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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

蝶を追う~『悲夢』

悲夢




 SAD DREAM


 別れた恋人の車を追って交通事故を起こすを見た男ジン(オダギリジョー)は、
その夢の余りにリアルな感触不吉な予感を憶える。事故は実際に起こっていた
が、車を運転していたのはジンの見知らぬ女、ラン(イ・ナヨン)だった・・・。

 韓国映画界の鬼才、キム・ギドクの記念すべき15番目の作品(ギドクの映画は、
エンドロールかラストに「キム・ギドク○番目の作品」とクレジットされるので要チェ
ック)。前作ブレスが私的には「ムムム?」な出来だったのだが、今回は我らが
オダギリジョー主演に迎えていることで、随分前から楽しみに公開を待っていた。
相変わらず過激なギドク節が満載の本作。監督の映画魂に呼応するかのように、
オダギリジョーも思い切った演技を見せてくれている。ギドクの「胡蝶の夢」、もしく
「夢分析」。

「何処へ行っていたんですか?」 「蝶を追っていたの」

悲夢2

 別れた恋人を忘れられない男と、別れた恋人を憎む女夢で繋がる二人の意識
が、面識のない彼らを結びつける。恋人が二人に残したは深く、無意識の中で
彼らを操ろうとする。光と影のように、白と黒の衣装を纏い、彼らは「二人で一つ」 
存在に変わってゆく。ランを演じたイ・ナヨンは初めて見た女優さん。のような
漆黒の髪が印象的。意志的な表情は観ようによっては猟奇的でもある。
『ブレス』歌姫パク・チアは、チャン・チェンくんに続いて今回オダギリジョーとも
あんなことを・・・。ゆ、許せん。。

 を彫るジンの仕事場には掌の形のオブジェが置かれ、絶対の愛彫刻の
を思い出した。韓国の伝統家屋寺院の映像も美しい。曼荼羅が描かれた壁
積み石が暗示的。寝具に使われた水色は、現から夢、生から死へと誘う
よう・・・。

悲夢3

 オダギリジョーは全編日本語のセリフで通すが、韓国語をしゃべる他の演者と
何の問題もなくコミュニュケーションがなされてゆく。導入部では強烈だった
違和感は次第に薄れてゆくのだが、オダギリジョーのセリフが全体的に過剰で、
説明的
だったのが少し残念。そしてセリフが多いためかクローズアップの切り返
が多く、落ち着きのない画になってしまっている気がする。問答無用の力技
ストーリーを収束させるのがギドクの真骨頂なのだから、長回しでじっくり撮って
みて欲しいと思ったり。

 被虐と加虐紙一重で、現実と夢、真実と妄想境界を曖昧にするギドク。
彼にはこれからも、もっともっと過激に自由に飛んで、大いに私たちの度肝を抜
いて欲しい


 (『悲夢』監督・脚本:キム・ギドク
              主演:オダギリジョー、イ・ナヨン/2008・韓国)
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テーマ : 韓国映画
ジャンル : 映画

2009-02-13 : 映画 : コメント : 12 : トラックバック : 14
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こんばんは、TB&コメントありがとうございました。
オダギリジョーと共演したイ・ナヨンは、国内のアカデミー賞のようなもので
主演女優賞を受賞した経験もある女優さんです。
こういうメジャーな俳優を起用しているところは、前作『ブレス』とつながって
いますね。

私はさらに、『絶対の愛』以降とそれ以前の作風の違いを考えてみたのですが、
どうも男の登場人物が「非モテ系」から「モテ系」になったのも、
かなり影響していると思います。絶好調のキム・ギドク作品には、
何というか、「非モテ男のわびしさ」がありました。
ストーリーや映像うんぬんより、そのあたりの塩梅で、作品のパンチ力も
違っているような気がします。
2009-02-14 00:47 : 丞相 URL : 編集
真紅さん~こんにちは!
最後の一文、全く同感。
次回作は、もっと過激に自由に飛んで、もっと驚かせて欲しいですね☆

イ・ナヨンは、韓国では一杯ドラマとか映画に出ているんですが、韓国では、いつも同じ様な役しか出来ないという評価もあるそうです・・・。私が韓国ものを一杯見た時期に、偶然彼女が主演してる作品を見る機会が多かったんですが、そういわれてみれば、似てる役柄多いかもなあ・・・と思ったりもします。

昔、長渕剛の主演映画「英二」のヒロイン役にも出てたみたいですw (さすがにそれは、記憶に無いですが、、)
2009-02-14 09:58 : latifa URL : 編集
イ・ナヨン。
真紅さん、はじめまして。
トラックバックありがとうございました。(*^-^*

確かに、オダギリジョーの台詞が説明的でしたね。
近年のギドク映画にしては珍しく台詞が多くて
まくしたてるような言い回しもあったので
その分、ギドク映画ならではの奇妙な間合いを
味わう事が出来なかったのが残念な気もしました。

イ・ナヨンは『小さな恋のステップ』のコミカルな演技で
韓国内の2つの映画賞で主演女優賞を受賞しています。
『悲夢』の前作『私たちの幸せな時間』のシリアスな演技でも
韓国内の映画賞で主演女優賞にノミネート。
『HEAVEN ヘブン』ではレオン・ライと共演、
日本映画『英二』では長渕剛の相手役を演じていて
韓国以外の俳優さんと共演する機会にも恵まれている女優さんです。
イ・ナヨンは完全に役になりきるタイプではなく、
役と自分の共通項を手繰り寄せるように演じるタイプなので、
いつも似たような演技(役柄)という評もあるようですが、
嫌味がないので韓国ではアンチが少なく女性ファンも多いそうです。
2009-02-14 10:37 : BC URL : 編集
丞相さま、こんにちは~。こちらこそコメント&TBありがとうございます!
イ・ナヨン、有名女優さんなんですね。知りませんでした。
でも、瞳がすっごい印象的なひとだな~、と思いました。
仙道敦子さんに、ちょっと似てるな~って。

