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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

母と娘、かくも複雑な~『シズコさん』

シズコさん

 絵本作家であり、エッセイスト佐野洋子さんによる自伝的エッセイ。自らの
母と娘である著者との間にあった長年に渡る確執と和解、再生が、飾り気のない
言葉でありのままに綴られている。著者の文体は独特で、とても洗練されている
とは言えないし、好き嫌いが激しいと思う。しかしこの本は是非母を持つ娘、つま
全ての女性に読んで欲しいと思う。母が大好きだと言い切れるひと。母が嫌い
だと言えないひと。母を亡くしたひと、母に会いたいひと。母に愛されたいと願う
ひと
。そんな全ての女性に。

 裕福だった北京・胡同での子ども時代。敗戦後の混乱、引き揚げ、その後の
と兄の死
。田舎での生活と共に始まる母の虐待。この辺りは『愛を乞うひと』を彷彿
させて、読み進むのが辛いほど。父の死、遺された4人の子どもを一人で育て上げ
た母。大学進学と同時に上京し、母と正反対の気質を持つ叔母になじむ娘。との
折り合いが悪い母を引き取った娘は、認知症の症状が悪化した母を老人施設
預け、「母を金で捨てた」と苦しむ。

 娘を虐待し、拒絶し続けた母「ごめんなさい」「ありがとう」が言えない母を、
娘はどうしても許容することができない。しかし母が認知症になって初めて、
は母に触れ、謝り、泣くことができた
のだという。

 自らの過ちや恥部を「墓場まで持っていく」という言葉がある。著者は、母と自分
との間に起こった出来事を、どうしても生々しいままで棺桶に持ち込みたくなかっ
たのだろう。全てさらけ出し、書かずにはいられなかったのだろう。そうすることで
極個人的な母と娘の物語は、親子の老いを巡る普遍的な物語昇華した。

 生老病死。たった四文字で表すことのできる、短いようで長い人生。そこには
なんと複雑に絡み、愛憎半ばする親子の物語があることだろう。人の数だけ物語
は存在し、そしてこれは私自身の物語でもある。

 「私はあんたみたいな母さんが欲しい」・・・、慟哭

 (『シズコさん』佐野洋子・著/新潮社・2008)
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ジャンル : 本・雑誌

2008-07-05 : 読書 : コメント : 6 : トラックバック : 1
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「役にたたない日々」「シズコさん」 佐野洋子
『100万回生きたねこ』の佐野洋子さんの本、「役にたたない日々」「シズコさん」を読みました。両方とも乳ガンになって以後出版された本です・・・。
2009-04-27 10:09 : ポコアポコヤ
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非公開コメント

真紅さま こんにちは。
そーか、「100万回生きたねこ」の作者ってこういう人生を歩んでこられた方だったのですね。
〝100万回生きても知ることのなかった『愛』を、最後にやっと知って、初めて悲しみを知るネコのお話〟・・・
この『シズコさん』を読んだあとに『100万回~』を読むと、また今までと違った感じ方ができるかもしれません。『シズコさん』、ぜひ読みたいと思います。
ご紹介いただき、ほんとにありがとうございました★
2008-07-05 20:58 : メグ URL : 編集
メグさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
佐野さんと言えば、やはり『100万回生きたねこ』ですよねー。
でも、佐野さんのエッセイは↑にも書いたのですが、好き嫌いがあるかもです。。
露悪的なところもありますし、上品とは言いがたいので嫌悪感を憶える方もいらっしゃるようなのです。
でも、私はこの本、ほとんど号泣しながら読みました。
気に入っていただけると、何かを感じていただけるとうれしいのですが・・・。
是非、読んでみて下さい。
ではでは、またです~。
2008-07-06 00:45 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんばんは。
なんだかとっても読みたくなりました。
実は、以前読んだ心理学の本に、とある人の夢の中にこういう言葉が出てくるものがあります。
夢の中で大学生の娘が思うのです。「私のママは、まるで佐野洋子みたいだ。面白い言葉の使い方をする。」
その文を読んだ時に、娘に佐野洋子みたいだ、なんて言われる母は、素敵だな、と思ったのを覚えています。

