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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

母親は如何に生きるべきなのか~『クリーン』

クリーン



 CLEAN


 売れない歌手エミリー(マギー・チャン)は、カナダでの巡業中、ドラッグの過剰
摂取
で元スターだった夫リーを亡くす。麻薬所持で服役したエミリーは、かつて
働いていたパリ再出発を期すのだが・・・。

 元祖「アジアの小顔ちゃん」であり、カンヌ映画祭主演女優賞を獲得したこの
作品を最後に半引退状態が続いている張曼玉マギー・チャン。久々に出演する
のでは?と期待していたタランティーノの新作にも登場しないようで、この機会を
逃すともう二度とマギーをスクリーンで拝めないかも。。そんな思いで劇場へ。
彼女の元夫でもあるオリヴィエ・アサイヤス監督作品は初見。

 しかし、マギーといいイ・ヨンエといい、脂の乗り切ったアジアを代表する大女優
の新作が観られないというのは寂しい限り。映画って、いい男が出ていればそれ
でいいってものでもない。いつかまた、スクリーンに大輪の花を咲かせて欲しい。

クリーン2

 落ちぶれた女が子どもとの触れ合いを求め、結局「自分の居場所」に帰ってゆく。
マギーの背中を追うカメラを観ながら、レスラーみたいな話だな、と思っていた。
ミッキー・ロークにはいたく感動させられた私だけれど、残念ながら本作は、さほど
心に沁みる作品というわけでもなく。。前夜の夜更かしも祟って、ひたすら「眠い」
映画だった。
 
 エミリーが夫のリーや、息子のジェイや、自らの歌に対してどれほどの「思い入
れ」
を持っていたのかが、全然伝わってこなかった。だから、ラストシーンのも、
私の心には響いて来なかったんだと思う。4年越しで観たい、観たいと願い続け
てきた作品だっただけに、残念。しかし、エミリーの義父アルブレヒトを演じたニッ
ク・ノルティ
はよかったと思う。息子を亡くし、孫を愛し育てても、結局「おじいちゃ
ん」
でしかない彼。子どもは、母親を求めるものだから・・・。

クリーン3

 心斎橋にあるミニシアターは、大好きな映画館の一つ。単館上映作品が多く、
みなさん本当に、映画がお好きなんだろうな~、という感じのお客さんが多い気
がする。そしてこの作品を観た日は、なんとベビーカーを押した若い女性が鑑賞
していた。

 赤ちゃんは、推定1歳未満児。場内が暗くなって、怖がって泣き出すんじゃな
いか、と私は気が気でない。案の定、ぐずって泣きだす。あやすお母さん。泣き
やまない、立ち上がってあやし始める。


 子どもが生まれてしばらく、本当に長い年月、映画館に行けなかった。だから
私は『千と千尋の神隠し』を映画館で観ていない。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
も観ていない。でも、当時はそれが当たり前のことだと思っていた。

 エミリーは、ジェイ(ジェームズ・デニス)を義両親に預けて、夫とに賭けて
いた。あのままずっとリーが生きていたら、エミリーはジェイをどうしていたのだ
ろう。誰もが母親である前に、一人の人間である、それはわかっているのだけ
れど・・・。英語、フランス語、広東語を自在に操るマギーを見つめながら、どう
してもエミリーに感情移入できない私がいるのだった。

 (『クリーン』 監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
        主演:張曼玉マギー・チャン、ニック・ノルティ/2004・加、仏、英)
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テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

