『贖罪』の前に~『最初の恋、最後の儀式』

First Love, Last Rites
by Ian McEwan
英国のブッカー賞受賞作家、イアン・マキューアンの処女短編集。1975年、著者
27歳の時の作品。有望な新人に与えられるサマセット・モーム賞受賞作。
マキューアンは言うまでもなく映画『つぐない』の原作者である。『贖罪』を読む前
に、現代最高と言われる英国人作家の原点に触れてみる。
表題作をはじめ、本作は8編からなる短編集。幼児性愛や近親相姦、服装倒錯な
ど、過激ともいえるテーマを静謐で巧みな筆致で読ませる。正直、これが処女作で
あるとは信じ難いほど完成されている印象。一気に読めるタイプの小説ではないが、
興味のある方は是非手に取っていただきたいと思う。ちなみに私が一番面白く読ん
だのは『押入れ男は語る』。ちょっと「ハルキ・ムラカミ」テイストを感じてしまった。
「訳者あとがき」によると、マキューアンはイースト・アングリア大学で学び、後に
カズオ・イシグロも彼と同じ教授の指導を受けたのだという。映画の脚本を手がけ
ているところ、ブッカー賞受賞作家であるところも二人の共通点だ。
早く『贖罪』も読みたいけれど、『Jの悲劇』も観たい!
(『最初の恋、最後の儀式』イアン・マキューアン・著、宮脇孝雄・訳/
早川書房・1999)
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