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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

時代の犠牲者~『ある公爵夫人の生涯』

ある公爵夫人の生涯



 THE DUCHESS


 18世紀後半、英国スペンサー家令嬢ジョージアナ(キーラ・ナイトレイ)は、
17歳で英国有数の貴族であるデヴォンシャー公爵(レイフ・ファインズ)に嫁ぐ。
幸せな結婚生活を夢見ていたジョージアナだったが、公爵は妻を「跡継ぎを生む」
ための相手としか見ていなかった・・・。

 故ダイアナ妃の先祖に当たる、実在した公爵夫人苦難の人生を描くコスチュ
ーム劇
18世紀の社交界を舞台に、貴婦人たちの華麗な姿を再現した衣装は、
アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞している。オスカーも納得の、美しくきらびや
かなドレスや帽子にうっとり。英国の貴族邸宅をロケした映像も美しい、さすが
英国BBC製作の、見応えのあるドラマ。

ある公爵夫人の生涯2

 「私たちの結婚は最初から3人で始まった」という故ダイアナ妃の言葉は有名だ
が、ジョージアナにも甘い新婚生活とはかけ離れた現実が待っていた。公爵が
女中に生ませた娘シャーロットを引き取り、女児を産んだジョージアナに公爵は
「男児を産むはず」怒りを露わにする。冷えきった夫婦関係に疲れた彼女がミス
・エリザベス(ヘイリー・アトウェル)
と出逢い、彼女との友情に慰みを得た頃、公爵
とエリザベスの愛人関係が始まる・・・。

 「妻妾同居」の日々。いかにジージアナが新進の気質を持った女性であったとは
いえ、彼女の苦悩は計り知れない。夫の裏切りと、親友の裏切り。それでも朝夕
の食事を共にしなければならない理不尽さ! きっと現実は、もっともっと厳しいも
のがあったのだろうと想像する。「早過ぎた結婚をし、真実の愛に気づくのが遅すぎ
た」
男子を産んだら即、堂々とチャールズ・グレイ(ドミニク・クーパー)の元へ走る
ジョージアナ。しかし結局、彼女は公爵の館へ戻ることになる。

 ジョージアナの母、レディ・スペンサー(シャーロット・ランプリング)の言う「個人
の満足より、品位を」
という言葉が全てを物語っているのだろうと思う。たとえ貴族
の令嬢であろうと、妻であろうと、財産相続権も選挙権もなかった当時の女性たち。
彼女たちにとっては、男子を産んで財産分与を受け、経済的な保証を得るしか「品位」
を保つ術はなかった。「個人」よりも、「家柄」重視された時代。「変革」を叫んだ
チャールズ・グレイが首相になるのは、ずっと先の話。当時の上流女性にとっては、
社交界の華となり、賭博やファッションに喜びを見出すしか、生きる甲斐はなかっ
たのかもしれない。
 
 たとえ親友を裏切っても、男の地位や財力は利用するもの、という信念に基づい
て行動するレディ・エリザベスのしたたかさが印象的。子どもを産んだ女は強い
子どものために諦めざるを得ないものも、確かにあるとしても・・・。公爵は酷い奴
だけれど、彼もまた時代の犠牲者だと思えなくもない。

ある公爵夫人の生涯3

 そしてやっぱり、この作品の一番の見どころ華麗な衣装の数々だろう。高く結
い上げたジョージアナの髪型マリー・アントワネットを思い出すし、ファーや
羽根を使った帽子
がめちゃめちゃオシャレ「女は、衣装で自分を表現するのです」
というジョージアナの言葉に、大いに頷いたのでした。

 (『ある公爵夫人の生涯』監督・脚本:ソウル・ディヴ/2008・英、仏、伊/
    主演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、シャーロット・ランプリング
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テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

