暗黒物質/DARK MATTER~『アフター・ザ・レイン』

DARK MATTER
中国からアメリカに留学したリウ・シン(劉リウ・イエ)は、並外れた頭脳の持
ち主。「大発見をしてノーベル賞を獲る」という志の下、「超ひも理論」を研究する
ライザー教授(エイダン・クイン)の助手となるリウだったが・・・。
映画『藍宇』のDVD特典インタビューにおいて、「中国人留学生の役でハリウ
ッドからオファーが来ている」とリウ・イエが嬉しそうに語っていたのは、この作品
のことだったのですね。日本では劇場公開はなくDVDスルー、本国アメリカでも
2スクリーンのみという限定公開だった本作。監督も新人、超低予算だと思われ
るこの小さな作品に、アメリカを代表する大女優、メリル・ストリープが出演して
いることに驚く。実話を基にしたという、なんとも苦い後味の作品。もちろんリウ
・イエ目当てで鑑賞。
相変わらずの大きな瞳と長い睫、邪気のない笑顔で、「美しい国」と自らの才能
への希望に満ち満ちた青年を演じるリウ・イエ。尊敬する指導教官を信じ、敬う
彼の心には、一点の曇りもない。その純真さが、かえって観るものに「痛々しさ」
を感じさせることを、リウ・イエ自身は気づいているのだろうか。
実話を基にしているだけに、アカデミックな世界での駆け引きや嫉妬、出世競
争などは「よくある話」だと思う。名声の周りには常に魑魅魍魎が蠢き、終わるこ
とのない椅子取りゲームが繰り広げられる。自らの才能だけを盲目的に信じ、
処世術を身につけられなかったリウ・シンの、純粋が故の不運。しかし、彼の絶
望と心に受けた傷がどれほど深かろうと、それが「よくある話」であるが故に、彼
が最後に取った行動に同情の余地はない。
ジョアンナ(メリル・ストリープ)の頬に触れるリウ・シンの、指の震え、絶望に
縁取られた瞳・・・。世界的大女優相手に、一歩も引けを取らない演技。アジア
にはリウ・イエがいるのだ。
かつて、「藍(色)宇(宙)」という魅惑的な名を持った男の子が、宇宙に潜む
暗黒物質/ダーク・マターを研究する、という符丁。だからこそ、どうせカタカナ
邦題にするのなら、原題のままを採用して欲しかったと思う。リウ・シンが、全身
全霊をかけて明かそうとした宇宙の謎を。

( 『アフター・ザ・レイン』 監督・原案:チェン・シーチェン/
主演:劉リウ・イエ、メリル・ストリープ、エイダン・クイン/2007・USA)
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trackback
コチラの「アフター・ザ・レイン」は、1991年11月1日のアイオワ大学銃乱射事件をモトに製作された社会派ドラマです。てっきりメリル・ストリープが主演なのかと思っちゃって、あら日本劇場未公開の彼女の主演作があったのね~と気軽に見始めたのですが、なかなか重い映
2010-11-17 05:40 :
☆彡映画鑑賞日記☆彡
1991年にアイオワ大学で実際に起きた、中国人留学生による殺人事件をベースにした映画。
事件の概要+映画についてはタイムズのこちらの記事ご参照ください→■(英語です)
劉燁が演じる主人公は、その名を「劉星(Liu Xing/リウ・シン)」という。
しばらく
2010-11-17 13:53 :
蛇果─hebiichigo─
『 アフター・ザ・レイン』
--- DARK MATTER ---
2007年(アメリカ)
監督:チェン・シーチョン
出演:メリル・ストリープ、リウ・イエ、エイダン・クイン
アメリカの大学で起きた銃乱射事件を元にして製作された社会派ドラマ。
真面目な中国の奨学生リゥ(リウ
2010-11-19 22:57 :
こんな映画見ました~
コメントの投稿
こんにちは。
手持ちの劉燁出演作DVDのなかで、もっともリプレイ率が低いのがこの作品です。
映画の作り方(シナリオと演出)そのものに対する不満も大きいのですが(そのあたりは拙文で縷々述べましたが・笑)、こういうふうにしか生きられなかった劉星が、ああ愚かだなあと思いつつもかわいそうで。
ジョアンナにクリームを塗ってあげる場面の、伏せたまつげの美しさいたいたしさったらもう、半端無いですね。
