遠くに行くこと~『左岸』
左岸


 Rive gauche


 小さな頃から踊ることが好きで、奔放に生きる寺内茉莉兄惣一郎を亡くし、
高校中退、家出、同棲と、波乱万丈の彼女の人生が綴られた長編

 辻仁成右岸と対をなす、江國香織の新作。二冊合わせて1000ページ
を軽く越え、両方読むのに2週間以上かかってしまった。疲れたけれど、心地
良い充足感
が得られる。人生における、恋愛の占める比重が高い江國ワールド
江國節が全開

 母(茉莉)娘(さき)生活風景は、『神様のボート』を彷彿させた。髪を
ピンク色に染めて、汗びっしょりになるまでクラブで踊る少女、というのも何
かの作品で読んだはず。

 私が江國さんの小説が好きなのは、彼女と感覚を共有しているという思い
があるからだと思う(おこがましいけど)。隣家に住んでいた幼馴染、九を思う
「心が温かくなる」という茉莉。離れていても、ずっと会えなくても、その人を
思うと心が温かくなる
、ってすごくわかる。人生でそういう人に出逢えたって、
奇跡なんだと思う、運命じゃなくて

 ずっと茉莉を導いてきた惣一郎の言葉「遠くへ行くんだ」。それが距離でなく、
時間
だったということがわかるラストに感動生き急いだ兄は、最愛の妹
「何があっても生きて行きなさい」とずっと伝えていたんだと思う。

 よかったね、遠くに来られて。一人ぼっちでも。

 (『左岸』江國香織・著/集英社・2008)
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

[2009/01/11 22:22] | 読書 | トラックバック(2) | コメント(4) |
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コメント
こんばんは。
主人公と感覚が共有できるって、
素敵なことですね。
心があたたかくなれる人と出会えた奇跡、
生きていった先の時間に
見つけられた九との関係が、よかったです。
[2009/01/13 04:04] URL | 藍色 #- [ 編集 ]
藍色さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
登場人物に共感できないと、長編は特に読んでいて辛いものがあるのですが、この作品は心地良い読書時間をくれました。
九と茉莉の今後を、明示しないラストがよかったです。
またお伺いしますね、ではでは!
[2009/01/13 09:35] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんばんは。
情熱的な恋愛をしてすべてを捨てる茉莉。
だけど男の人がいなくなるとしっかりと前を向いて歩く。
そんな茉莉の心の中にある九。
最後に二人が子どもの頃の距離に戻れてよかったなって思いました。
[2009/01/13 20:52] URL | なな #- [ 編集 ]
ななさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
茉莉と九の関係、不思議なんですが素敵でしたね。
茉莉のように生きられたらいいな~と思いました。
ラストはそこはかとなくハッピーエンドで、私もよかったと思います。
ではでは、またお伺いしますね。
[2009/01/14 08:58] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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左岸 江國香織
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[2009/01/13 20:52] ナナメモ
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