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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

どこか遠い空~『赤い風船』

赤い風船


 LE BALLON ROUGE

 THE RED BALLOON


 少年パスカルは、ある朝街灯に絡みついた赤い風船を見つける。灰色のパリの
をゆく、パスカルと赤い風船・・・。

 1956年に発表され、カンヌ映画祭パルム・ドールアカデミー賞脚本賞
受賞したアルベール・ラモリス監督の短編。デジタル・リマスター版が2007年の
カンヌ映画祭監督週間部門に出品され、2008年、日本でも全国公開されている。

 この映画のことは全く知らなかったのだが、敬愛するブログ獏のいる庭園
kohakuさんが熱く、熱く応援されていて、思わず興味を持ってしまった。
大阪梅田ガーデンシネマでの公開にはどうしても行けなかったので、京都シネマ
まで足を運んで観てきました。いやぁ、、観て本当によかったです。心震える
というのはまさにこのこと。本作にオマージュを捧げた『ホウ・シャオシェンの
レッドバルーン』
と併せて月末にナナゲイでも公開されるので、時間が合えば
もう一度足を運びたいくらい。

赤い風船2

 風船を見つけた少年の顔がアップになった瞬間、「あ、白い馬の弟くんだ!」
とわかる。主人公のパスカル少年は、ラモリス監督のご子息パスカル・ラモリス
が演じている。

 50年以上前に作られた映画で、セリフもほとんどないのに、こんなにも心躍ら
されるのはどうしてだろう?
 赤い風船を思う少年の心、意志を持って、少年を
慕うかのように動く赤い風船。建物の影に隠れてみたり、鏡に映る自分の姿に見
とれてみたり。ノミの市に夢中になってはぐれそうになったり、青い風船に恋し
たり。一体どうやって撮影したんだろう?と思いながらスクリーンに釘付けにな
り、私の心はいつの間にか、少年と赤い風船に同化してゆく。

 いたずらっ子たちが投げた石に当たって風船がしぼみ始めたとき、その皺が
風船の涙のようにも見えた。小さな夢がしぼんだとき、また小さな夢が、パリ
中の空から少年の下へと
やってくる。いくつも、いくつも、風に乗って・・・
このラストシーン浮遊感! 大空へと舞い上がる、自由と解放の永遠

 これほどセリフの少ない、寓話のようなストーリーの映画が、並み居る長編
映画を抑えてオスカーの脚本賞を受賞していることに驚かされる。真の名作
は、時代も国境も超えて普遍的な感動を呼び起こすものなのだろう。ラモリス
監督のイマジネーションには、人間の魂の奥底に触れる魔法が隠されているの
かもしれない。

赤い風船4

 (『赤い風船』監督・脚本:アルベール・ラモリス
                    主演:パスカル・ラモリス/1956・仏)
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テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

2008-08-26 : 映画 : コメント : 12 : トラックバック : 9
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「赤い風船」:吾妻橋一丁目バス停付近の会話
{/kaeru_en4/}さすが、風船屋。いろいろな色の風船があるな。 {/hiyo_en2/}私の好きなのは、何と言ってもシンプルな赤い風船だけどね。 {/kaeru_en4/}おいおい、旅行会社の回し者みたいなこと、言うなよ。 {/hiyo_en2/}ああ、そういうツアー・ブランドもあったわね。 {/ka...
2008-08-26 19:37 : 【映画がはねたら、都バスに乗って】
赤い風船
このファーストシーンの美しさに心を奪われた。 いつものように学校へ行こうと外へ出たパスカル少年(パスカル・ラモリス)は 街灯に引っかかりユラユラ揺れる赤い風船を見つける。 スルスルッと街灯へよじ登り(本当に見事な登りっぷりなのだ!) 赤い風船を手にす...
2008-08-26 23:01 : 龍眼日記 Longan Diary
「赤い風船」と「白い馬」
とうとう、とうとう、映画館でアルベール・ラモリス監督の作品を 観る事が出来ました。胸が一杯とはこの事! 赤い風船」私の記憶の中では、風船に見とれている内に アッと言う間に終わってしまいながらも、この映画の残す想像力の尾は、 どこまでも続くようなイメージ...
2008-08-27 01:05 : 獏のいる庭園
『赤い風船』
1956年のカンヌ国際映画祭の短編映画部門のパルムドール作品。 数年の間にパルムドールを2回も取るアルベール・ラモリス監督ってすごい人ですね。ファンタジックな作品が好きな自分としては『白い馬』よりもこちらの方が作品的に合いました。 ******************** ...
2008-08-27 02:33 : cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー
「赤い風船」
LE BALLON ROUGE 1956年/フランス/35分 at:梅田ガーデンシネマ 「白い馬」に続き、本作「赤い風船」を観ました。 1956年カンヌ映画祭パルムドール受賞。 2007年カンヌ映画祭で監督週間正式出品されリマスター上映された。 同じ作品が2度上映されるのはカンヌ映...
2008-08-27 10:36 : 寄り道カフェ
赤い風船/白い馬
この作品達と出会えてよかった。
2008-08-29 21:52 : シャーロットの涙
独断的映画感想文:「白い馬」「赤い風船」
日記:2008年8月某日 映画「白い馬」「赤い風船」を見る. 「白い馬」監督:アルベール・ラモリス.脚本:アルベール・ラモリス.撮影:エドモン・セシャン.音楽:モーリス・ルルー.出演:アラン・エムリイ
2008-09-03 22:48 : なんか飲みたい
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巷で評判になっているのか?7月の終わりに公開されて以来、今でもシアターにかかっている短編名作2本立て。どちらもカンヌ国際映画祭グランプリ(パルムドール)受賞作品。 公開されたら観に行こうと思いながら、他の映画を観ているうち、すっかりこの映画の事を忘れてし...
2008-09-09 01:09 : ヨーロッパ映画を観よう!
「赤い風船」「白い馬」感想
まずは「赤い風船」 これが50年以上も前の映画だというのが信じられないというか、いや、信じられるんだけど(パリの風景とか服装や車を見...
2009-02-18 20:30 : ポコアポコヤ 映画倉庫
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非公開コメント

