モードの先駆者~『ココ・シャネル』

COCO CHANEL
1954年、パリで15年ぶりのコレクションを開いたココ・シャネル(シャーリー・
マクレーン)。しかし、プレスの評価は惨憺たるもの。復活を期すココは、自らの
半生を回想する・・・。
ガブリエル・ココ・シャネル生誕から125年、ブランド発足100周年を記念して、
今年はシャネルの伝記映画がいくつか公開される。その第一弾が本作。劇場
は妙齢のお嬢さん方でほぼ満席、シニア率が高そうな客層でした。
私はシャネル・スーツは一着も持っていないけれど、小物や化粧品はいくつ
か愛用している。やっぱり、女性の永遠の憧れですよね、シャネルって。
期待を胸に鑑賞した本作だったけれど、ちょっと期待外れだったかも。それは、
「マドモワゼル」と呼ばれながらもココが英語をしゃべっている、という違和感だ
けではなくて。

母を亡くし、父に捨てられ孤児院で育ったココ。お針子として身を立てようと働
きに出るも、彼女はたちまち恋に落ちる。相手は上流階級の将校、エチエンヌ
(サガモア・ステヴナン)。このエチエンヌっていう男が、金持ちなだけのとんでも
ない食わせもの(ハンサムだけど)。彼に囲われて過ごした、郊外でのエピソード
が長過ぎる! 「そんなことはどーでもいいから、デザイナーとして自立していった
過程を早く見せてよ!」とイライラしてしまった。
同じフランス人の世界的歌手、エディット・ピアフの生涯を描いた『エディット・ピ
アフ 愛の讃歌』はピアフの「人生=歌」そのものに焦点を当て、若き日々から
晩年までを演じ切ったマリオン・コティヤールの演技も凄かった。しかし回想シーン
から始まる本作は、若き日々の何が、ココの仕事に決定的な転機をもたらしたか
に焦点が当てられず、恋愛エピソードがメインで散漫な印象が否めなかった。
「成功でなく、失敗が人間を強くする。私は逆流を遡って強くなった」。そう語る
ココの激動の半生を、もっと突き詰めて描いて欲しかったと思う。
ココの若い頃を演じたイタリア人女優、バルボラ・ボブローヴァは真木よう子
に似たコケティッシュな雰囲気の女優さん。好感は持てたけれど、ココが放っ
ていたであろうカリスマ性は感じられず、どちらかと言うと平凡な「隣のお姉
さん」的印象。70歳のココを演じたシャーリー・マクレーンはさすがの貫禄だ
けれど、残念ながら希代のファッション・デザイナーのイメージじゃない。「オス
カー女優が主演」という惹句が必要ならば、ヴァネッサ・レッドグレーヴのほう
が適役だったんじゃないだろうか。

、、と、好き勝手なことばっかり長々と書いてしまったけれど、華やかな衣装
やコレクション風景は目の保養でございました。昔は自社ビルでコレクション
を開いていたんだな、とか、ブランドの雰囲気は50年前から、今も変わらず
継承されているんだな、とか。
「香水を選べない女に未来はない」っていう言葉は、耳が痛かった。ただただ、
女性を自由に、楽に生きさせたい、というココの信念を忘れず感謝して、私も
いつかは、シャネル・スーツに腕を通してみたい。
(『ココ・シャネル』 監督:クリスチャン・デュケイ/2008・伊、仏、英/
主演:シャーリー・マクレーン、バルボラ・ボブローヴァ、マルコム・マクダウェル)
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trackback
シャネルを描いた伝記映画はこの他にオドレイ・トトゥが主演の『ココ・アヴァン・シャネル』ももうすぐ日本で公開されるんですよね。それを知らなかった当初は「あれ?シャーリー・マクレーンも出てくるの?」とごっちゃになってました。シャネルのことは学生時代に服装史...
