君が僕を見つけた~『1Q84』 【BOOK3】
1Q84-3

 月が空に二つ浮かぶ「1Q84」の世界。そこに迷い込み、互いを求め合う青豆
天吾。彼らは再び出会い、まみえることができるのか? 村上春樹の最新長編、
待望の第三部


 BOOK3の発売日は、1、2と同じく雨だった。今回はずっと以前から書店で予
約していたので、余裕でゲット。夜、ひとりページをめくりながら「今、この日本で、
30万人くらいの人が自分と同じ本を読んでいるんだ」
と思うと、なんともシュール
な気分。思わず空に月が何個浮かんでいるか、確認したくなる。そして世界中の
ハルキストたちに、ちょっとだけ優越感
。ハルキ・ムラカミの新作を、何処の国よ
りも早く母国語で読めることに。日本人に生まれてよかった。

 BOOK1、2を読んだとき、美しきスナイパー・青豆にすっかり感情移入していた
私は、BOOK3の目次を読んだだけで、泣いてしまったのだった。3日間かけてゆ
っくり、じっくり読み進む。そして読み終わった後、しばし軽い虚脱感

 青豆→天吾、と章ごとに交互に語られていた物語は、BOOK3では牛河という
お馴染みのキャラクターを加え、31章からなる。牛河? そう、あの奇妙な容姿
の「闇からの使者」。目次に彼の名を見つけたときは、驚きの一言。しかし誰から
も好かれることのない、孤独な彼の容貌を描写するハルキさんの筆は容赦ない。
徹底して、彼を「忌まわしきもの」のイメージの総体として描こうとしているように
感じて、牛河が気の毒に思えてくるほど。

 今回BOOK3を読む前に、1、2を再読することはしなかったけれど、自然と記憶
が甦ってくる。不思議な話し方をする美少女ふかえり、リトルピープル、空気さな
ぎ、猫の町
。拳銃をくわえた青豆は引き金を引かず、「さきがけ」はリーダーを失
った。そして、青豆の身体にはある「変化」が起こっていた・・・。

 1Q84年の10月から12月を描いた本作は、非常に展開が遅い。主人公の二人
は、一つ所に留まってほとんど行動を起こさず、天吾くんは相変らず徹底して「受け
身」
書き過ぎだと感じてしまうほどの詳細な描写と反復は、登場人物たちの心理
描写
だけで物語をドライブしようという、ハルキさんの新しい挑戦なのかもしれない。
これほどまっすぐでゆるぎなく、純粋な「愛」が描かれたことも。いや、表面的には
究極の純愛物語として読めるかもしれない。しかしこの作品は、ハルキさんなりの
「近過去の総括」なのだと思う。

 大ベストセラーとなり、社会現象を巻き起こした長編小説1Q84は、これで
完結なのだろうか? 4月-6月、7月-9月、10月-12月、とくれば、どうしても1月
-3月
を期待してしまう。そこに描かれるのは前日譚か、それとも「小さきもの」
含めた、三人の物語なのか。

 ( 『1Q84』 【BOOK3】 村上春樹・著/新潮社・2010)
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[2010/04/21 18:27] | 読書 | トラックバック(3) | コメント(4) |
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コメント
真紅さん、こんにちは。
私は、もっと「ゆっくり、じっくり読み進」めています。昨日で半分読み終えたところです。
この本だけは読む楽しみを1日でも多く延ばしたいのです。そんな、大切な本。

[2010/04/22 14:15] URL | 筆致 刻久 #- [ 編集 ]
筆致刻久さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
もう、読み始めると他のことが手に付かないので、3日で読み切ってしまいました。
ゆっくり、じっくり、思い切り堪能なさって下さいませ。
感想も楽しみにしてます~。
[2010/04/22 20:48] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、やっと回って来ました!!
いやあ~~やっぱり真紅さんは、本当のファンなんだなぁ・・・とこの記事読んで、ひしひしとそれを感じちゃったな。
そういわれれば、私たちは真っ先に読む事が出来るんだものね。それに世界中にいる各国のファンの中で、母国語で彼の本を読めるというのは、やっぱり一番幸せな事だよね。

で、青豆、ほんとに良かったね^-^
素直にあの2人の事、祝福と応援したいです。
まさか、こんなにハッピーエンドになれるとは思ってなかったので、ちょっとびっくり(嬉しいびっくりだけど)

ねえ・・・真紅さん、ちゃんと私が文章読んで把握してないせいで解らないだけかもしれないので、恥ずかしいんだけれど・・・
この小説、なんで1984年が舞台なんだと思う? 何か1984年に意味とか、あるのかな?
[2010/10/21 10:51] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさん、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます!
うふふふふ、本当のファンかぁ~、照れる~*^^*
村上春樹の新作を読むときは、ホント「日本人でよかった」と思いますよ。
今ね、ちょうど春樹さんの初インタビュー集を読んでいるんだ。。

私は青豆にホント感情移入していたので、ハッピーエンドはうれしかったですね。
でも、ちょっと動きがなさすぎじゃない?この小説。
彼女の赤ちゃんがどうなったのか、すっごく気になるよ~~~。
続編、書いて欲しいな。。

で、最後のご質問については、latifaさんちでお答えしたいと思います。
ではでは~、後ほど~。
[2010/10/21 22:09] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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「1Q84 BOOK 3」ネタバレ感想
全てネタバレで感想書いていますので、注意です^^
[2010/10/21 10:47] ポコアポコヤ
村上春樹『1Q84 BOOK 3』
1Q84 BOOK 3村上 春樹新潮社このアイテムの詳細を見る 今回は、村上春樹『1Q84 BOOK 3』を紹介します。今回は青豆と天吾の他にbook2で天吾とあっていた牛河の視点が入ります。あんまり話はすすまなかったかなと思う。牛河の視点によって、この話1Q84の世界がどういう話だ...
[2011/02/14 20:44] itchy1976の日記
1Q84 BOOK1~3
村上春樹 著 
[2011/03/25 11:35] Akira's VOICE
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