賢者の贈り物~『西の魔女が死んだ』

「おばあちゃん、大好き」 「I Know」
初夏。学校に行けなくなった中学生のまい(高橋真悠)は、山の家で一人暮らしを
している母方のおばあちゃん(サチ・パーカー)の元で過ごすことになった。英国人
のおばあちゃんが「魔女修行」と呼ぶ規則正しい生活を続けるうちに、生きる活力を
取り戻していくまいだったが・・・。
原作は、梨木香歩のロングセラー小説。映画化の話を知って初めて、この本の
存在を知った。読んでみようと図書館で調べてみると、なんと既に十数件の予約
が入っていた。映画化というイベントがあるとはいえ、初版から10年以上たつ
小説にこんなに人気があるとは・・・。きっと世代を超えて、確実に読み継がれて
いる名作なのだろう。ちなみに、予約リストの私の順番はまだ回ってきていない。
すべての子どもにとって「おばあちゃん」の存在は特別な意味を持つ。見返り
など何も求めず、存在自体を丸ごと受容し、ただそこにいるだけで無条件に愛し
てくれるひと。絶対的な味方。それでいて人生のお手本であり、師でもある。
本作でサチ・パーカーが51歳にして見事に演じたおばあちゃんも、やさしく、とき
に厳しく、孫を包み込む。
「おばあちゃん、人は死んだらどうなるの?」

そして、子どもにとって「死の恐怖」もまた、成長期に避けて通れない関所のよう
なもの。どうせ死ぬのに何故生まれてくるの? 魂って何? 自分が死んでも、
周りは何も変わらないの? 繊細で感受性豊かなまいの苦しさを理解したおばあ
ちゃんは、身をもって彼女の恐怖を取り除こうとする。いつか魔法は解けるとして
も、その頃には彼女はきっと、一人で乗り越えられるだろう。
まいは笑うと宮崎あおいちゃんのように愛くるしいのに、滅多に笑顔を見せな
い。自分に自信がなく、それでいて女子の付き合いに迎合もできず、痛ましいほ
ど痩せている。自分にも、魔女の血が流れているのだろうか? 私はまいの目線
になって、おばあちゃんから様々な「魔女の掟」を学んでいる気持ちになった。
丁寧で訥々とした、おばあちゃんの言葉の一つ一つが、胸に残る。
薪で焚くかまど、風の音、したたる緑、孤高に立つ大木、たらいで足踏みしな
がら洗うシーツ。それらはまるで『トトロ』の世界のようで、エコでロハスな田舎
暮らし。しかし自然の中で暮らすということは、孤独と不便さとの闘いでもある。
まいが両親との暮らしを選んだときの、おばあちゃんの複雑な表情。「ずっとい
てほしいくらい」というのは、きっと本音だったのではないかな。そんなおばあ
ちゃんと、幼さゆえの潔癖さで対立してしまうまい。彼女がその後、2年もあの
家を訪れなかったことが悲しい。私自身も、祖母との関係を思い出して涙が止
まらなかった。ただただ、やさしかった祖母。人生はいつも、少しだけ間に合わ
ない。
人は生まれ、両親や祖父母に守られながら成長し、やがて保護者から離れ
てゆく。年長者は順に去り、思い出だけが記憶としてこの世に留まる。それが
自然な摂理だとわかってはいても、巣立ちや旅立ちにはいつも、寂しさが伴う。
おばあちゃんの魂を胸に刻んで、私もしっかりと生きてゆこう。
(『西の魔女が死んだ』監督:長崎俊一/主演:サチ・パーカー、高橋真悠/
原作:梨木香歩『西の魔女が死んだ』/2008・日本)
- 関連記事
-
- いいんです!~『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』【吹き替え版】 (2008/06/30)
- 賢者の贈り物~『西の魔女が死んだ』 (2008/06/27)
- 神童現る~『奇跡のシンフォニー』 (2008/06/26)
スポンサーサイト
trackback
★★★★ 長野の山奥に住む外人のおばあちゃんと、神経過敏症で登校拒否を続ける孫娘の共同生活が始まった。最初チラシを見たとき、てっきり洋画なのだと勘違いしていたが、純然たる邦画なのである。 優しく冷静で淡々としているが、大らかで芯が強く、1人山奥で時給自足
2008-06-27 15:08 :
ケントのたそがれ劇場
登校拒否になった少女と祖母の物語です。
2008-06-27 15:45 :
水曜日のシネマ日記
{/kaeru_en4/}“月島児童館”っていうくらいだから、ここには児童書もいっぱいあるんだろうな、きっと。
{/hiyo_en2/}「西の魔女が死んだ」とか?
