永遠に消えない悪~『さまよう刃』
さまよう刃

 妻を亡くし、一人娘絵摩と暮らす平凡な会社員長峰。花火大会の夜、絵摩は
未成年の若者拉致され、暴行された上殺されてしまう。呆然とする長峰の元に、
犯人を示唆する密告電話が入る・・・。

 東野圭吾長編を読もうとすると、必ず躊躇する自分がいる。分厚い上に、文字
は二段組! 読み通せるかなと思ったのも束の間、ページをめくるとそこはもう
東野ワールド全開。二度と引き返せない、読者を一気小説世界へと引きずり込
むパワー
はさすが。少年法の是非、被害者遺族の心情、復讐と仇討ち、正義とは
何か
を考えさせる力作

 「何があっても人を殺してはいけない」というのは建前に過ぎないのだろうか?
たった一人の家族を理不尽に殺された長峰に対し、「復讐を遂げさせてあげたい」
と願う自分がいて戸惑ってしまう。人権派の弁護士少年法の精神について語る
場面があるが、彼らはその「精神」そのものの是非を考えたことはないのだろうか? 
刑務所や法加害者を罰するところではなく、「保護」するところだという言葉にも
考え込んでしまう。加害者は「更正」すれば社会復帰できる。しかし命を奪われ、
愛するものを奪われた被害者と遺族は、何をもって償われるのだろう?

 結末は私が望んだ形ではなく、苦く重い後味が残る。しかしラストで加えられた
一捻りが、作者のメッセージをより明確にしていると感じた。

 (『さまよう刃』東野圭吾・著/朝日新聞社・2004)
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テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

[2008/07/11 10:43] | 読書 | トラックバック(5) | コメント(14) |
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コメント
真紅さま こんにちは。
『さまよう刃』は週刊誌連載中に夢中に読んでいて、毎週毎週「早く続きが読みたいー!」というストレスとの戦いでした。重いテーマ、悲しい結末。でも東野さん渾身の力作です。おっしゃるとおり、ラストの一捻りに、私も「なるほど、そうだったのか!」と感嘆しました。
ところで、同じ東野さんの直木賞受賞作『容疑者Xの献身』はお読みになりましたか?秋に映画が公開される作品です。映画化を知って以来ずっと「容疑者Xは誰が演じるんだろう」と思っていたら、どうやら堤真一さんに決定したそうで、ガリレオ・福山雅治VS容疑者X・堤真一の〝天才対決〟は私にとって今秋サイコーのお楽しみ映画となっています。
『さまよう刃』は・・・映画には向かないですね(汗)。でも、こちらでご紹介くださって嬉しいです。ありがとうございました★
[2008/07/11 12:16] URL | メグ #OSjUVFqk [ 編集 ]
メグさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
週刊誌の連載って、待ち切れなくないですか? 力作ですから、連載当時から話題だったのでしょうね。
『容疑者X~』は未読なんです。ドラマ『ガリレオ』も観てないんですよ、福山くん好きなのに~。。
図書館の予約リスト、まだ数百件待ちがありますので、映画を観てからにしたいと思います。
(その頃、文庫になったりして)
で、実は今日『容疑者X~』の予告を劇場で観ることができました!
堤さんはクレジットのみで映像は観られなかったのですが、犯人役なんですか~。
う~ん、どんな感じなんだろう・・。福山くんはカッコよかったですよ~。
楽しみですね♪
ではでは、また遊びにいらして下さいね~。
[2008/07/11 14:42] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんにちは♪
同じ時期に同じ本を読んでいたんですね~♪
この話が連載されている週刊誌は長年読み続けているものなんですけど、どうも【週刊誌】というスタイルで小説を読むのが苦手なんです。
一気にガーッと読みたいタイプなの(笑)

娘があんな目に遭っているビデオを見せられたら、親なら半狂乱になってしまうのも分かります。
「フリージア」っていう邦画があるんですけど、それは合法的な復讐が認められた世界を描いていました。
それもなんだかアリだな~と思ってしまいます。
加害者が手厚く保護されるような現行法はいかがなものかと思ってしまいますね。
[2008/07/11 19:36] URL | ミチ #0eCMEFRs [ 編集 ]
真紅さま~こんにちは!
確かに、この小説は、長峰さんに同情というか、なんというか・・・長峰さんに復讐を果たさせてやりたい・・・という気持ちにさせるように作っていますよね^^ 私も、やっちまぃな~!!って思ってたんですが、ペンションの女性の言った言葉で、ふと考えを変えたりもして・・・

