聖なるもの/守られたもの~『小さいおうち』
小さいおうち

 昭和5年の春。山形の尋常小学校を卒業したタキは、東京女中奉公に出る。
小説家の「小中先生」のお屋敷に奉公した後、平井家「時子奥様」と過ごした
濃密な日々。戦前・戦中の激動の時代を背景に、市井の人々の暮らしと、東京
の中流家庭
で起こった「ある恋愛事件」が回想される。

 中島京子氏による、第143回直木賞受賞作。タイトルから、バージニア・リー・
バートン
による『ちいさいおうち』が想起されるが、あの名作絵本と本作がどう
関係しているのかは、最終章までのお楽しみ。林真理子ちっくな「家政婦は見
た!」的話
なのかと思いきや、その壮大な仕掛け昭和初期の風俗の見事な
描写には脱帽。お盆休みに読了したのだけれど、読み終わってしばらく、この
物語から現実に戻って来ることができなかった。嗚咽をこらえきれない、心に
残る感動作
です。レトロ切り絵風の装丁も美しい。一読推奨!

ちいさいおうち

 しかしこれは間違いなくドラマか、映画化されるでしょうね。オファー殺到中
でしょうが、時子奥様のキャスティングだけは納得のいくものにしてほしい!
でも正直、今の日本の女優さんの中で誰が適役か、と考えても、なかなか思
いつかないんですけれどもね。。

 タキにとっては、ほとんど人生の全てだったともいえる、平井家での日々。
若く美しい時子奥様と、「そういうことのない」旦那様、奥様の連れ子である恭一
ぼっちゃんと
の暮らし。二間しかない女中部屋を「終の棲家」だと信じていたタキ
は、一体どんな思いで、戦後の長い長い時間を生き抜いたのか。「第三の路」
ゆくしかなかったタキ。彼女を終生さいなんだ後悔、自ら「頭の良い女中」であろ
うとしたあの日の選択、それは愛する人を守ろうという「決意」だったのか、それ
とも・・・。

 答えがないからこそ、余韻のある物語が生まれるのかもしれないですね。

 ( 『小さいおうち』 中島京子・著/文藝春秋・2010)
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[2010/08/22 22:14] | 読書 | トラックバック(5) | コメント(8) |
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コメント
真紅さま
この書籍先日編み物本を買いにジュンク堂へ出掛けた折り目に留まりました
レトロな雰囲気の表紙がヤッパリ〈ちいさいおうち〉を連想させて…
珍しく新刊を手にとりました
全く違うお話だけれど繋がりもあるわけですね…
興味が湧きました
[2010/08/23 13:58] URL | Maria #zrUTCSO. [ 編集 ]
Mariaさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
この本、直木賞獲りましたからジュンク堂でも平積みでしたでしょうか。
装丁がとっても美しいですよね~。実はこの装画にも少々ネタバレが・・・。
『ちいさいおうち』との繋がりについては最終章で詳しく語られています。
この本、本当にオススメですよ~、機会があれば、是非是非読んでみて下さいね♪
[2010/08/23 19:44] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは!
昨日一気読みしました~
直木賞受賞も納得の素晴らしい作品でした。

私もキャスト、誰が良いだろう?って真剣に考えちゃいました。
いまだ時子さんに適任な人が見つかりません・・・。

感想書いたら、またTBさせてね♪
[2011/03/13 15:19] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさん、こちらにもコメントとTBありがとうございます。
この小説、ホント素晴らしかったよね~。昨年に読んだ本のベストだったと思います。
時子さんね、ちょっと前の宮沢りえちゃんとか。。あと無理だけど夏目雅子さんとか。
タキちゃんは、蒼井優ちゃんとか。
彼女、方言しゃべる田舎の女の役ばっかり~、ってこの前テレビで嘆いてたわ。
映画化されるかな。。後ほど伺いますね。
[2011/03/13 21:25] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さんの記事(映画のほう)を読んで、なんとなく心にひっかかっていたところ、本を見つけたので読んでみました。もう何と言ったらいいか、とにかくこの本を読むことができてよかった。そんな思いでいっぱいです。すばらしい一冊に出会えました。どうもありがとう。
なんだか極端にかたよった感想文になってしまいましたがTBさせてください。
[2014/02/14 20:21] URL | 猫茶園 #BFJTYZbE [ 編集 ]
猫茶園さん、こんばんは! コメント&TBありがとうございます。
>もう何と言ったらいいか、とにかくこの本を読むことができてよかった。
>そんな思いでいっぱいです。すばらしい一冊に出会えました。どうもありがとう。
わかります・・・、わかりますとも!!
この小説、本当に素晴らしいですよね。私も猫茶園さんに読んでいただけて本当にうれしいです。
こちらこそ、ありがとうございます。後ほど伺いますね。
[2014/02/14 20:41] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
先に見た映画が私にはどうもピンと来ず、
遅ればせながら原作を読みました。
平井家での日々はタキにとって青春そのものだったのでしょうね。
なんともユーモラスな描写に何度か吹き出してしまいました。

>「第三の路」をゆくしかなかったタキ。
睦子の言葉を思い出したときに鳥肌が立ちました。
もちろん真相はタキにしかわかりませんが・・・。
[2014/03/27 16:58] URL | sannkeneko #0TWQBzwk [ 編集 ]
sannkenekoさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
映画化をきっかけに、この素晴らしい小説がより多くの方に読まれること、とてもうれしく思います。
この小説、本当に素晴らしいですよね。ユーモアももちろんですが、構成の巧みさや昭和風俗の描写など、もう熟練の技だと思います。
映画は、山田洋次監督のものですから。。

「第三の路」 この隠しテーマこそ肝だと思うのですが、山田監督は敢えてそこはぼかしてましたよね。
ちょっと納得行かないんですが、ベルリンで評価されてうやむやになったような気がします^^;
[2014/03/27 21:57] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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凄く面白かったです。5つ☆
[2011/03/13 17:33] ポコアポコヤ
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