2009-08-20 23:22 :
カノンな日々
『私は流行をつくっているのではない スタイルをつくっているの』
コチラの「ココ・シャネル」は、創業から100年、世界のトップ・ブランドであるシャネルの創業者で、生誕して125周年を迎えたココ・シャネルの生涯を描いた8/8公開のバイオグラフィー映画なのですが
2009-08-20 23:31 :
☆彡映画鑑賞日記☆彡
偉大なデザイナー、ココ・シャネルの伝記映画が相次いでやってくるが、本作はもっともわかりやすい作りではなかろうか。孤児院育ちから、お針子になり、帽子作りで頭角を現した若き日々は、運命の恋人ボイ・カペルの出現によって激変していく。映画は恋愛を中心に語られる...
2009-08-20 23:45 :
映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP
オドレィちゃんのシャネルが楽しみっすね。マッツのストラヴィンスキーもそれは待ち遠しい。今年はココYEAR!ココ・シャネルの伝記映画2本がお目見え。それと、日本公開は来年になるのだけれど、今年のカンヌ映画祭のクロージングを飾ったのもココ・シャネルを描いた作品...
2009-08-21 00:22 :
かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
私は流行をつくっているのではない
スタイルをつくっているの
製作年度 2008年
上映時間 138分
監督 クリスチャン・デュゲイ
出演 シャーリー・マクレーン/バルボラ・ボブローヴァ/マルコム・マクダウェル/マルク・ボウシエ/サガモア・ステヴナン/オリヴィエ・シトリュク...
2009-08-21 01:13 :
to Heart
8月11日、京都シネマにて鑑賞。開場1時間前にチケットを購入しようと行ったところ、すでに6割以上座席は売れている状態。それからあっという間に満席状態となり、立ち見も出るほどの盛況ぶり。お客さんの9割が女性で、しかも年齢層はちょっと高めだ。やはりシャネル...
2009-08-21 01:34 :
銅版画制作の日々
□作品オフィシャルサイト 「ココ・シャネル」□監督 クリスチャン・デュゲイ □脚本 エンリコ・メディオーリ □キャスト シャーリー・マクレーン、バーボラ・ボブローヴァ、マルコム・マクダウェル、サガモア・ステヴナン、オリヴィエ・シトリュク
■鑑賞日 8月
2009-08-21 08:08 :
京の昼寝~♪
{/m_0150/}ランキングクリックしてね{/m_0150/}
←please click
「寝ている時は何を着ているのか」という質問に「シャネルの5番よ」と答えたマリリン・モンロー。
(着る=wearとかけて香水を。裸の意)
そんな世界的大スターにも愛され、今もなおトップに君臨するブラン
2009-08-21 13:28 :
我想一個人映画美的女人blog
「ココ・シャネル」観てきました♪
2009-08-21 22:03 :
きららのきらきら生活
「Coco Chanel」 2008 イタリア/フランス/UK
ココ・シャネルに「アパートの鍵貸します/1960」「愛と喝采の日々/1977」「あの日の指輪を待つきみへ/2007」のシャーリー・マクレーン。
若き日のココ・シャネルに「見つめる女/2004」のバルボラ・ボブローヴァ。
2009-08-21 23:50 :
ヨーロッパ映画を観よう!
{{{ ***STORY*** 2008年 アメリカ
1954年、パリ。空白の15年を経て、復帰コレクションを用意したココ・シャネルのオートクチュール店にはたくさんの評論家や顧客が詰め掛けていた。しかし、コレクションは不評に終わり、
2009-08-25 10:08 :
Cartouche
映画 ココ・シャネル の感想 トップブランドシャネルの創始者でデザイナー、ココ・...
2009-09-06 21:27 :
映画どうでしょう
やっぱり貫禄の差。そらもうこのひとはすごい。 実際のココはもっとスリムですが そんな細かいことはどーでもよくて いやもうなりきってましたね。 さすが、大女優です。 そらこのひととオドレィを比べたらあかんかも。 (わわわわわ) でも、ちょこっとしか出ない、残念・..