{/kaeru_en4/}そうそう。学校へ行かなくなった中学生の女の子が、田舎のおばあちゃんの家で魔女修業をするっていう物語。梨...
2008-06-29 08:07 :
【映画がはねたら、都バスに乗って】
【 西の魔女が死んだ】2008年6月21日(土)公開
監督 : 長崎俊一
...
2008-06-29 18:31 :
MoonDreamWorks★Fc2
監督:長崎俊一
出演:サチ・パーカー、高橋真悠、りょう、大友南朋、高橋克実、木村祐一
「魔女が倒れた。
おばあちゃん、ママのママと二年前私は一緒に過ごした時期があった。学校にいることが苦しくて学校を辞めると言い出した時、学校をお休みしておばあちゃん
2008-06-30 12:20 :
日々のつぶやき
いつかしら 心の病 抜け出せる
実は、この原作、梨木香歩さんの、文庫で読んだことあります。が、どんなお話だったか、殆ど覚えていません。女の子と魔女らしきお祖母ちゃんの交流ということくらいしか。
それよりも読み進めるのに非常に難儀したことを覚えて...
2008-06-30 22:18 :
空想俳人日記
人気ブログランキングの順位は?
魔女が倒れた。
もうだめみたい
人はみんな
幸せになれるように
できているんですよ
2008-07-06 20:01 :
ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
梨木果歩の原作が好きだったので、見たいと思っていた作品。
とはいえ、原作の内容はすっかり忘れており、こんな展開だったっけ…といった感じだったのだけれど…。
期待しすぎて見に行ってしまったせいか、そこまですごい感動~!ってほどではなかったのが残...
2008-07-07 15:47 :
読書・映画・ドラマetc覚書(アメブロ版)
登校拒否になってしまった少女の魔女修行。それはおばぁちゃんの愛を学ぶことなのでした・・。
2008-07-07 23:37 :
★Shaberiba ★
世の中が複雑になっているのでしょうか。 それとも人が複雑に考えるようになってしま
2008-07-09 21:19 :
はらやんの映画徒然草
満 足 度:★★★★★★★★
(★×10=満点)
監 督:長崎俊一
キャスト:サチ・パーカー
高橋真悠
りょう
大森南朋
高橋克実
木村祐一、他
■内容■
中学生になったばか...
2008-07-14 20:58 :
★試写会中毒★
この週末は夜勤明け以外では久しぶりの二連休で割とゆったりと過ごせております{/face_nika/}
昨日{/kaeru_fine/}はちょっとした買い物に行った後、昼寝{/kaeru_night/}
でインターネット{/pc2/}と実に有意義({/eq_1/})な{/face_ase2/}…いや最近こういうゆったり感に欠...
2009-03-12 13:07 :
ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画
ニシノマジョカラヒガシノマジョヘメッセージ・・・死んだらどうなるの、そうねぇ死んだことがないから分からないわ、静かにハートウォーミングな魂脱出の物語・・・
おばあちゃんと過ごした1ヶ月余りのこと・・・集団よりも孤立を選び登校拒否に陥った中学1年
2009-05-10 12:50 :
茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~
あらすじ「魔女が倒れた。もうダメみたい」中学3年生になった少女・まい(高橋真悠)に突然の知らせが届く。魔女とはイギリス人の祖母のこと。まいはママ(りょう)の運転する車で、おばあちゃん(サチ・パーカー)の家へ向かう。2年ほど前、学校に行くのが苦痛になって...
2009-05-30 13:25 :
虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ
サチ・パーカーさん!彼女を出演(人選)した事に拍手!!!
まさにルックスや雰囲気など、日本人がイメージする素敵なイングリッシュおばあ...