ところで、上でのコメントに反応しちゃってスイマセン!容疑者Xの映画化で、容疑者役が、堤さんなんですか~~!!それは、見る意欲がそそられるな。 ちなみに、私個人的には、容疑者Xの小説版はそれほどガツンとまでは来なかったんです・・・。
[2008/07/12 09:19] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
ミチさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます♪
週刊朝○ですね。私も週刊誌はおろか、新聞連載ですらもどかしい、せっかちな人間です(笑)。
一気に読みたい、わかります~。
私は結構、他のブロガーさんが読まれた本をチョイスしたりすることが多いのです。
敬愛するブロガーさん、ミチさまとか、latifaさまとか(照)。

自分の身内がもし・・・と考えるだけでも恐ろしいですね。
『フリージア』は初めて聞いた題名です。
合法的な復讐か~。。それも歯止めがないと恐ろしいですね。
この世から「悪」がなくなってくれればいいのですけれど。。
ではでは、またお伺いします!
[2008/07/12 09:41] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
latifaさま、こんにちは~。コメントとTBをありがとうございます。
そうなんです、作者の視点が長峰にありますよね。
でも、私もペンションの女性が説得する場面は心動かされました。
あの時点では、長峰も自首するつもりだったのにね。。

『容疑者X~』、図書館の予約がホント凄いことになっていて、当分読めそうにないんですよ~。
堤さんは、『39』っていう映画で犯人役をやっているのですが、これがまた凄い演技だったんです!
今度は知能犯ね。。福山くんとの「男前対決」が楽しみ~♪
ではでは、またお伺いします~。
[2008/07/12 09:46] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま こんにちは!再度のコメントすみませんっ。
文春文庫新刊案内サイトで、『容疑者Xの献身』の文庫版が8月5日に発売、との情報を見つけました。真紅さん、ぜひぜひ映画を見る前に、原作をお読みくださいませ~。実は『容疑者X』は読む人によって結構、評価が分かれる作品なんです。「こんなのあり?!」と呆れる書評家もいましたし、直木賞決定のときも「この作品が特に良かったというよりは、東野さんの今までの功労に対する表彰」と言われたりもしました。でも!私は完璧ハマってしまって・・・最後は涙、涙、涙でした。
「天才数学者が仕組んだ完全犯罪を、旧友である天才物理学者が徐々に崩してゆく」、二人のスリリングな心理戦をまずは文章でお楽しみいただけたら・・・と願っています。ただし、原作での「X」は、ホントは、堤真一さんのようなイイ男ではないのですけどね(笑)。
ではでは、おじゃましましたっ★
[2008/07/12 21:08] URL | メグ #OSjUVFqk [ 編集 ]
メグさま、こんにちは~。再びのコメントありがとうございます。
文春文庫ですか!うーん、Yonda?トートも松ケンシークレットしおりにも貢献できないなぁ(笑)。
東野さんって、直木賞何回落選するんや・・ってくらい落ちてましたからね。
選考委員も、もうここらであげておかないと・・って感じだったのでしょうか。
ラストで泣いた、という話は聞いたことあります。でも、読む人によって評価が割れるのですね~。
でもね、映画化される作品は、できたら「観てから」読みたいんですよね。
先に読んでしまったら自分でイメージを作ってしまって、観てガッカリ、ってことないですか?
他の『ガリレオ』シリーズがあれば、読んでみたいと思っています。
とにかく映画は楽しみです!情報、ありがとうございました。
ではでは、また遊びにいらして下さいね~。
[2008/07/13 00:43] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま
なかなか面白そうな作品のようですね。
東野圭吾は〈容疑者X…〉でストップしてしまいました。
私にとっては重いテーマの割にラストが…うーん、なんです。
後もうチョット…締まりが欲しくなってしますのです。
でも問題定義にはなる主題をタイムリーに投げかけてくるセンスはナカナカですよね。
弁護士の仕事は本来〈死語になってしまった〉教師の〈聖職〉の分野に入るものでは無いかと思っています。
コレは数字では計れない精神性の問題なのですが…。
昨今ではアメリカナイズされたというか、裁判が人の時には肉体的、精神的な生死に関わる神聖な場であるより、法律家の腕の見せ所に傾きつつある様に思います。
又、江戸時代は武家などでは身内の理不尽な死に対して、許可制で〈仇討ち〉と言う制度がありました。
これは、これで仇討ちに出向かないと〈腰抜け〉と言われ、苦しい立場に置かれた人もいるのでは…と思いますが、法によって殺人者が守られ、被害者家族が(たとえ犯人が死刑になったとしても)一生苦しみを背負って行かねばならぬ現状を鑑みるとき、この〈仇討ち〉という言葉が頭に浮かぶ私です。決して推奨する訳ではないのですが、被害者家族に共感出来る…というところです。
[2008/07/13 09:25] URL | Maria #kBwKK/5M [ 編集 ]
Mariaさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、耐えられないくらい酷い描写もあるのですが、一気読みさせてしまう力のある小説だと思います。
『容疑者X~』は割と最近の作品ですが、それまではたくさん読まれているのでしょうか。
私はまだあまり読んでいないので、これから取り戻そうと目論んでいます。
「仇討ち」といえば「赤穂浪士」ですね。
復讐とか、仇討ちとか時代錯誤な言葉のようですが、大切な人を奪われた悲しみは今も昔も変わらないですものね。
弁護士さんの仕事は、本当に激務だと思います。
高収入が得られる職業ではあると思うのですが、精神的にはボランティア的な部分も大きいのではないでしょうか。
個人的な考えは二の次に、法そのものを遵守しなければならないストレスもあるでしょうし・・・。
私も、被害者がもっと守られ、救済されるべきだと思います。
テレビのニュースで亡くなった(殺害された)方の顔写真が映し出される度に、何ともいえない違和感があります。
一生背負う苦しみ、それをこの小説では「永遠に消えない悪」と表現していました。
よろしければ、読んでみて下さいませ。
ではでは、また。。
[2008/07/13 20:09] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま

