はっぴいえんど~『おと・な・り』

カメラマンの野島聡(岡田准一)は、風景写真を撮りたいと願いつつ、高校時代か
らの親友でトップモデルのシンゴ(池内博之)の専属カメラマンに甘んじていた。彼
の安らぎは、アパートの隣室から壁越しに聞こえてくる生活音。隣には、フラワー
デザイナーを目指す七緒(麻生久美子)が暮らしていた。
「♪街のはずれの 背伸びした路地を・・」
顔を合わせたこともない隣同士に住む男女が、互いの生み出す「音」に惹かれ、
安らぎを見出してゆくラブ・ストーリー。アートな仕事を生業とする二人がこだわる
住居は、外観は鎌倉にあるホテルだという古いけれど何とも味わいのあるアパー
ト。自転車や小さなインテリアに至るまで、考えつくされたのであろう美術が素敵。
大きな夢を持ちながらも、ささやかに控えめに暮らす男女の「はっぴいえんど」が
うれしい。映画を観終わって、本屋に寄ってブラブラしながら家に帰り着くまで、思
い出し笑いをかみ殺すのに苦労した。すっごく幸せな気分にさせてくれる、映画で
す。そしてコーヒーが飲みたくなる。豆から挽いたおいしいコーヒーが。

しかし中盤、シンゴの恋人・茜(谷村美月)が聡の部屋に押し掛ける場面は最悪。
ずうずうしくて無遠慮な女って、どうしていつも関西弁キャラなのさ!? 怒りを通り
越して、悲しくなった。それでも、この映画をDVDで観る方々には、どうかこの場面
で停止ボタンを押さないで、とお願いしたい。最後まで観ればきっと、茜も本当は
素直で、いじらしい女の子なんだとわかるから。
しかし、、岡田くんの美しいこと! 美しいのだけれど、決してナルでなく、自身
の生き方に確たる自信が持てない等身大の青年を自然体で演じていて、素晴ら
しい。声も低音で響きがいいし、耳にしたら絶対、惹かれてしまうと思う。麻生久
美子も同じく。特別なオーラを持った女優さんではないと思いつつ、微妙な年齢
に差し掛かった女性特有の「揺れ」を巧く表現していたと思う。彼女の出演作は
今までほとんど観たことがなかったけど、『ウルトラ・ミラクル・ラブストーリー』が
ますます観たくなってきた。。若手の脇役俳優ナンバーワン(?)の「第三の岡田
くん」こと岡田義徳も、結構スキ。

二人が出会うラストカット、その後に音だけで表現される二人の「未来」。神様に
感謝したいような、幸福感に満たされる。たとえそれが、予め約束された「運命」で
あったとしても。
(『おと・な・り』監督:熊澤尚人/
主演:岡田准一、麻生久美子/2009・日本)
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□作品オフィシャルサイト 「おと・な・り」□監督 熊澤尚人 □脚本 まなべゆきこ □キャスト 岡田准一、麻生久美子、谷村美月、岡田義徳、池内博之、市川実日子、とよた真帆、森本レオ、平田満■鑑賞日 5月23日(土)■劇場 恵比寿ガーデンシネマ■cyazの満足度...
2009-06-05 08:48 :
京の昼寝~♪
カメラマンの野島(岡田准一)はモデル撮影の仕事に明け暮れる日々。
本当に撮りたいのは風景写真でありながら周りに流されて
なかなか一歩が踏み出せない。
一方フラワーデザイナーを目指し花屋でアルバイトをしながら
フランス留学を目前に控える七緒(麻生久美子)...
2009-06-05 09:36 :
龍眼日記 Longan Diary
麻生久美子さんの主演作といえばもうすぐ公開される三木聡監督の『インスタント沼』が楽しみだったりするんですけど、その前にこの映画デス。近くのシネコンでも2週間くらい待っていれば上映されるんですけど待ちきれなくて先行上映中の恵比寿ガーデンシネマに観に行って...
