるのかも? まぁあの二人は従兄弟です
からね、磯野家では(笑)。演技も上手だし、今いろんなジャンルの作品で引っ張
りだこなのも、わかる、わかる。プライベートでも、龍平とは親友だとか・・。
二人の共演作『青い春』が観た~い。。瑛太の映画デビュー作でもあるんだよね。

アヒルと鴨のコインロッカー3

 しかしこの映像が、小説ではどんな風に表現されているのか全く予想がつか
ない。ドルジの、河崎や琴美(関めぐみ)への想いが切なくて、愛おしくて・・・。
伊坂幸太郎の小説って、法や世間体で裁けない良心や善悪について書かれた
ものが多いのだろうか。私だって、神様を閉じ込めてしまいたいよ。

 The answer is blowin' in the wind.

 (『アヒルと鴨のコインロッカー』監督:中村義洋
          主演:濱田岳、瑛太、関めぐみ/2006・日本)

テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

2009-05-30 : DVD/WOWOW : コメント : 12 : トラックバック : 13
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空も飛べるはず~『金髪の草原』

金髪の草原




 「金髪の草原に 船が到着しました」


 瀟洒な洋館独り暮らし老人、日暮里歩(伊勢谷友介)は、ある朝目覚めると
記憶二十歳に逆行していた。ヘルパー古代なりす(池脇千鶴)を憧れのマドン
だと思い込んだ彼は、なりすにをする・・・。

 大島弓子ファン公言し、グーグーだって猫であるを映画化した犬童一心が、
10年前に映画化していた作品。なりすの想い人が友人でなく、血のつながらな
い弟(松尾政寿)
であるなど多少の脚色はある。しかしほぼ原作通りの設定、セリ
も原作そのままの引用も多い。巧く映画化しているなと素直に思えます。

 原作は『グーグー』を観た後、即購入した大島弓子セレクションに収録され
た一編。認知症の老人ヘルパーの少女を巡るファンタジックな短編だけれど、
映画にすることでより現実味が増した印象。しかし柔らかで美しいからこそ、
残酷さも際立たせる映像
や、見かけは20歳、実年齢は80歳という老人を演じ
た伊勢谷友介のはまり具合(棒読み具合?)もいい感じ。私は『グーグー』より
100倍くらい、この映画好きです。ずっと気になって、観たいと思っていた
映画なので、完全ノーカット版深夜放映してくれたよみうりテレビさんに感謝、
感謝


金髪の草原2金髪の草原3

 最近は↑こんな感じ伊勢谷友介くん。私が彼を初めて観たのは是枝裕和監督
『ワンダフルライフ』天国に旅立つまでの7日間、「最高の思い出」を選ぶ「死者」
たちの一人でした。結局何も選ぶことができず「踊り場」に残った彼は痛々しくて、と
ても印象的
で・・・。そしてこの映画で、彼は「夢」でなく「現実」を選ぼうとして旅立
演技やセリフ回しは二の次でいいと思ってしまうほど、魅力的な人だなぁと思い
ます。伝説の男・白洲次郎を演じるに抜擢されたのも納得
 
 犬童監督独特の遊び心というか、過剰ファンタジックな場面や登場人物もあ
るけれど、この映画に関しては許してしまえる感じ。舌足らずの池脇千鶴も然り。
「夢」「現実」の間で13歳を生きるクレープ屋さんも、映画から浮くギリギリのと
ころで踏みとどまったかな。

 心臓を止めないためだけに60年間を生きてきた孤独な老人が、自分が一番輝い
ていた頃の記憶を生きる
。封印したを解き放つ姿、それでも「人生は素晴らしい」
と彼が思えたなら、幸せな最期だったのだと思いたいではないですか。私はなりす
の恋
にも、泣いた

 日暮里の暮らす洋館素敵縁側の夏、青空や夕焼けがただただ、美しい

 (『金髪の草原』監督・脚本・編集:犬童一心/1999・日本/
        原作:大島弓子『金髪の草原』/主演:伊勢谷友介、池脇千鶴

テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

2009-03-04 : DVD/WOWOW : コメント : 4 : トラックバック : 3
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イカした未亡人~『やわらかい手』

