浪速の王国~『プリンセス・トヨトミ』

会計検査院に所属する調査官、松平、鳥居、ゲンズブール旭の三人は、新幹線で
大阪に向かった。彼らの検査対象には「OJO」という謎の団体が含まれていた・・・。
デビュー作『鴨川ホルモー』が映画化され、絶賛公開中の「文壇の不思議ちゃん」こと
万城目学。京都、奈良と続き、待望の新作は大阪が舞台。空堀商店街のお好み焼き
店・太閤の一人息子大輔と、その幼なじみ茶子を主人公に、相変わらず奇想天外な
物語が展開する。
この小説、読んでいる最中はかなり退屈。説明的文章が多いので、テンポが悪く
てなかなか進まない。私は大阪に住んでいて、JR森ノ宮駅から大阪城を右手に眺
めながら通勤していたこともあるので、物語の舞台が視覚的に浮かんでくる。だか
らまだ読みやすかったかもしれないけれど、関西以外に住んでいる方々はどう感じ
られたかな・・・。
大輔は「女の子になりたい男の子」なのだけど、彼の性格付けも今一つ頷けない。
セーラー服を着たいと彼が望んでいる以外、「女の子」を感じさせる性格描写が全く
ないのだ。大輔の父、真田幸一が「真田幸村」を意識した人物なのはわかるのだけれ
ど、大輔というキャラの設定意図はわからなかった。
しかし読み終わってみれば「面白かった」と感じてしまうところがまた不思議。大阪
女学館の南場先生も登場するから、もしかしたら万城目さんの小説って、すべてが
リンクして大きな物語になるのでは?なんて妄想してしまう。そう、「ギドク曼陀羅」
みたいにね。万城目さんの頭の中には、誰も考えつかないような長大な物語が進行
中なのかも・・・。
そういえば先日、あるところで万城目さんのことを【偽森見】と呼んでいるのを見
て笑ってしまった。確かに、出身大学や文体の傾向から、この二人は比較される
ことが多い。でも私は万城目っちを応援しているからね~。次も期待してますよ。
(『プリンセス・トヨトミ』万城目学・著/文藝春秋・2009)
- 関連記事
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- 同行二人~『悼む人』 (2009/05/14)
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trackback
五月末日、大阪が全停止した。鍵となったのは、
会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った少年少女だった―。
調査官は豪...
2009-04-27 01:36 :
粋な提案
この本を読む直前まで、中上健次の「枯木灘」「岬」「鳳仙花」を読んでいたのですが、やっぱり関西弁といっても、場所によって違う様で、中上さんの本で書かれていた紀州弁?よりも、この「プリンセス・トヨトミ」の大阪弁の方が、読みやすいというか、
2009-05-05 10:58 :
ポコアポコヤ
プリンセス・トヨトミクチコミを見る
# 出版社: 文藝春秋 (2009/2/26)
# ISBN-10: 416327880X
評価:88点
大阪の男のバカさ加減をしっかり書いてくれていて、読んでいてうれしくなった。
徳川が作り直した大阪城の下に、隠れるように作りあげられた大阪人のた
2009-11-28 01:02 :
デコ親父はいつも減量中
コメントの投稿
こんばんは。
前半のシステム説明が長かったですね。
あそこは、簡潔にしてほしかったです。
関西以外に住んでいるので、正直、ビジュアル的にはわかりにくくて残念でした。
スケールの大きさ、父子の絆がよかったです。
前半のシステム説明が長かったですね。
あそこは、簡潔にしてほしかったです。
関西以外に住んでいるので、正直、ビジュアル的にはわかりにくくて残念でした。
スケールの大きさ、父子の絆がよかったです。
2009-04-27 01:35 :
藍色 URL :
編集
藍色さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
万城目さんってとても慎重な性格の方だな~、と思います。
スロースターターというか・・・。説明が長い(笑)。
でも、小説を書くために会社を辞めたところは大胆ですね。
父子の絆には私も涙しました!
ではでは、またお伺いします~。
万城目さんってとても慎重な性格の方だな~、と思います。
スロースターターというか・・・。説明が長い(笑)。
でも、小説を書くために会社を辞めたところは大胆ですね。
父子の絆には私も涙しました!
ではでは、またお伺いします~。
真紅さん~お休み中なのは解っていたんだが、これ読み終わって、真紅さんのレビュー見たら、同じ!!!で嬉しくて、ちょこっとコメント残していきますね。
そ~~なんだよね。途中までがだるかった・・・結構辛かった・・・
でも、最後まで読み終えたら面白かったと思えるのが不思議。
ギドク曼陀羅って~~(^▽^)ウハハハ!!!
私ってば、恐ろしいことに、その南場先生に気がつかんかったよ・・・アワワ・・・。
大阪の事は全然解らなかったけれど、とても万城目さんが大阪を愛しているんだな~ってのが、全体として伝わって来たし、地理感が無くても楽しめました! でも、願わくば、自分が大阪人だったら、もっともっと楽しめただろうにな・・・って淋しくもあったよ♪
そ~~なんだよね。途中までがだるかった・・・結構辛かった・・・
でも、最後まで読み終えたら面白かったと思えるのが不思議。
ギドク曼陀羅って~~(^▽^)ウハハハ!!!
私ってば、恐ろしいことに、その南場先生に気がつかんかったよ・・・アワワ・・・。
大阪の事は全然解らなかったけれど、とても万城目さんが大阪を愛しているんだな~ってのが、全体として伝わって来たし、地理感が無くても楽しめました! でも、願わくば、自分が大阪人だったら、もっともっと楽しめただろうにな・・・って淋しくもあったよ♪
latifaさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございました。
そうそう、万城目さんの小説っていつもそんな気がする・・。三分の一まで我慢、とか(笑)。
大阪女学館っていう学校は、実際には無いんですよ。
多分、大阪女学院っていう学校がモデルなのかな?と思うのだけど。。
場所もあの辺りだし。。
関西以外の方も、結構「面白かった」という感想のようで、ちょっと安心してます(爆)。
ではでは、後ほどお邪魔しますね~。
そうそう、万城目さんの小説っていつもそんな気がする・・。三分の一まで我慢、とか(笑)。
大阪女学館っていう学校は、実際には無いんですよ。
多分、大阪女学院っていう学校がモデルなのかな?と思うのだけど。。
場所もあの辺りだし。。
関西以外の方も、結構「面白かった」という感想のようで、ちょっと安心してます(爆)。
ではでは、後ほどお邪魔しますね~。