2009-06-05 11:39 :
カノンな日々
東京にある1軒のアパートで隣の部屋に住みながら顔を合わせた事のない男女の物語です。
2009-06-05 12:44 :
水曜日のシネマ日記
今日は仕事終わりに1人で映画に行ってきました。本当は先々週くらいに見に行くつもりが新型インフルエンザ騒動で自粛したんです
2009-06-05 21:05 :
新米主婦の備忘録。
{{{ ***STORY*** 2009年 日本
人気モデルの撮影に忙しい日々を送りながらも、風景写真を撮りたいという思いを抱えるカメラマンの聡(岡田准一)。一方、フラワーデザイナーを目指して花屋のバイトをしながら、フランス
2009-06-05 22:27 :
Cartouche
人生に迷う大人が主人公だが、展開は少女漫画のようで、偶然に頼るラブストーリーだ。古びたアパートの隣同士に暮らす聡と七緒は、壁越しに聞こえる生活音を通して互いが気になり始める。熊澤監督らしい清潔感あふれる演出の中、思わぬ悪意に傷つく様子などビターな一面も...
2009-06-06 00:12 :
映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP
今日は新宿ピカデリーでたまっていたポイントを使って、『おと・な・り』を観てきました。
ゆったり穏やかな映画でリラックスして観られた作品でした。
********************
人生の分岐点に立つ30歳の男女を主人公に、都会の古いアパートでお隣り同士となった2人...
2009-06-07 02:19 :
cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー
「インスタント沼」を先日観賞したので、本日はまたまた麻生久美子さん主演の「おと・
2009-06-07 15:36 :
はらやんの映画徒然草
「おと・な・り 」★★★☆
岡田准一 、麻生久美子 主演
熊澤尚人 監督、2008年、119分
「カメラマンの聡(岡田准一)の隣の部屋には
花屋のバイトをしながら、
フランス留学を控えた七緒(麻生久美子)が
お互い隣の気配を何気なく気にしながら暮らしてる
2009-06-09 00:08 :
soramove
監督:熊澤尚人
出演:岡田准一、麻生久美子、谷村美月、岡田義徳、市川実日子、池内博之、とよた真帆、平田満、森本レオ
初めて好きになったのは、あなたが生きている音でした。
「聡はトップモデルシンゴの専属カメラマン、でも本当に撮りたいのは風景
2009-06-16 12:13 :
日々のつぶやき
6月17日(水) 13:50~ 恵比寿ガーデンシネマ1 料金:1000円(水曜日割引) パンフレット:800円(買っていない) 『おと・な・り』公式サイト 「おと な り」とも表記されている。 麻生久美子強化月間の3作品。いよいよ最後。 他の二作が浮世離れしている人た...
2009-06-19 22:39 :
ダイターンクラッシュ!!
おと・な・り
’09:日本
◆監督:熊澤尚人「DIVE!!」「ニライカナイからの手紙」
◆出演:岡田准一 、麻生久美子、谷村美月、岡田義徳...
2009-07-12 00:17 :
C'est joli~ここちいい毎日を~
最近、あざやかな幕切れの映画を見ないのが気になっていた。
たまたま私のめぐり合わせが悪かったのかも知れない。
しかし、クライ...
2009-09-07 01:49 :
映画のブログ
“おと・な・り”と妙なところで切ってある題名には、そういう意味があったのか~!
2009-12-01 19:07 :
心の栄養♪映画と英語のジョーク
地元のMOVIXさいたまでは今週金曜日までだったので初めて新宿ピカデリーへ。
今回麻生久美子さんの2009年6月3部作という異名がある意味有名な...
2009-12-01 22:55 :
単館系
途中まで良かったんだけどなぁ~!!