劉星同様に劉燁も、中国から美國(アメリカ)に渡って映画を撮っていたわけで。ふたつの事実に因果関係などまったく無いと承知してはいても、どっかでかぶってしまったり。
そうして、もしも藍宇がアメリカに行けていたら……とか、「でも行けずに死んじゃったんだよな……」とか、あーだこーだ考えだしてしまってずきずきするので、あんまり頻繁に観られないという。
惚れた弱味ですねー(笑)。
先日、『小さな村の小さなダンサー』という映画を観まして。
「中国の男の子が才能ひとつを携えてアメリカへ渡る」
というテーマは同じなのに、描いた軌跡はこうまで違ってしまうのかと。
同じような幸運に恵まれたとしても、最後にはそのひとそれぞれの持つ力の差というものが大きくものを言ってしまうのだろうかと。
これまたこの映画のことを思い合わせて、鑑賞後はちょっとへこんでしまったりしました。
手持ちの劉燁出演作DVDのなかで、もっともリプレイ率が低いのがこの作品です。
映画の作り方(シナリオと演出)そのものに対する不満も大きいのですが(そのあたりは拙文で縷々述べましたが・笑)、こういうふうにしか生きられなかった劉星が、ああ愚かだなあと思いつつもかわいそうで。
ジョアンナにクリームを塗ってあげる場面の、伏せたまつげの美しさいたいたしさったらもう、半端無いですね。
劉星同様に劉燁も、中国から美國(アメリカ)に渡って映画を撮っていたわけで。ふたつの事実に因果関係などまったく無いと承知してはいても、どっかでかぶってしまったり。
そうして、もしも藍宇がアメリカに行けていたら……とか、「でも行けずに死んじゃったんだよな……」とか、あーだこーだ考えだしてしまってずきずきするので、あんまり頻繁に観られないという。
惚れた弱味ですねー(笑)。
先日、『小さな村の小さなダンサー』という映画を観まして。
「中国の男の子が才能ひとつを携えてアメリカへ渡る」
というテーマは同じなのに、描いた軌跡はこうまで違ってしまうのかと。
同じような幸運に恵まれたとしても、最後にはそのひとそれぞれの持つ力の差というものが大きくものを言ってしまうのだろうかと。
これまたこの映画のことを思い合わせて、鑑賞後はちょっとへこんでしまったりしました。
レッドさん、こんばんは! コメント&TBありがとうございます。
このDVDもお持ちなのですね♪ 確かに、リウ・シン物凄く可哀想でした。。
自分は結構キツイこと書いてしまったんですが、やっぱりああいう形での殺人、っていうのはどうしても許されないと思うんですよね。。
りうくんが演じたから、痛々しさ倍音状態でしたね。うるうる
↑画像でも上げましたが、あれは名場面ですね。。
何を観ても、何を読んでも「その人」のことを思ってしまう。
まさに!まさに恋ですね~。あのりうくんの黒い瞳と長い睫毛は、やっぱりどうしても藍宇なんです。私にとっては。
だから悪役とか、どうしても馴染めませんね。。彼の演技力がどうとか、監督の力量がどうとかでは最早なく、私にとってはそうなんです。
藍宇っていう役とりうくんを同一視してるなんて、愚かなことで役者にとってはいい迷惑かもしれませんが、「おんりーふーるずらっしゅいん」ですから。ハハハ。
『小さな村の~』は残念ながら未見です。
また機会を作って是非観てみたいと思います。
ではでは、後ほどお伺いしますね!
このDVDもお持ちなのですね♪ 確かに、リウ・シン物凄く可哀想でした。。
自分は結構キツイこと書いてしまったんですが、やっぱりああいう形での殺人、っていうのはどうしても許されないと思うんですよね。。
りうくんが演じたから、痛々しさ倍音状態でしたね。うるうる
↑画像でも上げましたが、あれは名場面ですね。。
何を観ても、何を読んでも「その人」のことを思ってしまう。
まさに!まさに恋ですね~。あのりうくんの黒い瞳と長い睫毛は、やっぱりどうしても藍宇なんです。私にとっては。
だから悪役とか、どうしても馴染めませんね。。彼の演技力がどうとか、監督の力量がどうとかでは最早なく、私にとってはそうなんです。
藍宇っていう役とりうくんを同一視してるなんて、愚かなことで役者にとってはいい迷惑かもしれませんが、「おんりーふーるずらっしゅいん」ですから。ハハハ。
『小さな村の~』は残念ながら未見です。
また機会を作って是非観てみたいと思います。
ではでは、後ほどお伺いしますね!