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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

君がいた永遠~『九月に降る風』

九月に降る風



 九降風

 WINDS OF SEPTEMBER


 1996年、台湾の地方都市、新竹。竹東高校3年のイェン(リディアン・ヴォーン)
は、親友のタン(チャン・チエ)や後輩たちとクループでつるんでいた。

 男女9人の高校生が過ごした、一瞬の夏。恋をし、無邪気に笑い、はしゃぎ合
った、二度と帰らない日々。「台湾発の青春映画に外れなし」私の中で、このジン
クスは生きている。「瑞々しい」という言葉がこれほどピッタリとはまる映画も、そ
う多くはないだろう。いつまでも大切に、胸に抱いていたいような佳作

 「飯島愛、引退早過ぎ」 どうして幸せな時間は、長続きしないのだろう?

九月に降る風2

 タイトルが出る直前、スクリーンに「曾志偉」の文字が映し出されて、え?と驚
く。香港映画界の「ボス」エリック・ツァンがプロデュースしている作品とは知らな
かった。彼は主人公イェンの父親として、出演もしているのだった。

 不良とは言えないまでも、サボリや喫煙は常習犯の7人組。学年はバラバラ
で、初めて見る顔ばかりの彼らの物語について行けるか一瞬、不安がよぎるが、
そんな心配は杞憂だった。

 リーダー格でナンパ男なイェン、その彼女ユン、イェンの親友でありながら、
ユンに密かな想いを寄せるタン。ダブリのヤオシン、NSXのポーチュー、「超人」
チンチャオ。メガネにメタボ体型、いじられキャラのチョンハン、委員長から思い
を寄せられるチーション。屋上に集まりタバコをふかし、夜更けのプールで素っ
裸で泳ぎ、野球観戦する彼ら。連絡手段はポケベル、というのがなんともノス
タルジック。そして彼らのアイドルは、今は亡き飯島愛なのだった。いつも一緒
に過ごし、永遠に続くかのように思われた彼らの友情は、意外な方向へと微妙
に変化してゆく。。

九月に降る風3

 ユンを演じたジェニファー・チュウは、ジョウ・シュンそっくりの可憐さ。彼女に
想いを寄せるタンの、どうしようもない、何処にも行きようがない恋心が切な過
ぎる! 親友の彼女(彼)に惹かれてしまった、という経験を、記憶の片隅にし
まい込んでいる人は案外多いのではないか。渡せなかった手紙、言えなかった
言葉、擦れ違う思い。卒業を待たず去りゆく者、残される者。一筋の涙、バラバ
ラになる仲間たち。しかし、普遍的な青春の痛みを描いたこの映画が苦い後味
だけを残さないのは、砕け散った憧れを呼び戻す奇跡が、最後に用意されてい
るからかもしれない。

 誰もがそれが過ぎ去った時、懐かしさと後悔、もどかしさの混ざり合った複雑
な思いで、自らの青春を回想するだろう。永遠に続くものは何ひとつない、命も、
恋も、友情さえも。しかし、いやだからこそ、一瞬の感情の中に永遠は在る。

