その男、凶暴につき~『血と骨』

1923年、金俊平は「君が代丸」に乗り、韓国・済州島から大阪へ渡る。剥き出し
の暴力と欲望に支配された「男の一生」。
梁石日氏が自らの父をモデルに描いた半自伝的小説の映画化。原作は随分前
に読み、心の真ん中を握り潰されたような衝撃を受けた。凄い小説であることは間
違いないけれど、強烈過ぎて正直二度と読み返したくない。映画化を知っても、
映画賞受賞を知っても「観たい」と思ったことは無かったのだけれど・・・。
「ニッポンの映画監督」と題されたAERAの映画ムックがある。その中で21世紀の
日本映画ベスト作が掲載されており、未見だったのが1位の『ユリイカ』と9位の
本作。先日『ユリイカ』を観たので、どうせならベスト10くらいはコンプリートして
しまおうと思った次第。ちなみに、ベスト10は以下です。
1位 『EUREKA/ユリイカ』
2位 『誰も知らない』
3位 『ゆれる』
4位 『下妻物語』
5位 『それでもボクはやってない』
6位 『ハッシュ!』
7位 『いつか読書する日』
8位 『パッチギ!』
9位 『血と骨』
10位 『フラガール』

役者陣は演技派がズラリ、だけれど、短い出演時間で恐ろしいほど鮮烈な印象を
残すのがオダギリジョーだろう。私はてっきり、彼は新井浩文が演じた正雄(長男)に
キャストされているものだと勘違いしていた。
好き放題な男、耐える女という構図の中で、男に利用されながらもしたたかな妾、
定子を演じた濱田マリもいい。潔い脱ぎっぷりは、主演女優であるはずの鈴木京香
が最低限の肌の露出しかしていないことと較べても好感度大。しかし、あの墨汁を
垂らしたようなボカシはなんとかならなかったのだろうか(鈴木京香の濡れ場にボカシ
はない)。大阪の在日コリアン社会を描いた映画であるため、韓国語もポンポンと
飛び出すが、寺島進の韓国語が一番流暢に聴こえた。そして原作で唯一「好人物」
として描かれる高信義を演じた松重豊、いい味出てます!

原作を読んだとき、金俊平のような「怪物」の姿をイメージすることができなかっ
たし、これは誰にも演じることなど出来ないだろうと思った。だからビートたけし
以外にこの人、とは誰も浮かばないのだけれど・・・。彼の演技はちょっと残念。
二時間半近い長尺を観終えたとき、よくできた面白い映画だったというそれなり
の満足感もあった。しかし改めて題名の『血と骨』に思いを巡らせたとき、そこにあ
る「思想」のようなものが描かれていたのかというと疑問が残る。
「血は母より受け継ぎ、骨は父より受け継ぐ」。この言葉の意味を、もっともっと深く
掘り下げて描いて欲しかったと思う。正雄(新井浩文)が父・金俊平(ビートたけし)
から、そして母・李英姫(鈴木京香)から受け継いだものとは、何だったのか。その
ためには、もっと原作を端折って、登場人物を整理する必要があったのかもしれな
い。その辺りのバランス、匙加減は難しいと思うけれど・・。
しかしそれでも、この作品の映画化は崔洋一監督にしかできなかっただろうし、
許されなかったと思う。想像を絶する重圧の中、映画を完成させたであろう監督
に敬意を表したい。
(『血と骨』 監督・脚本:崔洋一/原作:梁石日『血と骨』/
主演:ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、オダギリジョー/2004・日本)
- 関連記事
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- やさしい女神たち~『メゾン・ド・ヒミコ』 (2008/10/15)
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trackback
1923年、大阪へと向かう船上には一旗揚げようと、済州島を後にした若き日の金俊平(ビートたけし)、そのバイオレンスと哀しみに満ちた物語。
「ALWAYS 三丁目の夕日」を思わせるシーンが随所に現れ、時代背景も似ているが、こちらは感動を誘う芝居などありは
2008-10-12 00:24 :
茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~
■監督 崔洋一
■原作 梁石日
■キャスト ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、オダギリジョー
1923年。 成功を夢見て祖国から大阪へ渡った少年・金俊平(ビートたけし)。 朝鮮人集落での裸一貫の船出から、持ち前の腕力と上昇志向で自分の蒲鉾工場を構えるまで
2008-10-12 10:15 :
京の昼寝~♪
暴力を描く作品は生理的に好きになれない。オダジョー?が出ていなければ、とても観る気にはならなかった一作。 頑丈な肉体、頑固で無慈悲、しかも極度に自己中心的で家族にも暴力三昧。暴力的なシーンが多いことを覚悟して鑑賞した為か、なんとか結末までこぎ着けた...
