公園生活~『パーク・ライフ』

日比谷公園。地下鉄で話しかけてしまった女と再会した「ぼく」。名前も知らない
彼女との、束の間の時間。
『悪人』で大ブレイクした作家、吉田修一の芥川賞受賞作。併録は『flowers』。
都会に生きる男女の掴みどころのない日常を描いた表題作は、正直「これが芥川
賞?」と思ってしまった(すみません)。しかし、選考委員の村上龍氏によれば、
「現代に特有の居心地の悪さと、不気味なユーモアと、ほんのわずかな、あるの
かどうかさえはっきりしない希望のようなものを獲得することに成功している」らし
い。
『flowers』も共感し難い物語ではあるが、九州出身の主人公(と、その従兄)
がしゃべる九州弁が、『悪人』を思い出させる。小さな会社の中の、複雑怪奇な
人間関係。こういう人たちって、いるんだろうなぁ、、と妙に納得させられる、物
悲しいリアリティ。きっと作者は、年賀状を眺めながらこの物語を思いついたん
だろうな。映画化されたら面白いかも。。
( 『パーク・ライフ』 吉田修一・著/2004・文藝春秋)
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