閉じた街で~『森に眠る魚』
森に眠る魚

 東京都心の街に住む5人の母親。子どもを介しての彼女たちの交流は、「お受験」
を意識し始めた頃から徐々に変容してゆく・・・。

 『森に眠る魚』と聞いて、柳美里『石に泳ぐ魚』を連想した。角田さんと柳氏は
交流があると聞いたことがあるので、影響されるところもあったのかな。

 角田光代さんの著作を読むのは初めて。直木賞を受賞した人気作家であること
は十分わかっていたのだけれど、何故かこれまで触手が動かず・・・。しかし、本作
は是非読みたいと思い、図書館の長い長い予約リストに名を連ねたのです。

 物語は冒頭、早いテンポで5人の登場人物が紹介される。繭子、容子、千花、瞳、
かおり
(かおりは「江田かおり」なので、江國香織がモデル?と思ってしまった)。
それぞれに家庭を持ち、妻であり母である彼女たち。

 ほんの数年前に「幼稚園ママ」の世界を卒業したばかりである自分には、痛々し
いほどリアルな物語だった。読んでいていささかゲンナリする小説ではあるのだけ
れど、夢中で読み耽る。私はどちらかというと付き合い下手で、踏み台にされがち
なタイプだったなぁ、と思いながら。デフォルメされているとはいえ、彼女たちのよう
な人、現実にいっぱいいると思う。

 作者の人物造形で好ましいと思ったのは、主人公たち一人一人を平面的な人物
には描いていないこと。誰もが意識することなく持っている「表」と「裏」の顔。一人
ひとりを善玉/悪役という型にはめることなく、それぞれの人物の性格や状況を
多角的に描写してゆく。誰もが、この5人の誰かを「知っている」と思うだろうし、
誰かに「似ている」と感じるだろう。自分を重ね合わせる人もいるかもしれない。

 なんだか、読んでいて「家庭って一体何だろう?」と思ってしまった。彼女たちは
一番身近なはずの「夫」に、何も話そうとしない。教育問題で意見が一致する夫婦
って、少ないのかな・・・。しかし本作に登場する旦那さんは、みんな「いい人」に描
かれている。モラハラ夫でも、DV夫でもない、やさしいお父さんなイメージ。それで
も、彼女たちの理解者にはなり得ないという、この不条理

 主人公が迷い込んだと感じる深い森。自分が生きるべきではない場所で、泳ぐ
こともできずに眠る魚。彼女たちが「水を得た魚」になれる日は、来るのかな・・・。

 (『森に眠る魚』 角田光代・著/双葉社・2008)
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テーマ:考えさせられる本 - ジャンル:本・雑誌

[2009/06/25 19:17] | 読書 | トラックバック(3) | コメント(8) |
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コメント
お邪魔します~
ゲンナリという気持ちわかります。
小説でも同じ世界を経験ですからね。
幼稚園時代が一番、濃い付き合いを
強いられるような気がしますよね。子と親が
一体で行動する場面も多いですし、
どうしても●●ちゃんのママ的になりがちですよね。そうそう、夫たちは皆、無力でしたね。
子供の教育は妻にっていう意識があるのかしら。人は人っていう感じでもう少し
おおらかに子育てしたらいいのに・・・と思うものの、その場にいると流されちゃうんですよね。
自分も気をつけようと思えた小説でした。
柳美里の『石に泳ぐ魚」・・話題になった小説
でしたよね。読んでみたいな。
あ・・・映画の感想待っています★
[2009/06/25 21:20] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは~!
石に泳ぐ魚っていう本は知らなかった~。柳さんの本は2冊くらいしか読んだことがないのだけれど、角田さんと交流があるっていうのが、妙につかめないというか不思議な感じがする~^^

ところで、鋭い・・・。確かに旦那さんは彼女らの悩みを聞いてあげるとか、なかったよね。
でもさあ、現実問題として、私の回りを見ても、こういうママ友達だの、なんだのの話を旦那に相談してるとか、話してるって人、多分いなかったと思う・・・。

上にみみこさんが来ていらっしゃるわ~^^
前にみみこさんとお話したことがあって、「ぐいぐい回りを押しのけてでも、強気に出たもん勝ち・・」みたいな女性って時々見かける気がするんだな・・・。そういう人がいるかと思えば、真紅さんが「踏み台にされがちな」っておっしゃっていたように遠慮がちだったが為に・・・って人もいるよね。でも、結構みんな、ちゃ~んと見てると思うわ・・・^^

