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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

その男、凶暴につき~『血と骨』

血と骨

 1923年、金俊平は「君が代丸」に乗り、韓国・済州島から大阪へ渡る。剥き出し
の暴力と欲望
支配された「男の一生」

 梁石日氏が自らの父をモデルに描いた半自伝的小説の映画化。原作は随分前
に読み、心の真ん中を握り潰されたような衝撃を受けた。凄い小説であることは間
違いないけれど、強烈過ぎて正直二度と読み返したくない映画化を知っても、
映画賞受賞を知っても「観たい」と思ったことは無かったのだけれど・・・。

「ニッポンの映画監督」と題されたAERAの映画ムックがある。その中で21世紀の
日本映画ベスト作
が掲載されており、未見だったのが1位『ユリイカ』9位
本作。先日『ユリイカ』を観たので、どうせならベスト10くらいはコンプリートして
しまおうと思った次第。ちなみに、ベスト10は以下です。

 1位 EUREKA/ユリイカ
 2位 『誰も知らない』
 3位 ゆれる
 4位 『下妻物語』
 5位 それでもボクはやってない
 6位 『ハッシュ!』
 7位 いつか読書する日
 8位 『パッチギ!』
 9位 血と骨
 10位 フラガール

血と骨2

 役者陣演技派がズラリ、だけれど、短い出演時間で恐ろしいほど鮮烈な印象
残すのがオダギリジョーだろう。私はてっきり、彼は新井浩文が演じた正雄(長男)
キャストされているものだと勘違いしていた。

 好き放題な男、耐える女という構図の中で、男に利用されながらもしたたかな妾
定子を演じた濱田マリもいい。潔い脱ぎっぷりは、主演女優であるはずの鈴木京香
最低限の肌の露出しかしていないことと較べても好感度大。しかし、あの墨汁
垂らしたようなボカシはなんとかならなかったのだろうか(鈴木京香の濡れ場にボカシ
はない)。大阪の在日コリアン社会を描いた映画であるため、韓国語もポンポンと
飛び出すが、寺島進の韓国語が一番流暢に聴こえた。そして原作で唯一「好人物」
として描かれる高信義を演じた松重豊いい味出てます!

血と骨3

 原作を読んだとき、金俊平のような「怪物」の姿をイメージすることができなかっ
たし、これは誰にも演じることなど出来ないだろうと思った。だからビートたけし
以外にこの人、とは誰も浮かばないのだけれど・・・。彼の演技はちょっと残念

 二時間半近い長尺を観終えたとき、よくできた面白い映画だったというそれなり
満足感もあった。しかし改めて題名の『血と骨』に思いを巡らせたとき、そこにあ
「思想」のようなものが描かれていたのかというと疑問が残る。

「血は母より受け継ぎ、骨は父より受け継ぐ」。この言葉の意味を、もっともっと深く
掘り下げて描いて欲しかったと思う。正雄(新井浩文)父・金俊平(ビートたけし)
から、そして母・李英姫(鈴木京香)から受け継いだものとは、何だったのか。その
ためには、もっと原作を端折って、登場人物を整理する必要があったのかもしれな
い。その辺りのバランス、匙加減難しいと思うけれど・・。

 しかしそれでも、この作品の映画化崔洋一監督にしかできなかっただろうし、
許されなかったと思う。想像を絶する重圧の中、映画を完成させたであろう監督
敬意を表したい。

 (『血と骨』 監督・脚本:崔洋一/原作:梁石日『血と骨』
   主演:ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、オダギリジョー/2004・日本)
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テーマ : 邦画
ジャンル : 映画

