被害者にはなれない~『悪人』 #3
悪人6

 映画悪人を観たとき、何故か心に引っかかるシーンがあった。祐一の母(余貴
美子)
祐一の祖母(樹木希林)に詰め寄るシーン。祐一が、自らを捨てた母に会
っていたのかと驚く祖母に、母は言う。「あの子、ギリギリの生活しよる私から、会う
たんびに金せびるとよ。千円、二千円と」


 どうして、祐一はそんなことしたんだろう? 母に償って欲しかったのか。それと
も母の狂言なのか。それとも、本当にお金が欲しかったのか・・・。映画を観終わっ
ても祐一を悪人だとは全く思わなかった私だけれど、このシーンの解釈だけは謎
だった。しかし原作を読んで、その謎が解けた。

 祐一は佳乃や光代と会う前に、ファッション●ルス勤務の女性にのめり込んで
いた。その女性と互いの母親の話をしていたとき、祐一は言う。「欲しゅうもない
金、せびるの、つらかぁ」 「・・・でもさ、どっちも被害者にはなれんたい」と。

 この場面は、妻夫木聡「原作で一番好きなシーン」に挙げているように、極め
て重要な、本作の「肝」であると思う。祐一の母の嘆き「対」になっていると言って
もいい。この言葉を知って初めて、それまでは推測に過ぎなかった祐一の思い
わかる。彼が、何故光代を殺そうとしたのかが。

 映画では、このヘ●ス嬢のエピソードを丸ごとカットしているため、祐一という
人間の不可解さが描き切れていないように思う。映画のを考えれば仕方のな
いことかもしれないが、せめて光代との会話に置き換えてでも取り入れて欲しか
った大切なセリフだ。

 自らを犠牲にして、大切なものの立場や拠り所を守ろうとする祐一。それは
打算でも憐憫でも反省でもなく、彼自身の、自然な心のありようなのだ。

悪人8
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テーマ:考えさせられた映画 - ジャンル:映画

[2010/09/24 10:23] | 映画 | コメント(2) |
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コメント
またまた今頃のコメで・・・
この作品は地元ロケもあったせいか・
とても気にかかった作品で2回見て来ました。
見るたび、細かい演出が発見出来る作品かも知れませんね。
1回目ではさら~っと見てたシーン・
冒頭のガソリンスタンドで、これから佳乃に会える喜びを
隠しきれない微かな笑みを2回目では見てとれました。

妻夫木くんの一番好きなシーンも含めた
完全版で見てみたいですね。
[2010/12/05 22:21] URL | sanae #- [ 編集 ]
sanaeさん、こちらにもありがとうございます。
2回ご覧になったのですね。何度でも観られる、何度でも観たいと思える作品が、真の名作だと思います。
この映画はとても丁寧に作られた、今年の邦画を代表する作品だと思います。
深津ちゃんの評価が高く、賞なども獲得していますが、最近妻夫木くんも何か受賞したようで、よかったな~と思いました。

↑に書いたエピソードについて何ですが、脚本段階からカットされていたのか、かなり疑問に思っています。
原作者の吉田さんも脚本に携わっているだけに。。。う~ん、謎です。
[2010/12/05 22:59] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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