さよなら子どもたち~『骸骨ビルの庭』
骸骨ビルの庭上骸骨ビルの庭下

 大阪・十三に建つ、通称「骸骨ビル」。戦後の混乱期、このビルで多数の戦争
孤児
を引き取り、育てた二人の男がいた。

 宮本輝の小説は、新刊が出ると必ず、癖のように必ず読む。最初に読んだ彼
の小説が何だったのか、もう記憶の彼方ではある。しかし、同時代を生きる人間
としていつまでも気になる存在の、輝さん。新作は「無償の善意」とは何か、が
テーマの長編小説。

 8月5日付の朝日新聞朝刊に、各書誌、絶賛の書評とともにこの小説の一面
広告
が載っていて驚いた。小説の一面広告って、あまり記憶にない。。

 宮本輝の小説は、『流転の海』シリーズなどを除けば、近年は物語そのもの
よりも、作者がどうしても伝えたい「言葉」のために書かれているような気がす
る。本作で言えば、「魂魄」だとか「永遠性」だとか。物語よりも先に言葉があっ
て、その言葉を肉付けしていくために物語があるような。本作も、そんな印象
だった。

 正直、主人公・八木沢省三郎(ヤギショウはん)に人間的魅力が感じられず、
彼の日記形式で進む物語は「一気読み」させてくれるような剛脚ではない。し
かし、ラストの怒涛の展開、静かな凪から感動の嵐が沸き起こる運びはさすが、
と言うしかない。

 子育ては、私にとっても「祈り」そのものかもしれない。この子をお守り下さい、
この子が今日一日、楽しく過ごせますように。ランドセルを背負った後姿を見送
りながら、自分だけの神様に祈る。未熟な人間が、新しい一人の人間を育てる
という「使命」を仰せつかったとき、必要なのは絶対君主ではなくむしろ、謙虚
でひた向きな献身
なのだろう。

 涼しくなったら、十三にねぎ焼きでも食べに行こうかな。骸骨ビルは、もうない
けど。

 (『骸骨ビルの庭』上・下 宮本輝・著/2009・講談社)
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

[2009/08/06 23:51] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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コメント
剛脚ではないとは、巧い表現です。
謙虚でひた向きな献身がどんどんど失われている私のような者が読むべき本なのだろうと思います。暑い日が続きそうですが、風邪などひかれませんようにご自愛なさいませ。かしこ
[2009/08/07 10:19] URL | ふる #- [ 編集 ]
ふるさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
お久しぶりにコメ&TBさせていただいたので、ちょっとキンチョーしてしまいました。
私も、つい自分本位なので、自らを省みつつ、子育てについて改めて考えさせられてしまった本でした。
ふるさんもご自愛下さいね!
[2009/08/07 10:44] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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『骸骨ビルの庭』宮本輝
「骸骨ビルの庭」(上下)宮本輝 講談社 2009年 (初出群像2006年6月号~2009年2月号) 久しぶりにずっしりと来た。 大阪にある通称骸骨ビル。怪しい人たちが暮らしている。彼らの立ち退きのために送り込まれてきた私。骸骨ビルのオーナーだったパパちゃん、そこで育...
[2009/08/07 00:59] ふるちんの「頭の中は魑魅魍魎」
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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