2009-06-03 15:15 :
ポコアポコヤ 映画倉庫
梨木香歩のロングセラー小説を映画化した、祖母と孫のひと夏の暮らしを描いたファンタジー。監督は 長崎俊一、キャストはサチ・パーカー、高橋真悠、りょう、大森南朋他。
<あらすじ>
中学生になったばかりのまい(高橋真悠)は登校拒否になり、大好きなおばあちゃん(...
2010-08-28 00:25 :
Yuhiの読書日記+α
コメントの投稿
真紅さん、コメントありがとう
確かに、仰るとおり「人生は、いつも少しだけ間に合わない」まさに言い当てた言葉ですね。
自分はまだおじいちゃんになっていませんが、子供に対する親の愛情は判る気がしますね。
確かに、仰るとおり「人生は、いつも少しだけ間に合わない」まさに言い当てた言葉ですね。
自分はまだおじいちゃんになっていませんが、子供に対する親の愛情は判る気がしますね。
原作、今とても売れてるようですが、図書館でも大人気なのですね。
順番を待たれて(古本屋さんで¥100で買えますが)読まれたら、
また感想を聞かせてくださいませ。
わたしは、大好きだった母方の祖母は、亡くなって久しく、
思いが残らない別れ方ではなかったですが、
今もわたしのすぐ傍で見守ってくれてると信じています。
母とよりも、祖母のほうが気が合い、似たところが多いと母に言われるのだったら、
充分な恩返しができなかったことを寂しがるよりも、
孫まで生まれて元気に暮らしているわたしを喜んで、守ってくれてるんじゃないかと…
そんな風に、今も甘えていたいだけなのかもね(笑)
順番を待たれて(古本屋さんで¥100で買えますが)読まれたら、
また感想を聞かせてくださいませ。
わたしは、大好きだった母方の祖母は、亡くなって久しく、
思いが残らない別れ方ではなかったですが、
今もわたしのすぐ傍で見守ってくれてると信じています。
母とよりも、祖母のほうが気が合い、似たところが多いと母に言われるのだったら、
充分な恩返しができなかったことを寂しがるよりも、
孫まで生まれて元気に暮らしているわたしを喜んで、守ってくれてるんじゃないかと…
そんな風に、今も甘えていたいだけなのかもね(笑)
ケントさま、こちらこそコメントとTBをありがとうございます。
映画を観ている間、ずっとその言葉が頭に浮かんできて、涙が止まりませんでした。
私も、おばあちゃんになる日がいつか来るのかな。。修行が必要ですね。
ではでは、またお伺いします!
映画を観ている間、ずっとその言葉が頭に浮かんできて、涙が止まりませんでした。
私も、おばあちゃんになる日がいつか来るのかな。。修行が必要ですね。
ではでは、またお伺いします!
悠雅さま、こちらにもコメントありがとうございます。
えー、古本屋さんで100円で買えるのですか。。
古本屋さんって、ほとんど行かないんです。もっぱら図書館利用なんですよ。
でも、早く読みたいので文庫を買ってしまうかもしれません。。
そんなにも絆が深いお祖母さまだったのですね。
きっと見守って下さっていることでしょうね。。
ウチの母も、つい最近「おばあちゃんが守ってくれていると思う」と言っていました。
(姉のことを、ですが)
やっぱり、母と娘、孫娘ってそういうものなんですよね。。
雛ちゃんのことも、きっと守って下さっているのですね!素敵なことです。
ではでは、またお伺いします~。
えー、古本屋さんで100円で買えるのですか。。
古本屋さんって、ほとんど行かないんです。もっぱら図書館利用なんですよ。
でも、早く読みたいので文庫を買ってしまうかもしれません。。
そんなにも絆が深いお祖母さまだったのですね。
きっと見守って下さっていることでしょうね。。
ウチの母も、つい最近「おばあちゃんが守ってくれていると思う」と言っていました。
(姉のことを、ですが)
やっぱり、母と娘、孫娘ってそういうものなんですよね。。
雛ちゃんのことも、きっと守って下さっているのですね!素敵なことです。
ではでは、またお伺いします~。
真紅さま、こんばんは。
ワタシはこの映画未見なのですが、真紅さんの
「人生はいつも少しだけ間に合わない」という言葉にじんときてしまいました。
ワタシの大切な人は今まだみんな生きているんだから、これから悔いのないように彼等との時間をすごさないといけないんだなって心から思えました。
映画も・・・鑑賞予定はなかったのですが、ちょっと見てみようかなという気持ちになってきました。
ワタシはこの映画未見なのですが、真紅さんの
「人生はいつも少しだけ間に合わない」という言葉にじんときてしまいました。
ワタシの大切な人は今まだみんな生きているんだから、これから悔いのないように彼等との時間をすごさないといけないんだなって心から思えました。
映画も・・・鑑賞予定はなかったのですが、ちょっと見てみようかなという気持ちになってきました。
dimさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
実はこの映画を観たときちょうど佐野洋子さんの本を読んでいて、上の言葉はその本の中にあったものなのです。
とてもいい本でしたから、また改めて紹介したいな、と思っています。
この映画、私も原作はおろか原作者の本は一冊も読んだことがなくて、どうしようか迷いました。
でも、本当に観てよかったと思っています。
機会があれば、是非ご覧になってみて下さい。
またお話できたらうれしいです。ではでは!