2009-12-17 10:27 :
ポコアポコヤ 映画倉庫
都会のアパートの隣同士に暮らし、一度も顔を合わせたことはないが、音によって惹(ひ)かれ合っていく男女の恋の行方を描くラブストーリー。監督は『ニライカナイからの手紙』の熊澤尚人。進むべき道を模索するカメラマンを岡田准一、30代の女性として揺れ動きながら夢の...
2010-02-28 23:37 :
サーカスな日々
昨日の記事で触れたように、麻生久美子が出演する作品は、最近のものについてはかなり見ているつもりにもかかわらず、『おと・な・り』(熊澤尚人監督、2009年)については見逃したままでしたので、そのDVDを借りてきて見てみました。
(1)この作品は、偶然アパートの隣...
2010-07-04 18:53 :
映画的・絵画的・音楽的
おと・な・り
同じアパートの隣同士ながら、
一度も顔を合わせた事がない聡と七緒は、
互いの部屋から聞こえる生活音に安らぎを感じいた...
【個人評価:★★★☆ (3.5P)】 (自宅鑑賞)
2016-03-14 01:35 :
cinema-days 映画な日々
コメントの投稿
半分は岡田くん目的で観ました。
真紅さん、こんにちは。
普段の生活音がこんなにも幸せをもたらしてくれるものなんだ・・・
ということをじみじみ感じてしまいました。
観終わるとほっこりと幸福感に包まれる作品ですよね♪
ところで真紅さんは茜がダメでしたかー。(笑)
確かにファーストシーンの図々しさにはちょっとばかりあっけにとられましたが
実のところ私は七緒よりも茜の方に好感を持ってしまいました。
一見ガサツで自分勝手に見える茜ですがそれって本当の弱い自分を隠す隠れ蓑なのかも。
そうすることでくじけそうになる自分を叱咤激励しているのかもしれません。
一方七緒は一見優しげですが芯は茜よりずっと強いのかもしれませんね。
情には流されないヒトだなぁ・・・と感じました。
フラワーアレンジメントも「花が好き」というよりは「仕事として」やっているように見えてしまいました。
普段の生活音がこんなにも幸せをもたらしてくれるものなんだ・・・
ということをじみじみ感じてしまいました。
観終わるとほっこりと幸福感に包まれる作品ですよね♪
ところで真紅さんは茜がダメでしたかー。(笑)
確かにファーストシーンの図々しさにはちょっとばかりあっけにとられましたが
実のところ私は七緒よりも茜の方に好感を持ってしまいました。
一見ガサツで自分勝手に見える茜ですがそれって本当の弱い自分を隠す隠れ蓑なのかも。
そうすることでくじけそうになる自分を叱咤激励しているのかもしれません。
一方七緒は一見優しげですが芯は茜よりずっと強いのかもしれませんね。
情には流されないヒトだなぁ・・・と感じました。
フラワーアレンジメントも「花が好き」というよりは「仕事として」やっているように見えてしまいました。
sabunoriさん、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
sabunoriさんからのTBなら3つでも4つでも受けたいところなんですが(笑)、一つはコメントと一緒に削除しておきました。
で、この作品ですが「半分は岡田くん目的」ってビックリ!
岡田くん、お好みなんでしょうか。。私は言うまでもなく8割方岡田くん目的ですが(爆)。
sabunoriさんってあまりミーハー的に(私のように)、カッコイイ!とか好き!とかおっしゃらないイメージなので、ちょっと驚きです。
でも、いいですよね、岡田くん。。一度彼の関西弁が聞いてみたいです。
私も、最初は茜に大・ブーイングでしたが、最終的にはいい子やん、と思いました。
七緒は強いですよね~、なんかビジネスライクというか。
聡とラブラブで、羨ましいっす。
sabunoriさんからのTBなら3つでも4つでも受けたいところなんですが(笑)、一つはコメントと一緒に削除しておきました。
で、この作品ですが「半分は岡田くん目的」ってビックリ!