2009-09-28 14:09 :
ペパーミントの魔術師
「私は誰にも借りはない。私が感謝する相手は私だけ!それが“シャネル“って名の重みよ!」ファッション界に革命をもたらした世界的なデザイナー、ココ・シャネル。
数々の伝説に彩られた彼女の人生の真実を豪華キャストで感動的に描く。
物語:1954年、パリ。70歳のコ...
2009-09-28 23:14 :
パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
「ココ・アヴァン・シャネル」と比較すれば、この「ココ・シャネル」の方が非常に面白く、そして彼女の心情がよく描けていたと思う。何よりもクリエイターとしての彼女の思いはよく描けていたし、ボーイ・カペルが彼女を支援したのが決して金持ちの道楽や気まぐれではなく...
2009-11-15 22:37 :
映画と出会う・世界が変わる
ココ・シャネル’08:イタリア+フランス+米
◆原題:COCO CHANEL◆監督: クリスチャン・デュゲイ「ヒューマン・トラフィック」(TVM) 「アート オブ ウォー」◆出演: シャーリー・マクレーン 、 バーボラ・ボブローヴァ 、 マルコム・マクダウェル
◆STORY◆1954年、...
2009-12-14 15:50 :
C'est joli~ここちいい毎日を~
私は流行をつくっているのではない スタイルをつくっているの
【関連記事】
「ココ・アヴァン・シャネル」
2010-01-20 22:36 :
Addict allcinema おすすめ映画レビュー
現在でも世界中で愛されるトップブランドの創始者でデザイナー、ココ・シャネルの半生を描く伝記ドラマ。第二次世界大戦後、亡命生活を終えてファッション界へカムバックを果たした1954年以降のシャネルが、自身の駆け出しの時代を追想する2部構成で、世界で最も有名なデ
2010-02-17 02:35 :
サーカスな日々
シャーリー・マクレーン演じるの“現在”よりも、回想シーンの方が多かったんですね
2010-02-23 16:04 :
心の栄養♪映画と英語のジョーク
☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年フランス=イタリア=アメリカ映画 監督クリスチャン・デュゲイ
ネタバレあり
2010-06-14 16:21 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
【COCO CHANEL】 2009/08/08公開 アメリカ/イタリア/フランス 138分監督:クリスチャン・デュゲイ出演:シャーリー・マクレーン、バルボラ・ボブローヴァ、マルコム・マクダウェル、サガモア・ステヴナン、オリヴィエ・シトリュク1954年、パリ。15年の沈黙を経て、復帰
2010-07-13 12:49 :
映画鑑賞★日記・・・
現在でも世界中で愛されるトップブランドの創始者でデザイナー、ココ・シャネルの半生を描く伝記ドラマ。監督はクリスチャン・デュゲイ、キャストはシャーリー・マクレーン、バルボラ・ボブローヴァ、マルコム・マクダウェル他。
<あらすじ>
1954年のパリ。空白の15年...
