ある革命家の死~『チェ 39歳 別れの手紙』
チェ39歳別れの手紙

 CHE: PART TWO

 GUERRILLA


 スティーブン・ソダーバーグ監督が、20世紀最高のカリスマことエルネスト・
チェ・ゲバラ
を描いた4時間を超える大長編『チェ』後半部分フィデル・カストロ
との出会いからキューバ革命の成功まで
を描いた前半チェ 28歳の革命と同
じく、ボリビアの山中で展開されるゲリラ戦淡々と描かれる。しかし、厳しい戦闘
の最中にあっても、革命の成功へと向かう高揚感に満ちていた前半部に比べ、本作
には終焉の時へと向かう無常感が全編に漂っている。モノクロで挿入された力漲る
国連演説とは対照的に、最期の時へのカウントダウンのような日付が示される。
 主演のベニチオ・デル・トロは、喘息の発作と食糧不足に苦しむチェを熱演。彼の
窪んだ目に宿る鋭い光は、最期まで翳ることはなかった。

 「私は人間を信じている」

チェ39歳別れの手紙2

 美しい妻とまだ幼い子どもたちを残して、ゲバラが旅立たねばならなかった理由
は何なのだろう? ゲバラを捕らえたボリビア軍の大佐は言う、「フィデルはハバナ
で優雅にランチだ」
。同じく外国人であるゲバラがキューバでは成し遂げられたこと
が、何故ボリビアでは失敗に終わったのか。カストロ兄弟の不在、同じ轍を踏むわ
けにはいかないアメリカの大々的な介入。そしてあまりにも理想主義的だった、
バラ自身の誤算
。理由は数多挙げられるだろう、しかし、結局はとなり自身を滅
ぼす
ことになった彼の人間性が、40年を経た今も、世界中の人々を惹きつけて止
まない
のは皮肉だ。

 ゲバラが射殺された村には彼の石像が建ち、世界中から訪れる人が絶えないと
いう。愛と正義を胸に抱き、理想を追い求めて革命に散った一人の男。私利私欲を
捨て、他国の貧しい人々の為に命を捧げる。彼の生き方は、40年前でも既に「時代
遅れ」
だったのかもしれない。彼は結局、世界を救うことはできなかった。けれど、
ゲバラという名の一人のアルゼンチン人39歳でこの世を去ったことを、世界は決
して忘れない
だろう。そして、彼の再来を願い、彼の眠る村をいつまでも訪れる。。

チェ39歳別れの手紙3

 娯楽性を排し、あくまで写実的に描かれたこの映画は、観る人を選び、賛否を
分け
るだろう。21世紀の今、前世紀のカリスマの成功と挫折、生と死を敢えて
トレート
に描こうとしたソダーバーグの意図や、映画としてこの作品が優れたもの
であるのかどうか
、私にはわからない。しかし、この長い長い映画から伝わって
くる確かなエネルギー満身創痍で、敢えて茨の道を行く理想主義者の生き様
に、感銘を受けずにはいられない。

 (『チェ 39歳 別れの手紙』監督:スティーブン・ソダーバーグ
      主演:ベニチオ・デル・トロ/2008・スペイン、フランス、アメリカ)
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[2009/02/06 09:11] | 映画 | トラックバック(16) | コメント(8) |
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コメント
真紅さま こんにちは。
私も見てきました。「レッドクリフ」と違って、第1部第2部が続けてすぐ見られるので良かったです(笑)。なぜゲバラが永年「英雄」であるのか、分かるような気がしました。もともと医者であったとはいえ、彼の私利私欲のなさは不思議にも思えました。真紅さんの文章に共感し何度もうなずいてしまいました。
近年、伝記物の映画がたくさん作られ、演じる俳優さんはまるで「そっくりショー」のような風貌で、それぞれ映画は秀作ではあっても私はその俳優のそっくりぶりになんとなく違和感をもっていたのですが、今回のデル・トロが演じるゲバラはとても良かったな~と思いました。
(おまけ♪)
上映の前宣伝で トムの「ワルキューレ」やアンジーの新作、ニコール&ヒューの新作予告編を見ました。今年は春から大物スターの作品が目白押しですね。
[2009/02/08 17:34] URL | メグ #OSjUVFqk [ 編集 ]
メグさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
『レッドクリフ』、Ⅱの公開前にⅠのDVDが出るんですよね~。
商魂逞しいな~。
デル・トロは、長年この映画の企画を温めてきただけあり、身も心もゲバラに成り切っていたような気がしました。
ゲバラとアレイダの関係に絞った映画も観てみたいな、と思います。
アレイダは長年沈黙を守っていたらしいですが、最近回想録がでましたから。
きっと誰かが映画化権を買ってそうですね。
そうそう、これから大作、秀作がたくさん公開されますね~。
なるべく映画館で観たいと思っています。
ではでは、またです~。
[2009/02/08 20:12] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんばんは♪
先週観ているのに、感想をやっと書いたところです。
(TBできたかな?)

