人生の音楽~『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』
夜想曲集


 Nocturnes:

 Five Stories of Music and Nightfall



 by Kazuo Ishiguro


  「次にノーベル文学賞を受賞するのは、ハルキ・ムラカミとカズオ・イシグロの
どちらか?」
なんて誰が言ってるのかは知らないけれど、この日本生まれの英国
人作家
の作品が世界的に受け入れられ、読まれていることは誰もが認めるところ。
村上春樹がカズオ・イシグロの熱心な読者であることも知られている。
 その初の短編集が本作。副題にもあるとおり、音楽をテーマに、失われた愛、届
かなかった想い、叶えられなかった夢が綴られる。5つの曲を集めた、一枚のコン
セプト・アルバム
のような作品。ちなみに本作にも1Q84で流れるヤナーチェク
の名前が登場する。世界的作家同士のシンクロニシティについて、思いを馳せず
にはいられなかった。

 老歌手 Crooner
 降っても晴れても Come Rain or Come Shine
 モールバンヒルズ Malvern Hills
 夜想曲 Nocturne
 チェリスト Cellists

 正直、こんなにも「笑える」「面白い」小説だとは思っていなかった。オープニ
ングとラストの「老歌手」「チェリスト」は、イシグロらしい「物悲しさ」が勝るけ
れど、その間に挟まれた三篇は何度声に出して、声を殺して笑ったか。それ
でいて、どこか後を引く余韻が残る。短いけれど印象的な、忘れられない出
来事のような、一日の終わりにふと思い出す、今はもういないあの人のよう
な・・・。

 それがきっとカズオ・イシグロの優れた点なのかもしれないけれど、彼の小説
映像のように、頭の中で立ち上がってくる。特に「降っても晴れても」「夜想
曲」
は、このままでも面白い映画にできそう。

 スラップスティック・コメディのノリの「夜想曲」は、ジャック・ブラックとパトリ
シア・クラークソン主演
で。「降っても晴れても」の主人公は、ヒュー・グラント
しかいないでしょう。彼の友人夫婦は、ティルダ・スウィントンと・・・、うーん、
うーーーん、コリン・ファースじゃブリジョになってしまうけど、まぁ、いいか。

 (『夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』 カズオ・イシグロ著/
                      土屋政雄・訳/早川書房・2009)
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[2009/07/24 00:57] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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