2008-10-19 13:12 :
Have a movie-break !
コメントの投稿
こんばんは、真紅さん、
へえ、ムックで21世紀の邦画ベスト10に、入ってたんですね。
21世紀っていうと、まだ最近ですもんね、なかなか面白い企画ですね。
映画の感想は、ざっとだけ読ませていただきました。
また見終わった後に、ゆっくり読ませていただきますね★
でも、なんだか面白そう!オダジョーは、期待できそうですね^^
へえ、ムックで21世紀の邦画ベスト10に、入ってたんですね。
21世紀っていうと、まだ最近ですもんね、なかなか面白い企画ですね。
映画の感想は、ざっとだけ読ませていただきました。
また見終わった後に、ゆっくり読ませていただきますね★
でも、なんだか面白そう!オダジョーは、期待できそうですね^^
とらねこさま、こんにちは。コメントありがとうございます~。
そうなんですよ、まだ10年にも満たない21世紀ですからね、比較的新しい映画ばっかりです。
機会があれば立ち読みでもしてみて下さい(笑)。
この映画、オダギリジョーはかなり「おいしい」役かもしれません。
彼がかなりさらっている感じですよ、乞うご期待!
ではでは、またです~。
そうなんですよ、まだ10年にも満たない21世紀ですからね、比較的新しい映画ばっかりです。
機会があれば立ち読みでもしてみて下さい(笑)。
この映画、オダギリジョーはかなり「おいしい」役かもしれません。
彼がかなりさらっている感じですよ、乞うご期待!
ではでは、またです~。
こちらにも・・・・
10位の中で見ていないのは相変わらず「ユリイカ」と「ハッシュ!」です(汗)
「ユリイカ」は手元にDVDがあるのにぃ(滝汗)
「血と骨」のオダジョーはなかなか色っぽかったでしょう?
これで日本アカデミー賞にノミネートされました。
でもね、この役はとてもインパクトがあってオイシイ役だったと思うの。
ベストテンの中に彼の出演作が3本入っているのが自慢です(←オダジョーの身内??)
10位の中で見ていないのは相変わらず「ユリイカ」と「ハッシュ!」です(汗)
「ユリイカ」は手元にDVDがあるのにぃ(滝汗)
「血と骨」のオダジョーはなかなか色っぽかったでしょう?
これで日本アカデミー賞にノミネートされました。
でもね、この役はとてもインパクトがあってオイシイ役だったと思うの。
ベストテンの中に彼の出演作が3本入っているのが自慢です(←オダジョーの身内??)
ミチさま、こちらにもコメントありがとうございます!
『ユリイカ』、いいですよ~。一位も納得、です。
是非是非ご覧下さいませ~。
日本アカデミー賞、受賞したような記憶があるのですが・・・。
側面を刈り上げた髪型で、ブーツで、ワイルドな衣裳だった記憶があります。
翌年、堤さんにプレゼンターしてたから、やっぱり受賞してますよ!
これはホント、おいしい役でしたね~。
うふふふ、もう~、身内ですよ! 押しかけ内縁の妻、なんてどうですか?
いっそ、「私が本妻よ」くらいの勢いで、ね(笑)。
ではでは、またお伺いしますね~。
『ユリイカ』、いいですよ~。一位も納得、です。
是非是非ご覧下さいませ~。
日本アカデミー賞、受賞したような記憶があるのですが・・・。
側面を刈り上げた髪型で、ブーツで、ワイルドな衣裳だった記憶があります。
翌年、堤さんにプレゼンターしてたから、やっぱり受賞してますよ!
これはホント、おいしい役でしたね~。
うふふふ、もう~、身内ですよ! 押しかけ内縁の妻、なんてどうですか?