形のない、人の心を引き付ける彼の信念を描くには
一緒にいるようで、常に彼を感じられたこの作りで
良かったのだと思いますが・・・
わかりづらいったら、わかりづらいよね。
でも、空気みたいにいつまでもいるような気がして
好い映画でした。

好いといえば・・・
デル・トロさん、好いよね♪また、惚れた♪♪
[2009/02/09 18:24] URL | ひらで~ #- [ 編集 ]
ひらで~さま、こんにちは。コメントありがとうございます♪
TBは残念ながら届いていないようです~、ごめんなさい!

説明的な描写が一切ないので、ゲバラがどうしてキューバを離れたのかを知りたい、ってまず思いますよね。
でも、ドキュメンタリータッチに徹した監督の演出はよかったと思います。
いい映画ですよね。。でも、二本連続観るのはエネルギーが要ったかも。
デル・トロはいいですよ~。ギレルモさんといい、みんないい♪ですね。
ではでは、後ほどお伺いします~。
[2009/02/09 19:35] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
再び、お邪魔します♪
TB駄目でしたね・・・
しかも、上のコメントのURLは別なものが入ってしまってました、すみません!
改めてURLに入れ直しましたので、TBの代わりにお願いいたします。

説明的なことは各々自分でお勉強しなさい!
と、いわんばかりで・・・
こうして、世界がまた広がっていくので、
映画って楽しい♪・・・って、開き直ってま~す(笑)
[2009/02/09 22:14] URL | ひらで~ #- [ 編集 ]
ひらで~さま、再びのコメントありがとうございます!
TB、こちらからは反映されたようでよかったです。
送っていただいたのにこちらには届かなくて、ごめんなさいね。
プロバイダ間の相性ってよくわからないですよね。

私も、映画からいろんなことを教えてもらうし、何かを知りたいと思うきっかけにもなっています。
でも、映画を「勉強」と捉えるのはイヤなんですよね。。
あくまで「娯楽」、楽しみだと思っています。
ではでは、またお伺いします~。
[2009/02/10 08:46] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
パート2のみを観てもゲバラの行った歴史的事実は解らないかもしれないが、もし何の知識もなくこの作品だけを観たとしたなら、意外に彼の真実(ほんとう)が見えてくるのかもしれません。
パート1とは全く違う雰囲気。ソダーバーグは色々な映画が創れるのだなあ。
とにかく事実に基づきチェの考えを推し量りながら誠実に撮っていったなら、こうなるのでしょう。よくぞ撮ってくれました。それを観られる幸せ。真実は本人にさえ解らない事。只時代と時代の流れの中に浮き沈む人間の運命。・・パート1は全てが革命に向って突き進む“流れ”に乗りまたそこに必要だったゲバラだが、パート2では“泥沼”の中でただもがくゲバラであった。しかし、確かに“もがいていた”という跡は、人々の中に残るはず。。
革命は、一人の力では、成り立たないのですよね。
パンフレットをまだ熟読していないのですが、兵士役の役者達一人一人の紹介が詳しく欲しかったです(パート1もですし、そもそもパンフレットのデータには主役級しか紹介がないのが、他の作品でもいつも残念です)。
[2009/02/18 17:16] URL | フラン #- [ 編集 ]
フランさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
前編と後編では、まずスクリーンサイズからして違いましたからね。
スコープとビスタ。この違いを詳しく、何故ソダーバーグがそうしたのかも書かれているブロガーさんもいらっしゃいました。
う~ん、そうかと納得。。彼は映像オタクって感じですかね。
真実は本人さえわからない・・・、確かにその通りだと思います。
「時代」ですね。それは個人の力でも(たとえゲバラほどの人であっても)どうすることもできないものなのかもしれません。
パンフレット、いつも買われるのかな~。
私は年に数冊しか買わないです。買いたいのは山々なんですが、懐が寒いので(爆)。
ではでは、またです~。
[2009/02/19 09:12] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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