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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

ヒュー様の職人芸~『アバウト・ア・ボーイ』

20060908214437.jpg

 ロマコメにおけるタイプキャスト王ヒュー・グラント。気弱で優柔不断で、ど
こか大人になり切れていない、ダメ男なんだけど憎めないホントはいい奴、しかも
ハンサムだし・・、みたいな。どんな役を演じても、これって、本人??と思わせ
るのは別に素で演じているわけではなくて、彼が巧い俳優だからなのは言うまでも
ない、もはや職人。でももしかしたら、映画製作会社ワーキング・タイトルが作る
映画には、俳優を魅力的に見せる魔法がかかっているからなのかもしれない。

 ロンドンに住む独身男ウィルヒュー・グランド)は、父親がヒットさせたクリス
マス・ソングの印税のおかげで一度も定職に就くことなく、自由気ままな悠々自適
の生活を送っていた。そんな彼の前に、母子家庭に育ついじめられっ子の少年マーカ
ニコラス・ホルト)が現れ、ウィルの生活と内面に少しずつ変化が見え始め・・、
というストーリー。ウィルとマーカス、二人の「少年について」の物語だ。

 映画の冒頭で映し出されるのはウィルの部屋。モデルルームのように整然とした
部屋の壁一面の本棚にヒュー・グラントの影が映る。小道具ひとつひとつに至るま
で凝っていて、プロダクション・デザインが素晴らしい。
 お洒落なウィルに対して、マーカス少年のダサいこと。髪型なんて「どこの鋏で
切ったん?」と聞きたくなるくらいダサい。三角形の眉、ぷっくりしたほっぺ。典型
的ないじめられっ子
だ。いじめを知ったウィルがマーカスを連れ出す先は間違いな
く美容院だと思った(靴屋だったけど)。それでも母親への想いは強く、ママが死
なないように、ママが希望を抱けるように・・と自らを犠牲にしようとする姿には、
ウィルでなくても応援したくなる。気楽な独身貴族であるウィルが、彼と出会い関
わり合うことで、人生における真の幸せとは何か?自分の為だけでなく、誰かの為
に自分を差し出すことを学んでゆく
過程は説得力十分だ。勿論、お涙頂戴でも説教
臭くもなく、様々に伏線をちりばめながらその過程を自然に描いてゆくところがい
い。マーカスを救うため、ウィルがギター片手に自分を「やさしく殺す」場面では、
さすがにウルウルしてしまったけれど。。
 ウィルが恋に落ちるのが、鬱病で菜食主義者のマーカスの母フィオナトニ・コ
レット
)でなく、「才媛」の代名詞のようなレイチェルレイチェル・ワイズ)で
あることも、ロマコメの定石を外していていい!それでいてラストに、フィオナに
も恋人ができる可能性を示唆するところも、いい!

 マーカスが「ふたりじゃダメだ」と言うように、少年が真っ当に育つためには、
いろんなタイプの人間と関わり合うことが不可欠なのだろう。親や祖父母、友達だ
けでなく、時にはウィルのような「おじさん」も必要なのかもしれない。そして実
は、ウィルにもマーカスのような「子ども」が必要だったのだ。ラスト、ウィルの
モノローグ。島(人間)は孤島でなく鎖状であってもいいし、海の下では実は繋が
っているのだと
。マーカスの満面の笑みに、こちらも笑顔になる。髪型は、やっぱ
りダサいけど