2009-04-14 : 映画 : コメント : 10 : トラックバック : 20
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2009-04-14 23:29 : 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP
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2009-04-27 12:17 : かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
ある公爵夫人の生涯 を観ました。
キーラのキャラとして、イギリス貴族というのが定着した?1本かな?
2009-05-07 17:19 : My Favorite Things
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おはようございます~~♪
いいな~~、私も早く見たい・・・のですが
なかなか。
見応えありそうで楽しみ。
<公爵は酷い奴>うふふ・・・・。そうですか。
こちらも楽しみです。
では~~
2009-04-15 08:25 : みみこ URL : 編集
真紅さん、こんにちは~!
そうね・・・確かに、あのレディ・エリザベスは、したたかだったね・・・。私はジョージアナに入り込んで見ていたので、なんていう女だー!せっかく親切にしてあげたのに、仇で返すのか、こらぁ~!!ってかなり怒ってしまっていたんだけど・・・。彼女も子供の為にとか、色々そういう事があったからなのよね・・・・
とはいいつつ、再婚することになるってことは、やっぱりまんざらじゃなかったんでは・・・?とは、つい思っちゃうんだよな~
衣装は素敵でしたね。キーらはこういうコスプレが凄く似合いますね☆
2009-04-15 09:45 : latifa URL : 編集
みみこさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
この映画ね、上映館が少ないですよね、、ビックリしました。
キーラ主演の『つぐない』ほどではないですけど、、あの映画、大阪では2館しか上映しなかったんですよ。
衣装だけでも観る価値ありだと思いますよ!
レイフはね、、う~ん、好感持てる役ではないですが、観てのお楽しみですね♪
ではでは、観られたらまたお話しましょう~。
2009-04-15 19:34 : 真紅 URL : 編集
latifaさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
私はね、ジョージアナがエイザベスを館に招いたとき、「ああ~、これは公爵とデキルな!」と思ったんですよ。
予想通りの展開というか・・・。妻妾同居にはビックリでしたけど。
でも、出産のとき同行してくれたり、ベッドであんなことしたり・・、と、エリザベスって謎の人物でしたね(笑)。
キーラって、現代劇より断然コスチューム劇のイメージありますよね。
『つぐない』のキーラが一番綺麗だったと思います☆
ではでは、またお伺いします~。
2009-04-15 19:39 : 真紅 URL : 編集
そうですよね。ダイアナ元妃の結婚生活も3人、
ジョージアナの結婚生活も3人。
しかも、ダイアナもジョージアナもイギリス中に
愛された女性。子供を愛し、孤独な女性ですものね。
そういえば、チラシだったかな?
デヴォンシャー公爵夫人は、マリー・アントワネットとも
交流があったと言われてるそうですね。
2人ともファッショナブルで、
国中の女性の憧れだったんでしょうね~。
2009-04-16 20:59 : miyu URL : 編集
真紅さん、お久しぶりです~。
「時代の犠牲者」という言葉に妙に納得してしまいました。
女性の人権や思いやりの心に欠けたドラマで、ジョージアナに同情しきりだったのですが、ベスはベスで事情はあったんですよね…。そして公爵にも。
にしても衣装は素敵でしたね~。キーラがまた華奢でああいうドレスが似合うこと。
2009-04-16 23:28 : リュカ URL : 編集
miyuさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
これは明らかに故ダイアナ妃を意識した映画ですよね。
私も、マリー・アントワネットと交流があったとどこかで読みました!
「フランスに行くの?革命は?」というセリフもありましたよね~。
まさに同時代の二人の女性、社交界の華であり、悲劇のヒロインでもあったんですね~。。
ダイアナの死は本当に衝撃的でしたね。。
彼女もジョージアナのように、ずっとずっと世界中の人々の記憶に残る女性なんだと思います。
ではでは、後ほどお伺いします~。
2009-04-17 20:53 : 真紅 URL : 編集
リュカさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます~。
そうですね、お久しぶりかな?
でも私はリュカさんのこと精神的に近く感じているので、久々のやり取りでも全く違和感はないです。
私はね、誰にも感情移入しなかったな・・。
ジョージアナが子どもと別れる場面は号泣でしたが。。
キーラは世界一のコスプレ女優ですね。気品あるよね~。
ではでは、後ほどお伺いします!
2009-04-17 20:56 : 真紅 URL : 編集
わたしもジョージアナの妻妾同居の生活から
ダイアナ妃のことを思い浮かべてしまいました。
ジョージアナの時代はお妾さんを囲う殿方は多かったにしても
完全に3人が一緒に住むのは妻としては屈辱的だったでしょうね。
レイフが演じたからか公爵のことも贔屓目に見てしまって
確かに悪い人じゃなくって
彼もまたああいう風にしか生きられなかったのかも,
と思ってしまいました。

ところで真紅さま,「ヴィヨンの妻」ご覧になったのですね~
私も来週あたりは観にいけたらなぁと思ってます!
2009-10-18 13:31 : なな URL : 編集
ななさん、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
この映画、もうDVDになっているのですね~。
とにかく衣裳が素晴らしかったですね!
キーラ・ナイトレイはコスチューム劇がとっても似合います。
ジョージアナは、ダイアナ妃の遠いご先祖だとか・・・。
いつの時代も、女は大変ですよ。。

『ヴィヨンの妻』、なかなかよかったですよ~。
是非ぜひご覧になってね♪
2009-10-18 19:12 : 真紅 URL : 編集
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