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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

天国のほとりで~『そして、私たちは愛に帰る』

そして、私たちは愛に帰る



 AUF DER ANDEREN SEITE

 THE EDGE OF HEAVEN


 ハンブルグ大学で教鞭を取る、トルコ系ドイツ人ネジャット(バーキ・ダヴラ
ク)
。彼はブレーメンに住む年金生活者父アリ(トゥンジェル・クルティズ)が、
トルコ人娼婦イェテル(ヌルセル・キョセ)居を始めたことを知る。イェテルに
は、イスタンブールに残してきた一人娘アイテン(ヌルギュル・イェシルチャイ)
いた。

 トルコ系ドイツ人監督、ファティ・アキンが本作でカンヌ映画祭脚本賞を受賞し
た頃、私は彼の愛より強くをDVD鑑賞して衝撃を受け、すぐに太陽に恋して
を観た。ドイツに生まれ育ちながら、自らに流れるトルコ人の血を意識した映画
を撮り続ける彼の作品は、静かな情熱サプライズに満ちている。

 長い間公開を待ち望んでいた本作を、劇場で観ることができて感激もひとしお
哀しい嘘と、不条理で不幸な死を越えて、出逢い、すれ違い、わかり合ってゆく
三組の親子
。彼らの深い、魂に根ざした愛の行方が、三部構成で静かに描かれ
感動作ゆっくり、ゆっくり、胸に沁み入って、、。終盤は涙、涙

そして、私たちは愛に帰る2

 登場する三組の親子は、何れも親一人、子一人の関係。記憶の中に存在しない
母、母が拒絶する父
。それは予め損なわれた心の片割れだ。欠けたカケラを求め
るように、子は国境を越える。

 インテリネジャットには、形而下で生きているような、粗野な父の態度が受け
入れ難い。偶然とはいえ人を殺めてしまった父を拒絶するように、彼はドイツを後
にする。
 反政府運動に身を投じたアイテンは、逃亡先のドイツ母を探す。彼女を助け、
恋した大学生
ロッテ(パトリシア・ジオクロースカ)は、母スザンヌ(ハンナ・シグ
ラ)
心配を省みることなく、恋に身を捧げる

 そして、イスタンブール母を喪った息子と娘は、娘を喪った母と出逢う。予め
損なわれた心
癒すように。

 6人の登場人物が絡み合いながら、複雑になることなく淡々と語られるストー
リー。脚本構成と展開見事陽光溢れるイスタンブールの風景美しい

そして、私たちは愛に帰る3

 「娘の為なら何でもする」と春を売り、「会いたい」と泣いたイェテルの願いが、叶
えられることはなかった。ロッテを喪った慟哭放心の日々を過ぎ、「死に乾杯」
言うスザンヌ。悲しみを越え、苦しみを越え娘が生きようとした人生を彼女は抱き
締める
が結ぶ、運命の環和解と再生

 二つの祖国浮遊していたネジャットは、父の国自らに捧げられた大きな愛
に気付く。荒れた海に出たの帰りを待つ彼。波音だけが繰り返す浜辺。ここか
らまた、全てが始まる

 (『そして、私たちは愛に帰る』監督・脚本:ファティ・アキン
    主演:バーキ・ダヴラク、ヌルギュル・イェシルチャイ、ハンナ・シグラ
                             2007・ドイツ、トルコ、イタリア)
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テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

2009-01-27 : 映画 : コメント : 8 : トラックバック : 11
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真紅さん~こんにちは!!
この映画、私は最後の写真のお母さんのことと、よさげな本屋のことが一番印象に残っています。華のある役者さんは出て無いけれど、脚本が良くて、じわじわ来るエピソードの集まった映画でしたね。
で、、あの本屋でのんびりバイトしてみた~い!チャイなども、たまに店に運んでもらって・・^^
2009-01-27 11:07 : latifa URL : 編集
お邪魔します~~
私も、「愛より~」みて、そのまま「太陽に~」に流れていこうかと思っていたのですが残念。
いい映画もレンタルに置かれないので
つまらないですう・(うちのところだけかな)
で・・この映画、よく練りこまれた脚本でしたよね。どういう風にまとめあげるのだろうと
最後まで興味深かったです。
あのお母さんの「死に乾杯」というセリフは
印象的だったな・・・。私はああいう状況で
言えないよ・・たぶん。色々考えされられる映画だったかな~~
2009-01-27 17:08 : みみこ URL : 編集
こんばんは。
真紅さんはきっとご覧くださると思ってましたー。
アキン監督は、多様なタイプの映画にチャレンジしながら、どれも的確なので嬉しくなります。
本作の巧みな脚本は、上質の長編小説を読み進む時のような手ごたえのある紐とかれ方でした。
中盤まではウマさにうなりつつ、終盤はただただ感動の涙でしたねー
2009-01-27 22:44 : かえる URL : 編集
真紅さん、こんばんは!
ファティ・アキンは素晴らしい!ドラマを作りますね。
マイベストに決まりの1作です。
一番近くて、一番遠い親子...ウチもそうです。親子って会話しないから(特に男の子は)何考えてるか分りません。でも深い愛情で繋がってるんです。
それぞれの親子の関係は勿論、血の繋がらないスザンヌとアイテン、そしてスザンヌとネジャットの関係がナイスに描かれていて感動しましたわ。
素晴らしい監督と、素晴らしい役者の映画堪能しました。
2009-01-27 23:15 : margot2005 URL : 編集
latifaさま、こんにちは~! コメントとTBをありがとうございます。
そうね~、あのお母さんの存在感が大きかったですね。
役者さんは、私も誰一人知らなかったです。
でも、きっとドイツやトルコでは有名な方々なんでしょうね。
みんな巧かったもん・・・。
私も、小さな本屋さんやカフェでバイトしたいっていつも思ってました。
あと、ミニシアターね。もう、諦めたけどね。。
ではでは、またお伺いします~。
2009-01-28 09:07 : 真紅 URL : 編集
みみこさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
『太陽に恋して』、明るい青春もので、ロードムービーなんですよ!
いつか、是非ご覧になって下さいね♪
この映画、粗筋書くのが難しいんですけど、映像でみるとすんなり理解できるんですよね。
やっぱり、脚本が優れているんだな~、って思いました。
「死に乾杯」私もなかなか言えない言葉だと思いますね。
だからこそ、感動もしたのですが・・・。
いろんな要素があって、感想書き足りない感じもしています。
いい映画でしたね!
ではでは、またお伺いします~。
2009-01-28 09:11 : 真紅 URL : 編集
かえるさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
これだけは外せないと思って観に行ってきました。
アキン監督って、頭の中がすごく立体的というか、物語の組み立て方に唸りましたね。
長編小説、そうかもしれない。それも極上のですね。
私は第二部の終盤から涙、涙でしたわ。。ロッテに感情移入してね。
本当に、観てよかったです。
ではでは、またお伺いします~。
2009-01-28 09:22 : 真紅 URL : 編集
margot2005さま、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
はい~、これは素晴らしかったですね♪
マイベスト、忘れないようにしなければ。。
子どもが成長していくにつれて、親子の関係も変わっていきますよね。。
ネジャットも、自分が愛情深く育てられたことを忘れてしまっていたわけで・・・。
でも、思い出せる、また始められる、っていうのが親子ならですよね!
スザンヌの大きな愛に、涙、涙でした。
ファティ・アキン、これからも追いかけていきたい監督さんです。
ではでは、またお伺いします~。
2009-01-28 09:27 : 真紅 URL : 編集
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