やわらかい手


 IRINA PALM


 ロンドン郊外に住む寡婦のマギー(マリアンヌ・フェイスフル)は、最愛の孫の病
に心を痛めていた。海外治療のためにかかる莫大な渡航費を捻出しようと、彼女
「高給ホステス募集」の貼り紙がされた店に足を踏み入れる・・・。

 英国労働者階級の人々のたくましさ悲哀、真の家族愛を描いた佳作ユーモ
は散りばめられているが、予想したよりはシリアスで暗いトーンの作品。ロンド
ン、オックスフォード・サーカス駅からソーホーへ至る街並みに、クリスマス間近
の浮き足立った雰囲気は感じられない。

 R-15という厳しいレイティングにも関わらず、エロスとは無縁、いやらしさは
皆無
。夫に先立たれた普通のおばあさんが、最愛の孫のために意外な才能
-その「やわらかい手」男をイカせる--を発揮するというお話だが、後半は
ちょっと意外(?)な展開。尚、サオは映りませんのでご安心下さい(笑)。観終
わって、思わず自分の掌をまじまじと見てしまった・・・ナンノタメニ?

やわらかい手2

 主演のマリアンヌ・フェイスフル伝説のミューズということだけど、私は全
くの初見。でっぷりとした中年太りで、ぬいぐるみ体型フツーのおばさん
家族のため、自分を犠牲にして生きてきた人だと一目でわかる。そんな「肝っ
玉母さん」マギー
が、自分の才能を活かして稼ぎ、職場の若い先輩ルイザ
(ドルカ・グリルシュ)
と飲んで心を交わすうち、少しずつ意識が変わってくる。
最愛の孫の為に身を挺したことは、決して恥じるべきことではない息子に
なじられよう
と、近所の茶飲み友達から詮索されようと、そんなことはどうで
もいい!
 これはシングルマザーのルイザから、仕事を奪ってまで得たお金
なんだ。大事なのは、孫の命を救うこと、ただそれだけ・・・

 マギーの息子トム(ケヴィン・ビショップ)妻、サラ(シヴォーン・ヒューレット)
姑を煙たく感じているのもリアル。最後にマギーが彼らと同行しない決断をし
たのは、とても賢明な選択だったと思う。どんなに深く愛していても、いや愛し
ているからこそ
時が来れば親は子から離れなければならないと思うから。
そして、家族のためだけに生きてきたマギーも、自分の幸せを思うべきとき・・・

やわらかい手3

 強面風俗店オーナー、ミキ(ミキ・マノイロヴィッチ)がマギーに惹かれてゆく
というのがまた面白く、意外な展開だった。若くて綺麗なオンナ知り尽くして
いるはずの彼
なのに・・・。週払いの賃金のように、ゆっくりと確実に育まれてゆく
彼らの「大人のロマンス」素敵。しかしあの「ラッキー・ホール」、日本式ってい
うのにビックリ・・・。マダアルノカシラ? ミキが手慰みにしていたのも、スーパー
マリオ
だったのがうれしかった。彼は「日本びいき」なんだね、いい人だ(笑)。

 (『やわらかい手』監督:サム・ガルバルスキ/主演:マリアンヌ・フェイスフル、
     ミキ・マノイロヴィッチ
/2007・ベルギー、ルクセンブルク、英、独、仏)

テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

2008-12-15 : DVD/WOWOW : コメント : 10 : トラックバック : 11
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イノセンスの終焉~『パラノイドパーク』

パラノイドパーク


 PARANOID PARK


 オレゴン州ポートランド17歳のアレックス(ゲイブ・ネヴァンス)スケボーに
夢中
で、離婚間近な両親をもつ「普通の」高校生。ボーダーが集まる「パラノイド
パーク」
に出かけた彼は、ある事件の当事者となる・・・。

