最後に辿り着く場所~『コールドマウンテン』
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 チャールズ・フレイジャーのベストセラー小説を、アンソニー・ミンゲラ
映像化したこの作品は、戦争映画であり、恋愛映画でもあり、女同士の友情物語
でもある。南北戦争の末期、南軍兵士であるインマンジュード・ロウ)は、
愛する女性エイダニコール・キッドマン)の元へ帰るために、脱走という重罪
を犯し故郷コールドマウンテンへと向かう。『コールドマウンテン』とは、ノー
スカロライナ州の街の名前であると同時に、「寒山」という中国の修行僧の名前
でもあり、魂が最後に辿り着く場所、という意味もあるという(コメンタリより)。
エイダを助け、友人となり家族となるルビーを演じたレネー・ゼルウィガーは、
本作の演技でアカデミー助演女優賞を受賞している。

以下ネタバレあり
 
 物語は、戦場から脱出したインマンの逃避行と、農場で奮闘するエイダを交互
に描写する。重苦しい場面の連続に沈み込みそうになったとき、救世主のごと
く現れるのがルビー(レネー・ゼルウィガー)だ。親に見捨てられ、自分の足
で強く生きていく術を知り尽くしているルビーによって、お嬢様育ちで生活力
に乏しいエイダは力強く、たくましい女へと変わってゆく。そして、現実的で
精神的世界や芸術には無関心だったルビーも、エイダの朗読する『嵐が丘』に
心を奪われ、やがて恋を知る。一見正反対のエイダとルビーが、互いを尊重し
つつ相手に無いものを与え合い、固い友情を育んでゆく過程
は見応え十分だ。

 片やインマンの苦難の旅路にも、様々な人々との出会いが描かれる。罪深い
牧師(フィリップ・シーモア・ホフマン)、渡し舟の少女(『ドニー・ダーコ』
でジェイクのGF役を演じたジェナ・マローン)、若き未亡人セーラナタリー
・ポートマン
)、北軍の兵士(キリアン・マーフィー)。インマンを支えたの
がエイダへの一筋の愛であり、エイダを支えたのもインマンを「待つ」という
たったひとつの希望だ。そしてその「待つ」ことさえ許されない、戦争未亡人
を演じたナタリー・ポートマンのエピソードがひときわ胸を打つ。互いに温も
りを求めながらも、エイダへの愛に心中立てるインマン。「金物(=剣や銃)
が人間を悪くしている」と、銃に触れることさえ嫌悪していたセーラが、北軍
の、実は心優しい兵士を銃殺してしまう狂気。戦争という暴力の犠牲者である
者が、加害者へとあっけなく転換してしまう恐ろしさ。戦争は兵士だけでなく、
その家族、土地、全てを蹂躙するのだ

 義勇軍に撃たれ、精根尽き果てたように倒れこむインマン。エイダの腕の中
で"I came back."とつぶやき、"I Love You."と返すエイダ。お互いに、その
言葉を言うためだけに生き延びてきた年月を、傷ついたインマンの魂を、真っ
白な雪が覆い尽くす。美しい二人の演技が、素晴らしい

 陽光に溢れた明るいラストには救いを感じた。それでも、ルーカス・ブラッ
ドナルド・サザーランドら、豪華すぎるキャストが並ぶエンドクレジット
が終っても、涙はしばらく止まらなかった

(『コールドマウンテン』監督:アンソニー・ミンゲラ
  主演:ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レネー・ゼルウィガー
                             /2003・USA)
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テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

[2006/09/25 21:50] | DVD/WOWOW | トラックバック(5) | コメント(10) |
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コメント
ああ~、フィリップ・シーモア・ホフマン、あのエロ神父かあ。気が付かなかったよ。

