村上春樹かく語りき~『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2009』 『考える人 2010年夏号』


作家・村上春樹初めてのインタビュー集。メディアの取材をなかなか受けない
村上春樹が、様々な国の、様々なインタビュアーに語った本音。
「僕たちはふれあい、結びつき、思い出を共有して別れる。この思い出は、僕ら
の心を温め、勇気づけるものです」
春樹さんの言葉を追いながら改めて思ったのは、彼が本当に誠実で謙虚な人
物だ、ということ。言葉の端々から「書くこと」 「作家になれたこと」に対する純粋
な喜びと、感謝の思いが伝わって来る。これほどの世界的名声を得ながら、今
なお作家として成長し、進化しようとする真摯な姿勢に感動すら覚える。私はこ
の人の、この「真面目さ」が好きなのかもしれないと思う。
そしてもう一つ印象的なのは、アメリカの短編小説作家、レイモンド・カーヴァ
ーへの深い愛情と尊敬の念。春樹さんの絶賛の弁にどうしても読みたくなり、
本棚へ走ってカーヴァーの『足もとに流れる深い川』を探した。私が持っている
のは『ぼくが電話をかけている場所』(中公文庫)なので、春樹さんの新訳(カー
ヴァー全集)を探して、読んでみたいと思う。
「あとがき」では、「ある編集者の死」が春樹さんの「個人的なこと」として明か
される。岡みどりさん、亡くなったんだ・・・。彼女は春樹さんのエッセイに、「オ
ガミドリ」さんとして度々登場していた女性編集者だと思う。抑えた筆致に、春樹
さんの深い悲しみと喪失感が溢れていて、涙してしまった。ご冥福をお祈りしま
す。
そして出版は前後するけれども、村上春樹の最新インタビューは『考える人
2010年夏号』で読める。これはもの凄くヴォリュームのある、ファン必読の三
日間に渡る缶詰ロングインタビュー。春樹さんって、小田原のシネコンに車で
行って、朝一の回の映画を観るんだって。近隣在住の方、要チェックですよ?!
( 『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2009』
村上春樹・著/文藝春秋・2010)
( 『考える人 2010年夏号』 新潮社・2010)
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『社会人の本棚』にようこそ。いらっしゃいませ。今回、ご紹介するのはこちら『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集 1997-2009 著/村上春樹』です。 こ ...
2010-12-03 01:51 :
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