(『アバウト・ア・ボーイ』監督:クリス&ポール・ウェイツ/
             主演:ヒュー・グラント、ニコラス・ホルト/2002・USA)
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2006-09-08 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 8 : トラックバック : 5
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アバウト・ア・ボーイ
38歳独身男、12歳母親思いの少年。ふたりの男の物語。
2006-09-09 08:01 : 悠雅的生活
アバウト・ア・ボーイ
親の遺産を相続し、仕事も結婚もせずに悠悠自適の生活を送る38歳の独身男性。そんな彼がある日、本気の恋をしてしまう。果たして、彼が選ぶのは遊び人の生活か、それとも“オトナ”らしい生活か…。イギリスの作家ニック・ホーンビィによる同名小説を映画化した、ヒュー・グ
2006-11-04 11:21 : DVDジャンル別リアルタイム価格情報
アバウト・ア・ボーイ
アバウト・ア・ボーイヒュー・グラント ニック・ホーンビィ ポール・ウェイツ ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2007-01-25売り上げランキング : 16134Amazonで詳しく見る by G-Toolsこの作品、多読で使われる「Pe
2007-01-11 06:15 : Hooray!
アバウト・ア・ボーイ
【ABOUT A BOY】2002年/アメリカ 監督:クリス・ワイツ/ポール・ワイツ   出演:ヒュー・グラント/レイチェル・ワイズ/ニコラス・ホルト/トニー・コレット職を持たずに大ヒットした父親のクリスマスソングの印税
2007-07-14 01:14 : BLACK&WHITE
アバウト・ア・ボーイ
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2008-01-26 19:01 : ☆彡映画鑑賞日記☆彡
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真紅さん、TBとコメントありがとうございました。
そうです!
この作品でいちばん気に入ったのは、ウィルがフィオナに惚れなかったこと。
いくらお話だからって、都合よく落さないことが好きでした。
どんなにダメな部分が多くても、
お母さんが大好きで、お母さんの笑顔を見たい息子の健気さが可愛くて可愛くて…
小さな男の子がお母さんを思うシーンに、とっても弱い悠雅でした。
2006-09-09 08:16 : 悠雅 URL : 編集
悠雅さま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございます。
先日観た『スリング・ブレイド』といい、少年と母の物語には泣かされます。少年のケナゲさに。。
そして両作品とも、そこに「おじさん」がやってくる、という話なんですよね。
ヒュー・グラント大好きです。実生活でも結婚しないのかな~、フフフ。
また遊びに行きますね、ありがとうございました。
2006-09-09 19:37 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは。
実はわたしも記事を書こうかなーと思ってちょっと前観直したばかりだったんです、この映画。公開当時も大好き!と思ったのですが、やっぱりよかったです~。
次第に打ち解けてゆくふたりの距離の縮まり方とか、絶妙ですよね。マーカスが来る頃を見計らってウィルが何も言わずにドアを開ける場面がとても好きです。そしてもちろん流しのギター弾きがマーカス少年を助けにやって来るところ、わたしも泣きました~。ラストの全開の笑顔にも胸が熱くなってしまって、もうもう。最後がステキな笑顔で終わる映画には、名作が多いです!!!
あーまた長くなってしまいました~、それではこの辺で。
2006-09-09 19:57 : かいろ URL : 編集
かいろさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この映画を再見されていたとは・・、相変わらず気が合いますね(嬉)。
よかったですよね~この作品。ホンマ、絶妙なんですよね。ヒュー・グラントってすっごく巧い役者さんだと思いませんか?

ところで、拙記事『スリング・ブレイド』でルーカス・ブラックを思い出されたそうですが、私も今日、一つ再発見したことがあるんです!
『スリング・ブレイド』で母親役だったナタリー・キャナディという女優さんなのですが、「どっかで観たな~」とずっとモヤモヤしていたんです。
でも、今日お風呂の中で思い出しました!『遠い空の向こうに』でジェイクのお母さんを演じた方なのですよ~!ここにもジェイクつながりが!!
ビリー・ボブが「最高の女優だ」と語っておられましたが、確かにいい女優さんですね~。
ちょっとうれしかったので『スリング・ブレイド』の記事にも追記しときました♪
というわけですっかり話がそれてしまいましたが、またお話しましょうね。ありがとうございました。
2006-09-09 22:46 : 真紅 URL : 編集
おはようございます!
TBとコメントありがとうございました~!
実は、ですね。白状しますと・・・e-263マイブログにあの記事を書いた後、検索にて真紅さんのとこにたどりついて、「あ、TBさせてもらおうかな~」と読んでみたら・・・。真紅さんのレビューって、思いが伝わるというか見た人も見てない人もなるほど~と思わせてくれるものがすごくあって、私なんかの駄文をTBさせてもらうのは・・とちょっとくじけて退散してしまいましたv-406
それが真紅さんからTBしていただけて嬉しかったです~!
あ、私も靴屋じゃなく美容院かと思いましたよ!最後は前髪分けてましたけど( ´艸`)あの髪型は笑っちゃいますけど、彼の笑顔はかわいかったです!
長々とごめんなさいe-466
またお邪魔させてくださいね♪
2007-01-11 06:27 : emiママ URL : 編集
emiママさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
いや~、そんな遠慮なさらず!バンバンTBしていただいていいですよ。
コメントもTBも大歓迎です。
さてこの作品、ウィルという「少年」の成長譚として素晴らしいですよね。
ヒュー様がまた巧いんだなぁ。。マーカスもかわいかったんですけどね、髪形がどうも(笑)
あ、今日は待望の11日ですね。『王の男』ご覧になったらまた感想をお聞かせ下さいませ。
私もまたお伺いします、ではでは。
2007-01-11 06:47 : 真紅 URL : 編集
こんばんは。今日も寒いですね。
「アバウト・ア・ボーイ」、なつかしいです。
(天王寺のアポロで見た記憶があります。何年前かな?)
原作者が「ハイ・フィデリティ」のニック・ホーンビーだったので、見に行ったんですが、いい映画でした。
2009-12-21 19:44 : Bell Bottom Blues URL : 編集
Bell Bottom Bluesさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
もうこのままずっと寒いのでしょうかね、、しくしく。。
で、この映画劇場鑑賞されたのですか! 大好きですこの映画。
ニック・ホーンビーお好きなのですね。私は『ハイ・フィデリティ』は未見です。
ず~っと前からHDDには録画してあるんですよ、いつか観たいですー。
2009-12-21 21:25 : 真紅 URL : 編集
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