実はこの映画を観たときちょうど佐野洋子さんの本を読んでいて、上の言葉はその本の中にあったものなのです。
とてもいい本でしたから、また改めて紹介したいな、と思っています。
この映画、私も原作はおろか原作者の本は一冊も読んだことがなくて、どうしようか迷いました。
でも、本当に観てよかったと思っています。
機会があれば、是非ご覧になってみて下さい。
またお話できたらうれしいです。ではでは!
真紅さん~こんにちは!
この後、図書館の順番回って来て読みましたか?^^
真紅さん的に、映画と原作の差とか、どういう風だったかお聞きしたいな~。
私は原作→映画だったんだけれど、映画の方が自然とかおばあさまの部分は勝っていた陽に感じたわ♪
その反面、キム兄の部分は小説版の方がよく解ったと思う・・・。
この後、図書館の順番回って来て読みましたか?^^
真紅さん的に、映画と原作の差とか、どういう風だったかお聞きしたいな~。
私は原作→映画だったんだけれど、映画の方が自然とかおばあさまの部分は勝っていた陽に感じたわ♪
その反面、キム兄の部分は小説版の方がよく解ったと思う・・・。
latifaさ~ん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございます。
原作、読みましたよ~。映画以上によかったと思いました。
でもね、やっぱり映画も観てよかったと思いました。
何故かっていうと、あの最後の魔女の伝言の場面。
小説だけでは、私は誰があの言葉をガラスに書いたのか、考えなかったと思うから。
映画では、ゲンジさん(だっけ?)の手が車のウィンドウに触れる場面を伏線にしてるから、最後に「あ!」っとわかったよね。
でも、感動が勝ったのは原作かなぁ。
これから伺いますね。
原作、読みましたよ~。映画以上によかったと思いました。
でもね、やっぱり映画も観てよかったと思いました。
何故かっていうと、あの最後の魔女の伝言の場面。
小説だけでは、私は誰があの言葉をガラスに書いたのか、考えなかったと思うから。
映画では、ゲンジさん(だっけ?)の手が車のウィンドウに触れる場面を伏線にしてるから、最後に「あ!」っとわかったよね。
でも、感動が勝ったのは原作かなぁ。
これから伺いますね。
ちょ、ちょっと、ちょっと!真紅さんー!!!
あの字って、おばあちゃんが書いたんじゃないかもしれないの?
ゲンジさんが書いたの??
ものすごい衝撃だわ~ 今の今まで知らないでいたんだけど!!!!!
ぎゃ~~~どうしよう?
あの字って、おばあちゃんが書いたんじゃないかもしれないの?
ゲンジさんが書いたの??
ものすごい衝撃だわ~ 今の今まで知らないでいたんだけど!!!!!
ぎゃ~~~どうしよう?
latifaさん、ええええええ~~~??
なんか、私夢を壊すようなこと書いたかしらん。。
いや~、私はてっきりゲンジさんが書いたものだとばっかり。。
どうしよう? ちょっと釈明に伺いますね。
なんか、私夢を壊すようなこと書いたかしらん。。
いや~、私はてっきりゲンジさんが書いたものだとばっかり。。
どうしよう? ちょっと釈明に伺いますね。