 ガス・ヴァン・サント好きな映画監督であるにも関わらず、カンヌでパルムドー
ルを受賞
した『エレファント』はじめ近年の作品は未見久々のガス作品鑑賞とな
った本作、見事にやられました、と言う感じ。ドキュメンタリータッチの映像を手が
けたのは名手クリストファー・ドイル。アレックスのおじさん役でチラリと顔を見せ
てくれる彼が映し出す、変幻自在な光と影耽溺イノセントな思春期の終焉を、
残酷な形で迎えた一人の少年の姿が、痛々しいまでにフィルムに刻み込まれて
いる


パラノイドパーク2

 主役・アレックスを演じたゲイブ・ネヴァンスの何とも魅力的なこと! 撮影
地ポートランド
での公募で選ばれたという素人な彼をキャスティングしたことが、
この映画の成功を運命づけている。不気味にも崇高にも見える無表情、演技
とは信じられないほど自然な佇まい。ガスは、一体どうやって彼に演技指導
したのだろう?
 カメラはまるで吸い付くように幼さの残るアレックスの表情
を捉えてゆく。

 アレックスは決して感情剥き出しにすることはない。しかし孤独で内省的
な彼の精神世界の先に透けて見えるのは、大人への絶望、何処へも行けな
い悲しみ
。両親の離婚も、本当はあまり好きじゃない彼女と寝ることも、イラク
戦争
も、何もかもが現実離れしている。そして彼にとっての「リアル」は、最も
悲痛な形でもたらされることになる。

パラノイドパーク3

 物語はアレックスを裁くことも、護ることもせず、静かに寄り添いながら彼を見つ
め続ける
。ただ結論を下さないからと言って、それは単に「丸投げ」しているという
ことではない
。いや逆に、作り手はアレックスを全くこちら側「渡していない」
その視線は彼の一挙手一投足見つめ、慈しみ、包み込んでいるようにさえ映る。
出来事の一部始終を書き終え、焼いた後、初めて安堵したように瞳を閉じるアレッ
クス
。教師の呼びかけに応えない彼の中で、何かが確実「死んで」しまったかの
ように。

 ミステリー風味だった予告編とは随分手触りの違う、実験的とも言うべき作品。
時制をバラバラにし、映画のとなるはずの事件過度にエキセントリックには
描かれない
少年犯罪が絡むことも含め、好き嫌いがはっきりと別れる映画かも
しれない。しかし敢えて「傑作」と書いておこう、ガスの映画人としての姿勢、彼が
見つめようとしたもの
を、私は讃えたい

 (『パラノイドパーク』監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
   撮影:クリストファー・ドイル/主演:ゲイブ・ネヴァンス/2007・仏、米)

テーマ : 気になる映画
ジャンル : 映画

2008-12-11 : DVD/WOWOW : コメント : 10 : トラックバック : 7
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砂漠の女王たち~『プリシラ』

プリシラ


 THE ADVENTURES OF PRISCILLA,

 QUEEN OF THE DESERT


 オーストラリア、シドニー。若い恋人に死なれたばかりのベルナデット(テレンス
・スタンプ)
と若くて口の悪いフェリシア(ガイ・ピアース)は、ドラッグ・クィーン仲間
ミッチ(ヒューゴ・ウィーヴィング)から地方公演に誘われる。「砂漠の女王・プリ
シラ号」
と名づけたおんぼろバスで、砂漠の町アイススプリングスを目指す三人。
ベルナデットは「運を変えるため」、フェリシアは「砂漠の岩の上にド派手な衣裳で
立つ」
夢を叶えるため、そしてミッチは・・・。

 全く知らない映画だったのだけれど、観て本当によかった! 教えて下さった
に感謝です! う~ん、これはすごくいい映画ですね。オーストラリア大陸の
赤い土
、どこまでも広く青い空に映える、クィーンたちの原色の衣裳! 懐メロ
ビートの効いた音楽踏まれても、倒れても起き上がる、いやタダでは起き
ない三人
に、笑わされて、ホロリとさせられて・・・。心温まり、元気がもらえる
ロード・ムービーの傑作です。超・オススメ