なかなかいい映画でしたよね。ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが出て、レネー・ゼルウィガーと付き合い始めたのよね。
[2006/09/25 22:21] URL | チュチュ姫 #- [ 編集 ]
チュチュ姫さん、コメントありがとう。TBしたんだけどまたダメだったわ。時間置いてまたトライします。
PSH、もうミンゲラ監督の「常連俳優」らしいよ、『リプリー』とこれだけで(コメンタリより)。
ジャック・ホワイト、なかなかいい演技でしたね。『コーヒー&シガレッツ』とこれしか知らないけど、アメリカでは相当、ビッグ・ネームなんでしょうか??
レネーったらオスカーだけじゃなく、彼氏までゲットしたのね。結構ちゃっかりモノ?(笑)
ではでは、また遊びに来てくださいね。ありがとうございました。
[2006/09/25 22:37] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、こんばんは♪
あ、写真のお花がコスモスになってる!!いいですねぇ。
「コールドマウンテン」こんなお話だとは思いませんでした。私もボロボロです。エンドクレジット終わっても私も、ううう・・・えええ・・・と涙が止まりませんでした。魂が消えるまで「愛してる」といい続けるエイダ、ううう・・・。思い出してしまいました。
ルビーとエイダの友情の育まれ方、とってもよかったですね。ひょっとしてノレないんじゃないだろうか、と心配していたのですけど、最初から最後までのめり込んで見てしまいました。私はビデオだったのでコメンタリがなかったのですが、そういう意味があったのですね~。
(TB成功したみたいで一安心です)
[2006/09/25 22:54] URL | 武田 #qs0owOX6 [ 編集 ]
武田さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
ミンゲラ監督は奥様が中国の方らしく、東洋にも興味があるそうです。
この作品でも、日本の演劇や歌舞伎の舞台から参考にした場面がある、ともおっしゃっていました。
長いので、コメンタリ全部は聴いてないのですが。
私は『イングリッシュ・ペイシェント』もとっても好きだったのですよ、あの方以外・・でも乗り越えなければ『嵐が丘』が観れないし。
プロフィールの写真、せめて季節ごとに変えるようにしました。気付いて下さってありがとうございます。
ではでは、次は違うお山でもお会いしましょうね!
[2006/09/25 23:31] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは。
勝手に『冷山』とか言ってたけれど、『寒山』でしたか…(^_^;)
わたしもビデオとBS放送で何度か観ただけなので、コメンタリは未見。惜しいことをしました。

ひとつひとつのエピソードが、豪華なキャストで描かれていて、
それだけでも充分見応えはあるのに、
それにも増して、壮大で切なく悲しく、それでいて勇気を感じるような、
内包される要素が多い物語でしたよね。
嘘みたいに、どんどん涙が流れて自分でもびっくりした覚えがあります。

