同行二人~『悼む人』
悼む人

 日本中を徒歩で旅しながら、行く先々で死者を悼む青年、坂築静人。彼と出会
い、戸惑いながらも共に旅をする女性、彼を追う雑誌記者、そして末期癌を患う
・・・。

 寡作の作家・天童荒太が七年ぶりに世に問う、生と死を巡る物語。第140回
直木賞受賞作。 「悼ませていただきます」

 各章のタイトルが「目撃者」「保護者」など、全て「~者」となっているところが、
先日本屋大賞を受賞した湊かなえ『告白』と同じで面白い。(『告白』は少し
前に読了したが、感想は書いていない)

 天童荒太といえば『永遠の仔』児童虐待とそのトラウマについての、長い、長い
物語は衝撃的だった。あの小説に書かれたような酷い虐待がフィクションでなく、
事実だと当時は信じ難かったけれど・・・。残念ながら、子どもたちを取り巻く環境
は更に悪化していると言えるかもしれない。しかし、人間の心の成り立ちを、深く
長い視点
で見つめようとする作者の真摯な文体は変わることがない。

 静人の「悼む旅」全肯定はできないし、共感もできない。しかしさほど違和感
もなかったのは、静人の姿に四国八十八か所を巡るお遍路さんを連想したから
かもしれない。

 四国を車で走っていると、歩き遍路さんをたくさん見かける。最初は珍しく
見かける度にビックリしていても、そのうちに彼らは風景に馴染んでくる
愛媛県出身だという作者にも、お遍路さんの姿は心の原風景としてあるんじゃ
ないかと感じた。

 本作の主人公は「悼む人」である静人であるけれど、彼は狂言回しのようにも
感じられる。彼を巡る人々、、とりわけ母の巡子の物語が心に残る。死は終わ
りではなく命は巡り、たとえ肉体は滅んでも、その人の魂は今と別の場所で
存在し続ける
。そんな死生観が、「巡子」という名前に込められている気がした。

 きっと何年も、何年もリサーチし、リライトしながら書き上げたであろうこの
作品。私もじっくりと、噛みしめるように読んだ。賛否両論あることは想像に
難くない、しかし私は、作者の提示した「光」をただ、受け止めたい。

 (『悼む人』天童荒太・著/文藝春秋・2008)
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[2009/05/14 09:48] | 読書 | トラックバック(4) | コメント(6) |
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コメント
わ~~い(^○^)わ~~い!!! 真紅さん~!復活されていらっしゃる~♪これからもぼちぼちのんびり更新して頂けると、うっれし~な!

まずはこちらから。
そうなのよね、賛否両論なのは想像がつく(実は私的には、この小説を読んだ感想としては、あんまり・・・なんというか・・・だったんだけれど)それでも、何年もリサーチし精魂込めて書き上げたのがびしびし伝わって来て、それだけでもぐっとくる本でした。

王様のブランチって土曜の朝やってる番組があって(以前、関東だけ・・・って聞いた気もするんだ・・)それに天童さんがご出演され、この作品を書き上げるためにすごい年月を必要とし、ノート何冊にも、び~~っしり色々なこと書いているのを見たのですよ・・・。その後に読んだので、重みを感じたわ・・・

ところで!真紅さんも、きょ~しろ~好きだったのね?^^ 嬉しいな♪ 私の現在の知り合いのブロガーさんで、女の子できょ~しろ~好きって人はいなかったっぽいので、真紅さんが初めてかも!
私は、1980年代前後のRCの頃(PLEASEとBLUEの時)のファンだったのね・・・。最近ももちろん、すご~~く遠くから応援していただけだったんだけど、今回の訃報は、ホントにショックだった・・・。 なんか自分の青春のヒトコマがかけたような感じというか・・・。

記事にしようと思って、自分的きょーしろーの曲5曲とか選んで、投稿ボタンを押したら、珍しくフリーズして消えちゃって、、再度書く気力もなくて、結局書かなかったんだ・・・。
[2009/05/15 08:53] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさ~ん、こんにちは♪ コメントとTBありがとう。
そうなんです、マイペースで更新していきたいな、と思ってます。
今後ともよろしくお願いします。

