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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

遅咲きの乙女たち~『マルタのやさしい刺繍』

マルタのやさしい刺繍



 DIE HERBSTZEITLOSEN


 スイス・エメンタール地方の小さな村。最愛のを亡くして9か月、鬱々とした
毎日を過ごす80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)。そんなある日、彼女
は若い頃のを思い出す。それは自分でデザインした刺繍を施した、ランジェリー
の店
を開くこと・・・。

 合作でない、純粋なスイス映画を観るのは初めてかもしれない。2006年にスイ
ス国内動員数№1ヒット
を記録したという本作は、元気いっぱいのおばあちゃん
ちが「自分の人生」を生きようと奮闘する上質なコメディ想像以上に素敵な映画
だった。大阪では単館公開ながら、ロングランしているのも納得の作品。個人的に
は、昔母と一緒にスイスのベルン、ルツェルン、グリンデルワルトなどを回った思い
出があるので、母に是非観せたいなと思った。懐かしいスイスの風景。。に映え
民族衣装や、窓辺のカラフルなお花たちがとてもかわいい

マルタのやさしい刺繍2

 ヨーロッパでも、「男は仕事、女は家庭」という固定観念が根強いことに少々驚く。
マルタは若い頃に好きだった裁縫「夫に言われて」諦め、マルタの友人ハンニ
「夫に反対されて」運転免許を持てなかった。しかし彼女たちは夫をちゃんと愛して
いる
し、今までの人生が最悪だったと思っているわけでもない。ただ、「自分の意志
で何かをしたい」
と思っているだけ。

 マルタたちの子の世代に至っても、保守的な価値観はなかなか変わってはいな
いようだ。牧師や村の青年会(?)のリーダーという立場の彼らは、身勝手で醜悪
な俗物
。この辺りが類型的に描かれすぎているような気がしないでもないが、観て
いて心底ムカつくほど、旧態依然とした彼らの姿は見苦しい

マルタのやさしい刺繍3

 80歳を過ぎたおばあちゃんたちが、ネットを駆使してランジェリーの通販なん
て、最高にクール! マルタが忘れかけていた自分の夢を叶えたことも素敵だけ
れど、世間体周囲の妨害にもめげず、彼女が自分の意志を貫いたことが素晴
らしい。やりたいことは、誰が何と言おうと、いくつになってもやっていいんだ
生き甲斐をもつ喜びを感じることに、年齢なんか関係ない! 頬に積もる陽射し
を気持ちよさそうに受ける、ラストのマルタの表情がいい。彼女の側には温かい
お茶とパイ、そしてかけがえのない友人たち。。

 願わくば、ウィリアム・H・メイシー似のヴァルターの妻にも、何らかのエピソード
があって欲しかったなと思う。夫に裏切られ、村を去る彼女だけがちょっと心配。
 そして誰の人生にも、美しい花が開く時期がありますように。たとえどんなに
遅咲きでも

 (『マルタのやさしい刺繍』監督:ベティナ・オベルリ/2006・スイス/
       主演:シュテファニー・グラーザー、ハイジ・マリア・グレスナー
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テーマ : ヨーロッパ映画
ジャンル : 映画

