果てない憧憬~『恋の風景』

戀之風景
FLOATING LANDSCAPE
香港から中国・青島へやって来たマン(カリーナ・ラム)は、街で出逢った郵便
配達員シャオリエ(リウ・イエ)と一緒に、画家だった亡き恋人サム(イーキン・チ
ェン)が描き遺した画の風景を探し始める。
喪われた恋の記憶の中で生きる一人の女性が、亡き恋人の故郷で新しい恋
と出逢い、再生してゆく物語。やっと観ることができた。郵便配達のやさしいお
兄さん、シャオリエ=リウ・イエに激萌え。マンの悲しみも、サムの痛みも眼中
になく、ただひたすらにリウ・イエを見つめ続けた。心やさしき田舎の朴訥な純
情青年を演じさせたら、彼の右に出る者はいないでしょう。真夜中の自転車散
歩のシーン、最高でした。

この作品を観て、やっとわかった。私はリウ・イエが好きなんじゃなくて(いや
確かに大好きだが)、私は彼に「なりたい」のだと。彼の表情--有無を言わせ
ぬ、真っ直ぐに相手を絡め取るような切なくも艶めかしい漆黒の瞳--あんな
表情で、誰かを、ただ恋する誰かを見つめてみたいと。こんなにも果てしない
憧憬を誰かに抱いたのは、生まれて初めてかもしれない。
だから、リウ・イエが悪役(『天堂口』しかり、『保持通話』しかり)だったり、嫌
な奴(『茉莉花開』)だったり、ひたすら可哀想な役(『紫胡蝶』)だったりする作
品は好きじゃない。彼は、彼にはいつだって、控えめで押しに弱くて、とことん
イタイケでいて欲しい。『お針子』で演じたマーのように、たった一つの恋を何
十年も温め続ける、ある意味「鈍臭い」ひとでいて欲しいのだ。32歳、今や一
児の父となった彼には、欲深く詮無い要求だと、わかってはいるけれど。。

マンが青島で身を寄せる、サムの親戚の女性トンを、黒木瞳似のスー・ジン
が演じている。この作品、プロデューサーは關錦鵬スタンリー・クワン、プロダ
クション・デザインに張叙平ウィリアム・チャンの名前も。『藍宇』と結構、キャス
ト・スタッフが被っているのも新鮮な驚きだった。
( 『恋の風景』 監督・共同脚本:キャロル・ライ/2003・香港、日本、中、仏/
主演:林嘉欣カリーナ・ラム、劉リウ・イエ、鄭伊健イーキン・チェン)
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彼女は両目を失明した女の子です
この世にない風景を探し求めています
彼は天使
いつもひそかに彼女のことを守り、温かな気持ちを抱いています
彼はいつも翼を広げ、彼女のために風や雪をさえぎります
自分の羽が一日、また一日と
抜け落ちてしまうのもかまわず...
2011-01-18 12:08 :
蛇果─hebiichigo─
死んだ画家の恋人が描いた最後の風景を探しに青島を訪れる女性と、彼女に恋心を描く郵便配達員の恋物語「恋の風景」
マンは恋人サムの生まれ故郷で彼の描いた絵の風景を探しに、サムのいとこ、トンのアパートに住み始める。
ある日、マンは一時的な嗅覚障害を起し、ガ...
2011-05-28 22:26 :
日々の書付
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シャオリエだいすきです。
ほんと素敵ですよねこの子は。どんくさくてじれったいところも、自分がそんなに美しいいきものであることに本人まったく気づいていないらしいところも。
「はつ恋」という概念が男の子の姿を借りて青い空の下にふんわりと立っているみたいだなあ、と思いました。『お針子』もですが、リウイエのこういう役をみていると、昔のことをいろいろ思い出してせつなくなります。だから「なりたい」と仰るお気持ちすごくわかります。私も藍宇からずっと、彼にある種の憧憬を投影しつづけています。
プロデューサーが關錦鵬なせいか随所に『藍宇』的な匂いが濃厚で、現在進行形の役者にあまりそういうもの(=心やさしき田舎の朴訥な純情青年)ばかり求めてはいけないと思いつつも、早死にした男の子の面影を、ついつい追いかけてしまいます。
『藍宇』ではついに顔を合わせることがなかった恋のライヴァル(笑)林静平と、「うわー同じシーンでしゃべっとる!」とか、たまらなかったです(笑)。
ほんと素敵ですよねこの子は。どんくさくてじれったいところも、自分がそんなに美しいいきものであることに本人まったく気づいていないらしいところも。
「はつ恋」という概念が男の子の姿を借りて青い空の下にふんわりと立っているみたいだなあ、と思いました。『お針子』もですが、リウイエのこういう役をみていると、昔のことをいろいろ思い出してせつなくなります。だから「なりたい」と仰るお気持ちすごくわかります。私も藍宇からずっと、彼にある種の憧憬を投影しつづけています。
プロデューサーが關錦鵬なせいか随所に『藍宇』的な匂いが濃厚で、現在進行形の役者にあまりそういうもの(=心やさしき田舎の朴訥な純情青年)ばかり求めてはいけないと思いつつも、早死にした男の子の面影を、ついつい追いかけてしまいます。
『藍宇』ではついに顔を合わせることがなかった恋のライヴァル(笑)林静平と、「うわー同じシーンでしゃべっとる!」とか、たまらなかったです(笑)。
レッドさん、こんばんは。コメント&TBありがとうございます。
シャオリエ、本当に素敵でした。
確かに、彼からは自意識ってものを感じませんね。。これはリウ・イエ自身が持つ資質のような気がしてなりません。
私の場合、ここに至って初めてわかったんですよね。自分が藍宇やシャオリエに憧れてるんだ、ってことが。
「はつ恋」かぁ。。遠い目(笑)
この作品に関してはすごくすごく観たかったわりに、情報を必死でシャットアウトしておりました。
故に林静平(違うけど)が登場!したときはもう、ビックリでしたわ。。
スー・ジンさんも思ってたりして。。「あらやだ胡軍さんの彼じゃない」
で、リウくんも、、「この女が捍東をたぶらかしたんだ」とか。。←って妄想し過ぎ^^;
後ほど伺いますね。
シャオリエ、本当に素敵でした。
確かに、彼からは自意識ってものを感じませんね。。これはリウ・イエ自身が持つ資質のような気がしてなりません。
私の場合、ここに至って初めてわかったんですよね。自分が藍宇やシャオリエに憧れてるんだ、ってことが。
「はつ恋」かぁ。。遠い目(笑)
この作品に関してはすごくすごく観たかったわりに、情報を必死でシャットアウトしておりました。
故に林静平(違うけど)が登場!したときはもう、ビックリでしたわ。。
スー・ジンさんも思ってたりして。。「あらやだ胡軍さんの彼じゃない」
で、リウくんも、、「この女が捍東をたぶらかしたんだ」とか。。←って妄想し過ぎ^^;
後ほど伺いますね。