ある職場の風景~『ここに消えない会話がある』
ここに消えない会話がある

 新聞のラテ欄を作る配信会社に勤務する広田は、見た目オタク系の青年。同じ
職場のは小説を書いている。二人は25歳。

 ここのところ精力的に作品を発表している、山崎ナオコーラの新作。どこにで
もありそうな会社の、職場の風景と人間模様を描いた「職場小説」。とても薄い
小説なので、読む人によっては「何コレ?」な内容かもしれない。しかし、正社員
と契約社員の待遇の格差や、いわゆる「草食系」な男子の生態が描かれ、今と
いう「時代」の空気を上手に捉えている作品だと思う。文章は相変わらず詩的で
的確で、巧い
です。広田と岸の視点がいつのまにか入れ替わっているところなど、
技あり。ナオコーラーな私としては、この小説も好きです。 そういえば、
何かでも配信会社が舞台だったことがあるな。表紙の写真がとてもユニークなの
だけれど、読めばその意味がわかります。

 山崎ナオコーラの小説は、一貫して「人より得をしたり、時間を節約したり、お金
をたくさん儲けたりして、それが何?」
と言わんばかり。日本で二番目に偏差値が
高い大学(京大、多分)を出ても、正社員として働いていない広田。そんなこと全然、
オッケーでしょう
、というナオコーラのつぶやきが聞こえてきそう。

 「先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人生を成熟へと向かわせるわけではな
い。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ」


 名言ですね。

 (『ここに消えない会話がある』 山崎ナオコーラ・著/集英社・2008)
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[2009/08/17 18:29] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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