2008-12-10 : 映画 : コメント : 14 : トラックバック : 13
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「マルタのやさしい刺繍」
「Die Herbstzeitlosen」...aka「Late Bloomers」 2006 スイス マルタにシュテファニー・グラーザー。 リージにハイジ・マリア・グレスナー。 フリーダにアンネマリー・デューリンガー。 ハンニにモニカ・グブザー。 監督、原案にベティナ・オベルリ。 長年
2008-12-10 23:20 : ヨーロッパ映画を観よう!
『マルタのやさしい刺繍』 Die Herbstzeitlosen
ひと花咲かせましょうー。遅すぎることなんてない。 スイス、エメンタール地方トループ村に住む80歳のマルタは、9ヶ月前に夫に先立たれてから気落ちしていたが、ある日、昔得意だった裁縫仕事を依頼されて・・・。ハートウォーミング系、ヨーロッパ映画は大好き。そし
2008-12-10 23:46 : かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
CHANGEだ、YES,WE CANだ~♪~「マルタの優しい刺繍」~
大阪では、今週がラストってことで 梅田ガーデンシネマで昼一回きり上映に ギリギリ間に合いました。 先ほどのCoccoと同じスクリーンで。 続けて2本見てきたわけで。 スイス映画ってのはたぶん初めてじゃないかな。 最初はマルタおばあちゃんの顔がどんよりしてて クラ~...
2009-01-16 22:52 : ペパーミントの魔術師
マルタのやさしい刺繍
満 足 度:★★★★★★★★    (★×10=満点)  監  督:ベティナ・オベルリ キャスト:シュテファニー・グラーザー       ハイジ・マリア・グレスナー       アンネマリー・デューリンガー       モニカ・グブザー       
2009-01-18 13:51 : ★試写会中毒★
マルタのやさしい刺繍
最愛の夫の死を乗り越え、再び夢に向かって挑戦していく老女の姿を通して、人間の勇気と希望を描きだしている。 物語:スイスの小さなトループ村に暮らす80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)。9か月前に最愛の夫に先立たれ生きる希望を失くし、悲しみから立ち....
2009-01-21 15:52 : パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ
「マルタのやさしい刺繍」 おばあちゃんたちに拍手喝采
長い間連れ添った伴侶をなくしたマルタは、なにか気が抜けたように暮らしていました。
2009-01-27 17:28 : はらやんの映画徒然草
~『マルタのやさしい刺繍』~ ※ネタバレ有
2006年:スイス映画、ベティナ・オベルリ監督、シュテファニー・グラーザー主演。
2009-03-16 00:33 : ~青いそよ風が吹く街角~
「マルタのやさしい刺繍」
スイスの山の中って、本当に自然が美しい!でも、やっぱり田舎って・・
2009-04-24 10:12 : 心の栄養♪映画と英語のジョーク
マルタのやさしい刺繍
マルタのやさしい刺繍 DIE HERBSTZEITLOSEN 監督 ベティナ・オベルリ 出演 シュテファニー・グラーザー ハイジ・マリア・グレスナー    ...
2009-06-11 21:42 : Blossom
「マルタのやさしい刺繍」
タイトルから想像していた内容とはちょっと違った内容の映画でした^^ 3つ☆
2009-07-20 22:38 : ポコアポコヤ 映画倉庫
マルタのやさしい刺繍
 『縫い残した未来が 輝きはじめる』  コチラの「マルタのやさしい刺繍」は、多くの公用語が存在し、映画がヒットしにくい国らしいスイスで、動員数No.1のヒットとなり、2007年アカデミー賞ではスイス代表になった、遅咲きの乙女たちが贈る最高にチャーミングなハート...
2009-07-21 21:05 : ☆彡映画鑑賞日記☆彡
マルタのやさしい刺繍/Die Herbstzeitlosen/Late Bloomers
《マルタのやさしい刺繍/Die Herbstzeitlosen/Late Bloomers》いかにも〈単館系〉という作品でした大方の予想はつくものの大げさなところがなくて何しろ田舎の風景が〈マルタの刺繍〉のように可愛く美しいのですお伽話に出てくるどこかの村のようです 
2009-09-14 23:19 : Musica di Maria
『マルタのやさしい刺繍』 2009-No5
元気なおばあちゃん4人組み。 ほのぼのと。 でも力強くて。 ちいさなちいさな村におばあちゃんがオープンさせた下着屋さん...
2009-09-22 08:07 : 映画館で観ましょ♪
