映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅

私写真の系譜~『たまもの』

ここに描かれている物語を、三角関係ドロドロで露悪趣味でキライ、
とバッサリ斬ることもできるだろう。
でも私は圧倒されて、何度も何度も読み返している。

神蔵美子と坪内祐三が恋に落ちたとき、彼女には夫が、彼には
婚約者がいた。それでも二人は結婚する。
数年後、神蔵は末井昭と出会い坪内と離婚、妻帯者であった末井も
離婚し神蔵と末井は結婚する。
しかし、離婚後も神蔵は坪内との関係を切ることができない。

自分の私生活や思いをさらけ出して、作品として成立するというのは、
有名人の特権かもしれない。
普通は隠したがるはずのものを敢えて世間に曝すことで、物議をかも
すことが狙いかもしれない。
でも、私はこの作品から目をそらすことができない。

この作品は、明らかに荒木経惟の『センチメンタルな旅』の影響下にある
だろう。私写真と文章というつくりはそっくりだし、荒木さんも、陽子さんも、
「センチメンタル」という言葉もたくさん出てくる。
改めて、アラーキーは凄いな、と思う。
でも、この作品も、それ以上に凄いかもしれない。

 著者の神蔵美子は、坪内祐三にとっても末井昭にとっても
陽子さん」だ。そうなると、関係が複雑になる分、嫉妬や軋轢、
引き裂かれそうな苦しみが現れてくる。
これは一対一の関係性を閉じ込めた『センチメンタルな旅』には当然無い
もの。
最初はそこに描かれている感情の渦に戸惑う。けれど読み進むうちに、
ひょっとしてこっちのほうがリアルで、普遍的なんじゃないか・・・と
思えてくる。

 荒木経惟は、「写真は被写体との関係性を撮るんだ」と言う。
関係性とは、愛という陳腐な言葉に言い換えることもできるだろう。

 愛ってややこしい。でも、どんな愛でも純愛なんだ。
そんなふうに思わせる作品である。

(『たまもの』神蔵美子著/筑摩書房/2002)
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2006-02-16 : 読書 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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