非モテ系→モテ系! ああ、それすっごく言えてます~。
特にチャン・チェンくんとジョーくんなんて、日台を代表する若手モテ男!
ギドクも今は過渡期なんでしょうね。。
これから彼がどう変わっていくか、楽しみです。
ではでは、またお伺いしますね~。
2009-02-14 13:28 : 真紅 URL : 編集
latifaさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
なんか、私のようなギドクマニア(笑)は「もっと過激に!」と思ってしまいますよね。
絆創膏? まだまだ、温いぞ~、みたいな。。。ハハハ。

イ・ナヨンさん、そんなに有名な女優さんなんだ~。
長渕さんの映画に出てたなんて、キャリアも長いのですね。
てっきり新人女優さんかと思っていました。
いつも同じような役か・・。でも、若い女優さんだと仕方ない面もあるよね。
ギドクは、次回作も期待したいですね♪ また、唖然としたいわ~。
ではでは、またお伺いします!
2009-02-14 13:33 : 真紅 URL : 編集
BCさま、初めまして! こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
やはり、韓国語でしゃべる俳優さんと日本語でしゃべるオダジョーというのはちょっと難しいものがありましたね。
もう、いっそのことオダジョーは無言でもよかった気がします。
この映画、別にセリフがなくてもよかった気がしませんか?
無言劇でも、十分理解できた気がするのですよ。。
「奇妙な間合い」、まさにその通りですね。

『私たちの幸せな時間』、評判がよかったので観たいのですが、DVDはなかなか時間が取れなくて観れていません。
レオン・ライって香港の、ですよね?! 凄いな~。。
そんなに国際的に活躍している女優さんだったとは。。
確かに、女性が嫌うタイプの女優さんではない印象は受けました。
機会を作って、是非彼女の他の出演作も観てみたいです。
詳しいコメント、ありがとうございました。とても参考になりました♪
ではでは、またお邪魔させて下さいね。
2009-02-14 13:39 : 真紅 URL : 編集
真紅さんおっしゃるように水色が印象的な映画でした。冒頭の信号の青から、オダジョーの部屋を照らす青い光、そしてベッドの水色。そこはいかにもキム・ギドクだなと思ったのですが、映画のほうはどうにも乗れず。『ブレス』に続いて2度裏切られた思いですが、次もまた見に行ってしまいそうなのがギドクの憎いところですね。
2009-02-19 23:44 : URL : 編集
雄さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
そうですね、そういえば信号機のアップで映画が始まりましたね。
『ブラインドネス』もそうでした。
私もギドクは『絶対の愛』で作風を変え、ちょっと迷走気味だと思います。
でも『ブレス』ほど本作の印象は悪くなかったのですが。。
次回作に期待ですね! 
ではでは、またお伺いします。
2009-02-20 14:24 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは~♪
なかなか同じ映画を鑑賞しないな~と寂しく思っていたところ、休止の記事があってビックリしました。
とりあえず「悲夢」のTBだけ入れさせてくださいね。
オダギリジョーがギドク監督に声をかけてもらったという事実だけでなんだか満足してしまった私です(汗)
ギドク作品をコンプリートしているわけではないのですが、一番好きな作品というわけには行きませんでした。
でも、ごひいきが出ている作品ですので好意的な目線は否めません~。

休止というのは意外に勇気のいる決断なんですよね。
どうぞ思う存分英気を養ってください。
ブログは精神的にも肉体的にも余裕が無いと絶対に続けられないような気がします。
また真紅さんが戻って来られるのを気長に待っていますので。
お身体にはお気をつけて。
2009-05-10 15:32 : ミチ URL : 編集
ミチさん、こんにちは~~。コメントとTBをありがとうございます!
ホントお久しぶりですね、ミチさ~~~ん♪
私も、オダギリジョーがギドク映画に主演!というニュースを知ったとき、体温が2度くらい上がりました(笑)。
すっごく楽しみにしていた映画でした。オダギリジョーもあんな顔までして、頑張っていましたね~。
彼にとって、監督との映画製作はとっても有意義な体験だったのだろうな~、と思います。
好意的な目線、いいじゃないですか~。わかりますとも。

さて。ブログなんですが、ちょっと疲れてしまって・・・。
止める気は全くないので、今後の運用について考えています。
そうなんですよね。。余裕がなくてしんどくなってしまったんです。
身の丈に合ったブログ運営をしていきたいと思っています。
お気遣いありがとうございました。
ではでは、後ほどお伺いします~。
2009-05-12 09:41 : 真紅 URL : 編集
韓屋
TBありがとう。
いつも真紅さんの映画評、楽しみにしてるんですよ。
自分のペースでやってくださいね。

本作で言えば、僕は、古い韓屋が気に入って、ああいうところに住みたいな、と(笑)
2009-09-02 00:11 : kimion20002000 URL : 編集
kimion20002000さん、こんにちは! こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
うわぁ~、尊敬するkimionさんからそんな言葉を頂けるとは・・・、感激です、ありがとうございます!!
はい、映画館に行くのが大好きなので、これからもマイペースで続けます。
ありがとうございました。

で、本作ですが美術がよかったですね。
青色(瑠璃色?)が美しくて。
あの韓屋は、オンドル完備なんでしょうか(笑)。
2009-09-03 09:26 : 真紅 URL : 編集
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