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真紅さん、こんにちはん。
元気になれるステキな映画でしたね。
永世中立国スイスには何となく勝手に自由で平等なイメージを抱いていたのですが、田舎はやはり保守的なんですね。
でも、こんなおばあちゃん主演作がナンバーワンヒットを飛ばす国でもあるなんて、ヒット映画のヒロインは若手アイドルが当然の国に住む自分からみると、すばらしいなと思えました♪
2008-12-10 17:35 : かえる URL : 編集
かえるさま、こんにちはー。コメントありがとうございます。
永世中立国、そうそう! スイスってEU加盟国じゃないのかな?
(それとこれとは別、かしらん)
日本でも菅井きんさんが最高齢で主演、ってちょっと話題でしたね。
老いることは悪いことじゃないし、恥ずべきことでもなんでもない。
誰もが通る道、だからこそ自分らしく!っていう素晴らしい映画でした♪
私も、がんばるぞーって思えました。マルタたちに感謝です。
ではでは、またお伺いします~。
2008-12-10 20:44 : 真紅 URL : 編集
真紅さま
こんにちは! 楽しそうな、素敵そうな映画ですね(●′∀`●)
シンプルなデザインのものも好きですが刺繍入りのランジェリーなんて素敵!
80才のおばぁちゃんが作るなんてチャーミングです。
年はとっても心までシワクチャにはなりたくないですもの
おばあちゃん達に見習いたいです。DVDになるの期待しています!
2008-12-10 22:20 : Maria URL : 編集
真紅さん、こんばんは!
私もこの映画は想像以上に良くて感動いたしました。
マイベストに入れちゃいます。
評判が、評判を生んだのか、連日女性で一杯のシアターだったようです。
真紅さんスイスへ行かれたことあるのですね?ではきっとあの美しい景色を懐かしまれたことでしょう。
私はスイスは憧れの国ですが今だ行けてませんの。
スイス映画ってほとんど公開されないですよねそういや...
2008-12-10 23:30 : margot2005 URL : 編集
Mariaさま、こんにちは! コメントありがとうございます。
これは関東でも銀座でしか公開されていないようですが、ものすごく素敵な映画でしたよ♪
もう、是非是非オススメです! 全ての女性に観ていただきたいくらいです。
刺繍や、映画全体の色使いもとってもいいんですよ~。
せっかく生命をいただいているのですもの、いつまでも活き活きしていたいですよね。
DVD化されましたら、もう是非!
ではでは、私もまたお伺いします~。
2008-12-11 09:46 : 真紅 URL : 編集
margot2005さま、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
本当に、予想以上に素晴らしい映画でしたね。
マイベスト、私も入れてしまうかも?しれません!
ヨーロッパの中でも「スイスが一番よかった」と言う方多いですよね。
特に私の世代は、『ハイジ』という絶大な刷り込みがありますので(笑)。
margot2005さんもいつか是非、スイスを訪れてみて下さいまし。
夏がオススメです、ユングフラウ鉄道、ルツェルンなど本当に素晴らしかったです!
ではでは、またお伺いします~。
2008-12-11 09:50 : 真紅 URL : 編集
この作品に描かれている保守性はスイスの国民性みたい。こちらもTBできてないけれど、記事アップしていて、そこで触れているけれど、スイスって山岳国家で、周囲から閉ざされ、冬は厳しいといったそういう環境もあるんでしょうね、集落単位で完結する国民性みたい。日本の村社会がまだ地方では厳然とあるみたい。そんな社会に対する風刺もこめているんでしょうね。まだまだ閉鎖的な社会みたい。スイスっていいう国自体は。
ただ、ランジェリーを作るシーンとか手刺繍の司シーンがもっと観たかったし、そのあたりを期待して観にいったところがあるから、少しそのあたりが残念だったわ。
2008-12-19 13:48 : シュエット URL : 編集
シュエットさま、こちらにもコメントありがとうございます。
スイスって、馴染み深いようでよくわからない国でもありますね。
永世中立国っていうイメージが強いのですが、それもスイスの保守性を表しているのかもしれないですね。
ヨーロッパでも、まだまだ村社会というか、閉鎖性は残っているのだな~と感じました。
確かに、刺繍のシーンはあまりなかったですね?
でも、とっても素敵な映画だったと思います。尺も潔く短いし。
若い女性監督が撮った、というのも好感度大でした!
ではでは~。
2008-12-19 20:55 : 真紅 URL : 編集
真紅さん~こんにちは!
これ、今見た処なのです。
そうなんだよね・・・。あの牧師の奥さん、怒って去ってっちゃったけど、なんだかちょっと気の毒だったような・・・・。

