どれだけ夢に似ているか~『ユングのサウンドトラック』
ユングのサウンドトラック

 音楽家、音楽講師、文筆家としてマルチに活躍する、菊池成孔氏による映画
批評
饒舌で長文な文体、癖のある独特な言葉遣いは川上未映子氏のようで、
クラクラしながら読み進む。映画へのディープな愛情と、過剰な妄想にも似た
音楽の夢。興味のある方は耳を傾けてみて下さい。甘い悪夢が匂い立ちますよ。

 まえがきに続く大日本人 しんぼるがなんともユニーク。こういう視点で
松本人志監督作を論じている人が、他にもいるなら教えてほしい。前者が傑作で、
後者が失敗作だという捉え方自体は目新しいものではないだろうけれど、如何に
して『大日本人』が傑作となり得たのか、松本人志の「無意識」にまで切り込んだ、
封印されかかった「深読み」炸裂している。逆に、『しんぼる』が失敗作だと断罪
する切り口も、なんとも潔くて拍手喝采

 ゴダール、フェリーニ、タランティーノからSATCまで。震撼するほどの博識
隠そうともしない映画と音楽への偏愛ぶり。著者が音楽を担当した『パビリオン
山椒魚』
『パンドラの匣』を未見なことが悔やまれる。両作ともに、監督は「僕の
理想は、一本の映画の中にベルナルド・ベルトルッチとサモ・ハン・キンポーの
世界が同居していること」
と語る冨永昌敬。いつか必ず観ます。

 そして本作の白眉は、やはり『8 1/2』についての解説。「崇拝」という名の滅
びにも似た陶酔が、甘く、美しく満ちる。著者はNINEをどう観たのだろう? 
ダニー・ボイルに言うように、「反省しろ!」と毒づいているのだろうか、ロブ・
マーシャル
に対しても。

 近い将来、既に「映画作家」である「菊池成孔監督作品」が観られますように。

 (『ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本』
                      菊地成孔・著/イースト・プレス・2010)
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テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

[2010/04/02 14:00] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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コメント
真紅さま こんにちは。
蓮池薫さんの前向きで好奇心旺盛な人柄には驚かされ頭が下がる思いですけれど、真紅さまの映画や本に対する好奇心旺盛さにも毎回感服、頭が下がります。さまざまな映画批評本のご紹介がとても嬉しくありがたいです。菊池成孔さんも冨永昌敬さんも私は知りませんでしたが、冨永さんの「ベルトルッチとサモ・ハン・キンポーが同居する世界」ってすごい!私はそういう映画がぜひ見たいです!昔々、スーパーエキセントリックシアターを旗揚げした三宅裕司さんが「ライバルは劇団四季。四季の舞台に‘笑い’が加わったら最強になる」と発言したことがありましたが、そんな感じでしょうか(笑)。真紅さんは少女の頃、ジャッキー・チェンやサモ・ハン・キンポーの映画をご覧になりましたか?私は学生時代にすごく好きだったんです。最近、サモ・ハンはサントリー黒烏龍茶のCMに出演しててとても懐かしいです。あれはサモ・ハンというより(彼のあたり役である)「プロジェクトAのフェイさん」のまま。
映画に対する深い愛は人の数だけあるのですね。貴重な情報をいただきました。感謝いっぱいv-237
[2010/04/02 21:33] URL | メグ #OSjUVFqk [ 編集 ]
メグさん、こんにちは~。コメントありがとうございます!
実はこの本はですね、私が大好きな大阪心斎橋の某書店の「オススメ」として、新聞に取り上げられたんですよ。
その書店は「ベストセラーは置いてません」というポリシーの、カフェも併設されているユニークな場所なんです。
だから、もう絶対読みたい!読むしかない!! と(笑)。
菊池さんは元々ジャズ方面の方なのですが、あまりにも博識で文章も巧いので、東大の講師などもされていたアカデミック方面の方でもあるんですよ。
本も何冊も出されているのですが、私はこれが初めてでした。なんとも個性的な方です。
冨永さんも凄いセンスですよね、爆笑しました。
ジャッキー・チェンの香港時代の作品は、テレビ放映されたものは観たかな?くらいです。
でも、もう知ってて常識、くらいの超大物スターでしたよねー、ジャッキーは。
サモ・ハンは、あのCMは本物らしい!と話題になっていましたね。実はテレビでは観たことないんですが。
ところでこの本はゴダールについてもかなり詳細に論評されているので、映画好きの方には是非読んでいただきたいです。
(私はゴダールはよく知らないんですが、笑)
というわけで、メグさんにも是非オススメですよ~。
[2010/04/02 22:32] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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