2011-11-26 10:47 :
Yuhiの読書日記+α
コメントの投稿
真紅さん、こんばんは。
私もピアフのことを思い出しつつ、しばしば歯がゆさを感じながらの鑑賞となりました、
私は最初から期待はしていなかったのですが、それでも、この長さがちょっと苦痛だったりしました。
でも、まぁ、『ココ・アヴァン・シャネル』に向けての予習ができてよかったです♪
私もピアフのことを思い出しつつ、しばしば歯がゆさを感じながらの鑑賞となりました、
私は最初から期待はしていなかったのですが、それでも、この長さがちょっと苦痛だったりしました。
でも、まぁ、『ココ・アヴァン・シャネル』に向けての予習ができてよかったです♪
かえるさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
TV映画だと知っていれば、もう少し別の見方ができたのでしょうが・・・。
確かに長すぎですよね。もっと、ココの仕事人な部分に焦点を当てて欲しかったです。
だからこその、あの名言(放言?)の数々なのに・・・。
次に期待ですね、ホント。
TV映画だと知っていれば、もう少し別の見方ができたのでしょうが・・・。
確かに長すぎですよね。もっと、ココの仕事人な部分に焦点を当てて欲しかったです。
だからこその、あの名言(放言?)の数々なのに・・・。
次に期待ですね、ホント。
こんにちは♪
こんにちは、真紅さん。
何度か記事は拝見しておりましたが、初めてコメント、TBになるでしょうか。
よろしくお願いします。
TVドラマだということで、おそらくは編集されているのでしょうが、
やはりエチエンヌとのエピが長かった印象がありましたね。
中途半端なメロドラマな部分がクローズアップされた印象です。
>あの名言(放言?)の数々
受けました(^^;同感ですもの。
何度か記事は拝見しておりましたが、初めてコメント、TBになるでしょうか。
よろしくお願いします。
TVドラマだということで、おそらくは編集されているのでしょうが、
やはりエチエンヌとのエピが長かった印象がありましたね。
中途半端なメロドラマな部分がクローズアップされた印象です。
>あの名言(放言?)の数々
受けました(^^;同感ですもの。
きらさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
初めましてですね、こちらこそよろしくお願いします!
そうなんですよ~、私はテレビ映画とは知らずに観たので、ちょっと違和感がありました。
エンドロールも一瞬で終わり、「え??」って。
ホント、メロドラマでしたね~。
ココの偉業を描いてこそ、彼女の言葉が生きてくると思うのですが・・・。
あれではただの「ワガママなマダム」ですね。70歳でも「マドモワゼル」って呼ばれてましたが。
オドレイ嬢バージョンに期待ですね~。
初めましてですね、こちらこそよろしくお願いします!
そうなんですよ~、私はテレビ映画とは知らずに観たので、ちょっと違和感がありました。
エンドロールも一瞬で終わり、「え??」って。
ホント、メロドラマでしたね~。
ココの偉業を描いてこそ、彼女の言葉が生きてくると思うのですが・・・。
あれではただの「ワガママなマダム」ですね。70歳でも「マドモワゼル」って呼ばれてましたが。
オドレイ嬢バージョンに期待ですね~。
「ココ・アヴァン・シャネル」に期待です(^^ゞ
こんばんは、真紅さん(^O^)/
今日はBunkamuraル・シネマで映画を観ることにしたのですが、この映画と「クララ・シューマン 愛の協奏曲」をやっていて、こちらの記事を読んでいたのでクララの方を観てきました(^^ゞ
「クララ・シューマン~」すごく見ごたえがあったのでおすすめです。
シャネルの方は9月封切りの「ココ・アヴァン・シャネル」で観ようと思っています。
今日はBunkamuraル・シネマで映画を観ることにしたのですが、この映画と「クララ・シューマン 愛の協奏曲」をやっていて、こちらの記事を読んでいたのでクララの方を観てきました(^^ゞ
「クララ・シューマン~」すごく見ごたえがあったのでおすすめです。
シャネルの方は9月封切りの「ココ・アヴァン・シャネル」で観ようと思っています。
ぴかちゅうさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ええ~、そうなんですか! ネタバレですみません~~。。
『クララ~』は大阪では来月公開なんですよ。
観に行けるかはちょっと微妙なんですが、いい作品らしいですね♪
ぴかちゅうさんが堪能できて何よりです。『ココ・シャネル』はね、私はいまいちでしたから・・。
私も、気持ちを切り替えてシャネルはオドレイ嬢バージョンに期待してます!
ええ~、そうなんですか! ネタバレですみません~~。。
『クララ~』は大阪では来月公開なんですよ。
観に行けるかはちょっと微妙なんですが、いい作品らしいですね♪
ぴかちゅうさんが堪能できて何よりです。『ココ・シャネル』はね、私はいまいちでしたから・・。
私も、気持ちを切り替えてシャネルはオドレイ嬢バージョンに期待してます!