女の業~『団地の女学生』
団地の女学生

 38歳の独身女性・美弥は、ミュージシャンになる夢に破れ、生まれ育ち、今も
暮らす団地でホームヘルパーとして働いている。

 伏見憲明さんの作品は、文藝賞を受賞した『魔女の息子』以来。「爪を噛む女」
と、表題作の二編が収録されている。可愛らしい装丁とは裏腹に、女友達に対す
嫉妬や失望、愛憎半ばするドロドロした感情がリアルに描かれていて、何とも
痛い! 表題作よりも、「爪を噛む女」の方がボリュームがあり、印象に残る。
自分が主人公に、より共感できたせいかもしれないけれど。

 若い頃は自分が世界の中心のように生きていたのに、実は自分だけが蚊帳の
だったと、20年経って思い知らされたとしたら。恋人も就職したこともなく、老
いた母を抱えて「ホームレス」になる自分を想像してしまう美弥。忍び寄る更年期
見下していた友の成功、夢破れて乗り遅れた現実・・・。痛い、痛すぎる。女が生
きて行くって、ホントに、つくづく、ややこしい。

 二編ともに団地という生活圏を舞台に、高齢化社会の厳しい現実も描かれてい
る。「遠くの親戚より近くの他人」。血縁の情がアテにならなくなった社会を嘆きな
がら、同時にささやかな希望も提示されている。やり直せないことなんかない
黄昏どきには、なくなったものは必ず姿を現す、と。

 ( 『団地の女学生』 伏見憲明・著/集英社・2010)
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

[2010/10/13 10:52] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<私が寝てる間に・・・~『ナイト&デイ』 | ホーム | 「美しさ」という才能~『シングルマン』>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/tb.php/924-385e0b48
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!