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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

NEVER MIND~『Helpless』

Helpless.jpg


 Helpless


 1989年9月10日、北九州。刑務所から仮出所してきた安男(光石研)は、幼馴染
健次(浅野忠信)と再会する。

 青山真治監督が自ら脚本・音楽も手がけた長編デビュー作。乾いた銃声のように
やるせない若者の生き様を、晩夏の一日を通して描く80分。浅野忠信は初主演作
にしてこの存在感、凄い

 実はこの映画の存在は、今まで全く知らなかった。サッド ヴァケイション
のエンドロールで「映像使用/Helpless」とあり、あのリアルな浅野忠信の回想
シーン
は映画だったのか、、と知った次第。『サッド ヴァケイション』も本作も、
もちろん独立した作品として素晴らしいけれど、両方鑑賞することでより味わい
深く、考えさせられる作品
になっていると思う。『サッド~』健次アチュン
与えたウサギの意味、冒頭の廃屋となった喫茶店の意味、兄を待ち続けるユリ・・・。
 ちなみに、本作と『ユリイカ』、『サッド ヴァケイション』で青山真治監督の
「北九州サーガ」トリロジーが完結したらしい。『ユリイカ』も未見、観たい気持
ちは山々だけれど、217分の長尺。。浅野くん出てないし。。とちょっと尻込み中。

Helpless2.jpg

 まだ高校生らしき健次は、自分の内側に怒りをたぎらせ、そのやり場のなさ
苛立っている。その怒りの原因は明らかにされず、若者特有の衝動的な暴力
して運命を悲劇へと駆り立てる。そして失くしてしまった自らの右腕を捜すかの
ように、自らの存在理由を証明しようともがく安男

 10年以上前の作品なりに浅野忠信は若いけれど、少しハスキーな声細い目
変わらない。彼の演技には「自然体」という陳腐な言葉しか思い浮かばないほど、
孤独で翳のある若者にはまっている。光石研もさすがの演技!荒々しく、破滅へ
と一直線に突き進むしかない男の狂気と哀感
。ちなみに私は九州弁が大好きなの
で、安男や健次の「きさん(貴様)」にいちいち反応してしまった。

 長回しを多用したカメラ。鳴き狂うセミの声をバックに、晩夏の焦燥を乾いた
空気の中に映し出す映像。これは隠れた名作じゃないだろうか。

 (『Helpless』監督・脚本・音楽:青山真治/1996・日本/
           主演:浅野忠信、光石研、辻香緒里、斉藤陽一郎)
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2008-09-05 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 2 : トラックバック : 5
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独断的映画感想文:Helpless
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2008-09-06 00:27 : Mani_Mani
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2008-09-11 18:07 : 菫色映画
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2009-09-17 20:50 : ☆彡映画鑑賞日記☆彡
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真紅さん!TBありがとう!
まずはここに!
直球で私の感性にぶつかった映画です。
これは隠れた名作どころか、本作で青山真治が評価されたと思うわ。きちんとした正統派の評論家でも評価高い作品だよ!
ここから出発して九州3部作は彼の原点だろうね。
彼がいたらこれからの邦画の未来は明るいと思う、映像に流れるドライ感がいいんだよね。
2008-09-09 20:23 : シュエット URL : 編集
シュエットさま、こんにちは!こちらこそコメントとTBをありがとうございます!
私は全く知らない作品だったのですが、評論家の方からも評価が高い作品なのですか。
なるほど~、ではきっとこの作品で青山真治監督は映画界に認知されたのでしょうね。
ここが出発・・・。そうですね、北九州という土地と言葉に拘った監督の矜持を感じます。
確かに、三作ともに何とも言えない乾いた情感が漂っていた気もします。
邦画の未来、見届けなくては。。
ではでは!
2008-09-09 22:03 : 真紅 URL : 編集
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