ざわわ ざわわ~『八月十五日の夜会』

An Evening Party on August 15, 1945
大学生の東江(あがりえ)秀二は、亡くなった祖父の散骨のために沖縄を訪れる。
児玉清氏が絶賛し、私も大好きな恋愛小説『水曜の朝、午前三時』で覆面作家とし
てデビューした、蓮見圭一氏の長編小説。当時は文壇から無視されたり、新潮社
の社長が書いたのではないかという噂まであった蓮見氏だけれど、現在はプロフィ
ールを公開している。
本作は、題名と小説の語り口に『水曜の朝~』との共通点を感じた。朝と夜、日付
と曜日、時刻。ある人物が受け取ったカセットテープ、そこから物語られる、長い
長い、忘れ難い記憶。。70年代と第二次大戦末期、恋愛小説と戦時を描いた小説と
いう違いはあるが、『水曜の朝~』にもヒロインの祖父が「A級戦犯」だった、という
「戦争の影」が織り込まれていた。
究極の同世代体験であり、かつ個人的な体験でもある「戦争」。沖縄の離島で
起こったこと、起きなかったこと。夏の陽射しの中で知らされなかったこと、命を
奪われたものたち・・。若いということが「哀しいこと」だったあの時代。そして哀し
いはずのことを「哀しい」と口に出して言えなかったあの時代・・・。静かに語られ
るからこそ、凄みを感じる。今、こうして「生かされている」ことへの感謝の念と、
鎮魂の思いが溢れる。
(『八月十五日の夜会』蓮見圭一・著/2008・新潮社)
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「蓮見圭一」の長篇小説『八月十五日の夜会』を読みました。
[八月十五日の夜会]
「城山三郎」の著作『指揮官たちの特攻 ―幸福は花びらのごとく― 』に続き太平洋戦争をテーマとし
2013-09-11 20:42 :
じゅうのblog