
ロマコメにおける
タイプキャスト王、
ヒュー・グラント。気弱で優柔不断で、ど
こか大人になり切れていない、ダメ男なんだけど憎めないホントはいい奴、しかも
ハンサムだし・・、みたいな。どんな役を演じても、
これって、本人??と思わせ
るのは別に素で演じているわけではなくて、彼が巧い俳優だからなのは言うまでも
ない、もはや
職人。でももしかしたら、映画製作会社
ワーキング・タイトルが作る
映画には、俳優を魅力的に見せる
魔法がかかっているからなのかもしれない。
ロンドンに住む独身男
ウィル(
ヒュー・グランド)は、父親がヒットさせたクリス
マス・ソングの印税のおかげで一度も定職に就くことなく、自由気ままな悠々自適
の生活を送っていた。そんな彼の前に、母子家庭に育ついじめられっ子の少年
マーカ
ス(
ニコラス・ホルト)が現れ、ウィルの生活と内面に少しずつ変化が見え始め・・、
というストーリー。ウィルとマーカス、二人の「
少年について」の物語だ。
映画の冒頭で映し出されるのはウィルの部屋。モデルルームのように整然とした
部屋の壁一面の本棚にヒュー・グラントの影が映る。小道具ひとつひとつに至るま
で凝っていて、プロダクション・デザインが素晴らしい。
お洒落なウィルに対して、マーカス少年のダサいこと。髪型なんて「どこの鋏で
切ったん?」と聞きたくなるくらいダサい。三角形の眉、ぷっくりしたほっぺ。
典型
的ないじめられっ子だ。いじめを知ったウィルがマーカスを連れ出す先は間違いな
く美容院だと思った(靴屋だったけど)。それでも母親への想いは強く、ママが死
なないように、ママが希望を抱けるように・・と自らを犠牲にしようとする姿には、
ウィルでなくても応援したくなる。気楽な独身貴族であるウィルが、彼と出会い関
わり合うことで、人生における真の幸せとは何か?自分の為だけでなく、
誰かの為
に自分を差し出すことを学んでゆく過程は説得力十分だ。勿論、お涙頂戴でも説教
臭くもなく、様々に伏線をちりばめながらその過程を自然に描いてゆくところがい
い。マーカスを救うため、ウィルがギター片手に自分を「
やさしく殺す」場面では、
さすがにウルウルしてしまったけれど。。
ウィルが恋に落ちるのが、鬱病で菜食主義者のマーカスの母
フィオナ(
トニ・コ
レット)でなく、「
才媛」の代名詞のような
レイチェル(
レイチェル・ワイズ)で
あることも、ロマコメの定石を外していていい!それでいてラストに、フィオナに
も恋人ができる可能性を示唆するところも、いい!
マーカスが「ふたりじゃダメだ」と言うように、少年が真っ当に育つためには、
いろんなタイプの人間と関わり合うことが不可欠なのだろう。親や祖父母、友達だ
けでなく、時にはウィルのような「
おじさん」も必要なのかもしれない。そして実
は、ウィルにもマーカスのような「
子ども」が必要だったのだ。ラスト、ウィルの
モノローグ。
島(人間)は孤島でなく鎖状であってもいいし、海の下では実は繋が
っているのだと。マーカスの満面の笑みに、こちらも笑顔になる。髪型は、
やっぱ
りダサいけど。
(『
アバウト・ア・ボーイ』監督:クリス&ポール・ウェイツ/
主演:
ヒュー・グラント、ニコラス・ホルト/2002・USA)