長い長い、魂の彷徨~『EUREKA/ユリイカ』
ユリイカ


 EUREKA


 福岡県甘木市路線バス運転手沢井真(役所広司)は、ある朝バスジャック
遭遇する。同乗していた中学生の直樹(宮崎将)と小学生の梢(宮崎あおい)兄妹
とともに生き残った沢井は、三人で奇妙な同居生活を始めるが、直樹と梢は言葉
を失っていた。やがて兄弟の従兄秋彦(斉藤陽一郎)が現れ・・・。

 2000年のカンヌ国際映画祭において、国際批評家連盟賞を受賞した青山真治
監督
の代表作。217分、3時間37分という常識外れの長尺ではあるが、その長さ
必然とする説得力ある傑作。監督による「北九州サーガ」三部作第二作
位置しており、監督自ら小説化した原作三島由紀夫賞を受賞している。

ユリイカ2

 しかし217分、普通の映画二本分は余裕である長さ。この長さにこだわった監督
と、それを許したプロデューサーの肝っ玉敬意を表したい。青山真治監督は、
解釈を観る者に委ねることはせず、映像の全てにはっきりとした意図を持ってい
るのだと思う。無駄に長く冗漫な映画には鉄槌を下すべきだけれど、人間の「生」
と「死」、その間にある「魂」
揺らぎと再生を真摯に見つめ、寄り添うためにはこの
長さしかなかったのだ、と思いたい。セピア色の画面はときに輝き、ときに幻影
ように儚く頼りなく・・・。それでいて限りなく、美しい

 本作で初めて(とは言っても主演映画は『Shall We ダンス?』くらいしかまと
もに観た記憶がないのだけれど)、役所広司って本当に、すごい役者なんだなぁ
「わかった」。ちなみに「ユリイカ」とは、ギリシア語「発見した」という意味なん
だそうだ。

 そして宮崎あおい、恐るべし・・・。朝ドラのヒロインから22歳にして大河ドラマ
の主役にまで上り詰め、今や「国民的女優」とも言うべき彼女。撮影当時は13歳
くらいだろうか、彼女なくしては成り立たない、極めて重要な役どころを完璧に演
じている。

 その「死」刻印された三人の、それぞれの「生」への向き合い方。直樹は
生きるために殺し、梢はそんな兄を見守り受け入れ、沢井は「他人のためだけ」
生きようとする。三人と同じ経験をしながらも、現実と折り合いをつけ「一線」を超え
ずに生き延びている秋彦。そんな彼の「一般論」に、沢井は初めて激高する。そし
てこの映画の白眉はやはり、沢井のこのセリフだろう。

「生きろとは言わん。ばってん、死なんでくれ」

 ラストシーン言葉を獲得した梢の世界がつく。もう、家に帰ろう。自分に
帰ろう。世界は美しい。


-------------------------------------
 残念ながら、私の拙い文章ではとてもこの映画の素晴らしさは伝えられていない
と思う。頼む、この映画を観ずに死なんでくれ。。(長いけど)。

 (『EUREKA/ユリイカ』監督・脚本・原作・音楽・編集:青山真治
     主演:役所広司、宮崎あおい、宮崎将、斉藤陽一郎/2001・日本)
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テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

[2008/09/08 22:21] | DVD/WOWOW | トラックバック(6) | コメント(10) |
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コメント
こんにちは
とうとう「ユリイカ」もご覧になりましたね。
同じ時期に同じ作品を観ている方がいるというのはなんだかうれしいです。