プリシラ2

 若いガイ・ピアースが物凄くハジケているのだけど、彼ってキャラがマーク・
ウォールバーグとカブる
んですよね。今までそんなこと思ってもみなかったん
だけど、この映画ではめっちゃ被ってるミッチもね、「どっかで見た顔よね・・」
と思ってたら、なんとエージェント・スミス! もう、大爆笑
 昔の映画を知らないので、テレンス・スタンプって悪役のおじさん俳優のイメ
ージ
だったのですが、こんな役も演じていたとは・・・。しかし「伝説のDQ」にし
ては、踊りがイマイチ、弾けてないぞ(笑)。

プリシラ4

 アジア人(日本人?)女性の「ピンポン玉」のシーンだけはさすがに「ギョギョ!」
だったけど、「旅は道連れ、世は情け」みたいな東洋的情緒も感じさせてくれた。
そして今、シネコンに行く度に予告がかかる『マンマ・ミーア!』でもお馴染み、アバ
の音楽!
 北欧で生まれた彼らの音楽って、どうしてこれほど世界中で愛され続け
ているんだろう?
 フェリシアなんてアバのうん○まで持ってましたから(爆)。

 三人三様、それぞれの再スタートを切るラスト。自分らしく、好きな場所で、好きな
誰かと、好きなように生きればいいんだね


 (『プリシラ』監督・脚本:ステファン・エリオット/1994・豪/
    主演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアース

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2008-12-08 : DVD/WOWOW : コメント : 10 : トラックバック : 4
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愛しき者はすべて去りゆく~『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

ゴーン・ベイビー・ゴーン



 GONE BABY GONE


 ボストンの下町で、4歳の少女失踪した。被害者の伯母から捜査を依頼され
私立探偵パトリック(ケイシー・アフレック)は、相棒のアンジー(ミシェル・
モナハン)
気の進まないまま聞き込みを始めるのだが・・・。

 ボストン出身の俳優、ベン・アフレック監督デビュー作にして高い評価を受け
サスペンス。日本では劇場公開されずDVDスルーとなったが、これは納得行か
ない
な~。あまりに哀切で残酷な物語ではあるけれど、物凄く完成度の高い傑作
だと思う。公開されていたら、年間ベストに入れる方も多かったのではないかな。
これは是非DVDでご覧になっていただきたい

ゴーン・ベイビー・ゴーン2

 ボストンが舞台、誘拐で始まる物語とくれば、クリント・イーストウッド監督
『ミスティック・リバー』が思い出される。陰影の深い映像から受ける、重苦しく
暗い印象
も同じ。観終わって知ったが、本作『ミスティック~』原作者が同
なのだ。自らと同じ、俳優出身の巨匠の代表作ガチンコ勝負を挑むとは・・・。
ベン・アフレック、男前やな~

 公開されなかったために事前情報がほとんどなく、これほどの豪華キャスト
あることにも驚かされた。モーガン・フリーマンエド・ハリスの二人は、重鎮
しいさすがの演技。中でも、オスカー候補となったエイミー・ライアンの演技が
やはり印象的。彼女はその土曜日、7時58分でも、脇役ながらシングルマザー
(イーサン・ホークの元妻)を好演していたのも記憶に新しい。しかし、一番驚い
たのはビー役のエイミー・マディガン。彼女エド・ハリスの奥方なのですね。。シラナカッタ

ゴーン・ベイビー・ゴーン3

 ボストンの下町を、ゆっくりとパンしてゆくカメラ。掠れた声でそれとわかる、
ケイシー・アフレックのナレーションで幕を開けるこの映画は、最後までその
るせなさと不条理
で観る者を惹き付ける。「子どもたちは何も求めず許し、左の
頬を差し出す」
子の親への愛こそ無償なのに、喉元過ぎれば熱さを忘れ
アマンダを抱き締めることさえしない愚かなヘリーン(エイミー・ライアン)