・・・なんだか、とりとめもないコメント、すいませんでした。
ゆっくり時間が出来たら、いつか読んでみたいです。
2008-07-06 02:04 : とらねこ URL : 編集
とらねこさま、こんにちは。コメントありがとうございます!
おめめは如何ですか。お大事になさって下さいね。
私は、PCを使うよりも読書するときの方が断然、目はキツイんです。
でも、面倒臭いからパピコはあまり使わないんですよ(笑)。

この本、「逆東京タワー」みたいだと思いました。
佐野さんご自身は娘さんはいらっしゃらないようですが、娘の母への思いって複雑ですよね。
息子の母への思いって、割と単純な気もするのですが(こんなこと言うと男性に怒られるかな?)。
是非、いつか読んでみて下さい!
ではでは、またお話しましょう。
2008-07-07 09:37 : 真紅 URL : 編集
プリンセストヨトミ、読まれたのね~^^
私も昨日図書館から連絡が来てたので、GW中に読みます~(^○^)

ところで、このシズコさん・・・。
結構すごくリアルで、ずど~~んと来ちゃいました。でも、すっごく良かった(良かったっていうのは変だけど・・・)

実は私も、母とも父とも、凄く仲良し!相性良い!ってわけじゃなくて、10代の頃なんかは、かなり険悪だったのよね・・・・、自分の子供時代(10代未満の、まだ幼い時)も、、、、、

私は、自分の娘を育てる時、自分の親が私に取った行動を反面教師にした処があったりするんだ・・・(^^ゞ それが良かったのか否かは解らないんだけどね・・・。

でもね、「シズコさん」もだけど、とうてい私には出来ないや~!!っていう事も親は私にしてくれたり(お家綺麗にしてるとか、家事とか・・)、その他、感謝してる処も一杯あるんだ。(自分が親になってみて気がついたりもした・・・)

それと、洋子さんが末の妹を溺愛して来たのに、末の妹は失敗した2回のことは良く覚えてるのに、それ以外のかわいがられたことは覚えてない・・・・って部分が、ショックだったわ・・・。人間悪い事は覚えてるのに、良い事って忘れがちみたいで・・・「ゆれる」でも、弟は家族一緒にあの橋の場所に連れてってもらった良い思い出とか、すっかり忘れて、良くない記憶ばかり覚えていたよね・・・・(T_T)
2009-04-27 10:33 : latifa URL : 編集
latifaさま、こちらにもコメントとTBをありがとうございます。
『プリンセス・トヨトミ』はね、退屈かも~(汗)。
大阪に住んでいる私でも、なかなか進まなかったわ。
でも、最後まで読んであげてね。じーんとくるところもあるからね。。

で、これ、すっごいリアルだったでしょう?
佐野さんって、オブラートにくるむ、ってことをしない人だと思うわ。
生身の感情をそのまま言葉に乗せている感じがする。。良くも悪くも。
私も、ずっと父とはうまくいってなくて。。
でも、この間父に短い手紙を書いたんだけど、父が感動してくれたんだって(母曰く)。
正直に気持ちを書いたらわかってくれたみたい(ホッ)。
今度会ったら、もう少し話もできるかな? と思っています。

自分がされていやだったことは、子どもにしないでおこう、、と思いつつ、同じことをしてるのに気づくこともあります、私の場合。
あと、妹さんのエピソード、わかる~~!!
私は弟も妹もいるんだけど、二人とも私のこと「怖かった」って言うもん!!ヒェ~。
上の姉は、年が離れてるせいもあってやさしかった印象らしい(泣)。
ホント、親兄弟って難しい部分もありますよね。。血がつながってる分、ややこしいかも。
ではでは、後ほどお伺いします~。
2009-04-27 10:54 : 真紅 URL : 編集
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