甘やかな家の記憶~『抱擁、あるいはライスには塩を』
抱擁、あるいは

 東京・神谷町にある広大な「お邸」に、三世代10人で暮らす柳島家語り手
と時代を自由に交錯
させながら描かれる、ある「特別な家族」百年の物語

 ロシア人の祖母を持ち、父親と母親の違う兄弟姉妹が仲良く同居。大学入学
までは自宅学習、それでいて男子は東大、女子はお茶の水に進学するのが
「当然」という柳島家。この笑ってしまうくらい超浮世離れした設定に、少々の
違和感を持ちつつ読み進む。江國さんにしては体言止めの少ない文体、各章
一人称で綴られ、ある時代のある出来事が、それぞれの視点で語られる。
しかし、そこにはどこか「傍観者」のような余所余所しさがあり、「当事者」が感
じるはずの生々しさは注意深く排除されている。第三章、北アフリカに滞在す
桐之輔「青さ」にイライラさせられた以外は、乾いているようで湿潤で、
高くも退廃的な江國ワールド
に魅了されてしまった。

 婚家で人格を否定され、声を失くした百合に涙し、誰よりも元気で自由だっ
「桐ちゃん」の死に涙し、光一の恋人・涼子の現代っ子ぶりに笑い、どんな
にお金持ちで教養があって、何不自由のない生活に見えても、人は恋する
ことから(あるいは「運命」から)逃れられない
ことを改めて思い。。

 この、長い長い百年の「家の記憶」が幕を閉じようとしたとき、この家族への
愛着が、自分の中に生まれたことを感じていた。読み終わりたくない。でもど
んな小説もいつかは終わる、人生と同じように。傑作です。

 ( 『抱擁、あるいはライスには塩を』 江國香織・著/集英社・2010)
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テーマ:オススメ本 - ジャンル:小説・文学

[2011/02/01 00:00] | 読書 | トラックバック(2) | コメント(4) |
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コメント
こんばんは。

柳島家が睦子が子どもだった頃のまま
ずっと仲良く暮らせたらいいのにって思ってしまいました。

本当に物語の終わりがきて欲しくないって思ってしまう物語でしたね。
[2011/01/31 21:14] URL | なな #- [ 編集 ]
ななさん、こんばんは。コメント&TBありがとうございます。
家族が一緒に暮らせる時間って、そう長くはないんですよね。。
陸子が身体的に成長しないのも、何かの暗喩なのかな、と思いました。
本当に、ずっと読み続けていたい物語でした。
[2011/02/01 20:30] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは!
前に、これ、真紅さんが、確かベスト10に入れてたよな~って思って、図書館にリクエストしてたの。
真紅さんは、江國さんの小説一杯読んでるのね?^^
私は、今まで、何故かあんまり読んでいないんだ。
がらくた、を2年ほど前に読んだくらいで、あとは短編が雑誌に載ってるのを読んだ程度なんだ。
別に苦手意識とか全然無いんだけど、たまたま。

で、これ。
凄く面白かったー!
百合ちゃん、可哀想だったよね・・・・
是非、あれが最後なんじゃなくて、新しい次の恋をしてもらいたかったんだけどね・・・
あと、真紅さんと同じに、光一君カップルとか、凄く良かったな~。「世之介」に出て来る不思議ちゃんの男バージョンっぽい処もあったかな^^
[2012/05/08 17:19] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさん、おはようございます~。コメント&TBありがとう♪
そうそう、これ去年のベストにいれたよ~。読んでくれてありがとう!と江國さんに成り変わってお礼(笑)。

そうなんです、私江國さんの本は全部読んでいると思う。
最初は『きらきらひかる』だったかな、、『神様のボート』が一番好きかも。
なんか、いいと思うんだけどな~んか縁のない作家さんっているよね~、わかるわかる。
で、これなんだけど私もホント好きだな~。
登場人物がすごく多い群像劇なんだけど、全然混乱しないし解り易いよね。
きっと江國さんの構成力っていうか、全体を俯瞰する才能が凄いんだろうな~って。
明治とか、大正モダンな雰囲気から、昭和、平成って人物像も変化していくのも面白かったね☆
[2012/05/09 07:55] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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「抱擁、あるいはライスには塩を」江國香織
JUGEMテーマ:読書 三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とは―。東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。ロシア人である祖母の存在、子供を学校にやらない教育方針、叔父や叔母まで同居する環境、さらには四人の子供たちのうち二人が父
[2011/01/31 21:15] ナナメモ
「抱擁、あるいはライスには塩を」江國香織 感想
凄く面白かったです。
[2012/05/08 17:13] ポコアポコヤ
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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