真紅さま
この作品の赤い風船、どうやって演技させたのか今でも分かっていないそうですね
>真の名作とは、時代も国境も越えて普遍的に感動を呼び起こす…
全く同感です!
真の本物は本物なのですよね
2008-08-26 20:13 : Maria URL : 編集
TBありがとうございました!
真紅さん、こんばんは。
最後の写真、いいですね~!
私はこのパスカル少年の洋服が気になって気になって。
ジャージ素材かと思いきやニット素材という意外さとかわいらしさ。
それにしてもあの赤い風船の感情あふれる動き、
本当に一体どうやって撮影したのでしょうね。
2008-08-26 23:12 : sabunori URL : 編集
真紅さん、こんばんは☆
リンクしていただいて有り難うございます。
観てから1ヶ月経ったのですが
今も時々ボ~っと、風船の行方を空に探して
しまいます。それにしてもこのシンプルな
ストーリーの中にどんな魔法がしかけて
あるのでしょうねー?
ラモリス監督が生きていたらな~と
残念でなりません。
ただ楽しいだけのラストでは無いのに
幸せな気持ちに浸ってしまいます。
2008-08-27 01:13 : こはく URL : 編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008-08-27 10:59 : : 編集
Mariaさま、こんにちは! コメントありがとうございます。
この映画、ご存知だったのですか? 本当に、素晴らしい映画でした。
あの赤い風船、まるで「魂」を持った生き物のようでした・・。
観ることができて幸せです。
ではでは、またです。
2008-08-27 17:12 : 真紅 URL : 編集
sabunoriさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます!
そうなんです、いい写真ですよね~。一つ一つのショットが画として極まっていましたよね。
パスカルくんの服装、ニットなんですね!すっかりジャージの上下かと。。
始めのうちは「ピアノ線が見えるかも?」などとヨコシマなことを考えてしまいましたが、観るうちにすっかり引き込まれました。
素敵な作品でした!
ではでは、またお伺いします~。
2008-08-27 17:15 : 真紅 URL : 編集
こはくさま、こんにちは☆ コメントとTBをありがとうございます。
こちらこそ、この映画をご紹介いただき本当にありがとうございました。
(映画だけでなく、いつも様々な情報を興味深く拝見しております)

ラモリス監督は、48歳の若さで事故死されたそうですね、しかもヘリコプターの事故で・・・。
監督の映画は今まで全く知らなかったのですが、他の作品も是非観てみたいです。
あのラスト・・・。夢のような解放感でしたね。
「多幸感」と表現されている方もいらっしゃいました。
何度でも観たい、心に残る作品でした。
ではでは、またです~。
2008-08-27 17:20 : 真紅 URL : 編集
管理人宛に鍵コメント下さった方、ありがとうございます。
それは貴重な情報ですね。。しかしなんでもあり、ですね(笑)。
この映画、権利の関係で今まで観られなかったようなのですが、デジタルリマスター版公開を機にDVD化されるのでは?と思っています。
そうなったら、是非購入したいと思っています。

ところで『ダークナイト』、再見して参りました。
#2は少し先になるかもしれませんが、必ずアップしたいと思っています。
また遊びにいらして下さいね、ではでは~。
2008-08-27 17:28 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、今日観てきましたよ。
この映画は私の宝物です。
もう52年ぶりの再会で、なつかしくてファーストシーンで涙がでました。
筆知のブログも熱い想いで一気に書きました。
2008-08-28 21:50 : 筆知 刻久 URL : 編集
筆知刻久さま、こんにちは! コメントありがとうございます。
おお~~~、半世紀前にご覧になられていたのですね!
それは涙モノの再見だったのではないでしょうか・・・。
素晴らしい経験、まさに宝物ですね。。お気持ち、わかりますよ~。
後ほど伺わせていただきますね、ではでは!
2008-08-29 00:44 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、TB貼り逃げのままででごめんなさいね。
出会えて良かった…この映画のリバイバル上映のコピーだけど、本当に出会えて良かったって思う。戦後10年で製作された作品なんですよね。くすんだ街に赤い風船。こんな素敵な、そして自分のイマジネーションを映像で表現していく技術といおうか、様々な工夫。なんでもCGでやってしまう今の映画よりも、はるかに深みがあるよね。今までビデオでしか観れなかった本作をスクリーンで見れた喜び。出会えて良かった!
2008-08-30 08:53 : シュエット URL : 編集
シュエットさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
TBのみでも大歓迎ですよ♪ お忙しい中、ご訪問感謝です。
私も、この映画に出会えて本当によかったと思っています。
半世紀以上、この作品に恋焦がれていた方も多いようで、その気持ちわかりますよね。。
あの色彩といい、不思議な風船の動きといい・・。一度観たら忘れられない映画ですね。
セリフもないのに、なんと雄弁なことか!素晴らしかったです。
できればもう一度、観に行きたいと思っています。
ではでは、またです~。
2008-08-31 13:43 : 真紅 URL : 編集
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