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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

ぼくらの作文~『悪童日記』

悪童日記

  <大きな町>から、おばあちゃんの住む<小さな町>の外れの家にやってきた
双子「ぼくら」。厳しい自然、戦争の足音、並外れて不潔で吝嗇で、夫殺しの魔女
と呼ばれるおばあちゃん、そして何より彼らが幼い子どもであること。そんな過酷
な環境下
で、「ぼくら」は如何に学習し、鍛錬し、生き延びたか。著者アゴタ・クリス
トフ
の出生地ハンガリーの現代史を背景に、「恐るべき子どもたち」のサバイバル
が活写される、20世紀の残酷童話

 初版の発行から20年近くが過ぎようとしているこの名作を、初めて読み通した。
日本でも話題のベストセラーとなり、本木雅弘(モックン)がこの本を手に『ダ・ヴィ
ンチ』
誌の表紙に登場したこともあったと(私の記憶が確かならば)思うのだが、何
故か未読のままだった。しかし、思わず「あっ」と声を上げてしまうまさに「衝撃の」
ラスト
まで、引き込まれて夢中で読んでしまった。名前を与えられていない主人公
たち、一切の感情移入、自己投影を許さないソリッドな文体、短編の集積のようで
いて、全体が一つの完璧な世界を形作る構成は、恐るべき処女作としか言いよう
がない。主人公の「ぼくら」の作文として、著者は本作中で以下のように宣言する。

 ぼくらには、きわめて単純なルールがある。作文の内容は真実でなければなら
ない、というルールだ。ぼくらが記述するのは、あるがままの事物、ぼくらが見た
こと、ぼくらが聞いたこと、ぼくらが実行したこと、でなければならない。

 感情を定義する言葉は、非常に漠然としている。その種の言葉の使用は避け、
物象や人間や自分自身の描写、つまり事実の忠実な描写だけにとどめたほうが
よい。


 この無骨にして繊細な「作文」を、「悪童日記」と名付けた翻訳者のセンスも素晴
らしい。誰もが驚愕するであろう最後の一文を読み終えた瞬間、心は続編に飛ん
でいた。

 ( 『悪童日記』 アゴタ・クリストフ/著、堀茂樹・訳、早川書房・1991)
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テーマ : 海外小説・翻訳本
ジャンル : 小説・文学

2010-08-25 : 読書 : コメント : 4 : トラックバック : 1
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【本】悪童日記
        『悪童日記』        アゴタ・クリストフ        早川書房【comment】       凄い本を読んでしまったぁ~本書は、いつもお世話になっている『SGA屋物語紹介所』のSGA屋伍一さんのコチラの記事を拝読させて頂いた時に密かにチェッ
2010-08-25 14:28 : ★YUKAの気ままな有閑日記★
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こんにちは~♪
毎日毎日暑いですよね~
少しは涼しくなって欲しいですね♪

先程は心優しいコメントを頂き、どうもありがとうございました!
少し前に悪意のあるコメントをもらってしまい、いつもでしたら、もう少し臨機応変に対応できたと思うのですが、ちょうど忙しい日々が続いていたために心に余裕がなくって、かなり凹んでしまいました。
もうすっかり気持ちを切り替えましたので、マイペースでブログを続けようと思っています♪
真紅さんも嫌な思いをされたことがあるんですね~
お互いめげずに頑張りましょう!

この本ですが、物凄く衝撃を受けました。
今まで読んだことのないような種類の本で、、、2回続けて読んでしまいましたよ(笑)
それから続きの2冊も読了しましたが、あまりにも意外な展開だし、どれが真実で、何が何なのか、、、よく分かりませんでした。とっても面白い話でしたが、私の頭ではとても整理出来ないみたい(汗)、、、だから感想も書かずにいます。
真紅さんがどういう感想を持たれるか楽しみです。
2010-08-25 14:58 : 由香 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。
アゴタ・クリストフ良いですよね!
で、真紅さんの仰る通り、わたしのHNはこの三部作の主人公から頂いています。なんともおこがましいことですが…(汗)。

18歳の時に『ふたりの証拠』を読んで、もの凄い感銘と衝撃を受け、それからずっとわたしはリュカとクラウスに夢中です。
『悪童日記』はその後に読んでいたりしますが…。
このラストの一行、たった一行で全てが変わった鮮やかな終わり方が忘れられません。

あと真紅さんも書いておられますが、翻訳者さんのセンスが良いですね。本文も凄く上手い訳だと思います。
また読み直してみたくなりました。
新作も出しているのかな…。読書はすっかりご無沙汰で恥ずかしい限りです。
2010-08-25 20:33 : リュカ URL : 編集
由香さん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
いや~~~、今年の暑さはハンパないですね。
ほとんど亜熱帯状態、、昼寝が必要です。

KLYさんのところで由香さんが愚痴って(?)らっしゃるのを偶然知って、胸が痛かったです。
私も、ちょうど同じ時期に悩んでいたので、何も力になれませんでしたが・・・。
でも、由香さんちでは皆さんがやさしく由香さんを励ましてらして、私も勇気をいただきました。
ホントホント、お互い頑張りましょうね♪

で、、この本ですが私も一気読みでした。ラストは凄い衝撃ですよね。
私は今『ふたりの証拠』終わって『第三の嘘』途中なんですが、「エエーー、そうやったん?」と驚きの連続です。
意外と言うか、ホント迷宮のような展開で、、、。
また感想アップしますね。
これからも面白い本あったら紹介して下さいね~。
2010-08-26 19:49 : 真紅 URL : 編集
リュカさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうか~、やっぱりそうだったんですか! じゃぁ私はクラウスで(って違うか・・・)。

18歳の頃に読まれていたんですね。
凄いな、、私は自分が18の時にこの物語を読んで、何かを感じ取ることができたのだろうかと思ってしまいます。
しかし、『ふたりの証拠』→『悪童日記』に遡るというのも面白いですね。
このラストは、本当に茫然自失と言うか何と言うか、、、呆気にとられました。

原語で読めない限りは翻訳に頼るしかないわけで、この訳は本当に巧いと私も思いました。
原書に惚れ込んだという翻訳者の方に感謝ですね。
アゴタさんは寡作のようですが、自伝なんかも書かれているようですよ。

しかし、なんで南方なんですか?(笑)
私、降りたことないかも。。じゃあ目印は赤いバラ一輪ね(爆)。
2010-08-26 19:58 : 真紅 URL : 編集
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