2009-11-04 : 映画 : コメント : 6 : トラックバック : 11
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クリーン
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なんとも奇遇でした!
真紅さん、こんにちは。
これから先この作品を思い出すたびにその内容よりもこの時の劇場内の出来事が
思い起こされそうでなんだかなぁ・・・という気分です。
さて、この作品ですが・・・私もエミリーにまったく感情移入ができずエンディングを迎えてしまいました。
リーが亡くならなければ彼女はジェイを今すぐに引き取ろうとは思わなかったでしょうね。
感想をUPした後で考えたのですが、彼女は親としてジェイを引き取ろうと思ったのではなく、
そばにいてくれる誰かが欲しくてジェイを思い出したのかも。
1人では生きていくのが辛い人間なのかもしれませんね。
そういう人間がいるんだろうなぁとは思うものの、やっぱりエミリーのような女とは
絶対に係わりたくありません~。(笑)
2009-11-04 09:59 : sabunori URL : 編集
sabunoriさん、こんにちは! コメントとTBありがとうございます。
先日は、ホント奇遇でしたね~。
でもあの親子のおかげで同じ場所にいたことがわかって、うれしいやら残念やら。。
実は私、ジェイとエミリーが会う、、ってところで限界で、気づいたらジェイが
「サンフランシスコ、僕が生まれたところでしょ? 連れてって!」と言ってました。。
いつの間に仲良くなってたんやこの親子・・・、と。←寝るな
そうですね~、一人で強く生きていけないと、ショウビズ界では到底成功できないでしょうね。
と、エミリーに冷たい私たち(笑)。
マギーにはいつか復活して欲しいです。。映画でね。
2009-11-04 17:01 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんばんは。
マギーって、結局、イングロリアス・バスターズには出ていないのですかー?!
ええー!残念ですー。

アサイヤスってなにしろアサイヤスなので、基本はヒューマンドラマの人ではないし、なにしろフランス映画なので、良妻賢母な主人公であるはずはなく、そういう意味では、主人公に共感できないというのも納得なのですが、マギーとオリヴィエの大切な記念映画でありますよね。
2009-11-04 23:10 : かえる URL : 編集
真紅さん、お久しぶりです。
いつもトラックバックありがとうございます。(*^-^*

マギーは結局タランティーノの新作には出演しなかったんですね・・・。

>しかし、マギーといいイ・ヨンエといい、脂の乗り切ったアジアを代表する大女優
の新作が観られないというのは寂しい限り。

そうですよね。
やはり、映画界(特にアジア映画)はまだまだ男優が中心のシナリオが多いのかな。
彼女達が演じたいと思う作品がないのかもしれないですね。

私はオリヴィエ・アサイヤス監督作を観たのは『夏時間の庭』が最初で、この作品が2本目でした。
この作品は『夏時間の庭』よりかは物語に動きがあったようにも感じました。
ヒロインに共感は出来なかったけど、
ヒロインの涙の意味について考えさせられ余韻が残る作品でした。


P.S.
真紅さんは大阪だったんですね。
私もシネマート心斎橋へは度々行くんですよ~。
もしかしたら私達、劇場ですれ違っていたかもしれないですね。^^
2009-11-05 01:44 : BC URL : 編集
かえるさん、こんにちは。コメントありがとうございます~。
そうなんですよ、どこかでタラが「泣く泣くカットした」という記事を読んだ気が・・・。
でもまぁ、観てのお楽しみということで。。面白くなかったら返金してくれるらしいし(笑)。

↑記事のミニシアターでアサイヤス特集やるんですよ。。
音楽映画(ドキュメンタリー?)撮ったりしてる人なんですね。。
これはアサイヤスからマギーへの「別れても~好きな人~♪」映画かな、と思ってしまいました。
2009-11-05 22:34 : 真紅 URL : 編集
BCさん、こんにちは~。こちらこそコメントとTBありがとうございます。
出演場面はあったと思うのですが、カットされたとかいう話を聞きました。
ハリウッドでもそうだと思いますが、やっぱり女優に求められるのは若さだったり、美しさだったりですよね。
イ・ヨンエさんも「いい作品だったら出たい」と発言されてるのですが。。
なかなか難しいものがあるのでしょうね。

『夏時間の庭』はかなりの良作だったと聞いています。
観たかったです~、本当に。。
エミリーの涙の意味ですが・・・。
私のような凡人でも、ふとした時にいろんな感情が溢れて、涙が出たりすることってあります。
エミリーも、夫の死や刑務所での出来事や、昔の自分や息子のことが一気に思い出されたのではないでしょうか。

BCさんとは観る映画が結構かぶってるな、と感じていたのですが、そうですか大阪の方なのですね~。
シネマートはよく行きます。テアトルはあまり行けないですが。。
きっとすれ違ってますね~。うふふふふ♪
2009-11-05 22:51 : 真紅 URL : 編集
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