ワタシは「ユリイカ」が一番しっくりきました。この長さにかかわらずもう一回観たい!
[2008/09/08 22:48] URL | manimani #- [ 編集 ]
manimaniさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
そうなんです。。三部作を観終えて、私も彼らと共に長い長い旅をしてきたような気分になりました。
本当に、同じ時期に観ているなんて不思議で、うれしいですね。
私も『ユリイカ』はいつかスクリーンで観てみたいです。う~ん、三作とも素晴らしい作品でした!
ではでは、またお伺いしますね。
[2008/09/09 17:26] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
これは本当にいたい映画。
再生に伴う痛みが切々と描かれている。
本作みても青山真治ってドライ感のある人だって思う。涙で湿るよりも、土埃の原野を歩かせる。日本人の血が流れているけれど、彼の原風景って湿った日本の優しさではなくって。アメリカのl何もない荒野を思わせる厳しさとドライ感があると思うわ。
「サッド・ヴァケイション」で書き忘れたけど、あお突き抜けた感覚が好きだわ。
このラストもいい。宮崎あおいのあの表情!
[2008/09/09 20:37] URL | シュエット #- [ 編集 ]
シュエットさま、こちらにもありがとうございます!
北九州サーガ、本当にどれも素晴らしいのですが、『ユリイカ』は特筆すべき作品かもしれませんね。
確かに、『サッド~』もそうですけれど、東京タワー的な日本の価値観とはかけ離れていますよね。
(私は『東京タワー』も好きなんですけれども)
あおいちゃんは、大女優の片鱗が伺えますよね。凄いです。カワイイし。。
また観てみたい作品です。
たくさんのコメント、ありがとうございました、感謝です。
ではでは、またお伺いします!!
[2008/09/09 22:12] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、北九州サーガ制覇ですね。
中でもこの作品は忘れられません…。
最後の色づく画面は感動的でした。「おかえりなさい」と云ってあげたくなるシーンですよね。
宮崎あおいの聖なる存在感は凄い。ボロボロ泣きました。
『サッド・ヴァケイション』でその後の彼女(まっすぐ育ってくれてよかった!)と、相変わらずではあるけれど少し成長した感じのある秋彦を見られたのがうれしくてうれしくて。
あとの二作品もTBだけですが送らせていただきます♪
[2008/09/11 18:00] URL | リュカ #- [ 編集 ]
リュカさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
他の二作品にもTBありがとうございました。
リュカさんも、青山監督の北九州サーガ、コンプリしてらしたのですね♪ 感激です~。
この映画、常識外れの長尺ですが、その長さも納得の傑作だと思います。
「聖なる存在感」・・・、うんうん、ホントそんな感じ。
私も、『サッド~』とこの映画は涙がダーダー流れました。
秋彦もね、あんなこと言ってるけど直樹と文通してるんだよね。いい奴や~。。
後ほどお伺いしますね、ではでは~。
[2008/09/12 08:54] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちは~♪
217分という長尺を一気に見れる日を吟味して、いよいよ本日鑑賞いたしました~(大袈裟~)
とても良かった!
「サッドバケイション」よりも好きです。
ロードムービーだけにあちこちの風景もいいですよね。
沢井は命を削って(多分あの咳は死の病でしょうね)田村兄妹に生きる道をつけてあげたと思います。
梢が初めて声を発してカラー画面になるラストシーンが強く印象に残ります。
[2008/10/29 23:09] URL | ミチ #0eCMEFRs [ 編集 ]
ミチさま、こんにちは!コメントとTBをありがとうございます~。
遂にご覧になりましたね、この大作を・・・。おめでとうございます♪
『サッド~』よりお好きということは、かなり気に入られたのですね。
『サッド~』の最初の方のシーンで、光石研の茂ちゃんが「沢井が死んで・・」と言っています。
原作もチラリと読んだのですが、沢井が死んで、梢が間宮運送に行く、という流れのようです。
あのラストは名シーンですね。私も大好きです。
ではでは、後ほど~。
[2008/10/30 10:48] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
心の傷と向き合った映画は数多くあれど、これほど真摯に、丁寧に、厳しく、そして何より静かに向き合った映画は少ない気がします。
ほんとにかなりの長尺ですが、やはりこれだけの時間をかけないと、再生の軌跡は見せられないでしょうね。同じく、この長尺が必要だった、と思います。
やはりセピア調の美しい映像が印象的。それは残酷さも、美しさも浮き彫りする。何よりカラーよりも。セピア調にするのも「冒険」だったでしょうね。カラーのほうがいいに決まってる!という意見もかなりあったはず。でもおそらく結果的は、セピアにして正解だったと、スタッフも、観客も思ったに違いないでしょう。
脚本が素晴らしいので、キャストの演技も際立ちますが、それにしてもみんな好演ですよね。役所広司はやはりすごい。本当の演技者、というかんじ。こうゆう作品にも、エンタメ性の高い作品にも通用するのだからすごい^^
宮崎あおい、将の悲しみを超えたトラウマを抱えた、悲しき演技も良い。彼女らは兄弟?なのかな。
やはりひたすら心の傷は、一旦負ってしまうとなかなか癒えないし、治らないものだと思いました。人間は本当に弱い。すごく弱い。けど、再生する力も持っている。梢のほうが再生への道が早かったように思います。最後に言葉を発した時は、涙溢れますね。
PTSDというものの過酷さを、改めて知りました。
かなり話が逸れてしまうんですが、「赤い風船」は最近DVDリリースされたみたいですね。今コメントを書いていて、少年と風船が^^「スウェーデッシュ・ラヴストーリー」もリリースされましたよね。最近は昔の名作の再放出ブーム?
[2009/04/28 20:13] URL | マキシ #- [ 編集 ]
マキシさま、こちらにもコメントありがとうございます。
この作品、収録時間を見て何かの間違いじゃないかと思いました。
私はDVDで観たのですが、そんな長尺、耐えられるかと思ったのですが。。
全くの杞憂でしたね。素晴らしい作品だと思います。
宮崎兄妹の演技も、とってもよかったですね。
と言うか、こういう作品はキャスト皆が素晴らしい。
もちろん、セピアカラーも大成功だと思います。
この色が無かったら、ラストの感動はあり得ませんから。
梢は幼いだけ傷も深かったけれど、子どもなりの強さも持っていたと思います。
できれば映画館で再見してみたい作品です。
ではでは。。
[2009/04/30 09:57] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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