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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

太陽にかわるもの~『白夜行』

白夜行

 大阪のある街。廃墟ビルで、質屋経営者の男が殺される。男の息子・亮司と、
質屋の常連客であった女の娘・雪穂が辿った波乱の人生を、昭和の風俗を織り
交ぜながら描いた一大長編「太陽を見たことがない」「昼間を歩いてみたい」
語る二人の男女の生き様が、切なさと酷薄さを滲ませながら浮かび上がる。

 やっと、やっと読みました・・・。刊行時から読みたいと切望しながらも、その
分量に圧倒されて手に取ることができなかった『白夜行』東野圭吾の最高傑作
との誉れも高く、TVドラマも話題になった作品。続編の幻夜を先に読んでしま
ったことは失敗だったけれど、『風と共に去りぬ』や南青山のブティックなどのキー
ワード
に、なるほど、という感じ。雪穂=美冬、納得です。これだけの長さの物語
でありながら、ラストまで緊迫感が途切れない筆致は見事と言うほかないと思う。
圧巻。切り絵や鋏といった小道具も、伏線として効いている。美冬の極悪ぶりが
際立ちすぎた『幻夜』に比べても、雪穂が亮司に僅かでも尽くしていると感じさせ
てくれるところがよかった。

 しかし、正直この主人公二人には共感も同情も出来なかった・・・。幼い日の
すぎる記憶
が二人の魂を永遠に傷つけてしまったのだとしても、自己保身と上昇
志向
を満たすために、あまりにも安易に人を殺め、騙し、陵辱していく彼らにはどう
しても感情移入できない。辛い過去があろうと、真っ当に生きることができない
わけはないのに。。スカーレット・オハラにとっての「タラの大地」は、雪穂にとって
一体何だったのか。 

 それでも、亮司が選択したラストにはがどっと溢れて止まらなかった。男性
としての彼に魅力を感じていたわけでもなく、ましてや同情も感情移入もできな
かったというのに・・・。太陽の代わりに白夜を照らすものとして、雪穂の影とな
り、となり、時にはになって献身し続けた亮司。彼の生涯に、愛を実感する
一瞬
はあったのだろうか。。


 これで、東野圭吾作品はちょっと一区切りかな。『流星の絆』TVドラマを、
『容疑者Xの献身』映画を楽しみにしています。 

 (『白夜行』東野圭吾・著/集英社・1999)
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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

2008-08-21 : 読書 : コメント : 6 : トラックバック : 2
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真紅さま~、この本は読み応えがありましたよね~。色々な沢山の人が出て来て、最初は入り込むのが大変だったのだけれど、最後の方まで読み進んでみて、あっ・・・2人の事はあえて書いてないで、外堀から描いてるんだな・・・と気がつきました。

そうなんですよね・・・。あまりに2人のやった犯罪行動がヒドイっす。今ふりかえって一番ひどいな~と印象に残っているのは、高校時代だか中学時代の女友だちを・・・っていう部分かな・・。

映画化、楽しみですね~。レンタルになっちゃうかと思いますが、見ます^^
容疑者Xは、堤さんらしいですね。なんか妙にカッコイイんですが、でも見る気はソソられます。
2008-08-21 15:36 : latifa URL : 編集
真紅さま


>正直この主人公二人には共感も同情も出来なかった…
>亮司が選択したラストには涙がどっと溢れて止まらなかった
そうですね、原作は読んでいないのでドラマの感想ですが、この点私が二人に感じたのは毎回〈哀れな者達よ〉と言う印象でした。物質文明の現代が生み出した暗い闇の渕に生きる生き物のようでした。
2008-08-21 17:18 : Maria URL : 編集
latifaさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
体調がお悪いのにごめんなさいね~。。

そうなんですよ、次から次へと新しい人が出てきて、ちょっと戸惑いますよね。
私はあまりミステリーは好んで読まないので、特にそう思ったのかも。。

私が一番酷い~と思ったのは、雪穂の再婚相手の娘に・・・ってところです。
あと、探偵さんが○されるのも酷い!と思いました。
もう、読むの止めようかと何度か思いましたよ。。
でも、止められないんですよねー!

私はクドカン×ニノっていうのに興味があるので、ドラマも結構楽しみです♪
ではでは、お身体に気をつけて下さいませね。
またお伺いします。
2008-08-21 20:24 : 真紅 URL : 編集
Mariaさま、こんにちは~。ご無沙汰しております。コメントありがとうございます。
私は残念ながらドラマは未見なのですが、ドラマでも亮司の最後は○○なのでしょうか。。
哀れですか・・・。私も色々思いましたが、それって結局私が太陽の下で生きているってことなのかな、と思いました。
白夜がどんなものなのか、歩いた者にしかわからないのかもしれませんね。
だからと言って彼らの罪が許されるわけではありませんが。。。
いつかドラマも観てみたいし、映画化もして欲しいなって思います。
ではでは、私もまたお伺いしますね。
2008-08-21 20:28 : 真紅 URL : 編集
こんばんは♪
とうとう読まれたんですね~!
この作品は東野圭吾の中のベストなんです。
日本の現代史が出てくるのも、年齢的に懐かしいものばかりでした(笑)
彼らのやったことは確かに共感できないことばかりなんですが、なんかその部分は私にはどうでもよかったというか←オイオイ!
亮司の献身にどっぷり惚れてしまったようです。
しかもオダジョーを念頭において読んでましたので尚更(爆)
これねぇ、テレビドラマはキャストに大不満だったの!

「容疑者X」の映画はどうしようか迷い中です。
「ガリレオ」のテレビドラマは見ていたんだけど、サスペンスって犯人を知っていたら面白さが半減するしな~って躊躇してます。
2008-08-23 22:42 : ミチ URL : 編集
ミチさま、こんにちは♪ コメントとTBをありがとうございます。
そうなんです~、もうやっと、やっと読みました!
夏休みの宿題が終わった気分です(笑)。
テレビドラマは未見なのですが、主演の二人は知っています。
私も、んんん~~???という感じのキャスティングです。
『天体観測』の頃のオダジョーなら、亮司にピッタリですね♪
難しいのは雪穂ですね。。。

昨日、初めて堤さんが登場する『容疑者X』の予告を観ました。
『ガリレオ』は観てないのですが、堤さんファンとしては必見かしら~、という感じです!
ではでは、またお伺いしますね~。
2008-08-24 09:01 : 真紅 URL : 編集
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