2008-10-09 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 10 : トラックバック : 3
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映画『血と骨』
1923年、大阪へと向かう船上には一旗揚げようと、済州島を後にした若き日の金俊平(ビートたけし)、そのバイオレンスと哀しみに満ちた物語。 「ALWAYS 三丁目の夕日」を思わせるシーンが随所に現れ、時代背景も似ているが、こちらは感動を誘う芝居などありは
2008-10-12 00:24 : 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~
『血と骨』
■監督 崔洋一 ■原作 梁石日 ■キャスト ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、オダギリジョー 1923年。 成功を夢見て祖国から大阪へ渡った少年・金俊平(ビートたけし)。 朝鮮人集落での裸一貫の船出から、持ち前の腕力と上昇志向で自分の蒲鉾工場を構えるまで
2008-10-12 10:15 : 京の昼寝~♪
血と骨
暴力を描く作品は生理的に好きになれない。オダジョー?が出ていなければ、とても観る気にはならなかった一作。 頑丈な肉体、頑固で無慈悲、しかも極度に自己中心的で家族にも暴力三昧。暴力的なシーンが多いことを覚悟して鑑賞した為か、なんとか結末までこぎ着けた...
2008-10-19 13:12 : Have a movie-break !
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こんばんは、真紅さん、
へえ、ムックで21世紀の邦画ベスト10に、入ってたんですね。
21世紀っていうと、まだ最近ですもんね、なかなか面白い企画ですね。
映画の感想は、ざっとだけ読ませていただきました。
また見終わった後に、ゆっくり読ませていただきますね★
でも、なんだか面白そう!オダジョーは、期待できそうですね^^
2008-10-10 23:32 : とらねこ URL : 編集
とらねこさま、こんにちは。コメントありがとうございます~。
そうなんですよ、まだ10年にも満たない21世紀ですからね、比較的新しい映画ばっかりです。
機会があれば立ち読みでもしてみて下さい(笑)。
この映画、オダギリジョーはかなり「おいしい」役かもしれません。
彼がかなりさらっている感じですよ、乞うご期待!
ではでは、またです~。
2008-10-11 08:48 : 真紅 URL : 編集
こちらにも・・・・
10位の中で見ていないのは相変わらず「ユリイカ」と「ハッシュ!」です(汗)
「ユリイカ」は手元にDVDがあるのにぃ(滝汗)

「血と骨」のオダジョーはなかなか色っぽかったでしょう?
これで日本アカデミー賞にノミネートされました。
でもね、この役はとてもインパクトがあってオイシイ役だったと思うの。

ベストテンの中に彼の出演作が3本入っているのが自慢です(←オダジョーの身内??)
2008-10-14 23:04 : ミチ URL : 編集
ミチさま、こちらにもコメントありがとうございます!
『ユリイカ』、いいですよ~。一位も納得、です。
是非是非ご覧下さいませ~。

日本アカデミー賞、受賞したような記憶があるのですが・・・。
側面を刈り上げた髪型で、ブーツで、ワイルドな衣裳だった記憶があります。
翌年、堤さんにプレゼンターしてたから、やっぱり受賞してますよ!
これはホント、おいしい役でしたね~。
うふふふ、もう~、身内ですよ! 押しかけ内縁の妻、なんてどうですか?
いっそ、「私が本妻よ」くらいの勢いで、ね(笑)。
ではでは、またお伺いしますね~。
2008-10-15 23:14 : 真紅 URL : 編集
こちらにも^^ メゾンドヒミコと合わせてまとめてですいません。

いやぁ~真紅さまも、この原作お読みになられていたのですね。私は映画の後、原作を読んだのですが、映画での武も迫力あったにはあったけれど、原作を読むと、更に凄くデカイ迫力のあるお父さんが描かれていて、圧倒されました。

で、私はこの血と骨のオダギリジョーにはよろよろ・・・となりそうになってしまいました。もちろん、メゾンドヒミコのオダギリジョーもすんごく素敵なんですが、こういうやさぐれ系のもぐっと来ちゃいます。
で、1位がユリイカなんですね~。そうかあ・・・。ハッシュが入っているというのが、ちょっと意外というか・・・。

そういえば、落下の王国、近々見に行くんです!見たら、またお邪魔します。
2008-10-17 15:20 : latifa URL : 編集
latifaさま、こちらにもコメントありがとうございます。
『メゾン』にもTBありがとうございました。
原作、凄いですよね。。もう、読後ウツになりそうでした(笑)。
映画も、観たくないとずっと思っていたんですよ。。でも、観てよかったです。
同じく梁石日先生の『闇の子どもたち』も勇気がなくて、観に行かなかったんです。
ちょっと、後悔してるかも。。DVD待ちかな。。