想像していたより、ほんわか温かい気持ちになる映画ではなかったし、結構酷いなー!って思う部分も多い映画ではあったものの、基本の処(幾つになっても夢を忘れず新しい事にトライする)って部分は大好きでした。

PS 真紅さんならきっとご存じだと思うけど、万城目さんと、宇治原君って同級生なんだってー!同じ大学卒ってのは知ってたんだけど、なんかびっくり。そのころ、ホントに京大にちょんまげ頭の生徒さんがいたらしいよ。
2009-07-20 22:38 : latifa URL : 編集
う~ん、確かに彼女たちが若い頃は特に
夫の意思が全てだったのかもね~。
そう考えると、やっとやりたいことが出来るのに
年齢のせいで周りにとやかく言われたり、
色々と苦労しなくっちゃいけないのが余計に
切ないですよね~。でも、それにも負けずに
でもしなやかに駆け抜けていく乙女の青春に
とても晴れやかな気持ちにさせてもらいました。
いい映画でしたね!
2009-07-21 21:06 : miyu URL : 編集
latifaさん、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
そう、あの奥さんだけが気懸りだわ~。。幸せになって欲しい、みんなに。。
スイスって結構保守的なんだ~、と思いましたよね、ビックリ!!
私も、おばあちゃんになってから好きなことしようっと。。。
取りあえず今は、26年後に皆既日食を観る!という目標があります(今日は曇りで、しかも仕事で観られなかった、泣)。

で、、宇治原くんと万城目っちが同級生とな!!
知らんかったーー!! まじで!?!?
そう言えば、万城目っちも法学部だったよね。。
そうかー、なんかすっごい学年だねー。しかもちょんまげの学生って、何者?!(爆笑)
最近、読めない漢字があると「宇治原くん呼んできて!」と思う私です。
2009-07-22 22:56 : 真紅 URL : 編集
miyuさん、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
新婚さんのmiyuちゃんには、この映画いろいろと思うところがあったんじゃないかな?
女って、旦那さんに頼ってる部分もあるけど、旦那さんに縛られてる部分もすっごくおっきいと思うんだよね。
だから、夫に先立たれた女性が結構活き活きして長生きする・・・っていうのもわかる気がする。
マルタおばあちゃんも、夫を心底愛してたのは間違いないんだろうけど、やっぱりしたいことを抑えて生きてきたわけで。。
こういう女性賛歌映画は大好きです。いくつになっても、夢があるっていいよね♪
後ほど伺いますね~。
2009-07-22 23:00 : 真紅 URL : 編集
真紅さま
劇場鑑賞したかったこの作品
やっとDVD鑑賞しました
〈真紅のやさしいレヴュー〉のほうが優しさをかんじましたよ^^
私はちょっと〈やさしい刺繍〉と言う言葉から離れた印象を受けました
そうなんですよね!牧師の妻のことや
マルタのランジェリーが村の女性たちにも受け入れられていくプロセスなどがもう少し丁寧に描かれていると良かったかな…と思いました
景色は文句なく美し可愛かったです^^
TBさせて頂きました
2009-09-14 23:26 : Maria URL : 編集
Mariaさん、こんにちは! 再びコメントいただきありがとうございます。
TBもありがとうございました。
このスイスの山村の風景だけで、もう70点くらいは軽くクリアしている映画だと思います。
なんだか、こういう映画って粗があっても許せると言うか・・・。
み~んながハッピー、大団円というわけでもないのですが、幸せな気分になれる映画だと思います。
勇気をもらえる、って言うか・・・。
私も後ほど伺いますね。
2009-09-15 15:28 : 真紅 URL : 編集
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