悲しみの果てで「扉」を開く~『ドア・イン・ザ・フロア』
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読んでから観るか、観てから読むか」。原作がある映画の場合、これはかなり重要な
問題。前者なら大抵、「イメージと違う」とがっかりすることになるし、後者なら映像
のイメージを持ちつつ読み進むことになるから、物語の世界に入り込みやすい。しかし
結末がわかってしまっているから、読了する必要性を感じなくなってしまうのが難点だ。
最近では『ジャーヘッド』の原作がそう。あまりにも映画が原作に忠実で、あえなく前半
で挫折。面白い本だとは思ったのだけれど。。
 ジョン・アーヴィングの『未亡人の一年』を原作に持つこの作品は、予告で観たキム・
ベイシンガー
の美しさに惹かれて観たいと思ったけれど、原作が読みたいがために先に
映画を観た、と言えるかもしれない。

 絵本作家であるテッド(ジェフ・ブリッジス)とその妻マリアン(キム・ベイシンガー)
は、娘のルース(エル・ファニング)とともに海辺の家で暮らす。ある夏、作家志望の学生
エディ(ジョン・フォスター)がテッドの助手として雇われ、それぞれの人生が動き始め
る・・・。

 メインキャスト4人が、それぞれ適役でいい。ジェフ・ブリッジスは女好きで、浮気を
繰り返す中年のスケベ親父でありながら、娘の良き父でもあり、内面に苦悩を抱えてい
るテッドをどこか憎めないキャラとして演じることに成功している。テッドがイカ墨で
描いていた絵は、ジェフ・ブリッジス本人によるものだとエンドロールで知り、巻き戻
して観てしまった。『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』ではピアノも
弾いていたし、この人才人なのですね・・。キム・ベイシンガーも衰えない美しさだけ
でなく、悲しみと喪失感で心を閉ざし、娘を愛せない自分に苦しむ母親を演じて説得力
十分。テッドとマリアンに出逢うことで、未知だった大人への「」を開け、新たな世界
を知る代償にイノセンスを喪っていくエディ。彼を演じたジョン・フォスターも好演し
ていると思う。そして何と言ってもエル・ファニング。ダコタ・ファニングの妹だとい
う幼い彼女の奇跡的なかわいらしさと、まだ「生まれる前」=「死後の世界と繋がって
いるかのような名演技。なんという恐るべき姉妹であろう。

 喪失の痛みや悲しみを共有できるたった一人の相手と向き合えない苦しさ。再生を願っ
て産んだ新しい命を愛せない自責の念。マリアンの中で冷たく澱んでいた生命力は、エディ
との関係のなかで温かく流れ始めたのか?亡き息子に似た少年を妻に与えたテッドのほん
とうの願いとは、何だったのか。出逢った瞬間、マリアンに恋したエディの想いは、運命
だったのか、それともただの「ひと夏の恋」に過ぎないのか?「来年の夏は私とどうぞ」
誘惑するかのように髪を下ろす額縁屋の女、それと似たようなものなのか。ラスト、「ドア
・イン・ザ・フロア
」へ消えてゆくテッドは何処へ、何を求めて去ったのか・・。

 この作品は、原作の前半部分のみを映画化したものだという。ジョン・アーヴィング
作品は映画化されたものは観てきたが、小説は読んだことがない。これは読まねばなりま
せぬ


(『ドア・イン・ザ・フロア』監督:トッド・ウィリアムズ/
           主演:キム・ベイシンガージェフ・ブリッジス/2004・USA)
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[2006/09/12 12:29] | DVD/WOWOW | トラックバック(2) | コメント(4) |
<<各方面大絶賛も納得の傑作~『わたしを離さないで』 | ホーム | 人生の黄昏に、何を想う~『日の名残り』>>
コメント
真紅さん、こんにちは。
わたしもこの映画は原作を読みたいが為に観ました。早く読まなければ~と思いながらまだ手を出せないでいます。でも本屋さんでちょっとだけ拾い読みしちゃいました。うう、続きが気になる~。
アーヴィングの小説は少ししか読んでいませんが、わたしは大好きです。『ガープの世界』はわたしの貧相な読書歴の中で今のところ一番光り輝いている作品なのでした。
しかしJ.ブリッジスいいですよね~。しかも多才な方なんですか。ああステキ。
それではこの辺で。
追伸:『日の名残』までBBMに通じていたとは・・・。でも確かにそうだ!!!と納得しまくりです。真紅さんの記事を拝見して猛烈に再見したくなってしまいました。
[2006/09/12 16:25] URL | かいろ #- [ 編集 ]
かいろさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私はJ.アーヴィング未読なのですよ~。長くて←長いのが苦手なのか?
ほんとに、この続きが気になりますよね。
『日の名残り』は、イニスに重なりましたよ(涙)。是非再見して下さいませ。
私もコメンタリを聴いてないので、また観たいと思っています。
うちの母もお気に入りだと言ってました。
またお話しましょうね~、ありがとうございました!
[2006/09/12 19:40] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、こんばんは♪
TBとコメントありがとうございました。
早速レビュー読ませていただきました。
そうなんですよね~。なんとも摑みきれない曖昧模糊とした部分が多すぎたような・・・。原作の1/3では無理もないのかもしれませんね。「未亡人の一年」ぜひぜひ読みたいと思います。またいろいろお話きいてくださいね。
「恋のゆくえ」!!懐かしいです~。ブリッジス兄弟とミシェル・ファイファーでしたね~。
[2006/09/12 23:18] URL | 武田 #qs0owOX6 [ 編集 ]
武田さま、こんにちは。TBとコメントをありがとうございます。
そうですね、これは気合を入れて原作を読まねばなりません。
J.アーヴィング、今までずっと躊躇してきたので、いい機会だと思ってます。
『恋のゆくえ』、あの作品のミシェル・ファイファー溜め息が出るほど綺麗でしたよね。
キム・ベイシンガー、昔トシちゃん(笑)が好みのタイプの女性として名前を挙げていたのを憶えてます。
今も綺麗ですけど、昔は本当に・・、ねぇ。。
ではでは、またお話しましょうね!楽しみにしております。ありがとうございました。
[2006/09/13 01:55] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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ドア・イン・ザ・フロア
『THE DOOR IN THE FLOOR』2004年アメリカ初見。未読ですけど、ジョン・アーヴィング原作(「未亡人の一年」の前半部分が今作品)だそうです。うーん、これは・・・。たった4歳の子どもなのにもかかわらず悲しみの連鎖を背負わされているルース。(可愛い。ダコタ・ファ
[2006/09/12 22:46] 終日暖気
ドア・イン・ザ・フロア
 『悲しみの扉を開けて、 私は、ゆっくり生まれ変わる。』  コチラの「ドア・イン・ザ・フロア」は、アメリカ現代文学の巨匠ジョン・アーヴィングの最高傑作と絶賛される「未亡人の一年」を映画化したR-15指定のヒューマン映画です。  原作は未読なんですが、映画も...
[2008/01/14 08:33] ☆彡映画鑑賞日記☆彡
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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