いっそ、「私が本妻よ」くらいの勢いで、ね(笑)。
ではでは、またお伺いしますね~。
こちらにも^^ メゾンドヒミコと合わせてまとめてですいません。
いやぁ~真紅さまも、この原作お読みになられていたのですね。私は映画の後、原作を読んだのですが、映画での武も迫力あったにはあったけれど、原作を読むと、更に凄くデカイ迫力のあるお父さんが描かれていて、圧倒されました。
で、私はこの血と骨のオダギリジョーにはよろよろ・・・となりそうになってしまいました。もちろん、メゾンドヒミコのオダギリジョーもすんごく素敵なんですが、こういうやさぐれ系のもぐっと来ちゃいます。
で、1位がユリイカなんですね~。そうかあ・・・。ハッシュが入っているというのが、ちょっと意外というか・・・。
そういえば、落下の王国、近々見に行くんです!見たら、またお邪魔します。
いやぁ~真紅さまも、この原作お読みになられていたのですね。私は映画の後、原作を読んだのですが、映画での武も迫力あったにはあったけれど、原作を読むと、更に凄くデカイ迫力のあるお父さんが描かれていて、圧倒されました。
で、私はこの血と骨のオダギリジョーにはよろよろ・・・となりそうになってしまいました。もちろん、メゾンドヒミコのオダギリジョーもすんごく素敵なんですが、こういうやさぐれ系のもぐっと来ちゃいます。
で、1位がユリイカなんですね~。そうかあ・・・。ハッシュが入っているというのが、ちょっと意外というか・・・。
そういえば、落下の王国、近々見に行くんです!見たら、またお邪魔します。
latifaさま、こちらにもコメントありがとうございます。
『メゾン』にもTBありがとうございました。
原作、凄いですよね。。もう、読後ウツになりそうでした(笑)。
映画も、観たくないとずっと思っていたんですよ。。でも、観てよかったです。
同じく梁石日先生の『闇の子どもたち』も勇気がなくて、観に行かなかったんです。
ちょっと、後悔してるかも。。DVD待ちかな。。
ジョーくん、この映画でも尋常でないオーラと色気を出しまくってますね♪
キレまくりの演技で、私もよろけて倒れました(爆)。
『ユリイカ』の一位、私は納得かな。『ハッシュ!』も、大好きな映画なんですよ。
両方に光石研さんが出てるわ~♪ ウフフフフ。
『落下の王国』、是非映画館でご覧下さいませ! 垂涎モノノ映像ですよ!!
感想お待ちしてます~。ではでは♪
『メゾン』にもTBありがとうございました。
原作、凄いですよね。。もう、読後ウツになりそうでした(笑)。
映画も、観たくないとずっと思っていたんですよ。。でも、観てよかったです。
同じく梁石日先生の『闇の子どもたち』も勇気がなくて、観に行かなかったんです。
ちょっと、後悔してるかも。。DVD待ちかな。。
ジョーくん、この映画でも尋常でないオーラと色気を出しまくってますね♪
キレまくりの演技で、私もよろけて倒れました(爆)。
『ユリイカ』の一位、私は納得かな。『ハッシュ!』も、大好きな映画なんですよ。
両方に光石研さんが出てるわ~♪ ウフフフフ。
『落下の王国』、是非映画館でご覧下さいませ! 垂涎モノノ映像ですよ!!
感想お待ちしてます~。ではでは♪
真紅さん、こんにちは~
嬉しいオダジョー作品たちにコメントとTBをありがとうございました。
今回はこちらにコメントさせて頂きますね。
ビートたけしに対する感想、全く同感です!
また、私の場合は映画の後で原作だったのですが、あの原作を2時間余にまとめるのは至難の業だなぁと、溜息ものでした。
まずは監督に感謝です。映像も重厚感有りましたよね。
そしてオダジョー。 度肝を抜く存在感と色気には息を呑みました。
雨の中のあの乱闘で腕を怪我したらしいですね。
希有な魅力とオーラを持つ日本の役者だわぁ!と、つい力んでしまいます(笑)
上手に齢を重ねてほしい人です。
『闇の子どもたち』は読んでから観る予定です。
嬉しいオダジョー作品たちにコメントとTBをありがとうございました。
今回はこちらにコメントさせて頂きますね。
ビートたけしに対する感想、全く同感です!