 「正しいこと」は必ずしも「善きこと」ではなく、「成すべきこと」は時には違法
ですらある。狼たちの中の羊として、鳩のように素直には生きられても、蛇の
ように賢くは生きられなかったパトリック
。アンジーを引き留めようとする彼の
哀願が切ない。ドイル刑事が言うように、30年経てばパトリックの考えも変
わるのだろうか。青臭いままで生き続けることは、罪深いことなのか。。。

 映画は再びファースト・シーンへと廻り、冒頭の牧師の言葉が想起され、
改めて胸に迫るリアリティを求めたアフレック兄弟の、ボストンへの愛
作り上げた映画。そしてボストンという街もまた、彼らを愛しているようだ。

 (『ゴーン・ベイビー・ゴーン』監督・脚色:ベン・アフレック
   原作:デニス・レヘイン『愛しき者はすべて去りゆく』/2007・USA・未/
       主演:ケイシー・アフレック、ミシェル・モナハン、エイミー・ライアン

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2008-12-07 : DVD/WOWOW : コメント : 6 : トラックバック : 17
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自分らしく、ありのままで~『ペネロピ』

ペネロピ


 PENELOPE


 名家の一人娘ペネロピ(クリスティナ・リッチ)は、先祖に掛けられた呪いの為に、
豚の鼻をして生まれてきた。まさに「深窓の令嬢」として25年間、一度も外の世界
を知らずに育った
彼女の元へ、花婿候補の青年マックス(ジェームズ・マカヴォイ)
が現れる・・・。

 リース・ウィザースプーンが立ち上げた製作会社の第一作。リースはプロデュー
サー兼端役で出演
もしている。個人的には、彼女は製作に専念してもよかったの
では? と思わないでもないけれど、恋に、人生に迷える女子必見のファンタジー
映画館で観たかった映画だけれど、正直、ここまで素敵な作品だとは思っていな
かった。色彩設計プロダクション・デザインもかわいらしく、乙女心ときめく作り。
ちょっぴりティム・バートン風味もあり。英米合作映画ではあるけれど、ヨーロッパ
映画の小品の雰囲気
です。この映画大好きだ~。

ペネロピ2

 ペネロピの『紅の豚』容姿から、てっきり呪いの解き方はそういうことだろうな、
と予想していたら・・・。「ありのままの自分を受け入れよう」っていうテーマは、
いい意味で期待を裏切ってくれた

 女の子の自立についての物語だけれど、子育てとの親のスタンスについても
考えさせられるものがあった。ペネロピのママ、ジェシカ(キャサリン・オハラ)
娘に「本当の容姿」を取り戻して欲しくて、花婿候補を選び続ける。でもそれは
「娘のために」と言いながらも、実は「美しい娘であって欲しい」という母親として
の願望
だったんだと思う。親が、子どものために出来ることはなんでもしてやりた
い、と願うこと
は決して間違いではない。けれど、それが本当に「子どものために」
なっているかどうか
声を失う前に、立ち止まって考えてみたほうがいい。

ペネロピ3

 プロデューサーのリースが自らオファーしたというペネロピ役クリスティナ・
リッチ
は、この作品のイメージにピッタリ豚の鼻も次第に違和感がなくなって、
目元が土屋アンナに似てるな~、なんて思いながら観ていた。最後には普通の
鼻のペネロピの方に違和感
があったりして(笑)。そして何と言っても素敵なのは
ジェームズ・マカヴォイですよ~。今まで観てきた中で、一番いいと思う。碧い瞳
が美しい小柄な彼は、この映画のファンタジックな世界観にピタリとはまる。
 かわいらしいだけじゃなく、差別や偏見についての現実をも描くこの映画。是非、
観てみて下さい。


 (『ペネロピ』監督:マーク・パランスキー/2006・UK、USA/
        主演:クリスティナ・リッチ、ジェームズ・マカヴォイ

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2008-12-03 : DVD/WOWOW : コメント : 14 : トラックバック : 20
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闘神~『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』

