闇の中の闇~『ファミリー・シークレット』
ファミリー・シークレット

 2008年2月5日。鎌倉にある柳美里の自宅に、児童相談所から児童福祉司
やってきた。柳美里のブログ記述を読み、全国から通報があったという。

 「なぜわたしは 愛するわが子を叩くのか」。

 作家・柳美里が、カウンセラー・長谷川博一と出会い、自らの生い立ち、過去
の傷、家族との関係に向き合ったノンフィクション
。実は柳美里の息子・タケハ
ルくんと、私の息子は同学年に当たる。柳美里と私も同世代であるので、彼女
『命』四部作は興味深く読んでいた。

 柳美里の生き方や子育てに、決して共感できるわけではない。しかし「他人事
ではない」
という思いは私にもある。上辺はどんなに幸福そうに見える家庭でも、
それぞれ、何らかの「身内の問題」を抱えているだろう。私が育ったのも、そんな
「普通の」家庭だった。

 自分の子は、愛情深く、全身全霊を捧げて子育てしたいと思っていた。もちろ
ん、手を挙げるなんて言語道断。しかし、「子どもは叩いて躾るべき」という考え
方も、残念ながら根強い。「三歳までは動物と一緒だから、叩かれないとわから
ない」
という意見に対して、私は「自分がしてほしくないことは、子どもにもしたく
ない」
と反論するしかなかった。何故、子どもを叩いてはいけないのか? その
ことを感覚ではなく理論的に考えてみたいと思っていたとき、森田ゆりさんの
『しつけと体罰』という本に出会い、随分支えられた思い出がある。

 子育ては本当に難しく、時に苦しい。それは自らの生い立ちや、封印しておき
たい過去と向き合わざるを得ない
からでもある。この10年間、子育てとは、自ら
の幼児期を追体験すること
だと感じてきた。別人格でありながら、子の言動の
全責任は親にある
、というプレッシャーに、時に押し潰されそうになりながら。

 これは傷だらけで生きる一人の女性が、自らと息子との関係を再生するため
に、全存在をかけて過去と真摯に向き合った、まさに「渾身の」ノンフィクション
だと思う。この作品を書くことで、柳美里や読んだ者の人生が生きやすく、軽や
かになるわけでは、決してないだろう。しかし、どうしても書かずには生きていけ
なかった
--、この絶望的なまでの痛みが、ヒリヒリと伝わってくるのだった。

 ( 『ファミリー・シークレット』 柳美里・著/講談社・2010)
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[2010/07/04 11:55] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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コメント
真紅さん、こんにちは^^
そうか~ドラマ見逃しちゃったのね? なんですと?マキメさんのが一番良かったという噂があるのね?
私も再放送は絶対逃さない様にしなくちゃ。
それと、理髪師の戦争帰りの役・冬ソナの・・・全く思い出せない!

で、、、これ。
1週間ほど前に読んだんだけど・・・かなりの衝撃だったわ・・・。まずは彼女の幼い頃のセクハラじじいの話や、痴漢によく遭ってしまった話(これも自らそういう風になるような状況にしむけてる処があったっぽい・・・っていうのにも仰天・・)や、学校の酷いイジメ、放火など、もう絶句・・。

で、ミリさんの息子さんさ、きっと彼女の育て方うんぬんとは無関係に生まれつき、もしかしたら、とても育て難いタイプの性格なのかもしれないな・・・。
元々子育てが苦手っぽい彼女・・・。彼女も、そして彼女の親御さんも、ひとくせあるタイプよね?当然その孫(子)も、そういう血筋を引いているわけで、まっすぐで素直で言う事を良く聞いて育てやすい子が産まれる可能性は低いわな・・・。

でもさ、、やっぱり、ちょっとひどい・・・可哀想だ・・・って思っちゃったよ。
ブログに泣いた子供の写真をアップするなんて・・・。
でも、彼女のあらいざらい書く事でしか昇華できない?サガのようなものは感じたかな・・・。

あとさ、「ゆれる」みたいに、人の記憶っていうのは、あやふやだな・・・って思ったよ(「ゆれる」でも、次男は愛されてない。自分は渓谷に連れてってもらってないって思いこんでたけど、そうじゃなかったよね)
ミリさんが学生の頃、公園に裸で放置されたエピソード。お父さんは全然そういう風に覚えてないみたいよね・・・。あのあたりは、お父さんは知ってるけどごまかしてたのか・・・それとも本当に記憶を勝手に良い様に変えて覚えているのか・・・

また感想を書くことがあったら、TBさせてね。
[2010/10/07 20:57] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさん、こんにちは。コメントありがとう。
私、実は『世にも奇妙な物語』って見たことないんですよ。。なんか、怖そうで(笑)。
でも再放送絶対あるよね~? チェックしないとだな。。

柳さんの本、latifaさんは今まで読んだことあったのかな?
私は何冊か読んでいたからまだマシだったけど、これが初だったらかなりの衝撃だと思うわ~。
いじめとか、虐待とか本当に酷かったみたいだし、妊娠を毎年のように繰り返してた、っていうのも。。
同世代で、子どもも同学年だから何か気になる存在ではあるんだよね。。

息子さん(タケハルくん)はすごく頭の良いお子さんみたいね。
だからこそ難しい部分も大きいと思う。
それに柳さんは創作されてる人だから、作品を生み出すだけでも相当なエネルギーが必要だろうし、子育ては彼女にはかなりの苦行なんじゃないかと私も思う。
育ってきた過程が複雑、というのもあるし。。う~ん、難しいね。

有名人でも、自分のプライベートを隠す人と、さらけ出す人といるよね。
柳さんは、間違いなく後者だよね。
銀色夏生さんもそうなんだけど、子どもとの私生活をオープンにして、生活ごと作品にしてしまう、っていう。
だから、柳さんのブログやHPも作品の一部で、息子さんもそうなってしまってるんだと思う。
これから息子さんがどんどん成長して、それをどう感じるか、だよね。

あと、記憶の改変、っていうのは誰でもあるよね。思い込みっていうか。
でも、いじめとか暴力ってされたほうは忘れないけど、したほうはコロっと忘れたりするじゃない?
柳さんは、すごく辛い幼少時代だったんじゃないかな、と思います。

また感想UPされたら、読ませてね~。チャオ~♪
[2010/10/08 08:24] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いま、図書館で「本の虫宣言」してきた 2010年は実は国民読書年らしいです 日ごろからほとんど活字中毒化してい...
[2010/11/07 21:23] のんびりまったりおばばな毎日
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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