また、私の場合は映画の後で原作だったのですが、あの原作を2時間余にまとめるのは至難の業だなぁと、溜息ものでした。
まずは監督に感謝です。映像も重厚感有りましたよね。
そしてオダジョー。 度肝を抜く存在感と色気には息を呑みました。
雨の中のあの乱闘で腕を怪我したらしいですね。
希有な魅力とオーラを持つ日本の役者だわぁ!と、つい力んでしまいます(笑)
上手に齢を重ねてほしい人です。
『闇の子どもたち』は読んでから観る予定です。
fizz♪さま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
私も、この映画の原作は相当インパクトがあったので、映画化の話を聞いて驚きました。
しかし、インパクトがあるからこそ、映画化したいと望まれるのでしょうね。。
セット撮影だと思うのですが、歴史考証なども綿密にされていたと思います。
ジョーくんは、この映画で高く評価されましたね。
新井くんもいい演技だったと思うのですが、ジョーくんにすっかりさらわれてしまって・・・。
あの喧嘩シーンはガチンコでした! 怪我したのかー、それほど迫力ありましたね。
結婚して、海外の作品にたくさん挑戦して、彼は今年が大きな節目の年かもですね?
今後の活躍に期待です! 一緒に応援しましょう~♪
『闇の子どもたち』うーん、どうしようかな。。
ではでは、またお話聞いて下さいね!
私も、この映画の原作は相当インパクトがあったので、映画化の話を聞いて驚きました。
しかし、インパクトがあるからこそ、映画化したいと望まれるのでしょうね。。
セット撮影だと思うのですが、歴史考証なども綿密にされていたと思います。
ジョーくんは、この映画で高く評価されましたね。
新井くんもいい演技だったと思うのですが、ジョーくんにすっかりさらわれてしまって・・・。
あの喧嘩シーンはガチンコでした! 怪我したのかー、それほど迫力ありましたね。
結婚して、海外の作品にたくさん挑戦して、彼は今年が大きな節目の年かもですね?
今後の活躍に期待です! 一緒に応援しましょう~♪
『闇の子どもたち』うーん、どうしようかな。。
ではでは、またお話聞いて下さいね!
「血と骨」の映画見ました…
流石埜魚水です、初めまして。
「血と骨」の映画を見てブログに書きました。人間の「生」の生々しさ、男の「性」の激しさを感じる作品でした。ビートたけしの暴力の演技と存在感が大きいですが、ただし、演技も台詞も下手ですが…。
「差別」の映画というよりも、昨日、私もこの映画を観てブログに書きましたが、むしろこの映画を観て「親子」の絆とか、「家族」とはなんだろうか…と考えさせられ作品ですね。もう少しこの延長で、「差別」を映画にした作品、「GO」をまた続けて見ました。窪塚洋介が在日朝鮮人青年を熱演してました。
別の機会に「パッチギ!」等々の映画も是非ブログで書きたいです。
『闇の子供たち』も先日、DVDで見ました。むしろ臓器売買、子供売春、東南アジアの人身売買の市場は、ルポライターの石井光太氏の本でインパクトを受けました。
映画は好きですか? 時々情報交換いたしましょう…。是非とも読者になってコメントください。
事後承諾になりますが、私のブログ★映画のMIKATA★映画をMITAKAでリンクさせていただきました。
一度ブログを吟味していただき、「ケシカラン、早速消せ…」とお怒りでしたら下記にメールでご連絡ください。早速に
削除いたします…。そのときは申し訳ありません。
「血と骨」の映画を見てブログに書きました。人間の「生」の生々しさ、男の「性」の激しさを感じる作品でした。ビートたけしの暴力の演技と存在感が大きいですが、ただし、演技も台詞も下手ですが…。
「差別」の映画というよりも、昨日、私もこの映画を観てブログに書きましたが、むしろこの映画を観て「親子」の絆とか、「家族」とはなんだろうか…と考えさせられ作品ですね。もう少しこの延長で、「差別」を映画にした作品、「GO」をまた続けて見ました。窪塚洋介が在日朝鮮人青年を熱演してました。
別の機会に「パッチギ!」等々の映画も是非ブログで書きたいです。
『闇の子供たち』も先日、DVDで見ました。むしろ臓器売買、子供売春、東南アジアの人身売買の市場は、ルポライターの石井光太氏の本でインパクトを受けました。
映画は好きですか? 時々情報交換いたしましょう…。是非とも読者になってコメントください。
事後承諾になりますが、私のブログ★映画のMIKATA★映画をMITAKAでリンクさせていただきました。
一度ブログを吟味していただき、「ケシカラン、早速消せ…」とお怒りでしたら下記にメールでご連絡ください。早速に
削除いたします…。そのときは申し訳ありません。
流石埜魚水さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
リンクありがとうございます。私も貴ブログにお邪魔させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。ではでは~。
リンクありがとうございます。私も貴ブログにお邪魔させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。ではでは~。