美しすぎる女~『抱擁のかけら』
抱擁のかけら


 LOS ABRAZOS ROTOS

 BROKEN EMBRACES


 盲目の脚本家ハリー・ケイン(ルイス・オマール)は、ある日ライ・Xと名乗る男
から映画を共作しようと持ちかけられる。ハリーの記憶は、映画監督として活躍
していた14年前に遡る・・・。

 スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバルが彼のミューズ、ペネロペ・クルスを主演
に迎えて撮った作品。「運命の女」と出逢い、愛し合うもを失い、名前を捨てた
映画監督。過去を封印して生きてきた彼が真実と向き合い、「本当の自分」を取り
戻すまで。複雑な入れ子構造になった人間関係、絡まり合う愛憎の果ての、さり気
ないラストシーン
に感動する。過去を赦し、赦され、狂おしいまでに求め続けた「愛」
は、映画という「作品」昇華する。ハリーとレナ(ペネロペ・クルス)の関係を、複雑
な思いで見守るシングルマザー、ジュディット(ブランカ・ポルティージョ)の視点で
観ていた私は、じんわりと胸が熱くなった。

抱擁のかけら2

 映画監督は世界中に数多存在するけれど、映像を観て「この人の作品」だとわ
かるような、個性的な作家は意外と少ないのかもしれない。ペドロ・アルモドバル
は、そんな数少ない作家の一人。その作品は、直情的で情熱的で、性を超越した
愛憎を包み隠さず描く。思わず引いてしまうような作品もあるけれど、新作が公開
されれば吸い寄せられる。スクリーンの中に彼が残した刻印を眺めながら、やっ
ぱりうれしくなる私。

 を基調にした色彩設計、コントラストのはっきりした「寄り」を多様する映像、
ちょっと「変態ちっく」なテイスト。今回、その「変態テイスト」は富豪の息子、エ
ルネストJr.に振られている。ハリーへの憧憬のあまり、「のぞき魔」と罵られる
ほどのしつこさで盗撮し、ストーカーのようにハリーとレナを追う。自動車事故
を目撃した直後の彼の「動き」は、実にゲイが細かくて、思わず笑ってしまった。
この異様な粘着性は、彼の父親であるレナのパトロンから受け継いだもの。父
を憎みながら、父と同じことを繰り返す息子。。

 個人的には、ジュディットに感情移入して観てしまった。未だ見ぬ父、母一人、
息子一人の関係
『オール・アバウト・マイ・マザー』を思い出させる。クラブで
DJをしている息子ディエゴは、同性愛者なのか? 真実を明かされた後も、母
ジュディットとの濃い絆と愛情が揺るぎなくて。それを異様に感じる人もいるかも
しれないけれど、私はなんだかグッと来てしまった。

抱擁のかけら3

 しかしまぁ、ペネロペ・クルスの美しさときたら・・・!!! この↑画像、髪型
のせいかオードリー・ヘップバーンに似て見える。脱ぎっぷりも凄いし、完璧に
美しい女優
だと思う。もちろん、演技も素晴らしい。『NINE』も楽しみ。

 劇中劇のモチーフになった、アルモドバルの初期の作品は神経衰弱ぎりぎ
りの女たち
燃えるベッドや、赤いスーツの女が懐かしい。「映画は完成させな
ければ」。輝くばかりに美しいレナの姿が、見えないマテオ(ハリー)の瞳に映る。
激情は凪ぎ、映画という永遠が残る。

 ( 『抱擁のかけら』 監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
         主演:ペネロペ・クルス、ルイス・オマール/2009・スペイン)
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[2010/02/12 19:29] | 映画 | トラックバック(27) | コメント(6) |
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コメント
真紅さん、こんばんは!
先ほどはコメント頂きありがとうございました♪
今週はとても暖かい日もあったり、急に寒くなったり、変な気候でしたね~。

「抱擁のかけら」は大阪では4館のみの上映なので、油断していると見逃してしまうのではないかと思って初日に見ました。でも、地元のシネコンはガラガラでした(トホホ)。

見逃す、といえば「牛の鈴音」まだ見てないんですよ~。(シネマート心斎橋では)来週の木曜日で上映が終わっちゃうのに(泣)。
[2010/02/12 23:25] URL | Bell Bottom Blues #1VuCtGsk [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは!
あのシングルマザーの女性の目線でごらんになられたのね・・・。
あの女性が、あのハリーの一番の理解者だった気がするわ・・。
ずっと彼の事長く好きだった人なのかもしれないね・・・。
なんだか切ないよね・・・・。

ハリーは幸せものだよね・・・モテるしさ、結構恵まれてる気がしたわん(^^ゞ
[2010/02/13 10:25] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
Bell Bottom Bluesさん、こんにちは! こちらこそコメントとTBありがとうございます。
TBなんですが、先ほどもう一回飛ばしてみたらOKでした~♪
今年はとにかく寒いですね。。でもだいぶ春らしい日差しになってきたかな?

これ初日にご覧になったのですね~。
シネコンというより、ミニシアターでひっそりと公開される映画のような気がします。
でもシネコンで公開されたら、敷居が下がるんでありがたいんですが。
『牛の鈴音』はね、DVDになったらいいんですけどね。。
自主上映って形でこれからも全国を回りそうですが、いつか是非観て下さい~。
[2010/02/13 15:59] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
latifaさん、こんにちは~。コメントありがとうございます。
そうよ、ジュディットのセリフひとつひとつが切なかったわ・・・。
「自分を苦しめるために・・」うんぬん、、ってセリフ、もう、泣けたわ~。
ジュディットの手を取って語り合いたかったわ(爆)。
ハリー、、完全にアルモドバルが自分を投影してるよね~(笑)。

で、私がドン引きしたのはね、、『B.E.』ですよ。。
ごめん、ガエルくん。。(泣)
[2010/02/13 16:03] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
実に色んなペネロペが見られてよかったです。キュートだったりゴージャスだったり、真面目なスーツだったり。やっぱ何着ても似合うよねぇ。
劇中のレナの美しさはこれで永遠になった訳でまさにこれこそが映画なんですよね。
アルモドバル監督はこの作品でペネロペの色んな美しさを永遠に残そうとしたのかななんて思いました。
[2010/02/14 00:47] URL | KLY #5spKqTaY [ 編集 ]
KLYさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
ペネロペって確かもう30代半ばだと思うのですが、ほんっと~にキュートですよね。
顔がちっちゃくて小柄なイメージだけど、脱いだらスゴイし。
アルモドバルは、彼女の魅力がよくわかっていると思います。お見事でした。
[2010/02/15 09:59] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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