東野圭吾はTVドラマ〈白夜行〉で興味を持ち、何冊か読みましたが、TVドラマの〈白夜行〉は毎回、胸が締め付けられる程の余韻があり、未だに忘れる事が出来ません。
東野圭吾ファンサイト
http://from1985.pekori.to/keigotaku/
をご覧になると、TV版〈白夜行〉が未だに生々しく鑑賞できます。
宜しかったら Check it out!
私もこの〈さまよう刃〉でもう一度東野さんに再挑戦してみようかな…と思っています。
[2008/07/14 17:17] URL | Maria #Ti4i1M3U [ 編集 ]
Mariaさま、再びのコメントありがとうございます。
東野さんのファンサイト、拝見しました。
非公式ということですが、熱烈なファンの方がたくさんいらっしゃるのでしょうね。
私は『白夜行』はあまりの分厚さに手が出せません。
でも、この夏はもう何冊か東野作品を読んでみたいと思っています。
とりあえず、薄めの作品を(笑)。
またいろいろと感想など語り合えたら・・と思っています。
ではでは、またです~。
[2008/07/15 15:00] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま こんにちは!
このようなところにおじゃましましたのは、この『さまよう刃』が「映画化されて今秋公開される」というニュースを読んだからです。半年以上も前にこちらにおじゃましましたとき(↑)、私ったら「(この作品は)映画に向かないですね」などと書いてしまっていますが(汗)、東野ヒット作品のひとつですから「今の時代にやっぱ、映画化されるかぁ~!」という感じです。ある意味、『ダークナイト』よりもダークなストーリーですが、映像にするからには当時どきどきしながら読んだ読者をがっかりさせない良い映画にしあげてほしいです。特に(真紅さんも書いていらっしゃる)「ラストの一捻り」をうまく映像化してほしいなぁ。しかしキャストが・・・う~ん、いいのかなぁ(笑)。どうでしょうね。いずれにしても公開をわくわくしながら待ちたいと思います。
[2009/04/09 23:04] URL | メグ #OSjUVFqk [ 編集 ]
メグさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
しかし、「このようなところ」って・・・。爆笑。
コメントは大歓迎ですからいつでもどこでもどうぞ。ククククク(笑)。

この小説、寺尾聡さん主演で映画化されるんでしたっけ??
東野作品はメジャーですから、集客を見込んでの映画化なんでしょうね。
『容疑者X~』の映画化はとてもよくできていたと思うので、期待して待ちましょう!
原作既読の東野ファンの期待を裏切らない作品であってほしいですね。
ではでは、またです~。
[2009/04/10 19:17] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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