この本はどちらかというと否定的意見のほうが多いかもですが、私は不思議とすんなり読めたんですよ。
巡子さんの話が、すごくグッと来てしまってね。。
なんだか、自分が臨死体験してるかのような気分でした。

王様のブランチ、ってこちらではやってないんですよ。
でも、すっごい影響力ある番組なんでしょう?
『告白』も、優香が「面白かった」って言ったからブレイクしたとか、、。
一回、観てみたいな~。

清志郎は、ライブとか行ったことはないんですが、当たり前のように好きでしたね。
なんか、あの人柄が好きというか、、、すっごく特別な人だったよね?
みんなに愛されて、みんなを愛して。。
青春のひとコマが欠けた、って、すっごくわかるー。
私もショックで、もうボーゼンとしてました。
ベスト5、知りたいな~。
またいつか、気が向いたら記事アップして下さいね。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2009/05/15 17:45] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、またよろしく。
この「悼む人」を読んでいて、主人公の悼むポーズが何回か出てきますが、そのたびに本木雅弘が演じている姿がダブってしまいました。
映画化するなら、いたみびとモックン主演で決まりかな。
[2009/05/16 19:35] URL | 筆致 刻久 #- [ 編集 ]
筆致 刻久さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
モックンですか~、なるほど~。。
私なら、加瀬亮くんかな? 浮世離れした雰囲気の俳優さんがいいですね。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。
[2009/05/16 21:23] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
連日の訪問です~~♪
<四国八十八か所を巡るお遍路さん>
ああ~~なるほど。
こちらでは、見たことなくって。
確かにその存在を身近に感じていると
違和感はなくなるよね・・。
<死生観が、「巡子」という名前に込められている気がした>
これもなるほど・・・・。気付かなかったわ。
私はやっぱりこの母親のエピソードが一番心に響いたわ。
親の気持ちを考えるとどうしても静人に文句もいいたくなるのよね・・。でも色々考えさせられる
お話で読んでよかったわ★
あ・・・私もヘヴンいつか読みたいわ~~
[2009/11/13 09:56] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
みみこさん、こんにちは~。訪問ありがとう~♪
そうか~、お遍路さんって知ってる方のほうが少数かもですね。
私も、静人が最後、間に合うのかな~と思いながら、間に合ってくれ~~と祈るような気持ちで読みました。
巡子さん、とってもいい方でしたよね~。
ところで『ヘヴン』、みみこさん~、読んでー、読んでー、今すぐ読んで!!
みみこさんは中学生のお子さんがいらっしゃるのだよね?
だからリアルに感じられる部分があるのではないかな。。
子どもが読むのはちょっとまだ早い気がするのだけど、たくさんの方に読んでいただきたいです。
読んでね~、ネガな感想でも、聞かせて下さいね♪
[2009/11/13 11:24] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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天童荒太「悼む人」 あまり・・共感出来なかったです・・・
この主人公の悼む人である静人に、ずっと違和感を感じながら読み進んで行き、でも、こういう旅に出るに至る彼の過去や、後半の展開で、何か私の気持ちも変わるかもしれない・・と少々期待しました。しかしながら結局、、最後まで、何か違う・・・共感が出来ない・・という...
[2009/05/15 08:56] ポコアポコヤ
悼む人
天童荒太 著 
[2009/12/03 12:24] Akira's VOICE
悼む人<天童荒太>-本:2010-10-
悼む人クチコミを見る # 出版社: 文藝春秋 (2008/11/27) # ISBN-10: 4163276408 評価:85点 図書館で半年以上待ってようやくまわってきた。 直木賞を受賞して随分と過ぎているし、生と死をテーマにしたそこそこ重たく生真面目な内容なのにまだまだ人気があるの...
[2010/01/23 00:36] デコ親父はいつも減量中
天童荒太 「悼む人」
第140回直木賞受賞作 私が天童荒太氏の作品を読むのは、氏の「包帯クラブ」以来 どうも氏の作品は、タイトル等の印象から重いような気がして、手が出ませんでした。 本作も直木賞受賞という事で、気にはなっていましたが、単行本を購入してまで読みたいかどうか… ...
[2011/06/24 22:13] 映画と読書とタバコは止めないぞ!と思ってましたが……禁煙しました。
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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