この作品のルビーが大好きだから、この作品が大好き、という気がします。
[2006/09/25 23:39] URL | 悠雅 #eoZXlpkA [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
コメンタリは監督と編集の方で、俳優さんがいなかったのでそんなに面白くはなかったです。
全部は聴けませんでした、長いし(笑)。
キャストに関しては、「主演クラスがズラリ、夢の豪華キャスト」と監督もおっしゃってました。
キリアンのことを「ブレイク必至の若手」とも。その通りでしたね。
私もルビー大好きです、特に名前が。真紅の赤は消防車の赤でも血の赤でもなく、ルビーの赤なんですよ、誕生石ですもんね。
ではでは、またお話して下さいね。ありがとうございました。
[2006/09/26 09:00] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん★「コールドマウンテン」取り上げてくださってありがとうございます。映画館で観て、その後はDVDを購入して何度も見た映画なんです。そして公開当時に売られていたこの映画のプログラムは(BBMのプログラムに負けず劣らず)素晴しい内容のものでした。主役たちの数々の美しい写真に、ふたりの往復書簡の中から抜粋した印象的な台詞の英文掲載。インマンがたどった道のりの地図や、南北戦争の詳しい解説・・・と盛りだくさんの内容でした。
 “君を想っていたから、暗い淵に落ち込まなかった--”
この台詞に支えられたインマンとエイダの深い深い愛は本当に美しいものですが、私は、ミンゲラ監督が「エイダはルビーのおかげで大地を知り、ルビーはエイダのおかげで空を知る」と表現した「女ふたりの友情」の描き方が好きです。寝しなにエイダがルビーに本を読んで聞かせる場面なんかとくに好きです。
ジュードはこの映画の宣伝で初来日。「大好きな北野武監督の作品に出てみたい」と言って日本人を喜ばせてくれたのを覚えています。前後して来日したレニーはこのとき、すでにでっぷりしていて、今思えばあれは「ブリジット・ジョーンズ」撮影のためだったんだと思います。ニコールの来日はありませんでしたが、この映画の中のニコールの着るドレス、どれも本当に素敵でしたね。演じる役者も、風景も、そしてストーリーも、どれもが美しい映画ってイイですよね!BBMにも共通することですね★
[2006/09/26 21:37] URL | メグ #- [ 編集 ]
メグさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この作品、映画館で観られたのですね。スケールの大きな作品ですから、やはり大きなスクリーンで観ると感動も大きいですよね。
私も女ふたりの友情の描き方、そう、特に朗読のシーン、大好きです!
監督も、この作品でレネーは数々の賞を受けたけれど、それはニコールの「受け」の芝居があったこそだ、とおっしゃっていました。
ニコールもジュードもいい演技でしたよね。ジュードの出演作品をもっと観たいと思います。
ではでは、また遊びに来てくださいね。ありがとうございました。
[2006/09/26 22:10] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
この作品、あまり期待はしてませんでした。文芸映画か、ちょっとなぁ、みたいなかんじで。
でも蓋を開けてみたら、面白くてしょうがない。これ、アンソニー・ミンゲラ監督作品ですよね?「イングリッシュ・ペイシェント」よりずっと面白いです^^娯楽性豊かだし、感動的。
それにやっぱりキャストが豪華!だけじゃなく、みんなが好演してる。そこが素晴らしいんですよね^^レニー・ゼルウィガー(オスカー受賞は納得。彼女の飄々した、力強い存在感は出色)、ナタリー・ポートマン、大好きな、フィリップ・シーモア・ホフマン(彼は何かお茶目な役でしたよね?何かまた新しい彼を見たなぁっていう気がしました)キリアン・マーフィー^^
そして記事を読ませていただいて、めっちゃ感動したのがここです→「銃に触れることさえ嫌悪していたセーラが、北軍の、実は心優しい兵士を銃殺してしまう狂気。戦争という暴力の犠牲者である者が、加害者へとあっけなく転換してしまう恐ろしさ。戦争は兵士だけでなく、その家族、土地、全てを蹂躙するのだ。」。この解釈が僕には読むまでなかったんです。ただ戦争は悲しいな、としか思わなかった。だから、新たな解釈に出会えて嬉しいです。ありがとうございます^^
てか僕バカですよね。それくらい気づけ!ですよねw解釈が浅いんですよ。僕は。情けないです。
また借りて観たいな、と思ってます。長尺も気にならない面白さを持っているし、うん借りよう^^w
[2009/04/10 00:08] URL | マキシ #- [ 編集 ]
マキシさま、こちらにもコメントありがとうございます。
これは、私は観終わったときには恋愛映画として観ていたと思います。
インマン・・・ううう・・・と涙、涙でした。
『イングリッシュ・ペイシェント』もかなり好きですが・・・。
アンソニー・ミンゲラの新作がもう観られないのがほんっとに悲しいですね。
キリアン・マーフィーめっちゃチョイ役でしたね。でも確かに出てたな~。
あと、解釈については人それぞれですし、観たままに感じられればそれでいいと思いますよ。
私はコメンタリを聞いたり、後付けで考えている部分もあります。
映画を観て、心に何かを感じて、その「何か」を持ち続けることが一番大切だと思うんです。
感動しても、泣いても、忘れてしまうんじゃなくて。
心に残すことが大切なんじゃないかな。
「また観たい」って思える作品に出会えるって、いいですよね。
作り手もうれしいと思いますよ、きっと。
ではでは、またです~。
[2009/04/10 19:38] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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コールド マウンテン
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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