煌くオマージュ~『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』
ホウ・シャオシェンのレッド


 LE VOYAGE DU BALLON ROUGE


 人形劇師母スザンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と暮らす少年シモン(シモン・イテ
アニュ)
は、ある日赤い風船を見かける。チャイニーズベビーシッター、ソン(ソン
・ファン)
と二人で過ごす彼の日常を、赤い風船はそっと見守っていた・・・。

 アルベール・ラモリス監督赤い風船オマージュを捧げた、台湾の名匠ホウ
・シャオシェン侯孝賢監督
の新作。パリ・オルセー美術館開館20周年記念事業
一環として製作され、ラストシーンオルセー美術館で撮影されている。侯孝賢
初めて、アジア圏以外で撮影した映画でもある。

 風船に話しかける少年の声。カメラが上昇してゆき、樹上の赤い風船を捕らえる。
あの赤い風船に再び出逢えた歓びで、私の胸もいっぱいになった。

ホウ・シャオシェンのレッド2

 本作の赤い風船は、少年シモンと友達になるわけではない。どこか遠い空から、
守護天使のように彼をやさしく見守っている。シモンには、風船の姿が見えている
のか、いないのか・・・
。冒頭のシーン以外で、シモンと風船が触れ合うことはない。

 彼のベビーシッター・ソンは、中国(あるいは台湾)からの留学生。映画学校に通
う彼女は、シモンに映画『赤い風船』について語る。そして自らカメラを回し、赤い
風船が登場する映画
を撮り始める・・・。

 演技初体験だというソン・ファンが、穏やかで控えめで誠実なアジア人として
存在感たっぷり。対してジュリエット・ビノシュ演じるスザンヌはエキセントリック
な性格で、私生活にトラブルを抱え、精神のバランスを崩しがちなフランス人
女性
。ビノシュに金髪は似合わないと思うけれど、本作では真っ黒な髪のソン
好対照になっていて、よかったと思う。東洋と西洋、オリエンタルとラテン

 映画はストーリーに起伏が乏しく、起承転結さえないと言える。私の中では
「催眠術師」異名をとる侯孝賢のこと、このゆるい空気から眠気を逃がす目的
半分で、スクリーンの中に監督が残した刻印をさがす。線路と電車、狭い空間
(スザンヌのアパルトマン)での長回し
、演技でないような、自然な演者たちの
ふるまい。ガラスに屈折する光、赤いカーテンから漏れる柔らかい光撮影
リー・ピンビンピアノの旋律も心地良く、音楽が素晴らしかった。

ホウ・シャオシェンのレッド4

 帰路、十三から梅田へと向かう。阪急電車の先頭、運転席の真後ろに立ち、
侯孝賢的鉄道愛好気分に浸ってみる。淀川にかかる橋、同時に向かってくる
宝塚線、神戸線、京都線それぞれの下り電車
。梅田駅のホームの端には、三脚
を立てて撮影中の「鉄ちゃん」の姿も見える。久々に、『恋恋風塵』が観たくなった。

 (『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』監督・脚本:侯孝賢
     主演:ジュリエット・ビノシュ、シモン・イテアニュ、ソン・ファン/2007・仏)
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[2008/09/12 09:52] | 映画 | トラックバック(3) | コメント(2) |
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コメント
真紅さん、こんばんは♪
あぁ、この記事を読んでるだけで
ふわふわと幽体離脱して魂だけ
パリへ飛んで行きそうです。
実はお恥ずかしながら、まだ
ホウ・シャオシェン監督の作品を
観たことがないのですが
今度、じっくりと観てみたいです。
十三の駅の独特の風景。
私も別々の方向へ向かう電車の
怖いぐらい近い距離感が好きです。
それに十三駅の立ち食い蕎麦は
マイフェバリットです~
[2008/09/13 00:18] URL | こはく #NODgJjk. [ 編集 ]
こはくさま、こんにちは~。コメントありがとうございます。
私はパリへは2回行ったことがあるのですが、全くの「おのぼりさん」でした。
だいたい、フランス語が全くわからないんですよー。
でも、また行きたいです。「パリの関西人」(笑)。
本当に、素敵な街ですよね。。
ホウ・シャオシェンの映画は私も数えるほどしか観てないんですが、好きです。
いつか是非ご覧下さいね~。
十三の立ち食い蕎麦、先日新聞に載っていました!
でも行ったことはないので、今度挑戦してみます。
ではでは、またです~。
[2008/09/13 17:22] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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Le Voyage du Ballon Rouge 『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』
あの赤い風船はずっと旅をし続ける。 何てことはないささやかな日常を物語りながら、普遍的なテーマが心に沁み入り、その芸術性が眩く輝いて。 パリの映画学校に通う留学生のソンは、人形劇の仕事をするスザンヌに雇われて、7歳の息子シモンのベビーシッターをつとめ
[2008/09/18 01:45] かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」を観た!
ただただ、髪の色を赤く染めて熱演しているジュリエット・ビノシュが出ている、ということだけで観に行った映画です。アルベール・ラモリス監督の1956年の名作「赤い風船」にオマージュを捧げた映画だとか、監督が台湾の名匠ホウ・シャオシェン(侯孝賢) だとかは、後にな
[2008/09/29 22:24] とんとん・にっき
mini review 09359「ホウ・シャオシェンの レッド・バルーン」★★★★★★★☆☆☆
1956年に公開されたアルベール・ラモリス監督の名作『赤い風船』にオマージュをささげた、ホウ・シャオシェン監督による詩情あふれる人間ドラマ。仕事に家族のこと、日常の悩みに心がささくれ立つ人形劇師が、息子の子守りをする留学生との交流によってゆるやかに変化して...
[2009/03/16 01:42] サーカスな日々
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