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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

ここでしか生きられない~『レスラー』

レスラー


 THE WRESTLER


 80年代に栄華を誇り、今は落ちぶれたトレイラーパーク暮らしのプロレスラー、
ランディ”ザ・ラム”ロビンソン(ミッキー・ローク)
。プロモーターから20年前の
「伝説の一戦」のリマッチを提案されるが、彼は長年の無理がたたり、心臓
発作を起こしてしまう・・・。

 ダーレン・アロノフスキーが「ミッキー・ローク主演」に拘ったという人生ドラマ。
かつての「セクシー・スター」の大復活劇にも驚いたが、あのファウンテン
のダーレン・アロノフスキーが、こんなにもストレートに心震わせる映画を作っ
たことにも驚かされた。第65回ヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞を皮切りに、
世界中で多くの映画賞を受賞している。

 この映画について語る前に、6月13日、まさに本作公開日に亡くなったプロレ
スラー、ノア社長にして2代目タイガーマスクこと三沢光晴さんについて触れな
いわけにはいかないだろう。謹んでご冥福をお祈りします。

レスラー3


 80年代という時代をリアルに生きてきたか、そうでないかで、もしかすると
この映画から受ける印象は変わってくるのかもしれない。実は私は、中高生
の頃マット・ディロンの大ファンで、なんとファンクラブにも入会していた(私設
だったのですぐに解散したのだが)。マット見たさに出かけた『ランブルフィッ
シュ
』で、ミッキー・ロークという俳優を知った。

 甘くかすれた囁くような声、ニヒルなようで愛嬌のある瞳。コッポラによって
「発見」された彼のその後の活躍は目覚まし、く『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』
『ナインハーフ』『エンゼル・ハート』
などは全てリアルタイムで観ている。

 彼の転落の原因は何だったのか。ボクサーになってみたり、整形疑惑が取り
沙汰されたり。真相は定かでないが、近年の彼は俳優というよりは「キワモノ」
的な扱い
をされていたように思う。そんな彼が身体を張って演じたからこそ、こ
の作品には映画というフェイク以上の何かが宿っているように見えた。

レスラー2

 監督は、ミッキー・ローク=ランディの背中をひたすら追う。家族もなく、
孤独と貧困にまみれながら、プロレスラーとしての誇りだけは失っていない
一人の男。満身創痍で、片耳には補聴器、膝にも肘にもサポーターをグル
グル巻きにして、それでも彼の居場所は四角いリングしかない。

 一度スポットライトを浴びた人間は、その恍惚を忘れ難いものなのだろう。
いや、ランディが忘れようとしても忘れられなかったのは、血を流し、痛め
つけられながらも、ひたすらリングの上で闘ってこそ得られる高揚感だった
のかもしれない。

 命知らずだと人は言う。過酷な人生だと人は言う。それでも、どれほどの
血を流そうと、プロレスラーとしてしか生きられない男の生き様はどうだ! 
不器用でバカな奴だと、嗤うやつは嗤うがいい。父親でもなく、惣菜売場
の店員でもなく、俺はただ「レスラー」なんだと。たとえ惚れた女が止めよ
うと、生きることは止められない。リング以外の「外の世界」で生きることは、
彼にとっては「死」に等しいのだから。 

 情の深いスト●ッパー、キャシディ=パムを演じたマリサ・トメイがまた、
素晴らしい。その土曜日、7時58分に続いて、セ●シー過ぎる肢体を晒
しての大熱演。本作を観て、ショーン・ペンでなく、ミッキー・ロークにこそ
オスカーをあげるべきだったと思ったし、マリサ・トメイも、助演女優賞に
値する名演技
だったと思う。彼女が演じたのは、9歳の男の子を持つシング
ルマザー
であり、トウの立ったス●リッパー。ランディへの想いに揺れなが
らも公私に一線を引き、懸命に自らのプライドを守ろうとする姿が胸を打つ。
この映画のマイサ・トメイは、働く母親に必要なのは「勇気と自己犠牲」だと
教えてくれた、とティルダ・スゥイントンが語ったように。

 ランディの渾身の(そして恐らく最後の)跳躍スローモーションで捕らえ、
スクリーンは暗転する。「ボス」ブルース・スプリングスティーン無償で提供
したという主題歌が流れる間、誰も席を立たなかった。そして劇場が明るく
なっても、私はしばらく動けなかった。

 (『レスラー』監督・製作:ダーレン・アロノフスキー/2008・米、仏/
     主演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド
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テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

2009-06-18 : 映画 : コメント : 18 :
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真紅さん、こんばんは!
働く母に必要なのは、勇気と自己犠牲っての、解るわ~。世界各国どこの国でも、女性が自分だけのお金で子供を育てて行くっていうの、はんぱじゃなく大変だし、その為に色々なものを諦めざろうえないと思うわ・・・。

