倚りかからず~『清冽 詩人茨木のり子の肖像』
清冽

 倚りかかるとすれば それは 椅子の背もたれだけ

 ノンフィクション作家・後藤正治氏による、日本を代表する女流詩人・茨木のり
子の評伝
。彼女の代表作「倚りかからず」「わたしが一番きれいだったとき」
衝撃を受けた人間として、是非読んでみたかった一冊。

 その凛として潔い詩の言葉から、なんだか少し「怖い人」なのでは、というイメ
ージがあった。厚い眼鏡をかけた、厳格な国語教師、という雰囲気の。しかしこ
の本を手にしてまず驚くのは、カバー写真の茨木さんの美しさ「宝塚の男役の
ような」
という形容が何度か出てくるが、美しいのはもちろん、包容力のあるやさ
しげな微笑
がなんとも素敵。本書は彼女の代表的な詩を取り上げながら、生い
立ちから晩年に至るまで、その人生を丹念に追ってゆく。

 自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ

 茨木さんの詩で、一番有名なもののひとつ「自分の感受性くらい」の最終連。
これには、まさしく「頭を殴られたような」衝撃を受けた。しかし、この「ばかもの
よ」
という言葉は作者本人に向けられたものである。いかに茨木さんが自分に
厳しく、自分を律し続けた人生
を送ったか。裕福な家庭の「お嬢さん育ち」であ
りながら詩作の道へ入り、幸福な結婚をしながらも夫に先立たれ、30年以上も
独居で、亡き夫への想いを温め続けた。韓流ブームのずっとずっと前からハン
グルを学び、詩の同人であり続けた一人の女性。

 俗世にまみれて生き、嫉妬や羨望、エコ贔屓や自分勝手の渦の中で、日々
働いている自分。時には茨木さんの詩を読み返し、その言葉の凛とした美しさ
の中に、人生の指針を得たいと思ってしまう。背筋を伸ばして

 ( 『清冽 詩人茨木のり子の肖像』 後藤正治・著/中央公論新社・2010)
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[2011/02/08 22:39] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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コメント
こんにちは。

偶然ですが、本日ただいま仕事で起こしているインタヴューに茨木さんの詩の引用が出てきまして、茨木さんについて調べていたところでした。

私は寡聞にしてこのかたの詩作をまったく存じ上げませんでしたが、「じぶんの二本足のみで立つ」とか、「自分の感受性は自分で守る」とか、
「この一線はなにがあろうとぜったいに死守」
と私自身思い決めていることばかりで(同じく独居中年でもありますし・笑)、なんだかちょっと味方を得たようで、嬉しくなりました。
昨今流通している「おひとりさま」には正直反撥を覚えますが、生硬で清廉ですらっと自然に背筋の伸びた「独り」というのはとてもすきです。
こちらの評伝も、今度図書館で借りてみます。
[2011/02/09 17:18] URL | レッド #dTuPVub2 [ 編集 ]
レッドさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
おお、お仕事お疲れ様です。どなたのインタビューなのかしらん。。

「味方を得た」という気持ち、とってもよくわかります。
と言うか、私の場合「師を得た」のほうがしっくりくるかな?
最近、いろいろと思い悩むこともあり、いかに生きるべきか、みたいなことを考えていたところでした。
この評伝は、少し綺麗にまとまり過ぎている印象もあるのですが、それが茨木さんの個性であったのだと解釈しています。
映画と読書という、基本「独り」ですることが好きな私も、背筋を伸ばして生きて行きたいな~、と思っています。
是非読んでみて下さいませ。私も、もう少し茨木さんの本(詩集も)読んでみます。
[2011/02/09 23:24] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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