 (『九月に降る風』 監督・脚本:トム・リン林書宇
    主演:リディアン・ヴォーン鳳小岳、チャン・チエ張捷/2008・台湾、香港)
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2009-09-19 : 映画 : コメント : 6 : トラックバック : 10
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●『九月に降る風』○ ※ネタバレ有
2008年:台湾映画、トム・リン監督&脚本、エリック・ツァン特別出演&プロデューサー、リディアン・ヴォーン、チャン・チエ主演。
2009-09-19 14:47 : ~青いそよ風が吹く街角~
九月に降る風
1996年台湾の地方都市、新竹の高校。 同級生の恋人がいながらナンパがやめられない希彦(イェン) (鳳小岳:リディアン・ヴォーン)、 希彦の恋人に思いを寄せながらも親友を裏切ることはできず 思いを胸に秘め続ける生真面目な湯(タン)(張捷:チャン・チエ)、 ...
2009-09-19 15:52 : 龍眼日記 Longan Diary
九月に降る風 九降風
また一つ、素晴らしい青春映画が台湾から届けられた。いつも教官室に呼び出される7人組。一緒にプロ野球の応援に行ったり、真夜中のプールに忍びこんで真っ裸で泳いだり、学校をさぼって近くの大きな木の下でたわいもない話をしたり、野球と煙草とバイクと女に興味津々な...
2009-09-19 16:03 : まてぃの徒然映画+雑記
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-----今日の映画、 『九月に降る風』って、どんなお話か、 そのタイトル聞いただけで想像がついちゃう。 そう、これは間違いなく青春映画。 しかも、そのウエットな感じからしてハリウッドじゃないよね。 どうして、いつもこういうノスタルジックなのばかり?って、 ちょ
2009-09-19 17:41 : ラムの大通り
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2009-09-19 21:25 : カノンな日々
九月に降る風
台湾映画界の注目の新鋭トム・リン監督が自身の高校時代を盛り込んで描いた 切なくてほろ苦い青春ドラマ。学年の違う7人の男子学生を取り巻く日常生活 を台湾で実際に起きたプロ野球賭博事件と絡めながら描きつつ、7人の儚くて もろい青春の日々を綴る。1996年、台湾の新..
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「九月に降る風」:上池袋三丁目バス停付近の会話
{/hiyo_en2/}ここに駐車場あるわよ。 {/kaeru_en4/}だから? {/hiyo_en2/}あなたのバイクもここにちゃんと停めたら。 {/kaeru_en4/}バイクなんてどこに停めたっていいだろう。 {/hiyo_en2/}だめだめ。そういう軽々しい意識でいるから事故がなくならないのよ。 {/kaeru_en4...
2009-09-26 18:32 : 【映画がはねたら、都バスに乗って】
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「九月に降る風」★★★★ リディアン・ヴォーン、チャン・チエ、ジェニファー・チュウ、 ワン・ポーチエ、リン・チータイ、シェン・ウェイニエン出演 トム・リン監督、台湾 、107分 、2008年 、2009-08-29公開                     → ...
2009-10-11 01:03 : soramove
九月に降る風
この煌めきが風になる 製作年度 2008年 原題 九降風/WINDS OF SEPTEMBER 製作国・地域 台湾 上映時間 107分 PG-12 プロデューサー エリック・ツァン(曾志偉)、イェ・ルーフェン(葉如芬) 監督・脚本 トム・リン(林書宇) 出演 リディアン・ヴォーン(鳳小岳)/チャン
2009-10-25 12:33 : to Heart
映画評「九月に降る風」
☆☆☆(6点/10点満点中) 2008年台湾映画 監督トム・リン ネタバレあり
2011-10-08 11:33 : プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
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真紅さん、こんにちは。
いやいやいや・・・本当に瑞々しくて清清しくてまさに「青春のひとこま」な作品でしたね。
曾志偉は娘に薦められて脚本を読んで気に入りプロデューサーを買って出たそうですね。
それにこの作品って実は台湾編の他に香港編、中国編もそれぞれあって3部作らしいのです。
中国編については情報がないのですが、香港編もプロデューサーは彼です。
(香港編は購入して観てみようと思っています。待っても公開はされないでしょうしね。)
でもどう考えても出来は台湾編がダントツな気がしますよね。(笑)
ヤンチャだけどまっすぐにぶつかり合う彼らに懐かしさとうらやましさを感じてしまいました。

ユンの屋上で佇む後姿・・・感情が押し殺された小さな肩が切なかったですね。
2009-09-19 15:51 : sabunori URL : 編集
TBありがとうございました
こんにちは。
TBありがとうございました。
「台湾発の青春映画に外れなし」まさにそうですね。
台湾の風土のおかげなのか、瑞々しい感性が滲み出てくるようです。
2009-09-19 16:11 : まてぃ URL : 編集
sabunoriさん、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
いやいやいや、この映画本当によかったですね。。
観てから既に数日経ちますが、いろんなシーンが頭に浮かんできます。
3部作ってすごいですね、どんな風に繋がるのかな??
興味津々だな~。しかし、確かに、台湾編がオリジナルですもんねー。
ボスのお手並み拝見ですね♪
いっつもつるんでブラブラしているようで、勉強もしてる彼らが妙にリアルでした。

あのユンのシーンは、男子たちの「聖域」だった屋上に彼女が昇ることで、青春期の終わりを暗示している、とある方のブログで読みました。
本当に、その通りですよね! いいシーンでした。うるうる
2009-09-19 22:22 : 真紅 URL : 編集
まてぃさん、こんにちは! こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
私は台湾に行ったことはないのですが、どうしてこんな風に瑞々しい青春映画が次々生み出されるのかなー、と不思議に思っています。
いつか必ず訪れて、その秘密に触れてみたいな~、と思っています。
いい映画でした。沁みました。
2009-09-19 22:27 : 真紅 URL : 編集
こんにちは。
いつまでも青臭い映画好きでいたい真紅さんに
ぴったりの映画だったのではないでしょうか。
チラシの絵柄も泣かせます。
2009-09-26 18:35 : ジョー URL : 編集
ジョーさん! そう、そうなんですよ~。
本当に瑞々しく、切なく、痛々しくも愛おしい映画でした。
コメントとTBをありがとうございます。
私もまた伺いますね。
2009-09-27 10:29 : 真紅 URL : 編集
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