私は、この映画で何故か、きょーしろーの事が、ちょっと頭によぎったんだ・・・。
そうなんだ~、マット・ディロンの大ファンだったのね?^^ カッコ良かったもんね。でもね、私は最近の彼も渋カッコ良くて若い時よりむしろ好きかもしれないな~。
2009-06-18 18:55 : latifa URL : 編集
真紅さんこんばんは!
先日はお祝いコメントをありがとうございました♪

いつもありがとうございます★これからも仲良くして下さいね★

ミッキー、凄かったとしかいいようがないですよね!
マリサトメイの助演もすごく良かったし、プロレス興味ないわたしでも楽しめちゃいました。

あとはそれにプラスしたBスプリングスティーンの曲!
観て良かったです~★
2009-06-18 19:52 : mig URL : 編集
latifaさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
そうそう、シングルで(親の援助とかなくて)子育てしてる人は大変よね。。
私はまだまだ自己犠牲が足りないと反省の日々です。
キヨシローかぁ、そういえばそうだね。。
でも彼は、メジャーで、温かい家庭もあったよね。
マット・ディロンは、恥ずかしいけど初めて好きになった海外の俳優さんかも??
でも、今も昔と全く変わらぬ素敵さで、私も今でも好きだわ~♪
2009-06-18 20:31 : 真紅 URL : 編集
migさん、こんにちは~。こちらこそコメントとTBありがとう。
こちらこそ、いつもmigさんの記事楽しませてもらってます☆
今後ともよろしくです~。

この映画、私もホント、観てよかったと思った~。
男性一人で来てる方が多かったです。たくさんの人に観て欲しいですね!
あのエンディング曲は、『グラン・トリノ』に匹敵する感動だったな~。
心震えましたね。みんな、身動き一つしてなかったもん。
今年のベスト作の一本かも?
2009-06-18 20:35 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんばんは!
ミッキー・ローク復活でしょうか?
これっきりにならないでコレからも映画出演して欲しいですね。
さてエンディングのB・スプリングスティーンのテーマは最高!!でしたね。
私が観たシアターでも誰も席を立ちませんでした。
マリサ・トメイのポール・ダンスに女優のスゴさを見ましたわ。
2009-06-20 00:14 : margot2005 URL : 編集
真紅さん、
あなたもそう思いましたか!わたしも絶対に
このミッキー・ロークこそがオスカーをもらうべきだと思います。
あの冷たい娘に対してやさしく微笑む彼の笑顔が今でも忘れられません。
2009-06-21 23:16 : Bean URL : 編集
margot2005さん、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
ミッキー・ローク、早速『アイアンマン2』の悪役にオファーされているようですね。
あの跳躍から暗転し、ボスの「1,2,3,4・・・」から始まるエンディングは素晴らしかった。
涙、涙でした。
マリサ・トメイと二人で、肉体をさらけ出しての大熱演。
俳優魂を見ましたね。
2009-06-22 11:20 : 真紅 URL : 編集
Beanさん、はい!そう思いましたとも!!
ショーンの演技も確かに素晴らしかった、しかし・・・。
ランディになり切り、身体を張ったミッキー・ローク。
一世一代とはまさにこのことでしょう。
2009-06-22 11:22 : 真紅 URL : 編集
初めまして!
こんにちは!
いつも拝見して、TBを試みておりましたが。
コピーが上手くいかず(汗)
テンプレートを変えられたので、今回は
いれることが出来ました。ミッキー・ロークの
復活に喜んでいるひとりです。これを機に活躍を期待しています。またお邪魔します!
2009-06-23 10:28 : mezzotint URL : 編集
mezzotintさん、はじめましてこんにちは! 
コメントとTBをありがとうございます~。
よく「TBURLがコピーできない」って言われるんです、ごめんなさい!!
テンプレを変えるべきなんでしょうね。。う~む。お手数かけました。
この映画、ホントによかったですね~。
後ほど伺わせて下さいね~。
2009-06-23 18:55 : 真紅 URL : 編集
実ははるか昔からずっとファンです
真紅さん、こんばんは。
試合前のレスラーたちの打ち合わせシーンが印象的でした。
それから「さぁ試合だ」となるとランディがまず行うのがヘアカラーや
日焼けサロン通いだったりするあたりも。
そのへんのエピソードが妙にリアルだわーと思ってしまいました。
2009-06-25 18:51 : sabunori URL : 編集
sabunoriさん、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
ランディ、「形から入る」タイプでしたね(笑)。
私も、試合の前の打ち合わせシーンにはビックリしました。
なんか、リアルだな~って。でも、それでいて「内輪の暴露話」には全然なってなくて。
すごい、いい映画だな~、って。思いました!!
2009-06-25 19:23 : 真紅 URL : 編集
真紅さま
この記事読みながら笑ってしまいました^^;
ゴメンナサイ!
でも真紅さんの高揚した語り口は、何だかリング・サイドで聞いているようで!
この記事好きだわ~ 素晴しいです
本当に感動が伝わってきますね

