天国に一番近い場所~『天上の恋人』

山間の小さな村に赤いアドバルーンが降りてきた日、一人の口が利けない
少女が、兄を探して村にやってくる。彼女の名は玉珍ユイチェン(董潔ドン・ジ
エ)。よそ者を威嚇する男たちから彼女を救ったのは、耳が聞こえない青年
家寛チャークァン(劉リウ・イエ)。同じ日、彼の父親は銃の暴発のため、視
力を失ってしまう。口の利けない少女は、耳の聴こえない青年と目の見えない
父親の家で、同居を始める。
『藍宇』DVDに収録されているインタビューで、劉は「2002年の東京国際
映画祭以来、日本に行っていません」と語っていた。その時にプロモーション
したのは、この作品だったのですね。切り立った山々を望む絶景が印象的な、
ちょっと不思議な味わいの映画でした。
観終わっての率直な印象は、これは『赤い風船』へのオマージュだな、とい
うこと(本当はアドバルーンだけど)。ラストで、家寛が想いを寄せる朱霊チュ
ーリン(陶紅タオ・ホン)が飛んでいくところ、風船が、いつも彼らを見守ってい
るところ。監督が、あの映画をお好きなのではないかな(間違っていたらごめ
んなさい)。
こんな山奥に、一体どうやって暮らしているの? と思うくらい、人里離れた
感のある村。しかし、そこに住む人々の表情は明るく、小さな子どももアディ
ダスのシャツを着ていたりして、貧困に喘ぐような雰囲気ではない。
舞台は、中国広西省チワン族自治区という地域らしい。地図で確認すると、
ベトナムとの国境にある亜熱帯気候で、二期作、三期作も可能という。なるほ
ど、村人たちは豊かに暮らしているわけだ。
清楚で儚げで、それでいて芯の強さも感じさせる、董潔が絶品。若い頃の
宮沢りえちゃんに似ているかな。お目当てのりうくんは、子どものままの心で
成長したような、天真爛漫な青年の役。どうして玉珍の想いに気付かないか
な~、と気を揉んだけれど、あの奇妙なラストシーンの後、きっと彼らの第二
章が始まるのでしょう。
( 『天上の恋人』 監督・脚本:蒋欽民ジャン・チンミン/
主演:劉リウ・イエ、董潔ドン・ジエ/2002・中国)
- 関連記事
-
- 終わりの楽園~『ブラッド・ブラザーズ -天堂口-』 (2010/11/12)
- 天国に一番近い場所~『天上の恋人』 (2010/11/11)
- 前向き、前向き。~『イエスマン “YES”は人生のパスワード』 (2010/10/22)
スポンサーサイト
trackback
中国広西省チワン族自治区の山村。
9歳の時に爆竹工場の爆発事故で母親を失い、そして自らも聴力を失った家寛
(チャークァン)(劉燁:リウ・イエ)は父親と2人暮らし。
しかしその父親も銃の暴発事故で両目を失明してしまう。
そんな2人のもとに現れた1人の可
2010-11-12 10:23 :
龍眼日記 Longan Diary
コメントの投稿
全作制覇の勢いですね!
真紅さん、おはようございます。
こちらの作品のリウ・イエくんは無駄な贅肉が1%もない美しい肢体の青年でしたねぇ。
心は少年のままのような彼が朱霊を好むあたりに男の本能を感じました。
あの唐突なラストシーン・・・
鑑賞したときにはビックリしましたが「赤い風船」へのオマージュですか・・・
そうかもしれませんねぇ。
私は昔中国で実際にあった遊園地でのアドバルーン事故
(女性を乗せたままアドバルーンの安全紐が切れて行方不明になってしまった)を
連想してしまいかなり気分が沈んでしまいました・・・。
こちらの作品のリウ・イエくんは無駄な贅肉が1%もない美しい肢体の青年でしたねぇ。
心は少年のままのような彼が朱霊を好むあたりに男の本能を感じました。
あの唐突なラストシーン・・・
鑑賞したときにはビックリしましたが「赤い風船」へのオマージュですか・・・
そうかもしれませんねぇ。
私は昔中国で実際にあった遊園地でのアドバルーン事故
(女性を乗せたままアドバルーンの安全紐が切れて行方不明になってしまった)を
連想してしまいかなり気分が沈んでしまいました・・・。
sabunoriさん、こんばんは~。こちらにもありがとうございます♪
全作制覇・・・フフフフフ♪ コンプリートできたらしたいですね~。
私、美術の造詣が全くないせいか(一応高校のときは美術選択してたんですが)、皆さんがおっしゃる「骨が」っていうの、あんまり感じないんですよ。
「骨が綺麗」 「手が美しい」 こういう感性って、特に彫刻に詳しかったり、お好きな方が持ってらっしゃるのね~、と羨望しております。
自分の感覚って「背が高くてカッコイイ」止まりですもん(泣)。ナサケネー
まぁ、そんなことはどうでもいいですね、りうくんがステキならそれで。
で、彼の地でそんな恐ろしい事件が本当にあったなんて、全く知りませんでした。。
行方不明っていうのが凄いですね。。
監督は、朱霊を一体どうしたかったのでしょう。。謎
全作制覇・・・フフフフフ♪ コンプリートできたらしたいですね~。
私、美術の造詣が全くないせいか(一応高校のときは美術選択してたんですが)、皆さんがおっしゃる「骨が」っていうの、あんまり感じないんですよ。
「骨が綺麗」 「手が美しい」 こういう感性って、特に彫刻に詳しかったり、お好きな方が持ってらっしゃるのね~、と羨望しております。
自分の感覚って「背が高くてカッコイイ」止まりですもん(泣)。ナサケネー
まぁ、そんなことはどうでもいいですね、りうくんがステキならそれで。
で、彼の地でそんな恐ろしい事件が本当にあったなんて、全く知りませんでした。。
行方不明っていうのが凄いですね。。
監督は、朱霊を一体どうしたかったのでしょう。。謎