![]() 萩原健一の『ショーケン』を読んだとき、松田優作についてこんな記述があった。 「あいつは俺の真似ばかりしていた」 松田優作といえば、没後20年たった今もその唯一無二の存在感と演技で伝説 的な俳優。その彼がショーケンの「真似」をしていただなんて、妄想じゃないの・・・? しかしショーケン同様、松田優作のことも自分はあまり知らない。そう言えば、 つい最近も大阪駅の構内でグンゼのでっかいポスターを見かけた。今の10代、 20代の人たちは、彼をどう思っているのだろう? ショーケンほどスキャンダラスなイメージは無いにしろ、松田優作もワイドショー 的話題には事欠かなかった人物だったような気がする。離婚・再婚報道は記憶 に残っているが、暴力沙汰で逮捕されたこともあったらしい。本作では出生の 秘密や生い立ち、国籍のこと、闘病や死についても詳細に語られている。 そして、「彼はいつも誰かの真似をする奴だった」ということも。自分を大きく 見せるために、空手の有段者だとか、血液型をAB型だと詐称していたことも。 ショーケンの言い分は、真っ当だったということなのか・・・。ちょっとショック。 しかし本作は彼の人格や素行を糾弾するような内容では決してなく、一番身近 な人間だけが触れることの出来た「伝説の素顔」を余すところなく伝えている。 そこには賛美も装飾もない、剥き身のヒーローがいる。 元妻である著者は、松田優作については愛憎半ばする思いがあると言う。 無名時代から苦楽を共にした同志に裏切られた悲しみよりも、松田優作と言う 稀有な才能を失ってしまった無念さが溢れる作品だ。『越境者』というタイトル には、国境もジャンルも超越して、演技だけを突き詰めようとした彼の孤独が 滲んでいる。 (『越境者 松田優作』松田美智子・著/新潮社・2008) ![]() |
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