私は、妄想はなはだしいけど(^^ゞ 同じ幼稚園とか公園に、真紅さんや、みみこさんとかがいたらなぁ~仲良くなれたよな~って思うわ♪

角田さんのお話では「八日目の蝉」ってのがお薦め!!真紅さんなら、きっとはまって読んで頂けそうな予感♪
[2009/06/26 12:21] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
みみこさん、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
子どもには、必ず親が付いてくるわけで。。。
私も、幼稚園じゃなくて保育園に入れればよかったな~って思います。
保育園も、送迎とか行事などは大変みたいですが、働ける分気が紛れそう。。
幼稚園ママの世界ってホント独特ですよね~。
一体、誰があの空気を支配しているんだろう・・・。謎です。
私は、○○ちゃんのママ、っていう呼び方が苦手で。。
呼ぶことは決してなかったです。呼ばれたら仕方ないけど。
人づきあい、難しいですね。だから余計に、友だちは大切にしたです。
『石に泳ぐ魚』、判決後の改定版を読んだのです。。
正直、あまり記憶には残ってないかな。。
映画の感想、時間あるときアップしますね~。
[2009/06/26 15:44] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
latifaさん、こちらにもありがとう~。
柳さんと角田さん、確か一緒に写っている写真を観たことがあるような気が・・・。
柳さんの何かの本の解説を、角田さんが書いてたような気もするし・・・。
なんせ記憶が曖昧なんですよ~。
でも、あんまり共通点なさそうな気がしますよね、確かに。
タイプが違うというか。。

旦那さんって、仕事でもう目一杯で、聞き流す、、って感じの人が多いのかな?
なんか、旦那さんたちの存在が薄いな~って思ったんですよ。
かおりは、結婚前からね、アレだし・・・。そういう人って、結構いるのかな?
絶対、バレてそうな気がするんだけどな~。

私も、繭子みたいに「いらないもの下さい」とか言われて、あげたらもう付き合いも終わり、みたいなことがあったんですよ。
かおりが千花にされたようなこともあったし・・・。
(注:私は不倫はしてないですよ!)
ホント、いろんな人いるよね~。常識って人それぞれだわ。。
私も、latifaさんやみみこさんとお会いしたいな~って思うよ。。

『八日目の蝉』ですね、ラジャー♪ 早速図書館行きます~。
[2009/06/26 15:53] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは。
真紅さんが、角田光代著作が初めてときいて、びっくりです。でもこれから角田ワールドも楽しめるから幸せですね。
私の押すお勧めの1冊は、latifaさんと同じく「八日目の蝉」です。読み始めたら、やめられませんよ。
ではまた~
[2009/06/26 21:27] URL | 筆致 刻久 #- [ 編集 ]
筆致刻久さん、こんにちは! コメントありがとうございます!!
何故か、角田さんの小説には縁がなかったのですよ~。
筆致刻久さんも、角田さんお好きなのですね。
文章にとても力があって、巧い作家さんだと思いました。
そして今日、図書館で『八日目の蝉』借りてきました!
読むのが楽しみです~、ワクワク♪
[2009/06/27 21:27] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんにちは♪
登場人物たちはデフォルメされていたとはいえ、自分の中のある部分だったり、友人のある部分だったり、似た人や似た経験が誰の中にも必ずあるような気がしました。
私の同級生で、子供を授かるのがとっても遅かった子がいるのですが、今「森に眠る魚」生活真っ最中なのです。
世代が違うママさんたちとは全く価値観が違うって先日も私に愚痴ってました。
通り過ぎてみてつらつら考えると子育てって二度としたくないかも~。
[2009/07/14 09:01] URL | ミチ #0eCMEFRs [ 編集 ]
ミチさん、こちらにもコメントありがとうございます。
子育てって絶対に自己犠牲が伴いますよね。
子どもには漏れなく母親がついてくるし、本当に苦行かも・・。
私は、実は子どもを幼稚園でなく保育園に入れなかったことが失敗だったと思っています。
でも、それって自分の都合なんですよね。働けばよかったと思ってるだけで。
私も、生まれ変わったら男がいいなぁ。
[2009/07/14 13:27] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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森に眠る魚     著   角田光代 東京の文教地区の町で出会った5人の母親。 育児を通して「ママ友」として、日々親しくなっていく...
[2009/06/25 21:22] ちょっとお話
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未読の方は注意してください。今回は、ネタバレ部分を白文字で書かずに、思った事全部書いちゃってます!!99年に起きた「文京区幼女殺人事件」を連想させられる小説。
[2009/06/26 12:26] ポコアポコヤ
「森に眠る魚」 「三月の招待状」 角田光代
{/book/}「森に眠る魚」 角田光代   ミチ的堪能度 ★★★★ この小説は、1999年に東京都文京区で二歳の女の子が母親の“ママ友”に殺・害された事件をモチーフにしてあります。 主な登場人物は、同じ年頃の子供を持つ主婦5人。 幼稚園が同じだったり、住んでい
[2009/07/14 08:57] ミチの雑記帳
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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