ジョーくん、この映画でも尋常でないオーラと色気を出しまくってますね♪
キレまくりの演技で、私もよろけて倒れました(爆)。
『ユリイカ』の一位、私は納得かな。『ハッシュ!』も、大好きな映画なんですよ。
両方に光石研さんが出てるわ~♪ ウフフフフ。

『落下の王国』、是非映画館でご覧下さいませ! 垂涎モノノ映像ですよ!!
感想お待ちしてます~。ではでは♪
2008-10-17 17:01 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんにちは~
嬉しいオダジョー作品たちにコメントとTBをありがとうございました。
今回はこちらにコメントさせて頂きますね。
ビートたけしに対する感想、全く同感です!
また、私の場合は映画の後で原作だったのですが、あの原作を2時間余にまとめるのは至難の業だなぁと、溜息ものでした。
まずは監督に感謝です。映像も重厚感有りましたよね。
そしてオダジョー。 度肝を抜く存在感と色気には息を呑みました。
雨の中のあの乱闘で腕を怪我したらしいですね。
希有な魅力とオーラを持つ日本の役者だわぁ!と、つい力んでしまいます(笑)
上手に齢を重ねてほしい人です。
『闇の子どもたち』は読んでから観る予定です。
2008-10-19 13:34 : fizz♪ URL : 編集
fizz♪さま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
私も、この映画の原作は相当インパクトがあったので、映画化の話を聞いて驚きました。
しかし、インパクトがあるからこそ、映画化したいと望まれるのでしょうね。。
セット撮影だと思うのですが、歴史考証なども綿密にされていたと思います。
ジョーくんは、この映画で高く評価されましたね。
新井くんもいい演技だったと思うのですが、ジョーくんにすっかりさらわれてしまって・・・。
あの喧嘩シーンはガチンコでした! 怪我したのかー、それほど迫力ありましたね。
結婚して、海外の作品にたくさん挑戦して、彼は今年が大きな節目の年かもですね?
今後の活躍に期待です! 一緒に応援しましょう~♪
『闇の子どもたち』うーん、どうしようかな。。
ではでは、またお話聞いて下さいね!
2008-10-19 20:30 : 真紅 URL : 編集
「血と骨」の映画見ました…
流石埜魚水です、初めまして。

「血と骨」の映画を見てブログに書きました。人間の「生」の生々しさ、男の「性」の激しさを感じる作品でした。ビートたけしの暴力の演技と存在感が大きいですが、ただし、演技も台詞も下手ですが…。

「差別」の映画というよりも、昨日、私もこの映画を観てブログに書きましたが、むしろこの映画を観て「親子」の絆とか、「家族」とはなんだろうか…と考えさせられ作品ですね。もう少しこの延長で、「差別」を映画にした作品、「GO」をまた続けて見ました。窪塚洋介が在日朝鮮人青年を熱演してました。
別の機会に「パッチギ!」等々の映画も是非ブログで書きたいです。

『闇の子供たち』も先日、DVDで見ました。むしろ臓器売買、子供売春、東南アジアの人身売買の市場は、ルポライターの石井光太氏の本でインパクトを受けました。

映画は好きですか? 時々情報交換いたしましょう…。是非とも読者になってコメントください。

事後承諾になりますが、私のブログ★映画のMIKATA★映画をMITAKAでリンクさせていただきました。
一度ブログを吟味していただき、「ケシカラン、早速消せ…」とお怒りでしたら下記にメールでご連絡ください。早速に
削除いたします…。そのときは申し訳ありません。
2009-05-03 21:07 : 流石埜魚水 URL : 編集
流石埜魚水さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
リンクありがとうございます。私も貴ブログにお邪魔させていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。ではでは~。
2009-05-07 15:36 : 真紅 URL : 編集
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