ミッキー・ロークの「エンゼルハート」!!
も~~怖くて怖くて~
観たい! でも観れない
観たい!でも怖くて観れないという恐怖感が今でもあって…
すごく印象に残っているのに未だに怖くて再見出来ない作品です
ロバート・デ・ニーロも適役でしたよね
話が逸れましたが「レスラー」いい映画でした!
2010-02-08 20:24 : Maria URL : 編集
Mariaさん、こちらにもコメント&TBをありがとうございます。
80年代を記憶している私にとって、ミッキー・ロークはかなりインパクトのある人物でした。
冷静に書いたつもりでも、熱いですかね? フフフ。
でも、この映画とってもよかったと私も思います。

『エンゼル・ハート』怖かったですね~。
私は『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』が一番好きだったかな?
あの頃の映画はなかなか再見する機会がありませんが、懐かしいです。
後ほど伺いますね。
2010-02-09 20:12 : 真紅 URL : 編集
自分には プロレスしかない・・・蝕まれてゆくのが わかってても(涙)
はじめまして 

ミッキー演じるランディ・・・不器用ですね。
自分にはプロレスしかない  けど長年のステロイドの影響で心臓発作で 体がむしばまれてゆく・・・

けど・・娘の約束すっぽかすのは さすがにまずいよ~ 娘との絆の修復のチャンスを棒にふっちゃ~いかんぞv-12

そして マリサ演じる キャシディ トップレスにTバック姿でのダンス とってもキレイでしたv-10
 >セ●シー過ぎる肢体を晒しての大熱演。

あれは慈愛と安らぎにみちたヌー●だv-238

それに、ランディが来る前に どっかの若い連中が (もってるのは) 「'85年の卒業証書か」っていってました。 だいぶ前に学校卒業したから 年だろといいたいんだろうけどあれは腹がたちました バカヤロ~どもめ(激怒!)



 
2011-05-16 01:23 : zebra URL : 編集
zebraさん、はじめましてこんにちは! コメントありがとうございます。
この映画、最近DVDでご覧になったのですね? とってもいい映画でしたね。

おっしゃる通り、ミッキー・ローク演じるランディは不器用でプロレスバカで・・・。
でも傍から見たらそうねんですけど、本人は自分の生きたいように、したいように生きてるだけなんですよね。
オスカーが獲れなかったことが、とっても残念です。

マリサ・トメイもよかったですよね~。
あんなに綺麗なのに、歳ってだけでバカにされて。。ホントムカつく。。。

先日『ブラック・スワン』を観たのですが、この作品と通じるところがたくさんありました。
未見でしたら是非ご覧になってみて下さい!
2011-05-17 09:48 : 真紅 URL : 編集
ロークが演じた もうひとりの不器用な男  「ホーム・ボーイ」のジョニー
 真紅さん 先日 友達に DVDv-52見せました。

 そしたら、「女ウケはしないだろな・・・でも けっこう よかったぞ」と言ってました。

ボクも二回目ですが ランディの惣菜売り場で奮闘している姿 とっても笑えました。v-291 ボクなら あんな店員なら 買いにいきますね 

 あと真紅さんに もうひとつ

甘くかすれた囁くような声、ニヒルなようで愛嬌のある瞳。コッポラによって
「発見」された彼のその後の活躍は目覚まし、く『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』
『ナインハーフ』『エンゼル・ハート』などは全てリアルタイムで観ている


 ここまでロークにくわしいのでしたら '88年の「ホームボーイ」知ってるのでは ないでしょうか?

 こちらは、ロークが アメリカ各地を渡り歩く流れ者ボクサーのジョニー役です。元妻のデボラ・フューアーと共演しています

 これ以上説明するとネタバレになりますので 省略しますが レスラーのランディーとはまた違った男の不器用さを「ホーム・ボーイ」のジョニーは持っていますv-424

 「レスラー」と「ホーム・ボーイ」 ともにミッキー・ロークの主演で、ふたりの不器用な男が主人公 ランディーとジョニー

 ふたつの作品を比べながら見るのも 悪くないですよ

2011-09-16 18:37 : zebra URL : 編集
zebraさん、こんばんは。ふたたびのコメント、ありがとうございます。
女ウケ、、確かにそうですね~。プロレス好きな女性ってそんなにはいないですよね?
それにミッキー・ロークも昔のやさ男じゃもうないし。。
でも、けっこうよかったですよね♪ 私は女だけど、この映画とってもよかったと思っています。

私も、ランディが店員さんなら買いに行くな~。
グラムとか度外視しておまけしてくれそう(笑)。

で、おすすめの『ホームボーイ』ですが。。
残念ながら知らなかったです。ミッキーがボクサーになるきっかけになった映画なのかな?
機会があれば是非観てみたいです。。
教えて下さってありがとうございます!

不器用なボクサーか、、『ザ・ファイター』、よかったなぁ。
2011-09-16 21:07 : 真紅 URL : 編集
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