岡田くん、お好みなんでしょうか。。私は言うまでもなく8割方岡田くん目的ですが(爆)。
sabunoriさんってあまりミーハー的に(私のように)、カッコイイ!とか好き!とかおっしゃらないイメージなので、ちょっと驚きです。
でも、いいですよね、岡田くん。。一度彼の関西弁が聞いてみたいです。
私も、最初は茜に大・ブーイングでしたが、最終的にはいい子やん、と思いました。
七緒は強いですよね~、なんかビジネスライクというか。
聡とラブラブで、羨ましいっす。
真紅さ~ん、こちらにも☆
そうそう!あのアパート、風情があったよね~。ボロいんだけど、素敵で・・・。場所萌えだったわ~。
とはいえ、、、Gは絶対入って来るよな・・・とか、冬は窓からのすきま風が凄そうとか(←オイ!)つい考えちゃったけど(^^ゞ
で、ああいう図々しいキャラが何故か大阪弁なんだよな~、爆笑!そうだよね、ひどいよねーなんでだろう?!
私も最初のしっとりとしたこの映画に突然乱入してきて雑音出しまくりのこの女に、ムキー!!!とかなり頭に来ちゃってたわ(それくらい上手かったということなんだろうけどもね)
脇役の岡田君は、すっかり騙されちゃった。あんなヤツだったとは・・・呆然。彼も演技上手いよね~
そうそう!あのアパート、風情があったよね~。ボロいんだけど、素敵で・・・。場所萌えだったわ~。
とはいえ、、、Gは絶対入って来るよな・・・とか、冬は窓からのすきま風が凄そうとか(←オイ!)つい考えちゃったけど(^^ゞ
で、ああいう図々しいキャラが何故か大阪弁なんだよな~、爆笑!そうだよね、ひどいよねーなんでだろう?!
私も最初のしっとりとしたこの映画に突然乱入してきて雑音出しまくりのこの女に、ムキー!!!とかなり頭に来ちゃってたわ(それくらい上手かったということなんだろうけどもね)
脇役の岡田君は、すっかり騙されちゃった。あんなヤツだったとは・・・呆然。彼も演技上手いよね~
latifaさ~ん、こちらにもありがとう!
Gはいそうよね、さすがに(爆)。窓枠ってサッシじゃなかったような気もするし、確かに冬場は寒そうだ~。
でも、隣に岡田くんが住んでんねんよ~←妄想中
Gでもすき間風でも我慢するわ!キッパリ
思うに、大阪の人ってすっごいサービス精神旺盛じゃない?
それが他の地方の方々には「過剰」と映るんじゃないか、と。。
だから他の地方の方(東京とか)が大阪人を描くと、ああいう図々しいタイプになってしまうんじゃないかな。。
まぁ確かに、騒々しいイメージだし、実際騒々しいかもしれないわ。。しょぼん
岡田くんと言えば、私の中では今は将生くんだけど、それぞれいいよね~☆
Gはいそうよね、さすがに(爆)。窓枠ってサッシじゃなかったような気もするし、確かに冬場は寒そうだ~。
でも、隣に岡田くんが住んでんねんよ~←妄想中
Gでもすき間風でも我慢するわ!キッパリ
思うに、大阪の人ってすっごいサービス精神旺盛じゃない?
それが他の地方の方々には「過剰」と映るんじゃないか、と。。
だから他の地方の方(東京とか)が大阪人を描くと、ああいう図々しいタイプになってしまうんじゃないかな。。
まぁ確かに、騒々しいイメージだし、実際騒々しいかもしれないわ。。しょぼん
岡田くんと言えば、私の中では今は将生くんだけど、それぞれいいよね~☆
TB有難うございました。
2009年に、岡田准一主演作品に、
こんな素敵な作品があったなんて、見落としていました。
こんな素敵な作品があったなんて、見落としていました。
Hiroさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
私も、TBいただくまですっかり忘れておりましたが、素敵な作品ですよね♪
私も、TBいただくまですっかり忘れておりましたが、素敵な作品ですよね♪