ドラゴンへの道




 猛龍過江


 THE

 WAY

 OF

 THE


 DRAGON


 先週、NHK-BSで放映されたものを録画鑑賞。あまりのカッコよさに、思わず
二回観てしまった。

 今の30代、40代男性で、李小龍ブルース・リー憧れた、という方は多いの
ではないかな。私のも小さい頃からヌンチャクを振り回し、カンフーの真似事
が高じて空手を習い、絡んできた不良二段キックをお見舞いして撃退、なんて
武勇伝をいくつか持っている。そんな弟を「寄るな~」なんて思いながら横目
眺めていた淑女な姉の私だけれど(笑)、この映画を観ればあれは「日本男子
が歩むべき正しき道」
だったような気がする。弟よ、アンタは偉かった!(?)

 今更書くのも野暮だが、李小龍ブルース・リーの肉体・・・、凄い。限りなく
脂肪率ゼロ
に近いであろう筋肉質の身体。逆三角形の上半身は、を拡げた
ように筋肉が隆起する。踊るような身のこなし、高速の蹴り。打撃音よりも甲高
い、代名詞ともいうべき怪鳥音
。まさに闘神!! スティーヴ・マックィーンが彼
弟子だった、というのも納得

 ラスト十数分、コロッセオでのチャック・ノリスとの死闘必見。闘い終わっ
た後の、ロンの表情がいいんです。

 (『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』1972・香港/
         監督・脚本・製作・音楽・主演:李小龍ブルース・リー

テーマ : 香港映画
ジャンル : 映画

2008-12-01 : DVD/WOWOW : コメント : 6 : トラックバック : 0
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私の音楽~『4分間のピアニスト』

4分間のピアニスト



 VIER MINUTEN


 女子刑務所ピアノを教える老教師クリューガー(モニカ・ブライブトロイ)は、
殺人罪で服役中のジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)傑出した才能
気付く。コンクール優勝を目指してレッスンを始める二人だったが・・・。

 破滅的で激情型若い女囚と、音楽に身を捧げた堅物の老教師対峙する、
ガチンコ音楽ドラマラストの衝撃たるや、凡人の想像を超える力技で捻じ伏
せられた気分。凄いです。主演のモニカ・ブライブトロイは、モーリッツ・ブライブ
トロイの御母堂
だそう。ロッテンマイヤーさんを老けさせたような、完璧にアイロン
されたシャツを第一ボタンまできっちり留めたその姿は、生真面目なイメージの
ドイツ人女性そのもの
さすがの演技です。もう一人の主役、新人女優ハンナー
・ヘルツシュプルング
キレたやさぐれぶり必見

4分間のピアニスト2

 映画は時間軸を行きつ戻りつ、クリューガーの回想シーンを交えながら進んでゆ
く。第二次大戦中、ナチスドイツが統治するドイツ軍で、従軍看護婦として働いて
いた過去を持つクリューガー。彼女のに現れる、若き日の恋と喪失・・・

 冒頭、刑務所の房内シーンから様々に伏線が張られ、クリューガーとジェニーの
人生がリンクしてゆく構成が巧い
絞首、お辞儀、「低俗な音楽」。二人の関係ジェ
ニーの運命
に、微妙な影を落とす看守ミュッツェ存在も効いている。凡人が天才
に抱く嫉妬心
と、痛めつけられたことへの復讐心を隠さない彼がいたからこそ、この
映画が突飛なだけでない、登場人物たちの息遣いが感じられる作品と成り得たの
だと思う。

4分間のピアニスト3

 音楽映画であるだけに、全編を通してのピアノ演奏も素晴らしいと思う。耳に
心地良いクラシックのメロディ、ピアノを破壊するかのような前衛演奏
。どんな
形であれ、ピアノという楽器はどうしてこうも人の心を掴むのか。「才能を磨くの
は義務」
大舞台シューマンでなく「私の音楽」を貫くもよしベテランと新人
二人の女優の熱演に拍手

 (『4分間のピアニスト』監督・脚本:クリス・クラウス/2006・独/
       主演:モニカ・ブライブトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング

テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画

2008-11-25 : DVD/WOWOW : コメント : 8 : トラックバック : 9
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